「親が徘徊するようになってきた……認知症かも」「徘徊したときに、どう対応したらいいの……」とお悩みの方も多いでしょう。
認知症による徘徊は、症状の特徴や徘徊の理由を知ることで、ある程度の対策がとれるようになります。
そこで今回は『認知症の症状』『徘徊の理由』『徘徊の対策ポイント』などを紹介していきます。
この記事を読めば、徘徊の適切な対策方法がわかり、認知症と上手に付き合っていけるようになります。
認知症の症状は大きく2つに分類できる
認知症にはさまざまな症状があるため、対応が難しいと感じてしまうでしょう。
しかし、対応が難しいと感じるのには原因があります。
それは認知症の症状が、次の2つに分かれているからです。
- 中核症状
- 周辺症状(BPSD)
これらの症状の特徴を知らないと、適切な対応は難しくなります。
では、ひとつずつ解説していきます。
中核症状
中核症状は、認知症が引き起こす脳の障害が原因となって現れる症状です。
中核症状には、次の症状がみられます。
- 記憶障害
- 失語
- 失行
- 失認
- 見当識障害
- 実行機能障害
上記のような症状が現れると、すでに食事をしたのに食べたことを忘れたり、上手く会話ができなくなったりします。
また、場所・時間・人の認識が難しくなったり、料理や薬の管理といった一連の行動が難しくなったりといった症状が出ることも多いです。
中核症状は、原因が明確で対策も立てやすい特徴があります。
周辺症状(BPSD)
周辺症状(BPSD)は行動・心理症状とも呼ばれており、主に次のような症状がみられます。
- せん妄
- 抑うつ
- 睡眠障害
- 攻撃的な言動・行動
- 徘徊
何かに怒っていたり、落ち着かない様子がみられたりといった不穏がある場合は、周辺症状と判断しても良いでしょう。
周辺症状は、外的なストレスが要因となって引き起こされます。
本人の性格や周囲の状況により、さまざまな症状が現れるため、対応が難しいケースも多くみられます。
認知症の徘徊には3つの理由がある
対応が難しい認知症の周辺症状として『徘徊』が挙げられます。
徘徊により行方がわからなくなると、交通事故などの重大なリスクに発展する可能性もあるため、十分な注意と適切な対応が必要です。
徘徊の理由は、大きく分けて次の3つがあります。
- 身体的な理由
- 環境的な理由
- 心理的な理由
ひとつずつ解説していきます。
身体的な理由
徘徊は体の違和感が原因となっている可能性があります。
例えば、次のような違和感を感じて徘徊に至ることがあります。
- お腹が空いた
- のどが渇いた
- トイレに行きたい
認知症の方は上記のような違和感を感じても、どこへ行けばいいのか、どうすればよいのかわからず徘徊してしまいます。
食事を摂っていても空腹感を訴える場合は、温かい飲み物を提供してみても良いでしょう。
また、高齢者は加齢により胃腸の働きが低下するため、便秘になりがちです。
便秘の傾向がある方は、医師の指示の下で適切なお通じになるよう調整すると、徘徊の対策になるかもしれません。
環境的な理由
環境的な違和感が原因で徘徊することも少なくありません。
認知症は、環境の変化に大きく影響されやすい傾向があります。
例えば、老人ホームに入居した直後では「今いる場所がわからない」「知らない人ばかりで落ち着かない」と感じて、徘徊に至るケースが多くみられます。
なるべく馴染みのある場所で、馴染みのある顔ぶれと生活できるような配慮が必要です。
心理的な理由
心理的な焦燥感が原因となり、徘徊に至るケースもあります。
人は誰しも『やらなければならないこと』を抱えて生活しています。
主婦生活の長い女性なら、食事の準備や洗濯・掃除などの家事をやらなければならなかったでしょう。
また、仕事を頑張ってきた男性なら、遅刻せずに出勤しなければならないと生活してきたはずです。
「やらなければ」という義務感は、達成できないと焦りに変わっていきます。
時間や場所がわからなくなる見当識障害に加え、今までの生活習慣が重なると徘徊に至ることが多いようです。
認知症の徘徊は夕方〜夜中にかけて多くみられる
夕方から夜中にかけて徘徊が多くなると感じている方も多いでしょう。
夕方以降に徘徊が多くみられるのには、いくつか理由があります。
夕方の徘徊では、帰宅願望が原因となっているケースが多いです。
例えば、主婦として生活してきた方の多くは、夕方になると子供を迎えに行ったり、夕食の準備をしたりという日々を過ごされてきたでしょう。
こういった今までの生活習慣により、夕方は家に帰らないといけないと思い込んでしまい徘徊に至ります。
それに、ほぼすべての人は夜になると帰宅するのが当然ですので、夜遅くなる前に帰宅したいと思うのは、ごく自然な感情でしょう。
また、夕方から夜中にかけてはトイレも近くなり、夜間の中途覚醒直後では居場所もわかりづらくなるため、徘徊が多くなります。
認知症の徘徊|対策のポイントは5つ
ここまでご紹介した認知症の症状の特徴と徘徊の理由を踏まえて、対策方法を考える際、ポイントとなるのは次の5つです。
- 否定しない・放置しない
- 趣味や作業を促す
- 適度な運動をする
- 社会参加を促す
- いなくなったらすぐ警察に連絡
ひとつずつ解説していきます。
否定しない・放置しない
認知症の方と対応する際、否定と放置は禁物です。
徘徊には必ず理由があり、本人は何かをしようとしています。
否定して抑制すればするほど不安感が高まり、さらに落ち着かなくなる傾向が多くみられます。
また、本人だけでは徘徊の理由を解決できないので、介護者が放置すれば徘徊が終わるわけではありません。
話をよく聞きながらどこへ行きたいのか、何をしたいのかを推測して、目的の達成を手助けしましょう。
ただし、夜間に仕事に行ったり買い物に行ったりという目的の達成は、非現実的です。
実現不可能な目的がある場合は、家の中や周りをすこし散歩すると、目的達成の代わりになることがあります。
やらなければならないと思っていたことが解決すれば、気持ちも落ち着いて徘徊が終わるケースも多々みられます。
趣味や作業を促す
好きな趣味や作業を促して、不安感を取り除くのも方法のひとつです。
徘徊の原因となる焦燥感には、明確な目的がある場合と、理由もなくそわそわしている場合があります。
後者の場合、本人に話を聞いても目的がわからないため、どう対応していいのかわかりません。
対応の仕方がわからないときは、本人の好きな趣味を促してみましょう。
本人に集中できる趣味がないときは、あまり難しくない軽作業をお手伝いしてもらうのも良いでしょう。
目の前に『やらなければならないこと』『やりたいこと』があれば、落ち着くことがあります。
適度な運動をする
日中に少し運動をすると、徘徊が減少するケースもあります。
徘徊を恐れるあまり行動を抑制しすぎると、運動量が足りなくなり、さらにストレスを感じやすくなります。
車椅子で自走してみたり、庭を少し散歩したり、無理のない範囲で軽い運動を促してみましょう。
また、適度な運動により睡眠の質が向上し、昼夜逆転の改善につながる可能性もあります。
社会参加を促す
社交的な方には、デイサービスや認知症カフェなどを利用して社会参加を促し、人付き合いの機会を増やしてみましょう。
人との会話を楽しみ、疎外感や不安感の払拭が期待できます。
また、本人だけでなく介護をする家族にとっても、休める時間が確保できストレス軽減につながります。
いなくなったらすぐ警察に連絡
もし徘徊により行方がわからなくなった場合は、すぐに警察へ連絡すべきです。
「警察沙汰になっては皆さんに迷惑をかけてしまう……」と、警察への連絡を躊躇してしまいがちですが、遠慮は一切不要です。
生命の危機にかかわる重大な事態になったら、一刻も早く警察へ連絡しましょう。
まとめ
では、最後に今回の内容をまとめます。
認知症の症状は、中核症状と周辺症状(BPSD)の2つに分けられます。
ほとんどの場合、徘徊の理由になるのは次の3つです。
- 身体的な理由
- 環境的な理由
- 心理的な理由
これらを踏まえた、徘徊の対策ポイントは5つ。
- 否定しない・放置しない
- 趣味や作業を促す
- 適度な運動をする
- 社会参加を促す
- いなくなったらすぐ警察に連絡
もし、今回紹介したような対策をとっても対応が難しいと感じたら、有料老人ホームへの入居も検討してみましょう。
無理をすれば介護をしている家族の負担が増える一方ですし、本人が怪我をしたり事故にあったりといった危険も増えます。
ただし、すべての老人ホームがすぐに入居できるわけではないので、限界を感じる前に老人ホーム探しを始めましょう。
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この記事の監修者
いいケアネット事務局
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