介護には予想以上の費用がかかります。しかし、親の介護にかかる費用の支援を求められず、一人で抱え込んで悩んでいる方も多いでしょう。
結論からいうと、親の介護費用は、親の資産を利用したり兄弟間で費用を分担したりといった方法で経済的な負担を減らせます。
今回は、親の介護でお金をもらうための方法や、介護費用について家族間で協議する重要性を説明します。介護に関する補助金についての疑問もまとめて解説するので、より良い選択をするための参考にしてください。
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家族の介護でお金がもらえる制度まとめ【ジャンル別】
介護には多くの時間と労力だけではなく、経済的な負担も伴います。
「補助金」とは、厳密には事業のサポートを目的とした意味を持つ言葉です。そのため、親の介護で利用できる補助金は存在しません。しかし、国や各自治体は、家族の介護費用の負担を軽減するために、さまざまな支援制度を設けています。
以下で、それぞれの支援制度について解説するので、ぜひ参考にしてください。
介護費用を抑えたい
家族の介護費用を抑えたいときにお金がもらえる制度は、以下の5つです。
- 家族介護慰労金(※廃止の可能性あり)
- 高額介護サービス費制度
- 高額療養費制度
- 高額介護合算療養費制度
- 医療費控除
それぞれ詳しく見ていきましょう。
家族介護慰労金(※廃止の可能性あり)
家族介護慰労金とは、介護保険サービスを利用せずに、自宅で1年以上にわたり要介護4〜5に認定された要介護者を介護している家族に対して、自治体から年額10〜12万円が支給される制度です。
ただし、自治体によっては家族介護慰労金の制度を実施していない場合があります。そのため、該当するすべての家族が介護慰労金の支給を受けられるわけではありません。また、制度自体が今後廃止される可能性もあるため、詳しくは自治体の窓口へ問い合わせてください。
高額介護サービス費制度
高額介護サービス費制度とは、1カ月間における介護保険サービスの自己負担額が一定の金額を超えた場合に適用される制度です。
通常、介護保険の自己負担額は利用者の所得に応じて1〜3割となりますが、日常的に介護保険サービスを利用している場合、自己負担額は高額になりがちです。そのため、制度の利用によって、個々の所得や世帯の所得に応じて決められた月々の自己負担上限額を超えた分が介護保険から支給されます。
▼ 高額介護サービス費制度について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:高額介護サービス費とは?基本や計算方法・手続きまでわかりやすく解説
参考:生命保険文化センター『公的介護保険で自己負担額が高額になった場合の軽減措置とは?』
高額療養費制度
高額療養費制度も家族の介護費用を抑えたいときに利用できる制度です。医療費が一定の金額を超えた場合は、高額療養費制度の利用によって超過分を支給してもらえます。
医療機関や薬局で支払う医療費が一定の金額を超えた場合は、加入している公的医療保険に高額療養費の支給申請書を提出しましょう。
高額療養費制度は医療保険に加入しているすべての人が利用可能で、医療費の自己負担額を大幅に軽減できます。
高額介護合算療養費制度
高額介護合算療養費制度とは、医療保険と介護保険の自己負担額が年間を通じて高額になった場合の負担額を軽減するための制度です。
具体的には、医療費と介護費を合算した額が一定を超えた場合に適用され、自己負担額の一部が返還されます。高額介護合算療養費制度の利用によって、家計への負担を大幅に軽減できます。
医療費控除
医療費控除は、年間10万円または所得の5%を超えた医療費について、超過分を税務署に申請すると所得税が控除される制度です。介護保険サービスにかかる自己負担額も医療費控除の対象となるため、介護費用の負担を軽減できます。
医療費控除を申請すると翌年度の所得税が軽減されて、税金の一部が還付されます。なお、制度の利用には、費用の支払い時に受け取る医療費控除対象額が記載された領収書の提出が必要です。
参考:国税庁『No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)』
介護用品を借りたい
家族のために介護用品を借りたい場合に利用できる制度は、以下の2つです。
- 居宅介護住宅改修費制度
- 福祉用具購入費
それぞれの制度について解説するので、ぜひ参考にしてください。
居宅介護住宅改修費制度
居宅介護住宅改修費制度は、自宅を介護に適した環境に整えるための住宅改修費を支援する制度です。具体的には、玄関や廊下、浴室、トイレなどに手すりを設置したり、段差を解消したりする工事が対象です。
居宅介護住宅改修費制度の利用によって、最大20万円までの改修費用が補助金として支給されます。
福祉用具購入費
福祉用具購入費は、福祉用具のレンタルや購入にかかる費用を補助するための制度です。福祉用具購入費の対象は、車いすや介護ベッド、歩行器などを含む13品目です。
介護保険の利用によって福祉用具のレンタル・購入費用の負担が軽減されるため、家族にとっては経済的なメリットが大きいといえます。必要とする福祉用具や補助金額などは、自治体の福祉担当やケアマネジャーに確認してください。
▼ 介護保険制度を利用してレンタルできる福祉用具については、以下の記事で詳しく解説しています。
仕事と介護の両立を目指したい
仕事と介護の両立を目指したい場合は、以下の2つの制度を利用できます。
- 介護休業給付金
- 介護休暇制度
それぞれ詳しく見ていきましょう。
介護休業給付金
介護休業給付金とは、労働者が家族の介護に専念するために、労働を一時的に休止した際に支給される給付金です。
介護休業給付金制度を利用すると、休業期間中に通常の給与の67%が給付されます。給付の上限期間は最長93日間で、条件を満たせば最大3回まで利用可能です。
ただし、介護休業給付金制度を利用するためにはいくつかの条件があります。手続きの詳細については、在職中の事業所を管轄するハローワークに相談してみてください。
介護休暇制度
介護休暇制度は、労働者が家族の介護のために一定の期間、仕事を休める制度です。介護休暇は通常、1年に5日間(一定条件に該当する場合は10日間)まで取得できます。有給か無給かは会社の規定によるものの、短期間でも利用しやすい点が特徴です。
介護休暇制度は、突然介護の必要が生じた場合にも利用しやすく、仕事と介護の両立に役立ちます。具体的な条件や申請手続きについては、会社の人事担当者に確認しましょう。
家族の介護でお金をもらうべき理由
親の介護を引き受ける際、その経済的な負担は必ずしも一人で抱えるべきではありません。なぜなら、親の介護に伴う費用は決して少ないものではなく、支払いが難しい場合もあるためです。
以下で、家族の介護でお金をもらうべき理由を詳しく解説します。
家族の介護はお金がかかる
家族の介護にかかる費用は想像以上に高額です。
2024年度の「生命保険に関する全国実態調査」を見てみましょう。世帯主や配偶者が介護を必要とした場合、初期費用は平均で約209万円、毎月の費用は平均で15.7万円と発表されています。
同調査に基づいて必要資金を考えると、介護費用は誰もが気軽に負担できる額ではないとわかります。
さらに、世帯主または配偶者が要介護状態となった場合の必要期間も考えると、費用はより高額になるでしょう。
なお、介護期間は平均で181.5カ月、つまり約15年です。長期間にわたって毎月15.7万円を支払うとなると、介護費用の合計はかなりの額になります。
▼ 老人ホームの入居費用が払えない場合の対処法について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:老人ホームの費用が払えない!原因から対処法まで解説
参考:生命保険文化センター『2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査』
家族の介護負担を一人で抱え込むべきではない
介護にかかる費用を考えると、家族の介護負担は一人で抱え込むべきではないことがわかります。初期費用や月々の費用、そして長期にわたる介護期間を考慮すれば、介護費用の負担が大きいことは明らかです。そのため、介護費用を一人で負担しようとするのは、財政的にも心理的にも大きなプレッシャーとなるでしょう。
介護は社会全体の課題です。親の介護にかかる費用を支援してもらうことはまったく問題ではありません。
むしろ、賢明な選択といえます。経済的な負担を軽減し、精神的な余裕を持つことで、家族により良い介護を提供できます。
家族の介護でお金をもらう以外の選択肢2つ
介護には大変な労力と時間がかかる一方で、経済的な負担も同時に考慮する必要があります。家族から介護費用としてお金を受け取ることに対して、罪悪感を感じる必要はありません。
家族の介護において、親の年金や預貯金で費用を支払うケースや兄弟で費用を分担するケースを見ていきましょう。
親の年金や預貯金で費用を支払う
親の介護費用は基本的に親本人の資産から捻出されるものです。
ただし、親の年金や預貯金だけで介護費用を支払えない場合は、足りない分を子どもが負担する必要があります。
ただし、注意すべきは、「親の介護は子どもがするもの」「親からお金をもらってはいけない」といった考え方です。確かに子どもが親を介護するのは自然なことではあるものの、親の資産を利用するのは当然の権利であるともいえます。
兄弟・家族で費用を分担する
家族の介護における費用負担を軽減するためには、介護費用を兄弟で分担する選択肢もあります。親のお金で介護費用が支払えない場合、子どもたちが負担を引き受けることが一般的です。ただし、すべての負担を一人が背負うといった意味ではありません。
「遠方に住んでいる」「育児で忙しい」「次男・次女だから」などを理由に、介護を一人の兄弟に任せてしまうのは適切ではありません。
直接的に介護できない場合でも、費用を多めに支払うなどして役割を分担できると良いでしょう。
なお、介護について家族協議する際は、親の資産状況や役割分担について確認するようにしてください。
親の年金・預貯金の金額を確認
介護について家族協議する際は、親の経済状況を正確に把握する必要があります。なぜなら、介護には必ず費用が発生するためです。
前述のとおり、介護の費用は基本的に親の年金や預貯金など、本人の財産から支払うことが一般的です。ただし、親の資産だけでは足りない場合、差額は子どもたちが補てんしなければなりません。
お金に関する会話はデリケートなものになりがちですが、避けてはならない話題です。親にも理解を求めて、事前に十分な話し合いをしておきましょう。
介護に要する時間や労力の確認
親が要介護状態になったときに要する時間や労力についても話し合うことが重要です。国民生活基礎調査のデータによれば、親と同居している介護者の介護時間は、要介護度が高くなるほど多くなる傾向です。同調査によると要介護5の場合では、介護者の約63.1%が「ほとんど終日」介護していると答えています。
どの程度の時間と労力が介護に必要となるかを見極め、家族全員で共有しておくことが重要です。
介護のための役割分担の確認
親の資産状況や介護に要する時間を踏まえ、兄弟間での介護の役割分担について確認しましょう。家族それぞれの事情は異なるものの、すべての兄弟が親の介護に参加する意識を持つことが大切です。
たとえば、「仕事が忙しい」「遠方に住んでいる」などの理由で、直接介護が難しい場合でも、費用を多めに支払うなどして役割を果たせます。一方で、近所に住んでいる、または同居している兄弟は主たる介護者としての役割から、手続きなどの担当になるでしょう。
▼ 親の介護における兄弟トラブルを回避する方法は、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:親の介護を兄弟で分担すべき3つの理由|兄弟トラブル回避の方法も解説
【まとめ】家族の介護でもらえるお金を知って負担を軽減しよう
家族の介護には多くの時間や労力、さらにはお金を使います。そのため、経済的なサポートがなければ、介護を続けることは困難になります。
まずは、家族間での協議を通じて介護の負担を明確にし、公平に分けることが重要です。
協議の際には、誰がどの程度の負担を担うか、介護の範囲や期間などを具体的に話し合いましょう。
さらに、家族の介護でお金がもらえる支援制度を利用すれば、介護費用の一部を補えるため、経済的な負担を軽減できます。親の介護だからといって一人で抱え込む必要はありません。介護についての理解を深め、必要な支援を受けるようにしましょう。
なお、いいケアネットでは、老人ホーム探しのための入居無料相談を受け付けています。家族のために適切な老人ホームを探している方は、ぜひ気軽にご相談ください。
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家族の介護でもらえるお金に関するよくある質問
ここでは、家族の介護でもらえるお金に関するよくある質問をまとめました。
介護で働けないときの補助金は?
家族の介護を理由に働けないときには、介護休業給付金を利用できます。介護休業給付金制度は、介護のために仕事を休んだ場合に、給与の67%が最長93日間支給される制度です。
なお、有給か無給かは企業の規定によるものの、介護休暇の利用も選択肢の一つです。
親の介護でお金をもらうのは良いこと?
親の介護でお金をもらうのは、決して悪いことではありません。
高額介護サービス費制度や高額療養費制度をはじめ、介護負担を軽減するために利用できる制度はさまざまです。公的制度をうまく利用できると、介護負担の軽減につながるメリットがあります。
親の介護でお金をもらう資格は?
親の介護でお金をもらう資格は、利用する制度によって条件が定められています。
たとえば、福祉用具購入費は介護認定を受けた要介護者・支援者が、介護保険制度を利用して福祉用具をレンタル・購入する際に利用できるものです。
また、介護休業給付金は社会保険に加入している方であれば利用可能です。
親の介護でお金をもらうためには、それぞれの制度における利用条件を確認する必要があります。なお、迷う場合は、自治体の窓口や地域包括支援センターに相談しましょう。

この記事の監修者
いいケアネット事務局
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