徘徊してしまう認知症の家族をどうサポートすれば良いのか悩んでいませんか。
この記事では、認知症患者の徘徊に関する理解と対策について詳しく解説します。
認知症患者が徘徊する理由や対応方法、親が徘徊してしまった際の対応方法などを幅広く取り上げます。
大切な家族の安心・安全を守るために、ぜひこの記事を参考にしてください。
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徘徊とは
徘徊とは、目的や目的地を決めず、昼夜屋内関係なく歩き回る行動を指します。
認知症の高齢者によく見られる行動の1つであり、徘徊中に迷子になったり、危険な場所に行ってしまったりするリスクが高くなります。
とくに家族や地域の方の目が届きにくい夜間に徘徊するケースが多く、事故につながった事例もあるのです。
徘徊は危険性が伴う
徘徊は以下のような危険性が伴います。
- 道に迷ってしまい、帰宅困難に陥る
- 転倒や交通事故などの危険性が高まる
- 飲食物や十分な睡眠が取れなくなり、健康状態が悪化する
- 適切な医療や介護を受けられなくなる
認知症の高齢者が起こしやすい徘徊とは、社会的な問題にも発展するケースもあります。
徘徊に対する適切な対策が必要です。
社会問題となっている
徘徊は、そのまま行方不明になるような社会問題として取り上げられています。
警視庁の調査結果によると、令和5年の行方不明者は90,144人(前年比5,234人増加)しており、そのうちの19,039人(前年比330人増加)が認知症またはその疑いのある方による行方不明です。
全体の20%近くが認知症による徘徊との調査結果が出ているように、社会全体で問題視されていると言えます。
徘徊による行方不明は、最悪の場合で怪我だけでなく命にかかわる状況も考えられるため、適切な対策の必要性が問われます。
参考:警察庁生活安全局人身安全・少年課「令和5年における行方不明者の状況」
そもそも徘徊は認知症の症状の1つ
徘徊は目的や目的地も決めず歩き回る行動であるように、認知症の症状の1つでもあります。
一見すると、ただあてもなくうろうろと歩き回っているように見えますが、本人からすると歩いている理由があっての行動なケースが大半です。
認知症には徘徊以外にも記憶障害や失語、実行機能障害などの意識に関連する症状も見られます。
そのうち周辺症状(BPSD)と呼ばれる行動・心理症状の1つが徘徊です。「いつもと言動が違う」と感じた場合、認知症と判断し徘徊の予防を始めても良いでしょう。
以下の記事では、認知症の症状について詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
関連記事:認知症による徘徊の理由とは?認知症の症状から対策まで解説!
認知症の人が徘徊をしてしまう原因
認知症による徘徊に対し、適切な対応のためには、徘徊のきっかけとなる原因を理解するのが重要です。
以下では、認知症の高齢者が徘徊する主な理由と、徘徊の対策と介護方法について解説していきます。
行動の目的を忘れたから
認知症の人が徘徊をしてしまう主な原因の1つが「物忘れ」です。
認知症は、短期的な記憶障害が顕著になるケースが多く、外出の目的や帰る道を忘れてしまう場合があります。
たとえば、買い物に出かけたのに、何を買うかを忘れてしまったり、買い物が終わった後に自宅の方向を見失ったりした結果、徘徊してしまうのです。
また、物忘れが原因になり不安感から生じて徘徊を引き起こす可能性もあります。
自分がどこにいるのか、何をしているのかがわからなくなると、パニックに陥り、無意識に歩き回って不安を解消しようとする傾向があります。
心理的なストレスを抱えているから
認知症の人は心理的なストレスが原因で徘徊する可能性もあります。
認知症になる要因の1つに、環境の変化や、周囲の人々とのコミュニケーションがあげられます。
本人にとって不安感が高まった結果、徘徊に至るケースがあるのです。
たとえば身内の死別や引っ越し、定年退職など、本人にとって大きな変化が伴う瞬間は、心理的なストレスと抱えてしまいます。
環境の変化があった際は、早めに寄り添える体制を整えるのがおすすめです。
過去の生活習慣を繰り返したいから
認知症の人が徘徊をしてしまう原因の1つに「過去の生活習慣を繰り返したい」という欲求から来ているケースもあります。
認知症により記憶が混乱し、現在と過去の区別がつかなくなると、日常生活の一部を再現しようとする人がいます。
行動を繰り返す背景には、失われた日常を取り戻したい強い思いが潜んでいるからです。
また、時間や場所の認識が曖昧になり「自分がどこにいるのか」「何をすべきかがわからない」という結果から徘徊につながるのです。
さらに、過去の生活を繰り返す行動は、本人が持っていた役割や自尊心を取り戻そうとする試みでもあります。
過去の習慣を無理に止めるのではなく、適切にサポートする方法を見つけるのが重要です。
徘徊のリスクを予防する方法
認知症の高齢者が徘徊する可能性が高いため、事前に対策しておく必要があります。
徘徊のリスクを予防するには、以下の方法を実施しましょう。
- 環境を整える
- 適度な運動の時間を取り入れる
- デイサービスのような介護サービスを利用する
順番に具体的な予防法を解説していきます。
環境を整える
認知症の夜間徘徊対策の1つとして、家の中を安全な環境にする必要があります。
具体的には、以下のポイントがあげられます。
- 整理整頓
- 転倒防止対策
- 適切な照明
- ドアや窓の施錠
- 家具や家電製品の安全対策
- 見守りシステムの導入
- 本人に緊急連絡先を持たせる
- 異食対策
これらの対策を1つずつ実施して、安心して暮らせる環境に整えましょう。
具体的には以下のような徘徊対策グッズを活用するのがおすすめです。
- 見守りシールやキーホルダー、耐洗ラベル
- 人感センサー
- GPS端末・GPS機能付きスマートフォン
- 見守りカメラ
中には介護保険でレンタル利用できる場合もあるため、事前にケアマネジャーや地域包括支援センターなどへ相談・確認してみましょう。
関連記事:徘徊高齢者を早期発見できる「簡単位置サービス」とは?
参考1:新宿区『高齢者見守りキーホルダー』
参考2:さいたま市『さいたま市認知症高齢者等見守りシール事業』
参考3:健康長寿ネット『介護保険の福祉用具:認知症老人徘徊感知機器』
適度な運動の時間を取り入れる
認知症の人が徘徊しないように、適度な運動を習慣づけるのもおすすめの予防法です。
日中であれば地域の人の目にも止まりやすい一方で、夜間徘徊は見つかりにくいものです。
そこで日中に散歩の時間を取り入れれば、生活リズムが整います。
そもそも日中寝たきりのケースはとくに、夜に動ける元気が残っているため夜間徘徊につながってしまいます。
起床後にラジオ体操をするのもおすすめです。
散歩の付き添いが難しい人はラジオ体操であれば、第一・第二あわせても6分程度で終わります。
昨今では動画配信サイトで音源が映像込みで投稿されているため、家族一同の習慣として始めてみてはいかがでしょうか。
デイサービスのような介護サービスを利用する
徘徊を予防するために、環境を整えたり適度な運動時間を確保したりしながらサポートするのが難しい人は、介護サービスの利用がおすすめです。
夜間対応型の訪問介護やショートステイの利用も選択肢にあげられます。
夜間対応型訪問介護は、定期的な巡回や排せつ介助などのサポートを提供しており、夜間の健康管理や安全対策になります。
ショートステイは一時的な入所施設であり、家族が休息を取る間に認知症の高齢者の世話をしてくれるのが特徴です。
福祉サービスの利用により、認知症による徘徊のリスクを軽減できます。
いいケアネットでは、老人ホーム探しのための入居無料相談を受け付けています。
「専門的なサポートが受けられる環境にお願いしたい」という人も含め、気兼ねなくご相談ください。
徘徊が起きてしまった場合の対処法
もし親が徘徊してしまったら、まずはパニックにならずに冷静な判断をしましょう。
自宅周辺や頻繁に行く場所、覚えている番号や人物の情報を把握し、周囲の人に協力を要請するのが重要です。
具体的には、警察への捜索願や自治体の役所への通報など、関係機関へ捜索協力を依頼しましょう。
徘徊のおそれがある場合は、各自治体のSOSネットワークへ事前に登録しておくと捜索がスムーズになる可能性があります。
徘徊が頻回だったり、1人で帰宅できなくなったり、ヒヤリとする行動が増えたと感じたら、なるべく早く老人ホームへの入居を検討しましょう。
以下の記事では、実際に徘徊を予防する目的で老人ホームに入居した人の話を紹介しているので、あわせてご覧ください。
関連記事:ご入居事例紹介 ~危険な徘徊の日々から、安心生活へ!~
参考:横浜市『認知症高齢者等SOSネットワーク』
徘徊の危険性を未然に防いでいこう!【まとめ】
徘徊とは、認知症の高齢者による行動の1つで、多くのリスクが伴い、適切な対応が求められます。
特に夜間徘徊は事故のリスクが高まるため、自宅内の環境整備や福祉サービスの利用を検討しましょう。
もし、認知症の親が徘徊してしまった場合は、冷静・迅速に関係機関や警察へ通報するのが大切です。
徘徊の頻度が増えてきて危険を感じるようになったら、老人ホームや施設への入居も視野に入れましょう。
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この記事の監修者
いいケアネット事務局
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