「家族が認知症になり徘徊を始めて困っている」「徘徊の対策方法がないか知りたい」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
徘徊の対策方法には、ドアロックなどのグッズを利用したり、主治医に相談したりなど、さまざまな方法があります。
この記事では、徘徊対策グッズや対応策を解説します。
また、グッズを選ぶときのポイントや認知症の方が徘徊する原因や理由についても解説します。 ご家族の徘徊に悩んでいる方は読んでみてください。
認知症の徘徊対策グッズ4選
認知症の徘徊対策グッズには、下記の4つがあります。
- ドアロック
- 赤外線センサー
- GPS機能搭載のキーホルダー
- 身元証明できるネームタグ・ブレスレット
本章を参考に、ご家族に合った徘徊対策を検討してみてください。
ドアロック
ドアロックは、内側もしくは外に鍵を追加したり、「サムターン」と呼ばれる鍵のつまみにカバーをつけたり、南京錠で玄関が開かないようにしたりするグッズです。
鍵を追加する場合は、粘着テープで手軽に取り付ける方法があります。
しかし、手軽に取り付けできる場合は、認知症の方が自身で外してしまう可能性もある点には注意が必要です。
また、賃貸で鍵を追加・変更する場合は、管理会社や大家さんに確認しなければいけないため、すぐに対策をしたい方には向いていません。
手軽かつすぐにドアロックできる方法は、サムターンカバーもしくは南京錠タイプのロックを取り付ける方法です。
2,000円台から購入可能で、簡単に取り付けできます。
しかし、引き戸やサムターンのない玄関の場合は、サムターンカバーや南京錠のロックタイプを利用できません。
引き戸やサムターンのない玄関の方は、鍵の追加を検討して徘徊を予防しましょう。
赤外線センサー
赤外線センサーは、人が通ると音や光で通知してくれる対策グッズです。
玄関に設置してすると、本人がセンサーに近付いたとき通知されるため、目を離していても気付けます。
赤外線センサーは小型のものも販売されているため、置くスペースに悩んでいる方はサイズの小さなものを探してみてください。
また、配線のない乾電池式タイプであれば、設置場所が狭かったりコンセントが近くに無かったりしても置ける可能性があります。
GPS機能搭載のキーホルダー
GPS機能搭載のキーホルダーは、ご家族がいつも持ち歩くものに取り付けると、位置情報を把握できるグッズです。
GPS機能は、Bluetooth信号を周囲のiPhoneやandroid端末に届けて、あなたのスマートフォンに位置が通知されます。
もし徘徊されても、キーホルダーを付けていれば、位置情報がわかるため、すぐに見つけられます。
自宅で一人の時間がある場合も、キーホルダーを身につけていると、どこにいるのか把握可能です。
一般的に、GPS機能搭載のキーホルダーは、2,000円台から購入可能です。
キーホルダーを身につける習慣が少ない方には、GPS機能搭載の「腕時計型」、「靴型」(靴に内蔵)もあるため、試してみましょう。
身元証明できるネームタグ・ブレスレット
身元証明できるネームタグやブレスレットは、徘徊が起きたときに、すぐ連絡してもらえるグッズです。
身元証明できるネームタグは、首からかけるタイプや名札タイプがあります。ブレスレットは、購入時に印字を依頼できるものもあります。
身元証明するために記載する内容は、名前、住所、連絡先、疾患です。
本人の好みに合うデザインのものを選べば、気になって外してしまうリスクも避けられるでしょう。
徘徊対策グッズを選ぶときのポイント
徘徊対策グッズを選ぶときのポイントは、以下のとおりです。
- 気にならないデザインを選ぶ
- 靴や玄関など利用する場所を考える
- 通知方法は生活に影響のないものを選ぶ
実用的な徘徊対策グッズを選ぶ際は、本章の内容を参考にしていただければ幸いです。
気にならないデザインを選ぶ
徘徊対策グッズを選ぶときは、本人の好みに合わせた気にならないデザインを選びましょう。
本人の好みに合わせたデザインを選ぶと、利用してもらえる可能性が高いからです。
奇抜なデザインやカラフルなグッズの場合は、視界に入りやすく気になって外してしまうケースがあります。
徘徊対策グッズを利用してもらうためにも、本人の好みに合わせたグッズを購入しましょう。
靴や玄関など利用する場所を考える
徘徊対策グッズを利用するときは、設置場所や利用する場所を考えましょう。
たとえば、赤外線センサーは玄関に置くケースが多くあります。しかし、認知症の症状によっては、窓から徘徊を始めてしまう方もいるのです。
窓から出かけてしまう場合は、玄関以外にもベッドや窓の周囲に設置しておかなければ効果を発揮できません。
また、GPS機能搭載の物品を利用する場合は、普段の習慣に合わせて選ぶことをおすすめします。
たとえば、GPS機能搭載のキーホルダーは、かばんや小物を日常的に持ち歩く方向けです。
普段何も持たず出かける方は、腕時計やインソールに取り付けるタイプのグッズのほうがいい場合もあります。
通知方法は生活に影響のないものを選ぶ
赤外線センサーやGPS機能搭載のグッズを利用する場合は、通知方法が生活に影響のないものを選びましょう。
赤外線センサーの中には、感知すると大きな音で通知するタイプもあります。大きな音を出すと、認知症の方は驚いてしまい、落ち着かなくなるかもしれません。
スマホに通知したり、通知方法を選択できたりするなど、本人や家族がストレスなく使えるグッズがおすすめです。
徘徊は認知症による周辺症状の一つ
認知症の症状には、主に「中核症状」「周辺症状」があり、徘徊は周辺症状(BPSD)の一つです。2つの違いは、下記のとおりです。
中核症状 | 周辺症状 | |
主な症状 | 短期記憶障害
日付や今いる場所がわからない(失見当識) 言葉がでない、食事や着替えができない、見た物を認識できない |
徘徊・興奮・攻撃性・イライラしたり場違いな言動をする
不安・無気力・幻覚・妄想 |
アルツハイマー型認知症の約80%は、進行すると周辺症状が出現すると報告されています。
警察庁の報告によると、令和5年の認知症による行方不明者は19,039人と報告されています。徘徊により行方不明にならないために、対策をしておきましょう。
認知症の種類や症状については以下の記事もご覧ください。
関連記事:認知症について詳しく解説!【PART2】~認知症の種類・症状について~
認知症の方が徘徊する理由
認知症の方が徘徊する主な理由は、下記のとおりです。
- 前頭側頭型認知症
- 自宅への帰り道がわからない
- ストレス・不安
- 今まで続けてきた生活を送ろうとしている
本章が、認知症の方が抱えている問題や悩みについて知るための参考資料として役立てば嬉しく思います。
また、認知症の方が徘徊する理由は以下の記事でも紹介しています。より詳しく知りたい方はあわせてお読みください。
関連記事:認知症による徘徊の理由とは?認知症の症状から対策まで解説!
前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症(FTD)は、脳の前頭葉や側頭葉が委縮し、神経細胞が損傷する病気です。
この症状により、行動や感情を抑えられなくなる、非社会的な行動を取る、毎日同じ行動を繰り返すといった特徴が見られます。
たとえば、毎日決まった時間に特定の行動を繰り返す方は、夜間であっても外出を試みる場合があるでしょう。
家族はこれらの症状への対応に悩み、介護負担が増えることが少なくありません。
対応に困った場合は、医療機関や介護施設に相談し、具体的な対策を学びましょう。また、ショートステイなどを利用して介護負担を軽減する方法も検討してみてください。
自宅への帰り道がわからない
認知症の方は、目的を持って外出しても途中で自宅への帰り道を忘れてしまうことがあります。
また、自分がどこにいるのか、日付や時間がわからなくなる「見当識障害」も、徘徊を引き起こす要因となる場合があります。
周囲に道を尋ねても、その内容を忘れてしまうことがあるため、一人で行動すると迷子になるリスクが高まるでしょう。
見当識障害がある方には、ネームタグやGPS付きの携帯電話を持ち歩いてもらうなど、緊急時に速やかに対処できる体制を整える必要があります。
ストレス・不安
認知症の方は、ストレスや不安を感じると周辺症状として徘徊が現れることがあります。
たとえば、引っ越しや模様替えといった環境の変化が原因となり、住み慣れた場所へ戻ろうとして外出してしまうケースが考えられるでしょう。
自宅で認知症の方を介護する場合は、住み慣れた環境をできる限り維持し、急な変化を避けることが大切です。
どうしても模様替えや引っ越しが必要な場合は、施設への一時入居を検討する方法もあります。
認知症対応の施設を探す際には、信頼できる情報サイトを活用するのも良いでしょう。認知症の高齢者を受け入れ可能な施設は「いいケアネット」で探してみましょう。
今まで続けてきた生活を送ろうとしている
認知症を発症しても、長年の生活習慣や仕事の記憶は比較的残っていることがあります。
そのため、「子どものためにご飯を作らなければ」「退職したことを忘れて仕事に行かなければ」といった考えで外出を試みるケースも少なくありません。
このようなケースでは、ご本人の生活リズムを尊重しつつ、安心して過ごせるようなサポートを心がけましょう。
家族や介護者がコミュニケーションを取り、本人が不安や混乱を感じない環境を作ることが重要です。
認知症で徘徊が起きてしまったときの対応策
認知症で徘徊が起きてしまったときの対応策は、以下のとおりです。
- 主治医に相談する
- 生活リズムを整える
- 徘徊の目的を確認する
- 担当のケアマネジャーに相談する
- 自治体や警察に相談する
- 施設への入居を検討する
対応策は複数あるため、取り入れやすいものから試してみましょう。一つずつ解説していきます。
主治医に相談する
認知症の徘徊で悩んでいる方は、主治医に相談してみましょう。主治医がいない場合は、脳神経内科やもの忘れ外来を受診しましょう。
主治医に相談すると内服薬を調整してもらえるため、徘徊が軽減するかもしれません。
「徘徊により介護負担になっている」と相談すると、レスパイトケアを勧められることがあります。
レスパイトケアとは、介護をする家族の負担を軽減するために、短期間で施設や病院に認知症の方を預ける方法です。
内服調整やレスパイトケアをおこなうと、これまでの負担を軽減できる可能性があります。
また、徘徊のある方が施設に入居しようとすると、他者とトラブルになる可能性があり、断られることも考えられます。
入居できる施設の選択肢を増やすためにも、主治医へ事前に相談をしておきましょう。
生活リズムを整える
夜間に徘徊する方の場合は、生活リズムを整えると改善に期待できます。
生活リズムを整えると、日中に刺激が加わり適度な疲労感を得られて、夜間に熟睡できる可能性があるからです。
日中に一人の時間ができる場合は、デイサービスを利用すると、生活リズムを整えやすくなるでしょう。
高齢になると睡眠時間が減少したり、眠りが浅くなる傾向があります。
日中に眠くなり睡眠を取ってしまうと夜間に眠れなくなり、徘徊につながることがあります。。
徘徊が夜間にある場合は、生活リズムを整えることを意識してみてください。
徘徊の目的を確認する
徘徊には、何かしらの目的があるケースがほとんどです。徘徊が始まる主な目的は、精神的なストレス・不安や「トイレの場所がわからない」「仕事に行かなきゃいけない」などです。
原因を解決できると、徘徊が改善するかもしれません。
しかし、認知症の方は、徘徊の原因が解決しても、解決したことをすぐに忘れてしまいます。
ベッド周囲に説明文を掲示して、不安を軽減できる環境調整もしておきましょう。
担当のケアマネジャーに相談する
担当のケアマネジャーがいる場合は、徘徊に悩んでいることを相談する方法も有効です。
ケアマネジャーに家族の徘徊に悩んでいると相談すると、徘徊が起きたときの対応や、事前の対策をアドバイスしてもらえます。
担当のケアマネジャーがいない場合は、要介護認定を受けていない可能性があるため、まずは要介護認定の申請から始めましょう。
自治体や警察に相談する
徘徊が起きてしまったときは警察へ相談しましょう。
自治体に相談すると、ボランティアが徘徊した方を探したり、見つかったときに声を掛けたりします。
警察は認知症の方が徘徊したときに連絡しましょう。家族だけでは力不足で見つからない可能性もあるからです。
また、徘徊が起きる前に自治体に相談すると、ボランティアの声をかけてもらえて、本人と馴染みの関係ができます。
馴染みの方から声をかけてもらえると、ご本人も安心して生活できます。
徘徊の対策方法や介護については以下の記事でも解説しているのであわせてご覧ください。
施設への入居を検討する
徘徊が家族の負担となっている場合は、施設への入居を検討する時期かもしれません。
認知症は進行性の病気であり、今後も徘徊が続く可能性が高いからです。介護負担により、家族が疲れるケースは少なくありません。
施設であれば、徘徊が起きてもプロに対応してもらえます。介護施設に入居しても、家族の疲れが取れたら自宅に泊まってもらうことも可能です。
認知症の徘徊で悩んでおり施設への入居を考えている方は、いいケアネットにご相談ください。
認知症でも入居可能な施設については、下記の記事で解説しているため合わせて読んでみてください。
関連記事:認知症でも入居可能な施設はある?【PART2】~認知症でも入れる施設と特徴~
まとめ|認知症で徘徊があるときは対策グッズの利用や施設入居を検討しよう
認知症の徘徊には、今回紹介した対策グッズを利用すると、夜も安心して眠れます。グッズを選ぶときは、解説したポイントも合わせて参考にしてください。
徘徊は、認知症の高齢者を家族に持つ方にとって深刻な悩みになるケースが多いです。
対策グッズを用いても徘徊に悩む場合は、施設への入居を検討してみてください。いいケアネットは、大阪を中心に全国の施設を紹介可能です。
相談は無料なため、お気軽にお問い合わせください。
認知症の徘徊対策グッズについてよくある質問
認知症の徘徊対策グッズについてよくある質問は、以下の2つです。
- 徘徊感知機器とは何ですか?
- 認知症の徘徊をさせない方法はありますか?
それぞれ見ていきましょう。
徘徊感知機器とは何ですか?
徘徊感知機器とは、赤外線センサーやベッドセンサーのことです。
認知症の徘徊をさせない方法はありますか?
徘徊は認知症の周辺症状のため、必ずさせない方法はありません。認知症の徘徊を軽減するには、内服薬の調整やストレス・不安の少ない環境を作る方法が有効です。
参考文献一覧
文献1
介護保険の福祉用具:認知症老人徘徊感知機器(健康長寿ネット)
文献2
認知症疾患診療ガイドライン2017 第6章(一般社団法人 日本神経学会)
文献3
認知症疾患診療ガイドライン2017 第8章(一般社団法人 日本神経学会)
文献4
令和5年における行方不明者の状況(警察庁)
文献5
高齢者の睡眠(e-ヘルスネット)

この記事の監修者
いいケアネット事務局
突然倒れた、転んで頭を打ったなど、ご自身やご家族の介護を身近に感じるきっかけはそれぞれです。 いいケアネットでは、いざという時のために役立つ介護の知識や介護施設についてご紹介します。