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養護老人ホームとは?特養との違いや入所条件、費用負担について解説

養護老人ホームは費用が安い?

特別養護老人ホームとは何が違うの?

この記事を読んでいるあなたは、「養護老人ホーム」への入居を検討しているのではないでしょうか。養護老人ホームという名前に馴染みがなく、特別養護老人ホームとの違いに混乱しているかもしれません。

結論、養護老人ホームは入居に市町村の措置(そち:行政による入所決定)が必要な施設です。費用負担は軽いものの、入居できる方は限られるのが現実です。

本記事では、養護老人ホームの概要や費用の目安、よく比較検討される特養(とくよう:特別養護老人ホームのこと)との違いなどを詳しく解説しています。記事を最後まで読めば、希望に合う施設をより探しやすくなるでしょう。

養護老人ホームとは「市町村が指定した人のみが入れる老人施設」

養護老人ホームは、自宅での生活の継続が困難な高齢者を支援する福祉施設です。民間が運営する有料老人ホームとは異なり、自治体による公的なサービスとして提供されています。

施設に入居できるのは、生活環境や経済状況などを調査した結果、市町村が「措置」という形で認めた人のみです。一般的な老人ホームのように希望制での入居ではありません。

とくに注意が必要なのは、養護老人ホームは「養護施設」であり、「介護施設」ではないという点です。基本的には、身の回りの世話は自分でできることが前提となります。そのため、施設の職員は介護職ではなく「支援員」として配置されています。

養護老人ホームは、入居者が自立した生活を取り戻し、社会へ復帰するまでの一時的な支援を目的としています。終身的な介護を目的とする場合は、有料老人ホームや特別養護老人ホームなど、タイプの異なる高齢者施設の検討が必要です。

目次

養護老人ホームの入所条件は「環境上の理由」と「経済的な困難」

養護老人ホームに入居できるのは、「現在の環境では生活が難しい・経済的に問題がある65歳以上の人」です。

入所理由となる例は、以下のとおりです。

  • 独居(一人暮らし)である
  • 無年金で経済的に困窮している
  • 家族から虐待を受けている
  • 身体的な障害や認知症、精神的な障害がある
  • 他の法律に基づく施設に入居できない
  • ホームレス
  • 以前に犯罪を犯した
  • 賃貸住宅から立ち退きを受けた

入居条件を満たすかどうかは、本人や扶養家族の状況、経済状況などを市町村が詳細に審査し、判断します。基本的には、生活保護受給者や市民税の所得割が非課税となるような、非常に所得の低い方が対象となります。

近年の高齢化に伴い、養護老人ホームのニーズは増加傾向です。しかし、自治体の費用負担が大きいこともあり、実際の入居は困難です。

なお、養護老人ホームは介護施設ではないため、介護保険法に基づく「介護度」の認定は入居条件には含まれません。

障害のある方が入居する老人ホームを探している方は、以下の記事も参考にしてください。

関連記事:障がい者が入れる老人ホームとは?費用・種類・選び方を紹介

養護老人ホームの費用は0円のこともある

養護老人ホームの費用は、1カ月あたり0円から14万円程度となるケースが一般的です。金額は前年度の収入によって決定します。また、入居一時金は不要です。(文献1

ただし、入居する本人に収入がなくても、扶養家族に一定以上の収入がある場合には費用負担が生じます。実際の費用は、市町村や養護老人ホームへ問い合わせてみると良いでしょう。

老人ホームの費用については、以下の記事も参考にしてください。

関連記事:老人ホームの費用が払えない!原因から対処法まで解説

関連記事:国民年金で入れる老人ホームの種類や費用の自己負担を減らす方法を解説

養護老人ホームの入所手続きは役所でおこなう

入所手続きの流れは、以下のとおりです。

  1. 相談:市町村役所の窓口、居宅介護支援事業所や民生委員、養護老人ホームなどに相談する
  2. 手続き:役所の窓口で手続きをおこなう
  3. 調査:本人や家族の生活や経済状況などが調査される
  4. 入所判定:入所判定委員会による入所すべきかを判定をもとに、市町村長が入所できるかを決定する
  5. 入所手続き:入所措置が決定した場合は、入所手続きをおこなう

なお、問い合わせ先は基本的に「入所者本人の住民票がある市町村役場」です。手続きの細かな流れや内容は市町村ごとに異なるため、問い合わせてみてください。

養護老人ホームのメリットは費用負担と緊急時対応

養護老人ホームのメリットは、以下のとおりです。

  • 費用の負担が少ない
  • 緊急時の対応ができる

順番に見ていきましょう。

費用の負担が少ない

前述のとおり、養護老人ホームは、日常生活を送る上で環境面の課題を抱えている人、経済的な支援を必要とする人に向けた福祉施設です。

そのため、収入の低い人が利用できるよう、以下のような費用体系がとられています。

  • 入居一時金は不要
  • 毎月の費用は前年度の収入に応じて決定

収入によって費用が決まるため、実質0円で利用できるケースもあります。

費用面の問題から住居型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などへの入居が困難な人にも利用しやすいのは、養護老人ホームの大きなメリットといえるでしょう。

サービス付き高齢者向け住宅や住居型有料老人ホームについては、以下の記事も参考にしてください。

関連記事:サービス付き高齢者向け住宅とは|メリット・デメリットから他施設との違いまで解説

関連記事:住宅型有料老人ホームの入居費用はいくらかかる?返還制度もあわせて解説

緊急時の対応ができる

養護老人ホームでは、入居者の安全を確保するため、夜間や休日も職員が配置されています。そのため、体調の急変やその他のトラブルが発生した際も、速やかな対応が可能です。

ただし、施設の職員は「介護職」ではなく「支援員」です。24時間体制で入居者の見守りはおこなわれますが、あくまでも基本的な生活支援と緊急時対応が中心となります。

夜間や休日における手厚いケアは期待できないと考えておきましょう。

養護老人ホームのデメリットは自分で入・退去を決められないこと

養護老人ホームのデメリットは「入・退去の決定を自分でおこなえないこと」です。

入居には市町村長の許可が必要なため、希望があるだけでは入居できないしくみとなっています。自治体ごとに入居のしやすさが異なるケースがあるともいわれています。

また、養護老人ホームは好きな期間滞在できる施設ではありません。「入居が必要な理由」が解消された場合は、本人が入居継続を希望しても、退去を求められるケースもあるといわれています(措置はずし)。

養護老人ホームは、あくまでも「自立までのサポートをする施設」であり、長期的な居住を前提とはしていないのです。

養護老人ホームの入居事例4選

本章では、全国老人福祉施設協議会が令和2年に行った調査をもとに、どのような例で養護老人ホームへの入居が決まるかの事例を紹介します。(文献2

一人暮らしが難しくなったケース

90歳代の女性、Aさんの事例です。

Aさんは要介護1の認定を受けながらも、家族と自宅で暮らしていました。

しかし、同居家族の1人ががんになったため、家族はAさん以外にがんになった人の看護もしなければなりません。

がんになった家族の看護をすると日中のAさんへのケアをする人がいなくなるため、施設への入居が必要となりました。

家族との不仲や虐待が原因のケース

80歳代の男性、Bさんの事例です。

もともとBさんは、精神的な疾患を持つ家族と自宅で暮らしていました。しかし、Bさん自身に認知症の症状が見られ始め、家族との折り合いが悪化します。ついには、同居が困難な状況となりました。

家族の希望や地域包括支援センターからの紹介により、入居が決定しました。

ほかの施設の入居を待つケース

90歳代の女性、Cさんの事例です。

Cさんはデイサービスを利用しながら、家族の助けを借りて自宅で暮らしていました。しかし、面倒を見ていた家族が体調を崩し、Cさんのケアが難しくなります。

その結果、自宅での生活が難しくなり、特別養護老人ホームの空きが出るまでの間入居しました。

障害がある人のケース

障害がある場合は、65歳未満でも入居が認められるケースがあります。

20歳代で精神障害を持つ、Dさんの事例です。

DさんはパートナーからDVを受けており、近くの無料定額宿泊所(生計困難者へ向けた無料または安価な簡易住宅)へ避難していました。

しかし、宿泊所の環境が悪く生活が難しいと社会福祉協議会へ相談し、自宅から離れた施設へ入居しました。

特養(特別養護老人ホーム)と養護老人ホームの違い

養護老人ホームと特養(特別養護老人ホーム)は、目的や入居対象者などが異なります。

本章の内容をもとに、混同されがちな両者の違いを理解しておきましょう。

特養へ早く入る方法は、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

関連記事:特養に早く入れる方法【9選】施設選びのポイントから入居待ちの対処法まで解説

養護老人ホームと特養(特別養護老人ホーム)は「入所目的」が違う

養護老人ホームと特養(特別養護老人ホーム)の違いは、以下のとおりです。

養護老人ホーム 特養(特別養護老人ホーム)
入居目的 経済的・生活環境上の困難を抱える高齢者の社会復帰支援 中~重度の要介護高齢者の介護と生活支援
入居対象者 身の回りの世話はできるが、経済的や環境的に自立が難しい高齢者

(65歳以上)

要介護3以上の高齢者

(65歳以上)

介護認定の要/不要 必要なし 必要あり
入居一時金の要/不要 必要なし 必要なし
毎月の費用 0~14万円 10~15万円ほど

(介護度や負担割合によっても異なる)

入居決定方法 市町村による措置決定 施設との契約

養護老人ホーム、特別養護老人ホームの一番の違いは、目的が「社会復帰の支援」なのか、「介護」なのかです。

養護老人ホームは、あくまでも社会復帰を前提とした施設です。そのため、基本的には身の回りの世話は自分でできることが前提で、施設は自立を目的として生活のサポートをおこないます。

一方、特別養護老人ホームの入居目的は「介護」です。入居対象者も要介護3以上と決められており、入居者は自力での立ち上がりや排泄、着替えなど、生活上のほぼすべての内容に介助が必要な状態です。

両者の違いを理解した上で、目的に合った施設を選んでみてください。

介護が目的なら特養や有料老人ホームを選ぼう

養護老人ホームは、一時的な保護によって社会的自立を支援する施設です。そのため、認知症や身体能力の低下により、家庭での生活が困難となり、継続的な介護が必要な人には適しません。

日常的な介護サービスや長期的な入所を希望するなら、以下のような高齢者施設を検討しましょう。

  • 介護付き有料老人ホーム
  • 住宅型有料老人ホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅
  • グループホーム
  • 特別養護老人ホーム
  • 介護老人保健施設
  • ケアハウス

各施設は、それぞれ入居対象者の介護度や提供される介護サービスの内容が異なります。

たとえば、介護付き有料老人ホームでは24時間体制の介護サービスが提供されますが、サービス付き高齢者向け住宅では、外部による介護サービスの利用が必要です。

以下の記事では、各老人ホームの違いについて、わかりやすい比較表を用意しております。ぜひ参考にしてください。

関連記事:失敗しない老人ホーム選びの法則

まとめ|養護老人ホームは入所条件が限られる施設

養護老人ホームは、環境的・経済的な困難のある人が自立するサポートをおこなう施設です。入所には市町村長の決定が必要で、希望した人全員が入れる施設ではありません。

身の回りの世話や長期的な介護が必要なら、老人ホームや特養などを選ぶ必要があります。

いいケアネット」では、大阪を中心に各都道府県の介護施設を紹介しています。希望する地域にどのような施設があるか、ぜひ探してみてください。

養護老人ホームについてよくある質問

養護老人ホームでの生活はどのように支援されているの?

養護老人ホームでおこなう支援の例は、以下のとおりです。

  • 食事の提供
  • 経済面の相談や家族との調整
  • 定期的な健康チェックと受診のサポート
  • 家事や身の回りの世話など、自立のためのサポート

提供されるサービス内容は、支援計画に基づいて個人ごとに調節されます。

養護老人ホームで介護を受けることはできないの?

養護老人ホームの入居者に介護が必要となった場合は、訪問介護や通所介護など、外部の介護サービスを利用することが一般的です。

しかし、実際は約4割の養護老人ホームが施設内で介護サービスを提供できる「特定施設入居者生活介護」の指定施設です。そのため、入居者の状態に応じて必要な介護サービスを施設内で受けられるケースもあります。(文献3

施設入居に関する相談窓口については、こちらの記事も参考にしてください。

関連記事:介護に悩んだ時、どうすれば…~相談窓口まとめ~

養護老人ホームにはどんな課題があるの?

養護老人ホームは、社会的に重要な役割を果たす一方で、以下のような深刻な課題も抱えています。

  • 人件費が負担となり、経営が困難な施設も多い
  • 施設が少なく、入れる人が少ない
  • 行政の費用負担を抑えるために措置を抑える「措置控え」で、退去せざるを得ない人もいる

高齢化社会の進行にともない、継続的な課題解決への努力が必要といわれています。

いいケアジャーナル」では、介護施設を検討する人に役立つさまざまな情報を提供しています。ぜひ参考にしてください。

参考文献

文献1

老人福祉法に基づく措置費用の徴収に関する規則|王寺町

文献2

養護老人ホームの契約入所に関する事例等参考集|全国老人福祉施設協議会

文献3

養護⽼⼈ホーム・軽費⽼⼈ホームについて|厚生労働省

この記事の監修者

いいケアネット事務局

突然倒れた、転んで頭を打ったなど、ご自身やご家族の介護を身近に感じるきっかけはそれぞれです。 いいケアネットでは、いざという時のために役立つ介護の知識や介護施設についてご紹介します。

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