「家族が最近物忘れがあり、認知症かそれ以外の症状なのかがわからない」
「被害妄想や睡眠障害などが見られて何かの病気なのかが心配……」などと、自宅に高齢者がいる方は不安に感じた経験もあるでしょう。
その症状「老年期障害」の可能性もあり、早期の発見と治療、ケアができるかが重要になります。
本記事では老年期障害の症状や発症の原因、よくある特徴を解説します。
特徴を把握した上で講じられる予防方法も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
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老年期障害とは
老年期障害とは、加齢に伴って心身に現れるさまざまな障害や症状を総称したものです。
「老年症候群」とも呼ばれており、とくに75歳以上の後期高齢者が発症しやすい症状です。
身体的な衰えだけでなく、認知機能の低下や精神的な不調も含まれます。
なお、老年期障害は以下3つに分類されています。
急性疾患症状 | 応急対応、トリアージ能力(限界を知る)、連携力(人脈、実績など)が求められる |
慢性疾患症状 | 日常対応、悪化時指示、終末期徴候との見分けが求められる |
廃用症候群 | 理解と応援依頼(家族、ヘルパー、看護)、リハビリ介入、全身波及を防ぐ技能が求められる |
参照:国立長寿医療研究センター「高齢者のニーズに応える在宅医療」
老年期障害の症状
老年期障害の症状は、加齢に伴って以下のような身体的・精神的な症状が見られます。
分類 | 内容 |
身体的な症状 | 【高齢者に多い症状】
骨粗鬆症・褥瘡・廃用症候群・排尿障害・視力低下・難聴・嚥下障害・誤嚥・ 【高齢者でなくても発症する症状】 咳・痰・呼吸困難・肩こり・だるい・手足のしびれ・ふらつき・転倒しそうになる・ |
精神的な症状 | 【高齢者に多い症状】
認知機能障害・せん妄など 【高齢者でなくても発症する症状】 意識障害・抑うつ・不眠 |
なお、以下のような症状は老年期障害と混合しやすいため、注意してください。
- 耳の聞こえにくさ
- 目の見にくさ(主に夕方から)
- トイレに行く回数の多さ
上記の症状は生理的または病的老化からくる症状の可能性が高く、老年期障害とは異なるケースもあります。
ホルモン減少のように老年期障害と関連性の高い症状もあるため、自己判断が難しいのも特徴の1つです。
老年期障害になる原因
老年期障害が発症する原因は、加齢に伴った身体機能の低下やストレスなどが関係しています。
老年期障害が発症する原因になり得る可能性が高い概要を以下の表でまとめました。
要因 | 内容 |
身体的要因 | 年齢に伴う身体機能の低下、筋力や柔軟性の減少、視力や聴力の衰え、慢性疾患や生活習慣病の進行 |
心理的要因 | ストレスの蓄積、退職による社会的役割の喪失、孤独感やうつ症状の影響 |
社会的要因 | 家庭や地域からの支援不足、医療や介護の機会減少、家族や友人との交流減少による認知機能の低下 |
遺伝的要因 | 家族に同様の障害を持つ方がいる場合のリスク増加 |
上記の通り、さまざまな要因が考えられるため、原因を把握した上での予防を講じる必要があります(後述で詳しく解説)。
老年期障害の特徴
老年期障害になった方は、以下のような特徴が見られます。
- うつ症状や認知症のような症状がある
- 被害妄想や睡眠障害になりやすい
- 疲れやすく肩や腰などに痛みがある
- 身体機能が低下して病気につながりやすい
- 生活習慣病につながりやすい
家族が老年期障害になっているか、少しでも判断がつくよう、それぞれの特徴を詳しく解説していきます。
特徴1.うつ症状や認知症のような症状がある
老年期障害になった方は、うつ病や認知症のような症状が見られるケースが大半です。
主に以下のような特徴や影響が見られます。
症状の種類 | 主な特徴 | 影響 |
うつ症状 | 気分の落ち込み、興味や喜びの喪失、無気力感 | 日常生活への大きな影響、社会的孤立 |
認知症症状 | 記憶力の低下、判断力の欠如、言葉の理解や使用の困難 | 日常的な会話や意思決定への支障 |
また、上記の症状は互いの関連性も高く、うつ症状が認知症の進行を加速させる可能性もあります。
家族が老年期障害の特徴に気づき、早期の発見や対応ができるよう、専門家による診断、ケアを受けるのが大切です。
老化によるストレスや社会的な役割の喪失などが影響している場合が多いため、大きな変化が伴った際は注意深く本人を観察しましょう。
関連記事:老人性うつの場合どうすれば良いの?症状や認知症との違いなどを解説
特徴2.被害妄想や睡眠障害になりやすい
老年期障害は、精神的な健康に影響を及ぼすケースも多く、中でも被害妄想や睡眠障害はよく見られる特徴です。
被害妄想は、他者からの攻撃や中傷を実際以上に感じ取り、不安や恐怖を抱きやすくなる状態を指します。
日常生活の中での他者とのコミュニケーションを難しくし、さらなる孤立感を生む悪循環に陥りやすいのが特徴です。
また、睡眠障害も老年期障害の特徴の1つとして挙げられます。
深い眠りが得られず、夜中に何度も目が覚めたり早朝に目が覚めたりする症状が多く見られます。
睡眠障害は、老年期障害におけるホルモンバランスの変化や、ストレスの増加が原因となるケースが多いため、適切な対策が必要です。
被害妄想や睡眠障害が進行すると、先述で紹介したうつ症状や認知症のリスクも高まるため、早期の対応が重要です。
特徴3.疲れやすく肩や腰などに痛みがある
老年期障害の特徴として、体の疲れやすさだけでなく、肩や腰などに痛みを感じるケースもあります。
「フレイル」とも呼ばれる症状の1つで、筋力低下や疲労感、歩行速度・身体活動量の低下などが挙げられます。
なお、症状が発症する主な原因は以下の通りです。
- 加齢に伴った筋力や柔軟性の低下
- 姿勢の変化
- 不適切な体の使い方
とくに筋肉や関節の衰えは、日常生活における動作を困難にし、疲労を感じやすくなります。
老年期障害による疲れは、慢性的な疲れになるのも特徴です。
肩や腰の痛みも、筋肉や関節の炎症、骨格の歪み、さらには神経の圧迫などが原因で起こります。
体の疲れやすさ、肩や腰に痛みなどの特徴が見られる方は、適切な運動習慣の構築や、専門家による体のメンテナンスが重要です。
痛みが続く場合は、医師の診察を受け、適切な治療をしてもらいましょう。
特徴4.身体機能が低下して病気につながりやすい
老年期障害の方は、身体機能が低下した結果、病気につながりやすい特徴もあります。
身体機能の低下に伴って発症する可能性がある病気の一例は以下の通りです。
病名 | 特徴 |
骨粗鬆症 | ・骨の強度が低下し、骨折しやすくなる。
・生活の質が低下し、寝たきりになる可能性がある。 |
労作性狭心症 | ・階段や坂道で胸の痛みが生じる。
・圧迫感や絞扼感が特徴。 |
心筋梗塞 | ・心筋への血流が完全に途絶えて壊死する。
・胸の重苦しさや冷や汗、吐き気が現れる。 |
心臓弁膜症 | ・弁が狭窄(きょうさく)または閉鎖不全を起こし、血流が妨げられる。
・息切れや胸の痛みが特徴。 |
心不全 | ・心臓のポンプ機能が低下し、呼吸困難やむくみが生じる。 |
閉塞性動脈硬化 | ・手足の血管が狭くなり、冷感やしびれが生じる。
・重症化で潰瘍や壊死の恐れ。 |
不整脈 | ・めまいや失神を引き起こす。
・心臓の拍動が不規則になる。 |
脳卒中 | ・脳の血管が詰まるか破れ、機能障害が生じる。 |
関連記事:高齢者に多い病気ランキング5選!病気になりやすい理由も解説
特徴5.生活習慣病につながりやすい
老年期障害になると、生活習慣病につながりやすい特徴も挙げられます。
年齢を重ねると、代謝の低下やホルモンバランスの変化が生じ、肥満や高血圧、糖尿病など、生活習慣病のリスクが増加します。
運動不足は筋力の低下や体脂肪の増加を促し、心臓病や脳卒中の危険性も高めるため注意が必要です。
また、不規則な食生活は血糖値や血圧を変動させ、健康状態を悪化させる要因となります。
さらに、ストレスや睡眠不足も生活習慣病の発症に影響を与えるため、日常生活の中でのストレス管理や十分な休息も重要です。
老年期障害を持つ方は生活習慣病にかかりやすく、健康的なライフスタイルを意識し、適切な予防策を講じるのがおすすめです。
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老年期障害の予防方法
老年期障害の症状を予防するためにも、以下の方法を講じるのがおすすめです。
- 適度な運動を促す
- バランスの良い食事を心がける
- 趣味や地域活動などに積極的に参加してもらう
それぞれ詳しく解説していきます。
適度な運動を促す
適度な運動を促すのは、老年期障害の予防法として重要な役割を果たします。
運動は身体機能の維持や改善に寄与し、筋力や柔軟性を向上させると、転倒リスクの低減につながります。
たとえば以下のような運動は、低負荷なため継続しやすい運動です。
- ウォーキング
- 軽いストレッチ
- ラジオ体操
- 太極拳など
また、運動は認知機能の維持にも有効であるとされています。
脳への血流が増加し、神経細胞の成長を促進するホルモンが分泌されるため、認知症のリスクを減少させる可能性があるのです。
家族や介護者も一緒に運動を楽しむと、支援を受ける高齢者のモチベーションを高め、継続的な取り組みをサポートできます。
関連記事:高齢者こそ有酸素運動をすべき!メリットやウォーキングの注意点
バランスの良い食事を心がける
バランスの良い食事も、老年期障害の予防方法になります。
とくに高齢者は体の機能が徐々に低下し、栄養素の吸収効率も下がるため、必要な栄養素をしっかりと摂取するのが健康維持にかかわります。
以下の栄養素を積極的に摂取するのがおすすめです。
栄養素 | 推奨食品 |
たんぱく質 | 魚、鶏肉、豆類 |
ビタミンD・カルシウム | 牛乳、乳製品、緑黄色野菜 |
食物繊維 | 野菜、果物 |
食事のバランスを気をつけると、老年期障害における生活習慣病のリスクを減少させ、全体的な健康状態を向上させられる見込みが高まります。
塩分や糖分の摂取を控えめにし、適度な水分補給を心がけましょう。
趣味や地域活動などに積極的に参加してもらう
高齢者が趣味や地域活動に積極的に参加するのは、老年期障害を予防する上で効果的です。
身体的な健康だけでなく、心の健康にも良い影響を与えます。
たとえば以下のような活動を取り入れてみましょう。
活動 | 見込める効果 |
創作活動 | 脳の活性化、認知症予防 |
地域活動への参加 | 社会とのつながり維持、孤立感やうつ状態の防止 |
地域イベント・ボランティア活動 | 新しい友人作り、コミュニケーションの機会増加 |
ウォーキングクラブ・ガーデニンググループ | 身体を動かす機会、適度な運動 |
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関連記事:高齢者と子どもが交流できる遊び10選!盛り上がるゲームやふれあいの効果も解説
老年期障害のサポートが不安な方はいいケアネットにご相談ください!【まとめ】
老年期障害は、身体的・精神的な症状が見られ、加齢に伴った身体機能の低下やストレスによるうつ症状などが挙げられます。
認知症のような症状や被害妄想、睡眠障害などの特徴もあります。
疲れやすさや生活習慣病を含めた病気につながる特徴が見られる方もいるため、早期の発見と治療、ケアができるかが重要です。
普段仕事が忙しく、満足のいく介護ができていない方にとって、専門家によるサポートを求めるタイミングも見極めなければいけません。
なお、いいケアネットでは、老人ホーム探しのための入居無料相談を受け付けています。
「老年期障害の症状があるのか専門家の意見が聞きたい」と考えている方も含め、気兼ねなくご相談ください。

この記事の監修者
いいケアネット事務局
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