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老健と特養の違いは入居期間だけじゃない!入居条件や費用などの違いを解説

介護が必要な高齢者の入居先の候補として、老健(介護老人保健施設)特養(特別養護老人ホーム)があります。どちらも介護保険が利用できる施設ですが、老健はリハビリを中心とした短期的な利用が前提で、特養は長期的な介護を必要とする方のための施設です。

しかし、入居条件やサービス内容、費用の違いを理解して、適した施設を選ぶのは簡単ではありません。本記事では、老健と特養の違いや居室のタイプについて詳しく解説しています。その方の状況に合わせた施設選びの参考になるので、ぜひ最後までお読みください。

老健と特養は介護保険施設のひとつ

老健と特養は、どちらも介護保険法に基づく公的な介護保険施設です。

老健は在宅復帰を目指す方を対象とした施設です。入院やその他の理由でADLが低下した利用者に対し、リハビリテーションを中心に必要な医療や介護サービスを提供します。医師や看護師が常駐しているため、必要な医療的ケアの提供も可能です。終身の利用ではなく在宅復帰が前提で、在宅復帰率に応じて「超強化型」「在宅強化型」「加算型」「基本型」「その他型」の5つに分類されます。

一方、特養は常時介護が必要な方のための生活施設です。食事や排泄、入浴などの介護サービスや機能訓練、その他の日常生活上の世話を提供します。入所期間に定めはなく、看取り介護も含めた「終の住処」として入所希望者が多い施設です。

老健と特養の違い|入居条件

老健の入居条件
  • 要介護1以上の方
特養の入居条件
  • 要介護3以上の方
  • 特例入所に該当する要介護1・2の方

老健と特養の入居条件の一番の違いは介護度です。老健は要介護1以上の方が対象なのに対し、特養は原則要介護3以上の方が対象になります。

目次

老健の入所条件は「原則要介護1以上」

老健は在宅復帰を目指す施設で、入所対象は要介護1以上の方です。要支援の方は利用できません。医師が常駐しているため、胃ろうや点滴などの医療的ケアを必要とする方も受け入れが可能です。ただし、医療費が施設負担になるため、高額な内服薬が必要な場合は入所を断られることもあります。リハビリへの意欲があり、家庭への復帰を目指す方に適した施設です。

特養の入所条件は「原則要介護3以上」

特養は常時介護が必要な方向けの施設で、原則要介護3以上の方が対象です。要介護1・2の方は以下のように特例入所に該当する場合は入所の対象になることもあります。

  • 認知症や知的障害・精神障害などによって在宅生活が困難な状態である
  • 虐待を受けている
  • 「一人暮らし」「同居家族が高齢又は病弱」などの理由で十分な介護を受けられず、地域の介護サービスも不十分である

また、特養は看護師の配置が日中のみの施設が多く、医師が常駐しているケースも少ないため、点滴や経管栄養など医療依存度の高い方は入所が難しい場合があります。

特養に早く入れる方法についての詳しい解説は、以下の記事をご参照ください。

関連記事:特養に早く入れる方法【9選】施設選びのポイントから入居待ちの対処法まで解説

老健と特養の違い|サービス内容

老健のサービス内容
  • 在宅復帰を目指すためのリハビリが中心
  • 最低週2回以上のリハビリ
  • 超強化型・在宅強化型は3回以上
特養のサービス内容
  • 長期的に過ごすための生活支援が中心
  • 終の住処として看取りまで対応する施設が多い
  • リハビリは機能の評価と維持が目的

老健と特養は、どちらも食事や排泄、入浴などの基本的な介護サービスを提供しますが、施設の目的の違いからサービス内容に特徴があります。老健はリハビリに重点を置き、特養は介護サービスと生活支援が中心です。

老健のサービス内容はリハビリが中心

老健は在宅復帰を目指す施設で、リハビリテーションに重点がおかれています。利用者100人に対して理学療法士や作業療法士などのリハビリスタッフの配置が義務付けられており、利用者は最低週2回以上のリハビリを受けられるのが特徴です。

また、医師が常勤で、看護師が24時間体制で勤務しているため、内服薬の処方や点滴などの医療的ケアがスムーズにおこなえます。主なサービスには、リハビリ、医療的ケア、介護サービス、生活支援、レクリエーションなどがあり、施設によっては看取り対応も可能です。

特養のサービス内容は介護サービスと生活支援が中心

特養は要介護3以上の方が長期的に生活するための施設で、介護サービスと生活支援が中心です。主なサービス内容は、介護サービスや生活支援、健康管理、機能訓練、レクリエーションなどで、多くの施設で看取りまで対応しています。

リハビリは、機能訓練指導員が担当し、身体機能の維持を重視しますが、老健ほど積極的な機能の回復や向上を目指すものではありません。身体機能を維持し、残っている機能を活かしてどう生活するかを考えていきます。

老健と特養の違い|入所期間

入所期間の原則 平均入所期間
老健 3カ月 約10カ月
特養 定めなし 約3年半

老健と特養では、入所期間の考え方に大きな違いがあります。老健は在宅復帰を目指す短期的な利用が前提ですが、特養は長期的な生活の場として位置づけられています。

老健の入所期間は原則3カ月

老健は原則3カ月という短期間の利用が前提です。リハビリを中心とした在宅復帰を目的としているため、3カ月ごとに在宅復帰が可能か、あるいは利用継続が必要かを判断します。厚生労働省の調査によると、老健の平均入所期間は約299.9日(約10カ月)とされており、在宅復帰率が高い施設ほど短期利用となる傾向があります。

特養は長期間の利用が可能

特養には入所期間の定めがなく、長期間の利用が前提となっています。経管栄養や頻回な吸引など、特養で対応できない医療的ケアが必要にならない限り、終身での利用が可能です。厚生労働省の調査によると、特養の平均入所期間は1,285日(約3年半)となっており、老健と比べてかなり長期の利用が一般的です。

老健と特養の違い|職員配置

利用者のケアに関わる職員配置の体制が異なります。老健はリハビリに重点を置くため医療職の配置が手厚く、特養は24時間の介護サービスを提供できる体制が整っています。それぞれの人員配置を見ていきましょう。

老健の職員配置は看護師とリハビリスタッフが手厚い

職種 配置基準
医師 入居者100人に対して1人以上
介護職員または看護職員 入居者3人に対して1人以上
看護職員は介護・看護職員全体の2/7程度
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士 入居者100人に対して1人以上
薬剤師 適当数
介護支援専門員(ケアマネジャー) 1人以上
支援相談員 入居者100人に対して1人以上
管理栄養士または栄養士 定員100人以上で1人以上

老健では、リハビリや必要な方への医療的ケアを提供できる体制が整っています。

特養の職員配置は24時間介護サービスを提供できる体制

職種 配置基準
施設長 1人以上
介護職員または看護職員 入居者3人に対して1人以上
看護師 利用者30名まで 1名以上
31〜50名 2名以上
51〜130名 3名以上
以降50名ごとに1名追加
医師 必要数
機能訓練指導員 1人以上
介護支援専門員(ケアマネジャー) 1人以上
生活相談員 入居者100人に対して1人以上
栄養士または管理栄養士 1人以上

特養は「終の住処」として、穏やかに生活できる環境を提供するため、24時間体制での介護を重視しています。医師は内科や精神科、歯科医などは医療的ケアは必要数の医師が対応するため、利用前に医療体制の確認が重要です。

老健と特養の違い|費用

老健と特養はともに公的施設で、入居一時金は不要です。月額費用は「施設サービス費+食費+居住費+日常生活費」で構成されます。ただし、施設サービス費は介護度や施設の種類によって異なり、食費や居住費も施設ごとに異なります。以下で詳しく見ていきましょう。

なお、介護施設の費用に関する詳しい解説は、以下の記事でも解説していますので、ご参照ください。

関連記事:老人ホームの費用が払えない!原因から対処法まで解説

老健の費用は「施設サービス費+食費+居住費+日常生活費」

老健の月額費用の内訳は以下の通りです。

項目 費用
施設サービス費 約20,000〜105,000円

介護度や施設のタイプ、負担割合によって異なる

食費 基準額:1日1,445円(30日分:43,350円)

負担限度額認定を受けた場合:9,000〜40,800円

居住費 ■ユニット型個室

基準額:2,066円(30日分:61,980円)

負担限度額認定を受けた場合:26,400〜41,100円

■多床室

基準額:437円(30日分:13,110円)

負担限度額認定を受けた場合:0〜12,900円

日常生活費 散髪やその他の必要物品の購入、居室で個別に使用する家電製品の電気代などが含まれ、施設によって異なる

食費や居室代は基準額を参考に各施設で設定しています。また、住民税の課税状況や収入、預貯金によって負担限度額認定を受けられる場合は、費用負担が軽くなります。

【要介護5 1割負担 多床室の場合】

施設サービス費 33,750円
食費 43,350円
居住費 13,100円
合計 90,200円

要介護5で1割負担の方が多床室を利用した場合の月額利用料は、90,210円に日常生活費を足した金額になります。細かい金額設定は各施設によって異なるため、各施設へ確認が必要です。

特養の費用は別途医療費もかかる

特養の場合の月額費用の内訳は以下の通りです。

項目 費用
施設サービス費 約18,000〜90,000円

介護度や施設のタイプ、負担割合によって異なる

食費 基準額:1日1,445円(30日分:43,350円)

負担限度額認定を受けた場合:9,000〜40,800円

居住費 ■ユニット型個室

基準額:2,066円(30日分:61,980円)

負担限度額認定を受けた場合:26,400〜41,100円

■多床室

基準額:915円(30日分:27,450円)

負担限度額認定を受けた場合:0〜12,900円

日常生活費 散髪やその他の必要物品の購入、居室で個別に使用する家電製品の電気代などが含まれ、施設によって異なる
医療費 往診や薬にかかる費用で利用者により異なる

老健同様、食費や居室代は基準額を参考に各施設で設定しています。特養の場合は医師の往診費や薬代などの医療費が別途かかります。

【要介護5 1割負担 多床室の場合】

施設サービス費 26,130円
食費 43,350円
居住費 27,450円
合計 99,930円

要介護5で1割負担の方が多床室を利用した場合の月額利用料は、99,930円に日常生活費や医療費を足した金額になります。老健同様、細かい金額設定は各施設によって異なるため、各施設へ確認が必要です。

居室タイプは老健も特養も4種類

居室のタイプは、老健・特養ともに以下の4種類があります。

  • 従来型個多床室
  • 従来型個室
  • ユニット型個室
  • ユニット型個室的多床室

ひとつずつにていきましょう。

従来型多床室は費用負担が少ない

従来型の施設に設置されている2人〜4人部屋で、最も費用が安い居室タイプです。家具やカーテンで仕切られているものの、同室者の音や匂い、生活音は気になってしまう場合があります。低所得者向けの重要な選択肢です。

従来型個室はプライバシーが保たれて費用も抑えられる

従来型の施設に設置されている個室で、プライバシーが守られ、自分のペースで生活できます。多床室とユニット型個室の中間的な価格帯で、快適さと経済性のバランスが取れた居室タイプです。

ユニット型個室は自分だけの空間で暮らせる

10~15人の小規模なグループで生活するタイプの居室です。個室でプライバシーを確保できます。洗面所はついていますが、トイレの設置は施設によってさまざまです。費用は他のタイプより高額になる場合があります。

ユニット型個室的多床室は大部屋を壁で仕切った個室風のしつらえ

ユニット型個室と従来型個室の中間的なタイプで、大部屋を簡易的な壁で仕切った個室風の居室です。ユニット型個室より費用を抑えられますが、感染症対策とプライバシーへの配慮から新設は認められなくなりました。

まとめ|老健と特養の違いを理解して、より良い施設選びをしよう

老健と特養は同じ介護保険施設に位置付けられていますが、目的が異なるため、入所条件やサービス内容などさまざまな面で違いがあります。本記事を参考に、それぞれの違いを理解して、より良い施設選びをしてください。

いいケアネットでは、大阪を中心に、多数の高齢者向けの介護施設の情報を掲載しています。お身体の状況や医療の必要性、予算などからより良い施設選びをサポートします。まずはお気軽にご相談ください。

 

老健と特養の違いに関するよくある質問

施設を探す際は見学をした方が良いの?

施設を探す際は、見学を必ずおこないましょう。電話や写真ではわからないスタッフや利用者の様子を直接確認できるためです。時間帯は、食事やレクリエーションなど、食堂に人が集まる頃がおすすめです。また、2~3カ所見学し比較すると良いでしょう。予約が必要な場合が多いので、事前に確認する必要があります。

老健と特養の実際の待機期間はどのくらい?

老健の待機期間は通常3〜6カ月程度です。平均入所期間が約10カ月で、定期的に空きが出るためです。一方、特養の待機期間は施設ごとの待機者数によって大きく異なります。老健に比べて計画的な退所が少なく、主に利用者の死亡により空きが出るためです。そのため、1〜2年単位の待機期間になることもあります。

この記事の監修者

いいケアネット事務局

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