国民年金を頼りに生活している場合、老人ホームには入れないのではないかと感じる方も多いでしょう。実際のところ、国民年金で入れる老人ホームの種類は多岐にわたるほか、さまざまな支援制度が用意されています。
今回は、特別養護老人ホームから有料老人ホームまで、国民年金で入れる老人ホームの種類を紹介します。
介護保険制度や社会福祉法人による負担軽減制度など、費用面でのサポートもまとめているので参考にしてください。
この記事を読めば、国民年金で入れる老人ホームの具体的な種類と入居のためのサポート制度を理解できます。ご自身やご家族の快適な老後のために、ぜひ最後までお読みください。
大阪を中心に、多数の高齢者向けの介護施設の情報を掲載する「いいケアネット」では、老人ホームに関する疑問やまつわる情報を「いいケアジャーナル」で随時更新中です。
国民年金で入れる老人ホームの種類
国民年金で入れる老人ホームの種類には、主に以下の7つがあります。それぞれの費用目安もまとめているので、参考にしてください。
種類 | 初期費用 | 月額費用 |
特別養護老人ホーム | 0円 | 5〜15万円 |
介護老人保健施設 | 0円 | 6〜17万円 |
軽費老人ホーム | 0〜30万円 | 6〜17万円 |
ケアハウス | 0〜40万円 | 6〜20万円 |
介護医療院 | 0円 | 6〜17万円 |
有料老人ホーム | 0〜数百万円 | 15〜25万円 |
サービス付き高齢者向け住宅 | 0〜25万円 | 10〜20万円 |
老人ホームには多くの種類があり、それぞれで特色や必要な費用が異なります。適切な施設を選ぶためにも、まずは違いの理解が重要です。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホーム(特養)とは、長期にわたる介護が必要な高齢者を支援する施設です。
特別養護老人ホームと介護老人施設は、根拠となる法律が違うため名称が異なるものの、同じ介護施設を意味します。
特養は日本全国に8,494施設あり(令和4年10月1日現在)、地域密着型・広域型・地域サポート型などのタイプが存在します。また、特養は原則要介護3以上で入居でき、食事の提供、入浴の介助、レクリエーションなどのサービスを受けられる施設です。
特養は公的施設であるため、月額費用がほかの施設と比べて安く設定されていることが多く、年金で入居できる場合もあります。
特別養護老人ホーム | 初期費用 | 0円 |
月額費用 | 5〜15万円 |
▼ 特別養護老人ホームの入居条件や費用の目安を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:特別養護老人ホーム(特養)と有料老人ホームの違いとは?特徴を比較
参考:厚生労働省『令和4年介護サービス施設・事業所調査の概況』
介護老人保健施設
介護老人保健施設(老健)とは、病気の治療後のリハビリテーションや介護を必要とする高齢者を対象にした施設です。
老健では、理学療法士や作業療法士によるリハビリテーションや看護師による医療管理などがおこなわれます。
老健の費用は、国民年金だけでも支払い可能な場合があります。
介護老人保健施設 | 初期費用 | 0円 |
月額費用 | 6〜17万円 |
ただし、老健は在宅復帰を目的とした施設であり、入所期間の目安は3〜6カ月程度です。老健は、医療と介護を組み合わせた支援を受けられる点が特徴で、一時的なサポートを必要とする方に適しています。
軽費老人ホーム
軽費老人ホームは、ある程度自立した生活が可能な高齢者が、住宅や家族などの事情によって生活支援を必要とする際に利用できる施設です。
軽費老人ホームは、サービス内容の違いからA型やB型といった種類に分けられます。
軽費老人ホームは主に生活支援や健康管理などの役割を担い、施設内には食堂や共同スペースでは、入居者同士の交流もあります。
軽費老人ホームは比較的自立度が高い方が利用する施設で、場合によっては国民年金での入居も可能です。
軽費老人ホーム | 初期費用 | 0〜30万円 |
月額費用 | 6〜17万円 |
ただし、施設によっては生活支援費や管理費などが追加でかかるケースもあるので、事前に確認しておく必要があります。
ケアハウス
ケアハウスとは、自立した生活を基本として、必要に応じて介護サービスを受けられる住宅型の施設です。
ケアハウスでは個々の自立を尊重しつつ、必要な介護サポートを受けられます。たとえば、日常生活の中で必要に応じた介助や食事の提供、共有スペースでの交流などが可能です。
国民年金だけでの入居が可能な施設も存在しますが、場合によっては別途費用が必要になることもあります。
ケアハウス | 初期費用 | 0〜40万円 |
月額費用 | 6〜20万円 |
なお、ケアハウスは、比較的自立度が高い方に適した選択肢となります。
介護医療院
介護医療院は、医療と介護の両方のケアが必要な高齢者を対象にした施設です。
介護医療院では、専門の医療スタッフと介護スタッフが協力して、利用者一人ひとりの健康管理や日常生活の支援を受けられます。具体的なサービス内容は、疾患の診断・治療や薬物療法などの医療サービス、入浴や食事の介助、身体介護などです。
介護医療院は、医療ニーズが高い方や継続的な治療が必要な方に適しており、国民年金を受給している方でも入所が可能です。
介護医療院 | 初期費用 | 0円 |
月額費用 | 6〜17万円 |
ただし、施設によっては追加の費用が発生する場合があるため、事前に確認しましょう。
有料老人ホーム
有料老人ホームは、プライベート性の高い住環境と充実したサービスを提供する施設です。
民間企業によって運営されており、入居者のニーズに応じたさまざまなサービスを提供しています。
有料老人ホームは、利用者の自立を重視したサービスが特徴で、レクリエーション活動や趣味の時間など、充実した日常を送れる点が特徴です。
一般的に費用は高めですが、多床型や郊外の施設では年金での入居が可能な場合もあります。
有料老人ホーム | 初期費用 | 0〜数百万円 |
月額費用 | 15〜25万円 |
初期費用や月額費用、オプションサービスの費用については、入居前に詳しく確認しましょう。
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、基本的に自立した生活ができる高齢者向けの賃貸住宅です。
必要に応じて介護サービスを受けられるほか、生活支援や安保確認といったサポートが受けられます。
サービス付き高齢者向け住宅は、比較的安価で提供されることが多く、国民年金のみでの入居が可能な場合もあります。
サービス付き高齢者向け住宅 | 初期費用 | 0〜25万円 |
月額費用 | 10〜20万円 |
ただし、施設によって費用に差があるため、予算や条件に合った施設選びが大切です。
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▼ サービス付き高齢者向け住宅について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:サービス付き高齢者向け住宅とは|メリット・デメリットから他施設との違いまで解説
国民年金のほかに老人ホームの自己負担額を減らす方法
国民年金を受給している高齢者やその家族が老人ホームへの入居を検討する際は、費用の負担を軽減するための支援制度を活用できます。
以下で、老人ホームの自己負担額を減らす方法について詳しく説明します。
介護保険制度の活用
介護保険制度とは、高齢者が必要とする介護サービスを受けられるよう支援する制度です。介護保険制度の利用によって、老人ホームへの入居を経済的にサポートしてもらえます。
たとえば、介護付き有料老人ホームで提供される食事や排泄介助などの介護サービスには介護保険が適用されます。ただし、介護保険サービスを利用するためには、要介護認定の申請が必要です。
介護保険は、介護付き有料老人ホームのほか、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設などの施設で利用できます。住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では適用されないものの、外部の介護サービスを利用する場合は介護保険の対象となります。
介護保険制度の活用によって、介護サービスの経済的負担を軽減できると、安心して老人ホームで生活を送れるようになります。
社会福祉法人等による負担軽減制度
社会福祉法人等による負担軽減制度は、主に低所得者の介護費用の負担軽減を目的とした制度です。
たとえば、特定施設でのサービス利用時に、利用者負担額が一定の割合で軽減されます。軽減される割合は「社会福祉法人等利用者負担軽減確認書」に基づいて計算されます。
社会福祉法人等による負担軽減制度は、特別養護老人ホームやショートステイ、通所介護(デイサービス)などの介護サービスに適用されるものの、行政に届け出ていない施設では適用されないため注意が必要です。また、申請に必要な書類や手続きは、利用する施設や市町村によって異なるため、事前に確認しましょう。
参考:埼玉県『社会福祉法人等による低所得者に対する利用者負担額軽減制度』
高額介護サービス費と合算療養費制度
高額介護サービス費とは、1カ月間にかかる介護サービスの自己負担額が一定の限度額を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。
高額介護サービス費は、市区町村から送られる「高額介護サービス費支給申請書」を使用して申請後、支給決定通知書が届いて指定の口座に返金されます。
一方、合算療養費制度は、医療サービスと介護保険サービスの自己負担額が一定の限度額を超えた場合に適用される制度です。合算期間は1年間で、同じ医療保険制度に加入している家族の分も合算できます。ただし、高額介護サービス費として既に支給された金額は差し引かれます。
利用方法や申請手続きの詳細については、国民健康保険または後期高齢者医療保険の方は市区町村の窓口へ、協会けんぽや健康保険組合などの方は職場へ相談しましょう。
▼ 高額介護サービス費の手続きについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:高額介護サービス費とは?基本や計算方法・手続きまでわかりやすく解説
生活保護の受給
生活保護制度は、所得が少なく生活に困窮している方を対象に、最低限度の生活を保障するための公的支援制度です。生活保護を受けることで、医療費や介護費用の自己負担が軽減されます。
国民年金だけで生活している場合でも、生活費や介護費用が支払えない場合には、生活保護を受けられる可能性があります。生活保護が認められた場合には、施設の入所費用や介護サービスの自己負担額の軽減が可能です。
ただし、生活保護の申請には一定の手続きが必要で、行政による審査があります。詳細な条件や申請方法については、お住まいの自治体に相談してください。
世帯の分離
世帯分離とは、親が子どもと一緒に住んでいる場合に、それぞれを別世帯として分けることで経済的な負担を軽減する方法です。たとえば、親が介護施設に入所する際に、親が独立した生活を送っているとみなされると、介護保険制度や福祉サービスの利用資格を得やすくなる場合があります。
世帯分離によって必要な支援を受けやすくなる一方で、税制上の取り決めが関わるケースもあるため、家族間でよく検討する必要があります。
世帯分離をする際は、住民票の移動を含め、手続きの流れを市区町村に確認するようにしてください。
資産の活用
自宅をはじめとする資産を所有している場合は、資産を活用して介護費用に充てることも可能です。
具体的には、以下のような方法が挙げられます。
- 不動産の売却
- リバースモーゲージの活用
- 不動産担保型生活資金
不動産の売却によってまとまった資金を得られると、老人ホームへの入所費用や生活費に充てられます。また、自宅を担保にして金融機関から融資を受けたり、専門の貸金業者から資金を借りる方法もあります。
ただし、不動産の売却には譲渡税や所得税が発生するため、税理士や行政書士などに相談しましょう。また、リバースモーゲージや不動産担保型生活資金の利用には借入金の返済や利息の支払い義務があるため、よく理解した上で適切な方法を選ぶことが大切です。
国民年金で入れる安い老人ホームを見つけるポイント
国民年金の受給額は決して多くないため、入居できる老人ホームを見つけるためには、費用面での工夫が必要です。
以下で、国民年金保険で入れる安い老人ホームを見つけるポイントを解説するので、ぜひ参考にしてください。
個室ではなく多床室を選ぶ
老人ホームの入居費用を抑えるためには、個室ではなく多床室を選ぶことがポイントです。
老人ホームには個室と多床室があります。個室はプライバシーが守られる一方で、入居費用が高額になる傾向です。そのため、多床室を条件に探したほうが、国民年金で入れる老人ホームを見つけやすいです。
多床室は孤独を感じにくく、社会的なつながりを保ちやすいメリットがある一方で、人によってはストレスを感じやすい可能性もあります。施設選びの際は、部屋の広さやスタッフのサポート体制などもあわせて確認しておくと安心です。
郊外のロケーションを選ぶ
国民年金で入れる老人ホームを見つけるためには、郊外にある施設を選ぶこともポイントです。
郊外は都市部と比べて土地や建物のコストが低いため、入居費用を比較的安く抑えられます。
自然豊かな環境や都市部の喧騒から離れて静かに過ごせる環境は、ストレス軽減にもつながります。
ただし、郊外にある老人ホームは、家族や知人が訪れるための交通アクセスが不便な場合もあります。また、医療面での不安を感じることがないよう、周辺の医療機関への距離なども事前に確認しておきましょう。
築古や改装物件を選ぶ
築年数が経過した施設や改装済みの施設を選ぶことで、入居費用を抑えられる場合もあります。新築の老人ホームや新しい設備を備えた施設は魅力的な一方で、入居費用は高く設定されているケースがほとんどです。
築年数が古い施設でも、リフォームや改装済みの施設であれば、安価ながらも高い居住性が期待できます。
ただし、バリアフリー対応が不十分な可能性もあるため、事前に施設の設備や管理体制をチェックするようにしてください。
▼ 老人ホームを探す前に確認しておきたいことについては、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:介護サービスや老人ホームを探すときに気をつけたいこと
国民年金で入れる老人ホームの種類【まとめ】
国民年金で入居可能な老人ホームの種類としては、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、軽費老人ホーム、ケアハウス、介護医療院といった選択肢があります。ただし、特養や老健などの公的施設は入所待ちが長くなる可能性があります。
そのため、早期の入所を希望している場合は、施設数や種類が豊富な有料老人ホームを検討してみましょう。
また、介護保険制度や社会福祉法人等の負担軽減制度、高額介護サービス費を活用して、老人ホーム入居時の経済的負担を軽減できる場合があります。介護を考える際には、資金計画が非常に重要です。自己負担を軽減するための制度をうまく活用しながら、国民年金で入れる老人ホームを選びましょう。
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国民年金で入れる老人ホームの検討中によくある質問
ここでは、国民年金を受給する高齢者やご家族が老人ホームを検討する際に、よくある質問をまとめました。
国民年金の支給額だけで老人ホームに入れる?
国民年金の受給額だけで老人ホームに入居できるかどうかは、施設によって異なります。
なぜなら、老人ホームの種類や提供されるサービスによって、必要な費用が大きく変わるからです。
たとえば、特別養護老人ホームをはじめとする公的施設では、入居費用が比較的低く抑えられており、国民年金のみでも入居可能なケースがあります。しかし、介護付き有料老人ホームなどの民間施設はより高額な料金が設定されている場合が多く、国民年金のみでは足りないケースも珍しくありません。そのため、老人ホーム選びは個別の状況に応じた検討が必要です。
老人ホームの種類によってサービスに差はある?
老人ホームの種類によって、提供されるサービスには差があります。各施設は運営方針や設備、対象とする利用者層に応じて、それぞれサービスを提供しています。
たとえば、介護付き有料老人ホームでは、24時間体制の介護サービスや医療サポートを受けられることが一般的です。一方で、住宅型有料老人ホームは基本的に生活支援サービスのみで、介護サービスを利用する際は外部の事業者との契約が必要です。
老人ホーム選びは、利用者の健康状態や必要なサービスに応じて慎重におこないましょう。また、検討中の施設に関しては、具体的なサービス内容を事前に確認してください。
入居時の初期費用はどの程度必要?
老人ホーム入居時の初期費用は、施設の種類やサービス内容によって大きく異なります。老人ホームによっては、入居一時金や保証金など、高額な初期費用が必要となる場合があります。
民間が運営する有料老人ホームでは、初期費用が数百〜数千万円に達する施設も存在する一方で、施設によっては初期費用がかからないケースも少なくありません。
また、特別養護老人ホームや軽費老人ホームなどの公的施設では、初期費用が低額あるいは不要の場合がほとんどです。ただし、入居には一定の要件を満たす必要があり、待機期間が長くなる可能性があります。入居時の初期費用に関する不明点は施設に直接問い合わせるか、地域のケアマネジャーに相談しましょう。
▼ 有料老人ホームに入居する際の初期費用については、以下で詳しく解説しています。
関連記事:有料老人ホーム入居の一時金(前払金・入居金・敷金)や月額費用、契約について
この記事の監修者
いいケアネット事務局
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