高齢になるにつれ、だんだんと咀しゃくが難しくなり、「食事を楽しめない」「美味しく感じられない」「食事がストレス」といった悩みを抱える方は増えるものです。
食べ物を噛む力は加齢とともに低下し、固いものや噛み切りにくいものが食べにくくなります。食事内容によっては、高齢者に心身への負担をかけることになってしまうため、食事は十分に配慮してあげなければなりません。
そこで、今回は咀しゃくしやすい食事を実現するための「考え方」や「基本的な作り方」などについて解説します。
そもそも咀しゃくとは
そもそも「咀しゃく」とは何?といった疑問を抱えている方に向けて、簡単に説明します。
咀しゃくとは、一言でいうと「噛む力」のことです。固いものを噛んで小さくしたり、噛みちぎって飲み込みやすい大きさにするなどの動作を咀しゃくといいます。
とはいえ、ただ噛めばいいというわけではなく、舌で食べ物を動かして噛みやすい位置に持っていったり、何度も繰り返し噛み続ける必要があります。
咀しゃくは、食べ物を口に入れてから飲み込むまで、食べ物を飲み込みやすい形状にする重要な工程でありながら複雑な工程です。
高齢になると、この咀しゃくが弱くなり、若い人と同じ食事では食べにくくなってしまいます。
咀しゃくしやすい食事を作るポイント
高齢者が咀しゃくしやすいよう、食事内容には十分に配慮してあげることが大切です。
ここからは、基本的な作り方のポイントについて解説します。
野菜は「柔らかい部分」を使用する
野菜を使用するときには、なるべく「柔らかい部分」を選んで調理しましょう。
例えば、ほうれん草は、根本よりも葉先のほうが柔らかいため高齢者でも咀しゃくしやすいですし、たけのこも同様に穂先のほうが柔らかいものです。
食材によっては根本のほうが栄養が豊富といった場合もありますが、栄養面は他でもカバーできるため、食事内容はなるべく「食べやすさ」を重視しましょう。
繊維の多い食材は包丁で「繊維を断ち切る」イメージで
繊維の多い食材を使用する場合は、繊維を断ち切るイメージで包丁を入れてください。
例えば、ゴボウやにんじんなどのような繊維の多い食べ物は、固いため咀しゃくしにくいといえます。
繊維の多い食材に関しては、繊維に対して垂直に包丁を入れるようなイメージで行いましょう。
また、「切り込みを入れる」「隠し包丁を入れる」などで、より咀しゃくしやすい料理になります。
細かすぎる切り方はNG
良かれと思って細かく切ってしまうのはNGです。
食材が細かくなると、口に入れたときにばらけてしまい、なかなか思うように噛むことができません。特に、舌を動かしにくい方の場合は、細かい食べ物がストレスとなってしまうことがあるため注意しましょう。
調理上、どうしても細かくしなければならない場合は「片栗粉」「とろみ剤」などを使用して、口の中でまとまりやすくすると、咀しゃくしやすくなるでしょう。
咀しゃくしやすい食事を作るときの「考え方」
咀しゃくしやすい食事を作るのって、手間も時間もかかりそうで、難しそうに感じますよね。
しかし、意外にも皆さんが思っているほど食事作りは複雑ではありません。
必要以上に手間をかけなくてOK
咀しゃくしやすい食事を作るにあたり、必要以上に手間をかけることはありません。
介護食を作る方の中には、家族の食事と介護食を別メニューで作っている方がいらっしゃいますが、別メニューにすると手間も時間もかかってしまいます。
家族と同じ食事メニューに、介護食だけひと手間加える…といった程度でも問題ないのです。
「介護食だけすりつぶす」「介護食だけとろみをつける」など、+アルファの手間だけでも咀しゃくしやすい食事になることが少なくありません。
本人に「食べさせてあげたい」をメインで考える
食事を作るうえで気になるのは「栄養」「食べやすさ」「本人の好み」など様々ですが、まずは自分が相手に対して「何を食べさせてあげたいか」をメインで考えましょう。
例えば、「本人が好きなカレーを食べさせてあげたいけれど、身体への負担や食べにくさが気になる…」という場合は、市販の「介護食用カレー」を活用してみたり、介護食だけ食材の切り方を変えるもしくは、食べる直前に具を軽くつぶしておくといったひと手間を加えれば、食べさせてあげたかった「カレー」をテーブルに並べることができます。
既製品の頻度が高いなら「ひと手間」加えて味に変化を
市販の介護食の使用頻度が高い場合は、「ひと手間」加えて味に変化をつけましょう。
使用する介護食によっては、味に飽きてしまう可能性があり、本人の食欲低下にもつながります。
「トッピング」「ソース」「隠し味」「盛り付け」など、ひと手間加えて味わいに変化を持たせてあげてください。
おわりに
咀しゃくしにくい高齢者のために食事を作るのは一見難しそうですよね。
しかし、意外にも複雑な工程はほとんどなく、他の家族とほぼ同様の食事内容にできますし、市販品を活用して手間を軽減することもできます。
現在、介護食作りに悩んでいる方は、本ページを参考にしながら、食事作りに取り掛かってみてはいかがでしょうか。
この記事の監修者
いいケアネット事務局
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