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介護保険法をわかりやすく解説|目的や制度の仕組み、最新の改正まで

介護の必要性が増える中、高齢者やその家族にとって介護保険法の理解は重要です。制度の詳細を把握すれば、より良いケアを提供したり受けたりするための準備を整えられるからです。

この記事では、介護保険法の基本、そして老人福祉法との違いについて解説します。

また、3年ごとに実施される介護保険法の改正理由や2024年度の改正ポイントについても詳しく解説します。

この記事を読めば、介護保険制度の仕組みを理解し、適切な介護サービスを選択するための知識を得られるでしょう。

【事前知識】介護保険法とは?

介護保険法とは、安心して老後を迎えるために非常に重要な法律です。まずは、介護保険法における基礎知識を以下2つのトピックスに分けてわかりやすく解説します。

  • 介護保険法の目的
  • 老人福祉法との違い

順番に見ていきましょう。

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目次

介護保険法の目的

介護保険法は、高齢者の介護を社会全体で支える仕組みを定めた法律です。

加齢に伴う要介護者が尊厳を保ち自立した生活を送れるよう、介護保険制度を設け、保健医療や福祉サービスを提供するのが目的とされています。

介護保険制度では、40歳以上の人が保険料を支払い、65歳以上の人(または40歳以上で特定の病気の人)が必要に応じて介護サービスを利用できます。具体的には、デイサービスや訪問介護、施設入所といった、さまざまなサービスです。

つまり、介護保険法は、必要な介護サービスを確保するための仕組みを提供し、介護が必要な人々とその家族を支援するために存在する重要な法律といえるでしょう。

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参考:e-Gov法令検索『介護保険法

老人福祉法との違い

老人福祉法と介護保険法はどちらも、高齢者の生活を支えるための大切な法律です。これらの法律には、それぞれ異なる役割があります。

老人福祉法は、高齢者全体の福祉を総合的に支えるための法律です。

たとえば、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるように「自治体がどのようなサービスを提供すべきか」といったルールが定められています。また、特別養護老人ホームやデイサービスなどの施設の運営基準も、この法律に基づいています。

一方、介護保険法は、介護が必要な高齢者に対するサービスに特化した法律です。

介護保険の仕組みや、要介護認定を受けた人が利用できるサービス内容などが細かく規定されています。

このように、老人福祉法は高齢者全体の生活を幅広く支えるのに対し、介護保険法は介護が必要な高齢者に特化したサービス提供を目的としている点が大きな違いです。

参考:e-Gov法令検索『老人福祉法

介護保険法の改正を知るためのポイント3つ

介護保険法は3年に一度の改正があるため、制度の変化に応じて利用者や関係者が対応する必要があります。この改正について、以下のポイントに注目してわかりやすく解説します。

  • 介護保険法は3年に一度の改正がある
  • 2024年度の改正ポイント
  • 介護保険法が改正される理由

それぞれを詳しく見ていきましょう。

介護保険法は3年に一度の改正がある

介護保険法は、私たちの暮らしをより良くするために、時代とともに変化してきました。

改正の目的は、高齢者が住み慣れた地域で、安心して暮らし続けられるようにすることです。そのため、介護サービスの内容や提供方法が、少しずつ改善されてきました。

主な改正年度と改正内容は以下のとおりです。

改正した年度 改正内容
2005年 介護予防の重視、地域包括支援センターの創設、地域密着サービスの創設
2008年 介護サービス事業者の法令順守、事業の休止や廃止の事前届出制
2011年 24時間対応サービス、複合型サービス、医療的ケアの制度化
2014年 地域医療介護総合確保基金の創設、在宅医療や介護連携の充実、低所得者の保険料軽減
2017年 自立支援や重度化防止、介護医療院の創設、利用者負担割合の引き上げ
2020年 ボランティアポイント制、医療や介護のデータ基盤の整備

これらの改正は、介護保険法がより実態に即したものとなるように行われています。

2024年度の改正ポイント

2024年度の介護報酬改定のポイントは以下の5つです。

改正した項目 改正した内容
地域包括ケアシステムの強化 高齢者が必要なサービスを地域全体で支える仕組みが強化され、医療と介護の連携が図られます
自立支援と重度化防止の推進 リハビリテーションや栄養管理を通じて高齢者の健康を維持する施策が進められます
介護職員の働きやすい環境整備 賃金の引き上げや生産性向上が図られ、介護職員の待遇が改善されます
介護保険制度の安定性確保 評価基準の見直しと簡素化が進められ、制度の持続可能性が確保されます
利用者が使いやすい制度の見直し 送迎サービスのルールを明確にするなど、利用者にとって使いやすい制度にするための見直しが行われます

このように2024年には、利用者と介護職員の双方に配慮した制度改正が行われました。高齢者が抱える介護の問題を踏まえ、今後も制度の改善が続けられるでしょう。

参考:厚生労働省『令和6年度介護報酬改定の主な事項について

介護保険法が改正される理由

介護保険法が定期的に改正される背景には、高齢化が進み介護ニーズが多様化してきたという社会の変化があります。

介護保険制度は、介護が必要な高齢者を社会全体で支える仕組みです。しかし、制度開始以降、介護を必要とする高齢者の数は増加の一途をたどっています。

たとえば、介護保険の認定を受けた人は、制度が始まった2000年4月では約218万人、2024年の4月には約710万人と、この24年間で3倍以上に増えました。それに伴い、介護サービスにかかる費用も大幅に増加しています。

また、認知症の高齢者への対応や、介護ロボットの活用など、新しい課題も次々と生まれています。介護保険法は、こうした変化に対応し、より良い介護サービスを提供するために改正されているのです。

改正によって、利用できるサービス内容や自己負担額が変わる場合もあります。介護保険制度の最新情報に目を向け、必要なサービスを適切に利用できるようにしましょう。

参考:厚生労働省『介護保険事業状況報告 月報(暫定版)

介護保険法にもとづく介護保険制度の仕組み

介護保険制度は、高齢化社会において重要な役割を果たしています。この制度の仕組みを以下の3つの観点から詳しく見ていきましょう。

  • 介護保険制度の対象者
  • 保険料と支払い方法
  • 要介護認定の手続き

それぞれをわかりやすく解説します。

介護保険制度については、下記の記事でも詳しく解説しています。

関連記事:『介護保険制度はいつから始まった?|制度の概要から受けられるサービスまで解説

介護保険制度の対象者

介護保険制度では、大きく分けて二つのグループの人を対象としています。

1つ目は、65歳以上の「第1号被保険者」です。

年齢を重ねることで介護が必要になる可能性が高まるため、このグループの人は、基本的に全員が介護保険の対象となります。

2つ目は、40歳から64歳の「第2号被保険者」です。

こちらは、特定の病気によって介護が必要になった場合に、介護保険の対象となります。対象となる病気は「特定疾病」と呼ばれ、16種類あります。

どちらのグループも、介護保険料を支払う義務があります。しかし、介護サービスを受けられるのは、原則として要介護認定または要支援認定を受けた人だけです。

保険料と支払い方法

保険料は、加入している健康保険や年齢によって異なります。

第1号被保険者は、自治体ごとに保険料が決められています。全国平均では約6,000円ですが、地域や所得によって変わる場合があります。

一方、第2号被保険者は、加入している健康保険によって保険料が決まります。国民健康保険に加入している自営業の方や、会社員で健康保険組合に加入している方など、それぞれの状況に応じて金額が異なるのが特徴です。

このように、介護保険料は年齢や加入している健康保険によって異なるため、自分がいくら支払うのかを確認しておきましょう。詳細については、お住まいの市区町村や加入している健康保険にお問い合わせください。

関連記事:『介護保険料はいくら?65歳以上の平均納付額から滞納の影響まで解説』

要介護認定の手続き

介護保険サービスを利用するには、要介護認定を受ける必要があります。要介護認定とは、どの程度の介護が必要なのかを7段階で評価するものです。

要介護認定を受けることで、利用できるサービスや自己負担額が明確になります。

申請は、住民票がある市区町村の役所で行います。自分で申請するのが難しい場合は、家族や地域包括支援センターなどに代行してもらうのも可能です。

要介護認定は、適切な介護サービスを受けるための第一歩となります。自分や家族の状況に応じて、早めに申請の準備を始めましょう。

関連記事:『介護保険申請のタイミングはいつ?失敗しないための手続きガイド』

介護保険法の適用で利用できる介護サービス

介護保険を利用すれば、さまざまな介護サービスが受けられるようになります。ここでは、以下3つのカテゴリーに分類して、それぞれのサービス内容を解説します。

  • 居宅サービス
  • 地域密着型サービス
  • 施設サービス

サービスを選択する際の参考にしてみてください。

居宅サービス

居宅サービスとは、自宅で生活しながら受けられる介護サービス全般のことです。

居宅サービスはさらに3つのタイプに分類され、それぞれの主なサービスを以下の表にまとめました。※サービス名をクリックすると、詳細記事をチェックできます(一部のみ対象)

サービスの種類 介護給付を行うサービス

(要介護1〜5の方対象)

予防給付を行うサービス

(要支援1・2の方対象)

訪問型サービス 訪問介護(ホームヘルプサービス)
・訪問入浴介護
訪問看護
・訪問リハビリテーション
・介護予防訪問介護(ホームヘルプサービス)
・介護予防訪問入浴介護
・介護予防訪問看護
・介護予防訪問リハビリテーション
通所型サービス 通所介護(デイサービス)
・通所リハビリテーション(デイケア)
・介護予防通所介護(デイサービス)
・介護予防通所リハビリテーション(デイケア)
短期滞在型サービス ・短期入所生活介護(ショートステイ)
・短期入所療養介護
・介護予防短期入所生活介護(ショートステイ)
・介護予防短期入所療養介護

参考:厚生労働省|介護保険制度の概要『介護サービスの種類

居宅サービスは、訪問・通所・短期滞在と多様な形態で提供され、利用者のニーズに合わせて柔軟に選択できる仕組みとなっています。

関連記事:
要支援1で受けられるサービスは?要支援1に適した介護施設も解説
要支援2で受けられるサービスは?|認定基準から施設入居のメリットまで解説
要介護2とは|利用可能なサービスから要介護度の違いまで徹底解説

地域密着型サービス

地域密着型サービスとは、市町村が指定・監督をおこなうサービスです。介護や支援を必要とする方が、住み慣れた地域で生活を継続できるのを目的としています。

以下は主な地域密着型サービスです。※サービス名をクリックすると、詳細記事をチェックできます(一部のみ対象)

介護給付を行うサービス
(要介護1〜5の方対象)
予防給付を行うサービス
(要支援1・2の方対象)
・定期巡回/随時対応型訪問介護看護
・夜間対応型訪問介護
・認知症対応型通所介護
・小規模多機能型居宅介護
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
・介護予防認知症対応型通所介護
・介護予防小規模多機能型居宅介護
・介護予防認知症対応型共同生活介護(グループホーム)

参考:厚生労働省|介護保険制度の概要『介護サービスの種類

要介護度に応じて柔軟なサービス選択が可能で、地域での暮らしを包括的にサポートする体制が整っています。

サービスごとの内容やは「地域密着型サービス9種類一覧|利用条件・サービス内容を解説で詳しく解説しているので、理解を深めたい方は参考にしてみてください。

施設サービス

施設サービスとは、要介護認定を受けた方が介護保険法にもとづく施設を利用できるサービスです。

施設サービスは大きく分けて、国や自治体が管轄する「公的施設」と民間の事業所が運営する「民間施設」があります。主な施設は以下のとおりです。※サービス名をクリックすると、詳細記事をチェックできます。(一部のみ対象)

公的施設 民間施設
・特別養護老人ホーム
・介護老人保健施設
・介護療養型医療施設
有料老人ホーム
サービス付き高齢者住宅
グループホーム

公的施設は入居一時金は必要ありません。また、国から補助金が出るため、入所費や生活費といった月額費用が民間施設よりも低く設定されている傾向にあります。

民間施設は費用面で負担が大きい傾向にあるものの、公的施設よりもサービス提供において柔軟性がある点が特徴です。入所条件が緩やかであったり、サービスが充実していたりと、利用者のニーズが細やかに反映されやすくなっています。

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以下の記事では公的施設の「特別養護老人ホーム(特養)」と民間施設の「有料老人ホーム」の違いを解説しています。詳細が気になる方はチェックしてみてください。

関連記事:特別養護老人ホーム(特養)と有料老人ホームの違いとは?特徴を比較

介護保険法をわかりやすく解説【まとめ】

この記事では、介護保険法の基本から制度の仕組み、改正内容までをわかりやすく解説しました。

介護保険法は、高齢者の介護を社会全体で支える重要な制度です。この法律により、必要な介護サービスが確保され、高齢者とその家族を支援する仕組みが整えられています。

また、介護保険制度は3年ごとに改正され、社会の変化に合わせて内容が更新されます。最新情報に着目し、自分や家族にとって最適なサービスを選びましょう。

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この記事の監修者

いいケアネット事務局

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