介護をしている高齢者が急に食べられなくなり、食欲を回復する方法を調べていませんか。
食事ができなくなると栄養が行き届かなくなり、命にかかわる可能性も考えられるため、早めに対策をする必要があります。
高齢者の食欲を回復させるには、食べやすさを重視した食材を選ぶ、調理方法を工夫するなどの対策があげられます。場合によっては補助食品やサプリを活用しても良いでしょう。
本記事では、高齢者の食欲回復方法や、食べられなくなる原因、医療的ケアについて解説します。
記事を読めば、あなたの大切な家族がまた食事を楽しめるようになるための対策法が見つかるでしょう。
高齢者が食べられないときに食欲を回復させる方法
高齢者が食べられないときに食欲を回復させる方法として、次の3つを意識してみましょう。
- 食事の食べやすさを改善する
- 補助食品とサプリを利用する
- 食事環境を工夫する
本章が高齢者が食べられない時の参考資料になれば幸いです。
食事の食べやすさを改善する
食事を食べやすくするためには、食事形態の工夫が重要です。次のような改善策を取り入れることで、徐々に食欲を回復させます。
食事形態の工夫の種類 | 詳細 |
喉越しの良い食事を積極的に取り入れる | <おすすめの食事>
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飲み込みやすさの工夫をする |
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盛り付けの工夫 |
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一度にすべてを実施するのではなく、本人の状態に合わせて無理のない範囲で、できることから少しずつ取り入れていくことが重要です。
また、食べる機能に応じて適切な食事形態を選択することで、より効果的な食欲回復が期待できます。介護食の作り方は以下の記事も参考にしてください。
関連記事:咀しゃくしやすい介護食を作るには?考え方のポイントと基本の作り方
補助食品とサプリを利用する
食事量が十分に確保できない場合は、栄養補助食品の活用が有効です。
市販のエネルギー補給ゼリーやたんぱく質補給飲料などを、食事の間に摂取すると、低栄養の予防に期待できます。
とくに水分摂取が難しい場合は、とろみ剤を使用したり、水分補給用のゼリー製品を利用したりすると、必要な水分量を確保できます。
ただし、補助食品の選択は、医師や管理栄養士に相談しながら進めましょう。
食事環境を工夫する
食事環境を整えることも効果的です。
できるだけ誰かと一緒に食事をする機会を作り、テレビはつけず、落ち着いた音楽を流すなど、食事に集中できる環境づくりが大切です。
食事の時間は余裕を持って設定し、ゆっくりと食べられる雰囲気を作ることで、自然と食欲が湧いてきます。
料理を作る音や匂いを感じてもらうことで食欲を刺激します。
可能であれば、デイサービスや地域の食事サービスを利用して、他の人との交流を楽しみながら食事をする機会を作ると良いでしょう。
高齢者が食べられないときの生活習慣の見直しポイント【食欲回復】
ある程度、食事が摂れるようになってきたら、食欲低下を再発させないためにも、次のような生活習慣の見直しをおこなっていきましょう。
- 適度な運動で代謝を高める
- 趣味や友人との交流を持つ
- 規則正しい生活リズムを確立する
以下で、それぞれ解説します。
適度な運動で代謝を高める
適度な運動は、高齢者の食欲を向上させるポイントです。運動量が不足すると、消費されるエネルギー量が減ってしまい、食欲の低下に直結します。
たとえば、簡単なストレッチや軽い散歩を日課にするだけでも、体の代謝機能が活発になり、食べ物への欲求が自然と高まります。
高齢者にとって運動は負担になると考えられがちですが、できる範囲で体を動かし、適度な活動量を見つけることが大切です。
趣味や友人との交流をもつ
趣味や友人との交流は、高齢者の食欲増進に重要です。社会的な交流が、身体的、精神的にも健康につながるからです。
食事の時間を他の人と共有すると、一人暮らしや環境変化による孤独感やストレスが軽減されます。
また、他者との交流や笑顔は、体内のホルモンバランスを整え、自然と活動量も増えることで空腹感を感じやすくなります。
一人で食事をすることが多い場合は、デイサービスでの食事や、家族との定期的な食事会に参加しましょう。
趣味や友人、家族とのコミュニケーションは、食欲を含む高齢者の生活全般の質を向上させます。
規則正しい生活リズムを確立する
規則正しい生活リズムを確立することも、高齢者の食欲回復に有効です。生活リズムを整えることで活動量が増えやすくなり、食欲の向上につながります。
食事は朝昼晩、3食決まった時間に食べましょう。
毎日決まった時間に起床し、食事を摂り、適度に運動すると、体内リズムが整います。
就寝時間も一定にすると、質の良い睡眠が取れ、朝から元気な1日を過ごせます。とくに食事の時間は、ゆとりを持って設定し、急がずにゆっくりと食事を楽しめる環境を作ることが重要です。
高齢者が食べられない原因
高齢者が食べられない主な原因として、主に次の4つがあげられます。
- 嚥下障がいと咀嚼困難
- 味覚・嗅覚・視覚の衰え
- 精神的ストレスと孤独感
- 活動量の低下
以下で、それぞれ解説します。
嚥下障がいと咀嚼困難
高齢者が食事を食べられない原因の一つが、飲み込む(嚥下:えんげ)力や噛む(咀嚼:そしゃく)力の低下です。
これらは、加齢に伴う歯の喪失や口腔内の筋力低下によって起こります。
たとえば、ごはん粒が喉に詰まりやすく感じたり、水を飲む際にむせやすくなったりします。その結果、食事の不安感が生まれ、食事量が減少し、低栄養状態に陥るリスクがあるのです。
改善する方法は、食材を細かく刻んだり、とろみをつけたりするなど食事形態の工夫を行うことです。また、茶碗蒸しやゼリーなど、飲み込みやすい食べ物を取り入れることで、食事を回復させる可能性があります。
飲み込む力が低下する「嚥下障害」の詳細や、嚥下訓練の1つである「パタカラ体操」については以下の記事もご覧ください。
関連記事:嚥下(えんげ)障害とは?具体的な症状や原因、対処法について
関連記事:嚥下訓練のパタカラ体操とは?効果や目的・具体的なやり方を解説
味覚・嗅覚・視覚の衰え
味や香りを感じにくくなることも、高齢者が食べられなくなる要因です。高齢者は舌にある味を感じる細胞の数が減少し、味覚が鈍くなるとともに、嗅覚も衰えることで、食べ物の風味を感じられなくなります。視力の低下や白内障による見え方の変化は、食べ物の見た目がわかりづらくなり、食事の満足感を低下させ、食欲不振を引き起こします。
食欲を回復させるには、だしの風味を効かせたり、食材本来の甘みや旨味を活かした調理を心がけましょう。また、色彩豊かな盛り付けや、小分けにして一口大にするなど、視覚的な工夫も食欲回復に効果的です。適度な香辛料を使用すると、食欲の回復につながります。
精神的ストレスと孤独感
高齢者が食べられない原因の一つに精神的なストレスや孤独感があります。年齢を重ねるにつれて、身近な人との死別や環境の変化、一人暮らしで感じる孤独感などが、胃腸の働きにも悪影響を及ぼし、食欲を減退させてしまいます。
親しい友人との死別や、長年連れ添った配偶者を亡くした後、食事の時間が一番孤独を感じやすいときです。また、入院や施設入所といった大きな生活環境の変化により、食べることへの興味が失われるケースもあります。
食欲不振の原因は、心の状態にも深く関わっています。可能な限り誰かと一緒に食事をする機会を作ることが大切です。デイサービスでの食事や、家族との定期的な食事会を設けることで、食事を楽しむ気持ちを取り戻せるでしょう。
活動量の低下
身体活動の減少は、高齢者が食べられない原因の一つです。
日常的な活動量が減ると、空腹感を感じにくくなり、食欲が低下します。運動不足は筋力低下や消化機能の低下を招き、食欲不振をさらに引き起こす悪循環を生み出します。
改善するには、散歩や軽い体操など、無理のない範囲で運動を取り入れることが効果的です。少しずつ活動量を増やすことで、自然と食欲が回復してきます。
また、食事の時間を規則正しく設定し、生活リズムを整えることで、高齢者の食欲は徐々に回復していきます。
ただし、急激な改善を求めず、本人のペースに合わせて少しずつ進めていくことが大切です。状態が改善しない場合は、医療専門家に相談をオススメします。
どうしても高齢者が食べられない場合の対処法【医療的ケア】
高齢者の食欲回復方法を試しても食べられない状態が改善しない場合、医療的ケアが必要になる可能性があります。
医療機関を受診する
高齢者の食欲不振にはさまざまな原因があり、病気が影響していることも少なくありません。高齢者が食べられない状態が長く続くようなら、医療機関での受診を検討しましょう。
胃炎や消化管の問題が原因で食欲が落ちている場合、適切な治療によって症状が改善されることがあります。また、精神科や心療内科の専門医の診察を受けることで、精神面による食欲不振の原因がわかる可能性もあるでしょう。
食べられない状態が長期間に及んだ場合は、その背景に病気が関連している可能性があることを念頭に置いて、早めに医療機関を受診することが大切です。
適切な医療のサポートを受けることで、食欲不振の原因に対処し、健康的な日常生活を取り戻す手助けとなるでしょう。
専門家による日常的な栄養管理〜施設入所の重要性〜
自宅での継続的な医療的ケアや栄養管理は、家族にとって大きな負担となります。少しでも負担を感じたら、無理をせず早めに介護施設への入所を検討しましょう。
介護施設では、適切な食形態と栄養バランスの取れた食事の提供、定期的な健康チェックなど、介護施設では専門のスタッフが24時間体制で支援しています。
施設入所により、高齢者本人の栄養状態の改善はもちろん、家族も精神的・時間的に余裕を持てるようになるでしょう。施設へ入所させることに罪悪感を抱くかもしれませんが、家族に大きな負担がかかる状態を長く続けるべきではありません。
施設入所は大切な家族の健康や幸せのために、最適な選択肢となる可能性があります。
まとめ|高齢者の食欲が回復しないときは専門家への相談も検討しよう
高齢者が食べられないとき食欲を回復する方法としては、まず食事の食べやすさを改善してみましょう。どうしても食べられない場合は、補助食品とサプリを活用したり、食事環境を工夫したりするのも有効です。
また、生活習慣の見直しも大切です。適度な運動、他者との交流、規則正しい生活は、食欲回復だけでなく健康的な生活に欠かせません。
食べられない状態が続くときは、医療機関を受診し、専門家に相談しましょう。
継続的な医療的ケアや食事管理が負担に感じるときは施設への入所も視野に入れたほうが良いかもしれません。
大阪を中心に、多数の高齢者向けの介護施設の情報を掲載する「いいケアネット」では、老人ホームに関する疑問やそれにまつわる情報を「いいケアジャーナル」で随時更新中!
高齢者が食べられないときの回復方法についてよくある質問
高齢者の食欲がないときの栄養補給はどうしたらいい?
やわらかい蒸し物や喉越しの良い麺類、ゼリーなど飲み込みやすい食事を取り入れてみましょう。
汁物・スープは、とろみ剤を使って飲み込みやすくするのもおすすめです。
もし自分で調理するのが難しい場合は、補助食品やレトルト、サプリなどを活用して栄養補給をする選択肢もあります。
高齢者が食欲不振で寝てばかりになる原因は?
高齢者が食欲不振で寝てばかりになるのは、以下の原因が考えられます。
- 老衰
- 持病や感覚の衰えなど疾患によるもの
- 薬の副作用 など
食べられない状態が続くと栄養失調や脱水状態になり、寝てばかりになるケースもあります。
食事方法や環境を見直し、少しずつでも食べられるよう工夫してみましょう。

この記事の監修者
いいケアネット事務局
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