有料老人ホームを利用すると、月額費用に加え、どのくらい介護費用がかかるのか気になるものです。
介護費用は介護付き有料老人ホームや一部の特定施設入居者生活介護の指定を受けたサービス付き高齢者向け住宅では、ほぼ定額で介護サービスを利用できます。
一方で、住宅型有料老人ホームなどでは介護サービスを利用する度に料金が加算されます。そのため、1ヶ月どの程度費用がかかるか目処をつけづらいのです。
ここでは、有料老人ホームで介護サービスを利用するとどのくらいかかるのか、もし高額になった場合の軽減措置はあるのかなどを解説します。
介護サービスを利用するメリット
介護サービスを利用される方は、介護認定を受け介護保険を利用します。
介護保険給付分のサービスは、費用の1割分のみ(所得によっては最大3割負担)をご本人が負担することになります。
※自己負担額の割合は本人や世帯の所得に応じて決まり、一般的に所得が高い人ほど自己負担の割合は大きくなります。
介護サービスがもともと10割かかると考えると、あまりにも負担が大きいですね。体の状態によっては365日朝も夜も介護が必要になり、その費用と計算すると…。
ですが、1割負担で利用できるので利用者の負担を大幅に減らせます。
ホーム種別 | 介護サービスの種類 | 給付単位 |
---|---|---|
介護付有料老人ホーム | 特定施設入所者生活介護 | 1日 |
住宅型有料老人ホーム | 在宅介護サービス | 回数 |
サービス付き高齢者向け住宅 | 在宅介護サービス | 回数 |
グループホーム | 認知症対応型共同生活介護 | 1日 |
ここで、介護費用を詳しく知ろうとすると”単位”という聞き慣れない言葉が登場します。介護保険での単位とはサービス利用料を指し、1単位で10円という基準です。
例えば、ある介護サービスが67単位なら、67×10で670円となります。
ただし、住む地域や年度によりこの単位の算出基礎額が変動します。そのため、1単位およそ10円と覚えておくとよいでしょう。また介護報酬は年度によりサービスの詳細や要件が変わったり、新しく加算されるサービスもあります。
介護付有料老人ホームの場合
介護報酬は、下記のように1日単位ですので、短期の外泊や入院などの期間は除いて計算されます。
1日単位で計算するため、1ヶ月にどの程度介護費用がかかるか目処をつけやすい特徴があります。
特定施設入所者生活介護の介護報酬(1日当り)令和3年4月現在
要支援1 | 要支援2 | 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
保険給付報酬 | 1,820円 | 3,110円 | 5,380円 | 6,040円 | 6,740円 | 7,380円 | 8,070円 |
本人負担額の目安 | 182円 | 311円 | 538円 | 604円 | 674円 | 738円 | 807円 |
例)要介護2の場合、1日の負担額は604円です。30日利用すると、介護費用は604円×30日=18,120円となります。
住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅の場合
介護報酬は、普通の自宅での介護サービスと同じ1ヶ月単位となります。
また、区分支給限度額の対象ですので、限度内で介護サービスを利用した分の1割のみの負担となります。
※区分支給限度額とは
介護保険サービスを利用する際、要介護の区分ごとに1ヶ月に介護保険から給付される上限が設定されています。
介護サービスは1割負担で利用できますが、無制限に利用できるわけではありません。つまり、1ヶ月に1割負担で利用できる単位(上限額)が決められており、これを超えて介護サービスを利用すると10割負担となります。
在宅介護サービスの給付限度額(1ヶ月当り)令和3年4月現在
要支援1 | 要支援2 | 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
保険給付報酬 | 50,320円 | 105,310円 | 167,650円 | 197,050円 | 270,480円 | 309,380円 | 362,170円 |
本人負担額の目安 | 5,032円 | 10,531円 | 16,765円 | 19,705円 | 27,048円 | 30,938円 | 36,217円 |
要介護2の場合、1ヶ月の自己負担の上限は19,705円(1割負担の場合)です。これ以上利用すると、10割負担で利用することになります。
ちなみに、よく利用される在宅介護サービスには通所介護や訪問介護、福祉用具のレンタルなどがあります。
グループホームの場合
介護報酬は、下記のように1日単位ですので、短期の外泊や入院などの期間は除いて計算されます。
認知症対応型共同生活介護の介護報酬(1日当り)令和3年4月現在
要支援1 | 要支援2 | 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
保険給付報酬 | 利用 できません |
7,600円 | 7,640円 | 8,000円 | 8,230円 | 8,400円 | 8,580円 |
本人負担額の目安 | 760円 | 764円 | 800円 | 823円 | 840円 | 858円 |
要介護2の場合、1日の負担額は800円です。これを30日利用すると、介護費用は800円×30日=24,000円となります。
1日単位で介護費用の目安が出るので、1ヶ月にどのくらい介護費用が発生するか計算しやすいですね。
本人負担額の負担方法
負担方法には次の2つの方法があります。
法定代理受領 | 保険給付サービス提供時に、ご本人は全体の1割分の費用のみ支払います。残りの9割分は、事業者がご本人にかわり 市町村等に請求し、市町村等から支払いを受けます。 ※有料老人ホームでは、個々の入居者が「法定代理受領を選択して自分は1割分しか払わない」と同意された場合に「法定代理受領」を行うことができます。 |
---|---|
償還払い | 保険給付サービス提供時に、定められた利用料金の全額(10割)を事業者に支払います。 その時の領収書をお住まいの市町村等にご本人が送付して、9割分の返金(償還)を受け取ります。 |
有料老人ホームにおける「保険給付サービス」と「上乗せ・横出しサービス」
「特定施設」での介護は、介護保険の「保険給付サービス」の報酬の限度内であれば、利用者は原則1割の費用負担となります。
国が定めた基準に基づいて提供されるサービスの対価とも考えられます。
多くの有料老人ホームでは、介護保険の定めた以上の介護を提供しており、「上乗せ・横出しサービス」と呼ばれています。
この部分については、利用者に全額ご負担いただくことになり、提供に際して、ご本人の同意が必要です。
また、あらかじめどんな内容・考え方でいくらが必要であるかを運営規程や重要事項説明書で情報開示することとされています。
上乗せサービス | 国の基準以上の質や量の介護を提供している場合です。 例えば、指定基準では「要介護者3人に対して1人」とされる介護・看護職員が、それより手あつい体制となっている場合などが考えられます。(少なくとも2.5人に1人以上と決められています。) |
---|---|
横出しサービス | 提供する介護サービスの内容が、性質上介護保険給付とされないものです。 例えば、「食事の提供」などは、保険給付の対象となっていません。「おむつ代」や要介護認定で「自立」とされた場合のホーム独自の日常生活支援サービスもこれに含まれます。 |
限度額を超過したら
在宅サービスを利用する際、1日単位ではなく、利用した分だけ費用が発生します。
また、重要なのは介護サービスは1割負担で利用できますが、何百回も1割負担で利用できるわけではありません。1割負担で利用できる上限が設定されています。これを区分支給限度額と言います。
例えば、要介護3で1ヶ月の区分支給限度額が27,048単位だとすると、1単位10円計算で、1ヶ月270,480円(10割の額)かかります。これの1割負担は27,048円ですから、それ以上かかった金額は全額10割負担で介護サービスを利用します。
10割負担となると、かなり高額になりますから、1ヶ月の区分支給限度額内で介護サービスを利用すると良いでしょう。
一般的にはケアマネジャーが限度額を計算してケアプランを作成します。
超過する理由
厚労省の区分支給限度基準額についてという資料によると、負担限度額以上に介護サービスを利用するケースが存在します。
胃ろうの管理など医療的ケアや身体介護に比べ、掃除や洗濯など生活援助に利用されることが多くあります。
特に、利用者本人や家族から強い要望があったり、家族などでは介護をしきれないという理由で限度基準額を超えた利用があります。
区分支給限度額に含まれるサービス
区分支給限度額に含まれるサービスと含まれないサービスがあります。含まれるサービスには以下のようなものがあります。
- 訪問介護
- 訪問看護
- 通所介護
- 通所リハビリテーション
- 福祉用具貸与
- 定期巡回・随時対応サービス
- 夜間対応型訪問介護
- 認知症対応型通所介護 など
一方、区分支給限度額に含まれないサービスには、一般型特定施設入居者生活介護や介護老人福祉施設など24時間介護サービスを利用するような施設は含まれません。
自己負担が高額になったら
想定外に介護費用が高額になった場合、支払いが難しくなることがあります。
しかし、介護費用が高額になってもある程度サポートしてくれる制度があります。それらの制度を使うことで、ある程度介護費用の負担を減らすことができます。
ここでは介護保険の負担を軽減する制度や、名称がよく似ているため混同されやすい制度も併せて解説します。
高額医療・高額介護合算療養費制度 令和2年8月現在
医療保険と介護保険の自己負担額の合計が限度額を超えると、超過分が払い戻される高額医療・高額介護合算療養費制度があります。
70歳未満の人がいる世帯の場合
所得区分 | 限度額 |
---|---|
基礎控除後の所得が901万円超 | 212万円 |
基礎控除後の所得が600万円超~901万円以下 | 141万円 |
基礎控除後の所得が210万円超~600万円以下 | 67万円 |
基礎控除後の所得が210万円以下 | 60万円 |
市町村民税非課税 | 34万円 |
※医療保険と介護保険の両方に利用者負担がある世帯が対象です。
70歳以上の人がいる世帯の場合
所得区分 | 限度額 |
---|---|
課税所得690万円以上 | 212万円 |
課税所得380万円以上 | 141万円 |
課税所得145万円以上 | 67万円 |
課税所得145万円未満 | 56万円 |
市町村民税非課税 | 31万円 |
市町村民税非課税(所得が一定以下) | 19万円 |
※医療保険と介護保険の両方に利用者負担がある世帯が対象です。
例えば、妻が介護施設に入所しており、夫が入院して年間に限度額以上支払うと、払い戻してもらえる可能性があります。
また、医療保険と介護保険にかかった金額を集計する期間は毎年8月~翌年7月の1年間です。限度額は収入により分けられ、1人ではなく世帯でいくらかかったか計算する点に注意が必要です。
高額介護(介護予防)サービス費
介護サービスは原則1割負担で利用でき、1ヶ月で自己負担する限度額が所得に応じて決められています。
しかし、その限度額を超えた分は高額介護サービス費として払い戻しを受けることができます。
区分 | 限度額 | |
---|---|---|
生活保護受給者 | 個人 | 15,000円 |
世帯全員が住民税非課税で、前年の課税年金収入額とその他の合計所得金額が80万円以下 | 個人 | 15,000円 |
世帯全員が住民税の非課税世帯 | 世帯 | 24,600円 |
住民税課税され、課税所得380万円未満 | 世帯 | 44,400円 |
課税所得が380万円~690万円未満 | 世帯 | 93,000円 |
課税所得が690万円以上 | 世帯 | 140,100円 |
※2021年8月現在
例えば、非課税世帯であれば1ヶ月の限度額が24,600円で、それを超えて介護サービスを利用した場合は超過分が払い戻しされます。
ただし、日常の生活費や施設の食費、福祉用具購入費の自己負担分など、対象とならない費用もあります。
また、高額介護サービス費は自動で払い戻されるのではなく、市区町村に申請する必要があります。
介護保険負担限度額認定証
有料老人ホームではありませんが、特別養護老人ホームやショートステイなど介護保険施設を利用する際、非課税世帯の方は負担限度額内で利用できます。
限度額は4段階に分かれており、例えば住民税非課税世帯の老齢福祉年金受給者で夫婦の預貯金資産が2,000万円以下の場合、居住費の1日の限度額が0円となります。
自己負担額には介護サービスの1割~3割、日常生活費、食費、居住費が含まれます。
高額療養費・高齢受給者証
入院時など医療機関に限度額適用認定証を提示すると、医療機関に支払う費用が決められた自己負担限度額に収まります。これは高額な療養費の負担を軽減する制度です。
限度額適用認定証は申請してもらうものですが、申請前で高額な医療費の請求が来た場合は医療機関に支払うと、診療付きから3ヶ月後に限度額の超過分が支給されます。
介護保険ではなく、医療機関で使える制度です。医療費が高額になりそうなときに備え、限度額適用認定証を事前に作成しておくと安心です。
また、後期高齢者に該当しない70歳~74歳の方は、高齢受給者証を提示すると窓口負担が2割~3割になります。
ただし、非課税世帯の方は限度額適用認定証が交付されますので、そちらを窓口に提示します。
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