将来の介護の備えとして、介護保険制度の理解は重要です。介護保険制度は、要介護状態になった場合に適切な介護サービスを受けられる制度になります。
とはいえ、制度ということもあり内容が複雑でわかりにくいと感じる方も少なくありません。介護保険制度は、3年ごとに見直されるため、都度チェックをしておく必要があります。
本記事では、2021年に施行された介護保険制度の改正内容をわかりやすく解説します。これまでの歴史や2024年の改正内容もまとめているので、将来に備えて介護に関する知識を深めたい方は参考にしてください。
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介護保険制度とは
介護保険制度とはわかりやすくいうと、介護が必要になった人が適切な介護サービスを受けられるように社会全体で支え合う制度です。介護保険制度は社会保険方式となっており、保険者は市町村です。
要介護認定を受けた被保険者は介護サービスを利用する際、所得に応じて1割〜3割の利用料を負担し、残りの9割〜7割を保険者の市町村が負担します。介護保険制度は、高齢化や核家族化による家族間の介護問題により成立した制度です。
▼介護法の目的や仕組みについては、以下で詳しく解説しています。
関連記事:介護保険法をわかりやすく解説|目的や制度の仕組み、最新の改正まで
介護保険制度改正の歴史まとめ
介護保険制度は、2000年に介護保険法が成立したことで始まりました。制度は改正を重ね、介護に関する課題解消に向けた取り組みを実施しています。
介護保険制度改正の歴史は、以下のとおりです。
改正年度 | 主な改正内容 |
---|---|
2000年 | 介護保険制度の施行 |
2005年 | 地域包括ケアシステムの導入 |
2011年 | 認知症対策の強化 |
2014年 | サービス利用基準の見直し |
2017年 | 高所得者の負担増加 |
2020年 | ICT活用と業務効率化 |
介護保険制度は、改正にともない介護保険料も増加しています。介護保険料が増加した原因は、高齢化や給付額の増大が影響しています。
▼介護保険制度のこれまでの歴史については、以下で詳しく解説しています。
関連記事:介護保険制度はいつから始まった?目的や背景、歴史まで徹底解説
介護保険制度は3年ごとに見直しされている
介護保険制度は時代の変化に対応するため、3年ごとに見直しがされます。日本は年々少子高齢化が進み続けており、著しく変化する社会のニーズや財源確保のために臨機応変な対応が必要です。
3年ごとの改正では自己負担額の見直しや介護サービスの質の向上などを図り、少子高齢化でも適切なサービスが受けられるよう改善されています。介護サービスを利用する場合に影響を受ける場合もあるため、今後の動向にも注意しましょう。
2021年に施行された介護保険制度改正ポイント
介護サービスを利用する被保険者が知っておきたい、2021年における介護保険制度の改正ポイントは以下の5つです。
- 福祉用具のレンタル価格の透明化
- 高額介護サービス費支給制度の上限額引き上げ
- 地域包括ケアシステムの推進強化
- 地域の特性に応じた認知症施策・サービス提供を促進
- 医療・介護に関するデータベースの整備
介護保険制度の改正について、理解を深めたい方は参考にしてください。
福祉用具のレンタル価格の透明化
2021年の改正では、福祉用具のレンタルを適正価格で利用できるよう改善されました。介護保険制度のサービスでは、車いすや介護ベッドなどの福祉用具のレンタルが可能です。
しかし、これまでは福祉用具は適正価格や相場感といったものが一般的に知られていないため、悪質な業者が価格を吊り上げてしまうことも可能でした。そこで全国平均の貸与価格を公表するほか、福祉用具レンタル価格の上限を設定しました。
高額介護サービス費支給制度の上限額引き上げ
2021年の介護保険制度の改正では、高額介護サービス費支給制度の上限が引き上げられました。高額介護サービス費支給制度とは、1カ月間に支払った利用者負担の合計が負担限度額を超えてしまった際に、 超過分を払い戻す制度です。
2021年の改正で、高額介護サービス費支給制度の上限額が従来の一律44,400円から、年収により自己負担額が増加するように見直しされました。
そのため、年収が多い人ほど自己負担額が多くなったのです。ただし、年収約770万円未満は44,400円のまま据え置きになります。
参考:厚生労働省|令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます
地域包括ケアシステムの推進強化
地域包括ケアシステムとは、市町村や都道府県が主体となって医療・介護・生活支援などを一体的に提供する仕組みのことです。少子高齢化が進む中でも、高齢の方が馴染みのある場所で自分らしい生活を送り続けるために、地域包括ケアシステムは必要不可欠な仕組みになります。
介護に関する問題は、要介護者だけではなく家族側の時間や収入の問題も関わってきます。2021年の改正では介護の問題を抱える人を支えるため、相談窓口を1つにまとめて、相談しやすい地域包括ケアシステムを目指しました。
地域の特性に応じた認知症施策・サービス提供を促進
2021年の介護保険制度の改正では、認知症施策の推進と介護サービス提供体制の整備が推進されました。認知症施策については、地域の認知症患者への支援体制の整備や予防の調査研究の推進などが追加されています。
また、介護サービス提供の整備では、高齢者の増加や介護サービスのニーズを中長期的に見据え、計画的に設備を進める必要があります。そのため、有料老人ホームおよびサービス付き高齢者向け住宅の設置状況が追加されました。
さらに、有料老人ホームの情報把握を目的に、都道府県・市町村間の情報連携強化などの取り組みから、介護サービス提供体制を整備しています。
医療・介護に関するデータベースの整備
2021年の改正では、介護分野のデータ活用促進のため、以下の開示要求が可能になりました。
- 現行収集している要介護認定情報・介護レセプト等情報
- 所・訪問リハビリテーションの情報
- 高齢者の状態やケアの内容等に関する情報
- 地域支援事業の利用者に関する情報
医療・介護利用者の情報をデータ化し、介護サービスなどで利用するサービスの活用を推進しています。つまり、データ情報をもとに、利用者のニーズに適したサービスの提供に取り組んでいます。
2024年に施行された介護保険制度改正のポイント
ここでは、2024年に施行された介護保険制度のポイントを解説します。2024年の改正ポイントは、以下の4つです。
- 利用料増加の可能性
- 地域包括ケアシステムの推進
- 自立支援・重度化防止への対応
- 制度の安定性・持続可能性の確保
2024年はどのような改正があったのか知りたい方は、参考にしてください。
利用料増加の可能性
2024年に施行された介護保険制度の改正では、介護サービス利用料増加の可能性が考えられます。利用料増加の背景には、介護現場における人材確保が目的です。
ただし、介護サービスの利用者の負担が過重にならないようにしています。所得に応じて設定した自己負担額が一定額を超えた場合、申請により払い戻される仕組みが採用されているのです。そのため、介護サービス利用料の負担が目に見えて大きくなる可能性は極めて少ないといえます。
参考:厚生労働省老健局老人保健課|介護保険最新情報のVol.1252
地域包括ケアシステムの推進
2024年の改正では、認知症の方や単身高齢者などの高齢者が住み慣れた地域で、ケアマネジメントやサービスを受けられる取り組みを推進しています。そのための取り組みは、以下のとおりです。
- 質の高い公正中立なケアマネジメント
- 在宅における医療ニーズへの対応強化
- 高齢者施設等における医療ニーズへの対応強化
- 高齢者虐待防止の推進
- 認知症の対応力向上
2024年の介護保険制度では安心して暮らし続けられるよう、支援体制を許可する施策が新たに追加されました。
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自立支援・重度化防止への対応
2024年の介護保険制度では、自立支援・重度化防止への対応として、データ活用を推進しています。具体的な取り組みは、以下のとおりです。
- リハビリテーション・口腔・栄養の一体的取組の推進
- 介護老人保健施設における在宅復帰・在宅療養支援機能の促進
- LIFEへのデータ提出頻度の見直し
LIFEとは、全国の介護施設や事業所で登録されているシステムです。利用者の認知症や栄養、嚥下など心身状態やプランの内容を事業者へフィードバックします。フィードバックにより、利用者は質の高いケアを受けられるようになります。2024年の改正では、LIFEのデータを3カ月に1回提出することを統一しました。
制度の安定性・持続可能性の確保
2024年の介護保険制度改正では、制度の安定性と持続可能性の確保として、利用者が安心してサービスを受けられる制度の構築を推進しています。具体的な改定内容は、以下のとおりです。
- 評価の適正化
- 報酬の簡素化
報酬の簡素化では、小規模介護老人福祉施設などの範囲について、見直しが実施されます。高齢化が進む日本において、介護保険制度の維持を目的とした見直しです。
2021年の介護保険制度改正を参考にして今後の動向に注目しよう【まとめ】
介護保険制度は、介護サービスの需要と供給のバランスを整えるために重要な制度です。
2021年や2024年と、介護保険制度は改正されています。介護保険制度は3年ごとに改正されるため、将来の介護の備えとして、施行後のチェックは重要です。
介護保険制度について疑問があった場合は、地域包括支援センターへ相談するとわかりやすく説明してくれるため、訪れてみるのもおすすめです。介護保険制度は、少子高齢化の日本において大切な内容になるため、2021年の改正を参考にして今後の動向にも注目しましょう。
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