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老人ホームにおける誤嚥性肺炎の予防対策|主な原因や現場での課題も解説

肺炎は高齢者に多い死因の一つで、その大半を占めるのが「誤嚥性肺炎」です。誤嚥性肺炎は、食べ物や唾液が誤って気管や肺に入ることで起こる疾患で、加齢による嚥下機能の低下や口腔内の衛生状態が影響しています。高齢者が集まる老人ホームでも、日常的なケアや予防策が不可欠です。

今回は、誤嚥性肺炎の原因や老人ホームにおける具体的な予防策について解説します。誤嚥性肺炎のリスクが心配な方は、ぜひ参考にしてください。

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老人ホームで誤嚥性肺炎を発症するリスク

老人ホーム 誤嚥性肺炎

高齢者が集団生活を送る老人ホームでは、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。誤嚥性肺炎は加齢による嚥下機能の低下に加え、持病や口膣内の細菌が要因となり、発症すると重症化しやすいのが特徴です。

老人ホームで誤嚥性肺炎を発症するリスクについて、詳しく見ていきましょう。

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目次

誤嚥性肺炎の死亡率は約60%

誤嚥性肺炎は、肺炎のなかでも高い致死率を誇る病気です。厚生労働省が公表しているデータによると、死亡率はおよそ60%にも及ぶとされています。とくに、高齢者の場合は発症から短期間で症状が進行するケースが多いため注意が必要です。

誤嚥性肺炎の死亡率が高い背景には、体力や免疫力の低下、基礎疾患などが影響しています。高齢者の誤嚥性肺炎によるリスクを減らすためには、老人ホームにおける日常的な観察とケアが不可欠だといえるでしょう。

参考:厚生労働省『令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概況 第6表 性別にみた死因順位(第10位まで)別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合』

誤嚥性肺炎で入院した高齢者は回復の見込みが少ない

誤嚥性肺炎で入院した高齢者は、治療を受けたあとも元の生活レベルに回復するのが難しい場合があります。退院日を起点とした生存期間の中央値は約1年、退院から5年後の生存割合は13%という調査データもあります。

高齢者の場合、誤嚥性肺炎を発症すると、嚥下機能のさらなる悪化を招くだけではなく、体力や筋力が低下して寝たきりになるリスクが高まります。入院を防ぐためにも、予防対策に努めることが大切です。

いいケアネットでは、老人ホーム探しのための入居無料相談を受け付けています。基礎疾患を抱えている方や、誤嚥性肺炎による入院歴がある方でも、ぜひ気軽にご相談ください。

▼ 高齢者の肺炎については、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:高齢者の肺炎について詳しく解説!

参考:国立大学法人浜松医科大学 社会福祉法人聖隷福祉事業団『誤嚥性肺炎で入院した高齢者の退院後の生存期間中央値は約1年と短く、経口摂取が困難な場合は特に短い』

誤嚥性肺炎の原因

老人ホーム 誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎は、さまざまな要因が複合的に絡み合って発症します。なかでも、誤嚥性肺炎の原因とされているのが、虫歯や歯周病、嚥下反射機能の低下、基礎疾患です。

以下で、それぞれ詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。

虫歯や歯周病

虫歯や歯周病などの口腔内トラブルは、誤嚥性肺炎のリスクを高める大きな要因です。虫歯や歯周病があると、口腔内に細菌が増殖するためです。唾液や食べ物に混ざって細菌が誤って気道に入ると、肺に炎症を引き起こします。

とくに、歯磨きが不十分な場合や入れ歯を使用している場合は、虫歯や歯周病による誤嚥性肺炎のリスクが高まります。高齢者は口腔内の手入れが行き届かないことも多いため、必要に応じて周囲の協力が必要です。

嚥下反射機能の低下

嚥下反射機能とは、食べ物を飲み込んだり、異物を外に押し出したりする体の反応です。高齢になると、嚥下反射機能が徐々に低下し、誤嚥が起こりやすくなります。また、咳をして異物を排出する咳反射も衰えるため、細菌が肺まで到達しやすくなることも要因の一つです。

嚥下反射機能の低下は、筋力が衰えるほど進行します。この場合、専門家による嚥下機能の評価が必要になります。

基礎疾患

誤嚥性肺炎は、脳梗塞やパーキンソン病、認知症などの基礎疾患を抱える高齢者に多く見られる病気です。

これらの基礎疾患は、嚥下反射機能を低下させるだけではなく、全身の免疫力や呼吸機能を弱らせるため、高齢者は誤嚥した異物を排除できなくなります。そのため、肺に炎症が起きやすくなり、同時に重篤化するリスクも高まります。

基礎疾患がある高齢者は、日常の健康管理に加えて、医師や看護師、歯科医との連携を密にすることが大切です。

▼ 高齢者に多い病気について知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

関連記事:高齢者に多い病気ランキング5選!病気になりやすい理由も解説

老人ホームにおける誤嚥性肺炎の予防策

老人ホーム 誤嚥性肺炎

老人ホームでは、高齢者の健康を守るために誤嚥性肺炎の予防策が講じられています。老人ホームにおける主な予防策は、以下の5つです。

  • 口腔のセルフケア
  • 訪問歯科の利用
  • 首・口元・舌のトレーニング
  • 食事中の姿勢の見直し
  • 調理方法の見直し

それぞれ詳しく見ていきましょう。

口腔のセルフケア

老人ホームにおける誤嚥性肺炎の予防には、入居者自身による口腔ケアが欠かせません。歯磨きやうがいを習慣化できると、口腔内の細菌の増殖を抑え、肺への侵入を防ぎます。歯間ブラシやフロス、舌ブラシ、マウスウォッシュなど、口腔のセルフケアにはさまざまな役立つアイテムがあります。

ただし、老人ホームの入居者はセルフケアが難しいケースもあるため、介護スタッフによる声掛けやサポートが不可欠です。歯ブラシの使い方を指導したりタイミングを管理したりして、本人の自立を促しながらケアに努める必要があります。

▼ 口腔ケアの方法を詳しく知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。

関連記事:知らないと怖い!?正しい口腔ケアの方法をご存知ですか?

訪問歯科の利用

訪問歯科の利用も誤嚥性肺炎予防に有効です。老人ホームに入居している高齢者は、自力で歯医者に通院するのが難しいケースも少なくありません。

訪問歯科では、歯科医師や歯科衛生士が施設を訪れ、口腔内の状態を診察・治療し、適切なケアを実施します。これにより、虫歯や歯周病の早期発見、入れ歯の調整、歯石の除去など、口腔内の衛生状態を良好に保てます。

また、介護スタッフに対する口腔ケアの指導を通じて、施設全体の予防意識向上にもつながるでしょう。訪問歯科の継続的な利用が良好な口腔状態の維持に直結します。

首・口元・舌のトレーニング

首・口元・舌を鍛えるトレーニングを日常的に取り入れると、飲み込む力の維持につながります。代表的なのは「パタカラ体操」や「嚥下体操」と呼ばれるトレーニングで、発声や咀嚼運動を通じて口腔周囲の筋肉を鍛える方法です。簡単な動きなので高齢者でも取り組みやすく、継続することが大切です。

老人ホームでは介護スタッフがトレーニングを毎日のケアに組み込んだり、レクリエーションとして取り入れたりすると、楽しみながら予防効果を高められます。

▼ パタカラ体操のやり方については、以下の記事を参考にしてください。

関連記事:嚥下訓練のパタカラ体操とは?効果や目的・具体的なやり方を解説

食事中の姿勢の見直し

食事中の姿勢を正しく保てると、誤嚥のリスクを大きく減らします。椅子に座る際は背筋を伸ばし、足裏がしっかり床についた状態を保つことが理想です。

椅子やテーブルの高さが合っていないと、首が前に傾きやすくなり、食べ物が気道に入りやすくなります。姿勢が崩れやすい方には、背当てクッションや足台などの補助具を活用するのも効果的です。

老人ホームでは食事前にスタッフが姿勢を確認し、必要に応じて調整する体制を整えることで、誤嚥を未然に防げます。

調理方法の見直し

高齢者の嚥下機能に合わせた調理方法も、誤嚥性肺炎を予防する上で重要です。とろみをつけた飲み物や、きざみ食、やわらか食など、食べやすい形態に工夫すると、飲み込みやすさが向上します。

調理担当者と介護スタッフ、栄養士が連携し、入居者一人ひとりの状態に応じた食事の提供体制が理想です。また、食事の見た目や味にも配慮できると、食欲の維持にもつながります。

いいケアネットでは、老人ホーム探しのための入居無料相談を受け付けています。一人ひとりの状態に合った老人ホームを比較・検討したい方は、ぜひ気軽にご相談ください。

▼ 咀しゃくしやすい食事については、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:咀しゃくしやすい介護食を作るには?考え方のポイントと基本の作り方

老人ホームは誤嚥性肺炎に対応できる施設を選ぼう【まとめ】

老人ホーム 誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎の予防には、老人ホームの対応力も大きく関係します。医師や看護師との連携、嚥下訓練の実施、口腔ケアの体制など、環境が整っている老人ホームを選ぶことで、誤嚥性肺炎のリスク軽減が可能です。

老人ホームを見学する際は、誤嚥予防への取り組みや介護スタッフの対応などを確認するのがポイントです。高齢者の健康と尊厳を守るためには、老人ホーム選びから慎重に行う必要があります。

大阪を中心に、多数の高齢者向けの介護施設の情報を掲載する「いいケアネット」では、老人ホームに関する疑問やまつわる情報を「いいケアジャーナル」で随時更新中です。

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