高齢者の肺炎の特徴は、一般的な肺炎よりも初期症状に気づきにくい傾向があります。
しかし、介護と仕事を両立している家庭ではとくに「不在にしているタイミングで急変する事態は避けたい」と考える方もいるでしょう。
そこで本記事では、高齢者の肺炎の特徴を紹介し、早期の発見と治療につなげられるよう解説していきます。
高齢者の肺炎の特徴に気づかず、終末期症状になった場合のリスクや急変時の対応、入院期間、予防法などを網羅的にお伝えします。
勘違いされやすい風邪との違いを含めて解説していくので、ぜひ参考にしてください。
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高齢者の肺炎は重大な病気の1つ
高齢者にとって肺炎は、風邪とは異なり軽視できない重大な病気です。
高齢者の免疫力は若い頃に比べて低く、感染症に対する抵抗力が弱まっているため、通常ならば軽い風邪で済むような病原菌にも感染しやすい傾向です。
実際、厚生労働省が2023年に死亡した方の死因を調査した結果、62.5%の死亡率(※)で肺炎が理由で亡くなっているのがわかっています。
※死亡率:人口10万人対で表した率
高齢者が肺炎にかかると、呼吸困難や体力の低下を招き、日常生活の質が大きく損なわれる可能性があります。
高齢者の肺炎の特徴は、症状が軽微に現れるケースも多く、家族や周囲の方が注意深く観察し、少しでも異変を感じたら早めに医療機関を受診しましょう。
参考:厚生労働省「令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概況 第6表 性別にみた死因順位(第10位まで)別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合」
関連記事:老人ホームにおける誤嚥性肺炎の予防対策|主な原因や現場での課題も解説
そもそも肺炎とは?風邪との違いは?
肺炎とは細菌やウイルスに感染により、肺の中を通る気管支のさらに先にある肺胞が炎症を起こす病気です。
症状は風邪に似ていますが呼吸困難や入院が必要になる程重篤化するケースもあるため注意しましょう。
なお、肺炎と風邪の大まかな違いは以下のとおりです。
項目 | 肺炎 | 風邪 |
---|---|---|
原因 | ウイルス、細菌、真菌などの微生物感染 | ウイルス感染 |
影響部位 | 下気道(肺、主に肺胞) | 上気道(鼻や喉) |
主な症状 | 高熱、激しい咳、痰、呼吸困難、胸の痛み | 軽度の咳、鼻水、喉の痛み、くしゃみ |
治療期間 | 治療が遅れると生命の危険 | 通常数日から1週間 |
ここからは、上記を踏まえ肺炎の原因と症状を深掘りして見ていきましょう。
肺炎の原因
肺炎の原因は多くの場合、細菌やウイルス、真菌などの病原微生物が肺に感染して発生します。
肺炎球菌やインフルエンザ菌などが一般的な肺炎の原因ですが、高齢者においては免疫機能の低下が主な原因です。
また、食べ物や飲み物が誤って気道に入り込む誤嚥性肺炎の発症リスクも高まるのが、高齢者の肺炎の特徴です。
とくに換気の悪い場所や人が多く集まる場所では、病原体が広まりやすく、噛む力が弱まった結果から栄養不足につながるリスクもあります。
肺炎の症状
肺炎の症状は主に咳、痰、息切れ、微熱が続く、からだがだるい、呼吸時に「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった音がするなどの症状があります。
しかし高齢者の肺炎の特徴として、肺炎の症状が確認しにくい場合があり、家族が気づかずに症状が悪化する点には最善の注意が必要です。
高齢者の肺炎は、ぼんやりしたり混乱したりする症状が見られるケースもあるため、基礎疾患のある高齢者はとくに日頃の健康観察が重要です。
高齢者の肺炎の特徴
高齢者の肺炎の特徴は、一般的な風邪や肺炎とは症状と異なり、発熱が目立たなかったり微熱のみだったりします。
高齢者は免疫機能が低下しているため、以下のような特徴が見られます。
- 熱が出にくい
- 食べる量が普段より少ない
- 咳や痰が出にくい
- 進行が早い
- 呼吸の回数が増える
高齢者の肺炎の特徴を把握し、早期の発見と治療ができるよう順番に解説していくので、ぜひ参考にしてください。
熱が出にくい
高齢者の肺炎の特徴として、肺炎の症状である高熱が発生しにくく、微熱が続く傾向にあります。
健康な方が肺炎に感染した場合、体内に侵入した細菌などの異物を排除するために熱を出します。
しかし高齢者は免疫機能が低下しており、異物を排除する力が弱くなっているのです。
高齢者が肺炎に感染していても熱が上がりにくく、感染に気づかないケースがある点を理解しておきましょう。
食べる量が普段より少ない
高齢者の肺炎の特徴には、食欲の低下も挙げられます。
通常、健康な状態であれば食事は体力を維持するために重要な役割を果たしますが、肺炎を患うと普段のように食べられなくなるケースがあります。
食事量の減少は、感染によって体力が消耗され、食欲が低下するのが原因です。
高齢者はもともとエネルギーの消費が少ないため、食事量の減少が著しくなると、栄養不足に陥りやすくなります。
さらに、咽喉の痛みや飲み込みにくさが加わると、食事が億劫になる高齢者もいます。
つまり高齢者の肺炎の特徴を把握するには、食事量の変化にも注意を払うのが重要なのです。
咳や痰が出にくい
高齢者の肺炎の特徴には、咳や痰の出にくさも症状として見られます。
肺炎は気道に炎症が起こるため、痰や咳が自然に発生しやすくなりますが、高齢者の場合、免疫機能の衰えによって炎症反応が弱まるのが原因です。
高齢者は肺に異物が溜まっても排出する機能が十分に働かず、症状が進行しやすくなります。
咳や痰が出にくいと家族からすると、肺炎の発見が遅れ、重症化するリスクが高まるため注意が必要です。
家族や介護者は、咳や痰の有無だけで判断せず、ほかの症状や体調変化にも注意を払うのが重要です。
進行が早い
高齢者の肺炎の特徴として、症状の進行が早い特徴もあります。
高齢者は免疫力が低下しているため、感染症に対して抵抗力が弱く、肺炎の症状が現れてから悪化するまでの時間が短いのが特徴です。
高齢者の肺炎の特徴を把握できていないと、症状が軽度であると見過ごされがちで、発見したときには病状が進行しているケースも珍しくありません。
たとえば、風邪のような軽い咳や倦怠感が数日続いているだけでも、実は肺炎が急速に進行している可能性があります。
とくに注意すべきは、初期症状がはっきりと現れない場合が多い点です。
熱が出にくく、咳や痰が目立たないため、周囲の方も異変に気づきにくいのが実情です。
高齢者の肺炎の特徴を把握するためにも、少しでも普段と違う様子があれば、早めに医療機関に相談するのをおすすめします。
呼吸の回数が増える
高齢者の肺炎の特徴としては、呼吸の回数が増えるのも重要な症状の1つです。
肺炎になると体内の酸素需要が増加し呼吸数が増える一方で、高齢者は呼吸筋の働きが低下しているため、酸素を効率よく取り込むのが難しくなります。
呼吸数の増加は、肺炎の診断において重要な指標となり、発熱や咳が目立たない高齢者の肺炎でも、呼吸数の増加は見逃せないサインになるのです。
とくに呼吸困難や浅い呼吸、速い呼吸が続く場合は、医療機関での早急な診察が必要です。
介護者や家族は、呼吸の変化に注意を払い、定期的に呼吸数を確認するとともに、急な変化があった場合には速やかに医療機関の受診をおすすめします。
なお、大阪を中心に多数の高齢者向けの介護施設の情報を掲載する「いいケアネット」では、老人ホームに関する疑問やそれにまつわる情報を「いいケアジャーナル」で随時更新中です。
症状別で見る高齢者の肺炎の特徴
高齢者の肺炎の特徴として、一般的な肺炎の初期症状が現れにくく、発見が遅れてしまうリスクがあります。
ここからは高齢者の肺炎の特徴を症状別で解説するために、初期症状と終末期症状に分けて解説していきます。
肺炎の症状が急変した場合の対応と入院期間も解説していくので、ぜひ参考にしてください。
初期症状
高齢者の肺炎の初期症状は、若年層に比べて明確に現れにくい傾向があります。
初期段階では、疲労感や倦怠感が増し、普段よりも活動意欲が減退します。
また、食欲不振や軽い頭痛、微熱が見られる場合もありますが、風邪や体調不良と区別がつきにくいため注意が必要です。
とくに高齢者の肺炎の特徴として、熱の出にくさもあるため、微熱や体温が正常でも油断せず、ほかの症状とあわせて観察するのが重要です。
さらに、階段の登り降りでつらくなったり少しの運動で疲れやすかったりする場合も肺炎の初期症状が現れている可能性があります。
初期症状が軽微であるため見逃される場合が多く、進行してからの重篤化を防ぐためにも、家族や介護者は注意深く症状を観察しておきましょう。
終末期症状
高齢者の肺炎が進行し、終末期に差し掛かると、いくつかの特徴的な症状が現れます。
高齢者の肺炎の特徴を把握せず、終末期症状へと進行しないよう、以下の症状が見られた際は速やかに医療機関での受診をおすすめします。
症状 | 説明 |
---|---|
全身の衰弱・体力低下 | 食事がほとんど摂れなくなり、水分補給も困難になる |
意識レベルの低下 | 反応が鈍くなったり、昏睡状態に陥ったりする場合がある |
呼吸困難 | 呼吸が浅く速くなり、酸素の取り込み効率が低下する |
肺の機能不全 | 痰の排出が困難になり、呼吸が乱れ、雑音が生じる |
急変した場合の対応と入院期間
高齢者の肺炎は急変しやすく、対応が遅れると命にかかわる可能性があります。
急変した場合、以下の流れで治療するケースが大半です。
- 医療機関へ連絡し、緊急性を判断してもらう
- 症状が急激に悪化した場合、救急車の手配を検討する
- 速やかに病院へ搬送される
- 酸素療法や抗生物質の投与を受ける
- 重症化した場合、集中治療室での管理してもらう
なお、高齢者の肺炎の入院期間は状態や重症度によって異なりますが、65歳以上で41.7日、75歳以上で47.6日が平均在院日数です。
また、入院後のリハビリも重要で、退院後の生活に向けて体力の回復を図る必要があります。
肺炎の急変は予測が難しいため、日頃から高齢者の体調変化を注意深く見守り、早期に対処するのが大切です。
参考:厚生統計協会「肺炎で入院した高齢者の退院支援のための長期入院リスク要因スクリーニング票の開発」
関連記事:高齢者がかかりつけ医をもつと安心な理由|作る際の選び方のポイント
見逃されやすい高齢者の肺炎の種類一覧
高齢者の肺炎の特徴として、初期症状を見逃しにくい傾向にあるだけでなく、肺炎の種類によって異なる症状にも注目する必要があります。
一例として高齢者の肺炎の種類を表でまとめたので、早期発見につながるよう、ぜひ参考にしてください。
肺炎の種類 | 原因 | 症状 | 治療法 |
---|---|---|---|
ウイルス性肺炎 | ウイルス(インフルエンザウイルス、RSウイルスなど) | 咳、呼吸困難、皮疹、中枢神経障害 | 原因ウイルスに対する治療薬 |
細菌性肺炎 | 細菌 | 発熱、咳、膿性の痰、胸痛 | 通院または入院治療 |
過敏性肺炎 | アレルギー性(有機物の粉塵、化学物質) | 乾いた咳、息切れ、呼吸困難、発熱 | アレルギー物質から遠ざかる |
間質性肺炎 | 原因不明 | 乾いた咳、息苦しさ、呼吸不全 | 薬物治療、酸素療法 |
誤嚥性肺炎 | 誤嚥による細菌感染 | 風邪のような症状、激しい咳、黄色いたん | 抗菌薬による薬物療法 |
高齢者の肺炎を早期発見するためのチェック項目
高齢者の肺炎の特徴は、初期症状はとくに早期発見が難しく、重篤化のリスクを高めてしまう点にあります。
高齢者の肺炎を速やかに発見するために、以下の項目を注意深く観察してみましょう。
- 浅く速い呼吸を繰り返していないか
- 疲れやすく動くのを嫌がっていないか
- 著しく食事量が減っていないか
- 咳や痰が出にくくないか
- 微熱や寒気が続いていないか
- 浅い眠り、過度の眠気、軽い混乱が発生していないか
上記の項目を日頃からチェックしておくと、高齢者の肺炎の特徴を把握しやすくなります。
高齢者の肺炎を予防する方法
高齢者の肺炎を予防するには、以下の方法を日頃から取り入れるのがおすすめです。
- こまめな手洗いうがい
- 栄養バランスの良い食事の提供
- 適度な運動
高齢者が肺炎の初期症状を発見する以前に、予防による対策を講じるためにも、ぜひ参考にしてください。
こまめな手洗いうがい
高齢者の肺炎を予防するには、日頃から手洗いうがいをこまめにするのがおすすめです。
手洗いは帰宅後やトイレ後など、習慣になっている方が多くても、うがいも習慣になっている方は少ないでしょう。
うがいは口腔内を清潔に保つ効果があるため、帰宅後だけでなく毎食後や寝る前にも実施するのをおすすめします。
高齢者はとくに、唾液の分泌量が低下するため、口腔内の細菌が繁殖しやすい傾向にあります。
肺炎は細菌感染が主な発症の原因なので、口腔内のケアも兼ねてうがいをする癖をつけておきましょう。なお、介護保険の認定を受けている高齢者であれば、介護サービスとして口腔ケアを受けるのもおすすめです。
関連記事:知らないと怖い!?正しい口腔ケアの方法をご存知ですか?
栄養バランスの良い食事の提供
高齢者の肺炎予防を兼ねた健康維持において、栄養バランスの良い食事はとくに重要です。
高齢者は身体の機能が低下しやすく、免疫力も弱まるため、適切な栄養を摂取するのは肺炎予防に直結します。
高齢者に栄養バランスの良い食事を提供する際、以下の栄養素に注目して食材を選びましょう。
栄養素 | 役割 | 食品 |
---|---|---|
タンパク質 | 筋肉維持、免疫細胞生成 | 肉、魚、豆類 |
ビタミンC | 抗酸化作用、免疫力向上 | 柑橘類、キウイ、イチゴ |
ビタミンE | 抗酸化作用、細胞膜保護 | ナッツ類、アボカド、植物油 |
食物繊維 | 消化吸収助け、便秘予防、腸内環境改善 | 野菜、果物、全粒穀物 |
適度な運動
高齢者にとって適度な運動は、肺炎の予防において重要な予防法です。
運動は全身の血行を促進し、免疫力を高める効果があります。
とくに高齢者の場合、無理のない範囲でのウォーキングやストレッチなどは、呼吸器の機能を維持し、感染症に対する抵抗力を強化するのに役立ちます。
ただし高齢者が運動をする際、安全面に注意し個々の体力や健康状態に応じた運動プログラムを選ぶのが重要です。
心疾患や関節の問題を抱えている場合は、医師のアドバイスを受けながら運動を習慣づけましょう。
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高齢者の肺炎の特徴を早く見つけるには専門家からの支援が大切!【まとめ】
高齢者の肺炎の特徴は、風邪と似た症状があり、見逃されがちです。しかし、進行が早く、重症化しやすいため、早期発見と予防が大切です。
高齢者は熱が出にくく、食欲の低下や呼吸回数の増加が見られます。
また、こまめな手洗い・うがいや栄養バランスの良い食事、適度な運動は予防に効果的です。
仮に何か異変を感じた場合、早めに医療機関を受診し、専門家からのアドバイスを受けるのが重要です。
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