認知症のケアが必要な家族がいる場合、適切な居住環境を見つけることは切実な課題となります。しかし、情報が多くてどこから手をつけて良いかわからないと感じる方も少なくありません。
この記事では、「グループホームとは」を簡単に解説し、その種類、歴史、入居条件、そしてグループホームの特徴やサービス内容まで詳しくご紹介します。また、他の介護施設との違いや、グループホーム選びのポイントも解説します。
この記事を読むことで、グループホームに関する基本情報を簡単に把握し、自身や家族にとって最適な選択ができるでしょう。安心と納得の介護施設選びを実現しましょう。
グループホームとは?基本情報の簡単な解説
グループホームとは、簡単にいうと「認知症の高齢者が専門的な介護スタッフのケアを受けながら共同生活を送る小規模な施設」です。介護の必要な高齢者が地域社会に溶け込みながら生活できることを理想としています。
以下では、グループホームに関する基本情報を、具体的な内容と共にくわしく解説します。
グループホームとは
グループホームは、主に認知症のある高齢者が、スタッフの介助を受けながら共同生活をおくる施設です。ケアが行き届くよう、少人数で暮らすことを基本としています。
介護保険法に基づき「認知症対応型共同生活介護」の指定を受けた施設として、認知症の方に合わせた環境を提供し、アットホームな雰囲気で馴染みの関係を構築するための介護サービスが提供されています。
参考:公益社団法人 日本認知症グループホーム協会『グループホームとは?』
グループホームの歴史
グループホームの原型はヨーロッパに起源を持ち、日本におけるグループホームの制度は1990年代に確立しました。最初の形は、認知症高齢者を対象とした「痴呆対応型老人共同生活援助事業」として制度化されました。
介護保険制度の導入により、認知症高齢者グループホームは急速に増加し、2000年には「ゴールドプラン21」によって3200カ所の設置が目標とされました。令和2年では認知症高齢者グループホームの数は13,000カ所を超えています。
参考:厚生労働省『グループホームの歴史と制度』
厚生労働省『高齢者向け住まいの今後の方向性と紹介事業者の役割』
グループホームの入居条件
グループホームへの入居を希望する方々にとって、その条件を理解し、準備することが重要です。以下では、入居条件に関して詳細に説明します。
認知症の診断が必要
グループホームに入居するためには、まず専門医による認知症の診断が必要です。これは、グループホームが認知症の方々向けに特化した介護サービスを提供する施設であるため、必須とされている条件です。
診断を受けるには、内科や神経内科、精神科などで認知症専門の医師の診察を受けましょう。診断後、要介護認定で要支援2以上になれば、グループホームへの入居が可能になります。
年齢や健康状態による制限
グループホームへの入居には年齢制限があります。原則65歳以上の方が対象ですが、40歳から64歳の間で特定疾病を持つ方も入居可能です。
また、要介護度による制限もあります。要介護1から5の認定を受けていること、または要支援2であることが条件です。要介護認定を受けたい場合は、各自治体の福祉課や地域包括支援センターへ相談しましょう。
生活保護でも入居できる?
生活保護を受けている方でも、グループホームへの入居は可能です。ただし、入居にあたっては、上記の条件を満たしている必要があります。
加えて、地域密着型サービスとしての性格を持つグループホームでは、原則として事業所と同じ市町村に住んでいる方が対象です。しかし、特例として他の市町村に住む方も入居できる場合があるため、具体的な条件は各事業所により異なります。
入居できない可能性があるケース
一部の条件によっては入居が断られることもあります。
例えば、感染症にかかっている方、共同生活が困難と判断される方、自傷行為や他傷行為がある方、療養上の世話や医療的ケアが必要な方、利用料金の支払いが困難な方などは、入居を断られる可能性があります。各事業所へ確認しましょう。
グループホームの特徴とサービス内容を簡単に解説
グループホームについて、その特徴や提供されるサービス内容を、わかりやすく説明します。
1ユニットあたり5〜9人の少人数制とそのメリット
グループホームでは、1ユニットの定員が5〜9名という少人数制を採用しており、これにより家庭のような温かみのある環境を提供しています。少人数だからこそ、個々の利用者に対するケアが細やかになり、認知症の方が落ち着いて生活できるように配慮されています。
このような家族的な雰囲気の中で、利用者は安心して生活できます。また、ご家族も安心して介護を任せられるでしょう。
認知症ケアに特化したサービス
グループホームは、認知症の方々へのケアに特化しています。具体的には、食事の準備や洗濯など日常生活の中で役割を持ちながら活動することにより、生活意欲の向上と認知症の進行緩和が期待できます。
スタッフは利用者が可能な限り自分のことは自分で行うように支援し、生活リハビリを通して自立を促進します。家庭的な雰囲気の中での生活は、メンタルケアにも繋がり、生活の質の向上に寄与するでしょう。
料金体系について
グループホームの料金体系は、入居時に支払う初期費用と毎月支払う月額費用に分けられます。初期費用には敷金が含まれ、これは居室を退去時の原状復帰のために預けるお金です。一般的な賃貸の敷金と同じような意味合いを持ちます。
月額費用には介護サービス費、賃料、管理費、食費、水道光熱費、レクリエーション費などが含まれ、介護保険の自己負担額も加味されます。料金は施設によって異なるため、具体的な費用については事前にしっかりと確認しましょう。
グループホーム選びのポイント
グループホーム選びのポイントはいくつかありますが、主に次の3つが挙げられます。
- 地域や立地条件を考慮する
- スタッフの資格と対応力をみる
- 口コミや評判をチェックする
以下で、それぞれ解説します。
地域や立地条件を考慮する
グループホームを選ぶ際には、地域や立地条件を重視する必要があります。利用者がこれまで住んでいた地域から離れず、親しい人々とのつながりを維持できる場所を選ぶことが望ましいでしょう。
地域密着型のサービスを提供するグループホームは、住み慣れた環境での生活を助け、認知症の方にとって大きな安心感をもたらします。また、地域の方々との交流を通じて、利用者が社会参加を続けられるような施設も魅力的です。
スタッフの資格と対応力をみる
スタッフの資格や対応力はグループホーム選びにおける重要なポイントです。グループホームの管理者やスタッフは、認知症介護に関する専門的な資格を保有し、その知識を活かした高度なケアを提供します。
見学時には、スタッフがどのように利用者と関わっているか、またその対応が温かく、尊厳を持って行われているかを見極めることが大切です。
口コミや評判をチェックする
他の利用者やその家族からの口コミや評判は、グループホームの実際の雰囲気やサービスの質を把握するための重要な情報源です。
地域のコミュニティーやインターネット上の評価を参考にし、実際の利用者の経験談を聞くことで、施設の日常的な運営やケアの質をより深く理解できます。特に、問題があった場合の施設の対応や、利用者の満足度は重要な判断材料となるでしょう。
グループホームとほかの介護施設との違い
グループホームとほかの介護施設は、受け入れ条件、利用者の身体状態、職員配置、ケアの目的など多岐に渡って違いがあります。どこが適切かは、利用者のニーズや希望する生活環境によって異なります。これから紹介する情報を参考に、適した施設選びをしましょう。
有料老人ホームとの違い
認知症の方でも入居できる有料老人ホームには、主に住宅型有料老人ホームと介護付き老人ホームがあります。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは食事や洗濯、清掃といった生活支援サービスを提供する施設です。グループホームが共同生活の場を提供する一方、住宅型有料老人ホームでは、個々のプライバシーが守られた私的空間を提供します。
日々の生活支援はあるものの、介護が必要な場合は外部の事業所からサービスを受ける形になります。グループホームでは受けられない介護サービスを希望する場合でも、外部サービスの組み合わせにより柔軟に対応できます。
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームでは、介護スタッフが24時間体制で常駐し、日常生活のサポートと介護サービスを提供します。洗濯や掃除、食事、入浴、排せつなどの身の回りの世話が含まれます。入居要件は施設ごとに異なり、健康な方から介護が必要な方、寝たきりや認知症の方まで幅広く対応しています。
グループホームで見られる共同生活の場面よりも、個別のケアが中心となるため、介護サービスの質と範囲が拡大します。また、看取りやターミナルケアにも対応している施設も多いです。
ショートステイとの違い
ショートステイは、一時的に在宅介護が困難になった場合に利用できるサービスです。最短1日から介護や生活支援を受けられます。
グループホームが長期的な生活の場を提供するのに対し、ショートステイは、旅行や出張、介護者の病気や急用などで家族が介護から離れる必要があるときに利用されます。
【まとめ】グループホームとは簡単に言えば「認知症の方が少人数で共同生活を送る施設」
では、今回のまとめです。
グループホームは、認知症を抱える方が少人数で共同生活を営むための施設です。家庭的な環境を重視し、一人一人の自立した日常生活をサポートすることが大きな特徴です。しかし、入居希望者の増加により、グループホームに即座に入居できない可能性もあります。そんな時、選択肢の一つが有料老人ホームです。有料老人ホームは施設数が多く、多様なサービスを提供しており、比較的入居しやすい環境が整っています。
認知症の方にとって最適な居住環境を見つけることは、家族にとっても大切な課題です。グループホームが適さない場合は、有料老人ホームへの道も検討しましょう。
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この記事の監修者
いいケアネット事務局
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