「兄弟がいるのに、いつも私ばかりが親の介護をしていて不公平……」
「兄弟で役割分担して協力しながら親の介護したい」
と悩みながらも、兄弟でトラブルになりたくないと不満を抱えながら介護をしている方も多いでしょう。
子どもには親の扶養・扶助の義務があるため、兄弟全員で役割分担して親の介護をしなければなりません。
そこで今回は、親の介護で兄弟間のトラブルを回避する方法を紹介していきます。
この記事を読めば、親の介護で兄弟間のトラブルになる原因や解決策がわかり、トラブルを回避できるでしょう。
親の介護で兄弟間のトラブルを回避する方法
親の介護で兄弟間のトラブルを回避する方法には、以下の3つがあります。
- 介護される親の意見や経済状況を把握する
- 介護の方針を兄弟間ですりあわせておく
- 役割分担や負担の範囲を具体的に決める
本章を参考に、親の介護を兄弟間でトラブルなく協力し合える方法を検討してみてください。
介護される親の意見や経済状況を把握する
介護が必要になる前に、親の介護に対する考え方や経済状況を知っておくと良いでしょう。
親の意向や金銭面を把握しておくことで、実際に介護が始まったときのシミュレーションができます。
現実的な見通しがつけられれば、兄弟間での役割分担や費用負担について事前に話し合いもしやすくなるでしょう。
自宅で介護を受けたいのか、施設に入りたいのかなど、世間話や介護の話題が出た時にそれとなく探ってみるとよいかもしれません。
また、介護には多かれ少なかれ必ず費用がかかります。
足りない分は子どもが負担しますが、基本的には親のお金で払うことになっています。
特に、お金の面はトラブルになりやすいため、親にも理解を求めて話し合っておくことが大切です。
介護の方針を兄弟間ですり合わせておく
どのようにして親の介護をしていくのか介護の方針を兄弟間ですり合わせておきましょう。
介護には以下のようにさまざまな選択肢があります。
- 自宅で家族が介護をする
- 介護施設に通所しながらできるだけ自宅で過ごす
- 介護施設に入所する
介護のやり方や方向性について、全員の認識を一致させておけば、後々のトラブルを回避しやすくなります。
親の意見を尊重しながら、兄弟間で認識がずれないように方針について話し合いましょう。
話し合いでは、兄弟それぞれに家庭の事情があることを忘れずに、感情的にならないことが大切です。
役割分担や負担の範囲を具体的に決める
兄弟のうち誰が何をするのか、可能な限り具体的に決めておくことも大切です。役割分担があいまいの状態だと、不公平感や誤解が生じ、トラブルになる可能性があります。
以下のような視点で、兄弟それぞれの役割や負担の範囲を話し合うと良いでしょう。
- 誰がおもに介護するのか
- 介護のサポートは誰がどのくらいするのか
- 費用は誰がどのくらい負担するのか
また、役割分担するときには、誰か一人に役割が集中しないようにするのがポイントです。
たとえば、仕事が忙しい・遠方に住んでいるなどで介護が難しい場合は、介護ができない分、費用を多めに負担するなど不公平感がでないように調整しましょう。
親の介護をめぐり兄弟間でトラブルになった事例
実際に親の介護が始まると兄弟間でトラブルになってしまうケースも多いです。
兄弟間のトラブルに発展するケースとしてよく見られるのは、以下のような事例です。
- 介護の負担が一人に集中してしまう
- 介護の費用を負担しない
これらの問題が発生する背景や解決策について把握しておきましょう。
介護の負担が一人に集中してしまう
兄弟それぞれが仕事や子育ての忙しさを理由に協力しようとせず、兄弟のうち、誰か一人に親の介護を押し付けてしまうケースです。
特に、親の介護は長男がするものという古い考え方により、長男の嫁に親の介護を押し付けるケースがよく見られます。
誰か一人に介護を押し付けることで、押し付けられた兄弟に負担が集中し、ひとりで抱え込んでしまいます。
結果、不満を抱えた兄弟とトラブルに発展してしまうでしょう。
介護の費用を負担しない
収入面や子育てにかかる費用などを理由に、兄弟全員が介護にかかる費用を負担しようとしないケースです。
また、親の介護は長男がするものという古い考え方のもと、長男が介護だけでなく、費用の負担まで押し付けられてしまうケースもあります。
日常的に介護している兄弟からすれば、費用の負担くらいは他の兄弟に協力してほしいと考えるでしょう。
介護する人に経済的な負担が集中すると、兄弟間での金銭トラブルに発展してしまいがちです。
ちなみに、家族の介護費用は公的な制度による補助を受けられる場合があります。詳しくは以下の記事で解説しています。
関連記事:https://jos-senior.com/blog/1547975/
親の介護で兄弟トラブルになる原因
親の介護で兄弟間のトラブルになる原因には、次の3つが挙げられます。
- 親の介護は突然始まるから
- 各家庭で経済的・時間的な問題を抱えているから
- 介護を引き受けた人に想定外の負担がかかるから
トラブルになりやすい原因を事前に把握し、対策法を検討するときの参考にしてください。
親の介護は突然始まるから
多くの場合、病気・怪我による入院や認知症により、突然介護が必要になります。
介護の準備がまったくできていない状態で、兄弟の誰かがとりあえず親の介護を引き受けざるを得ない ケースも多いです。
準備不足のまま介護を始めると、思ってもみない問題やアクシデントに何度も遭遇し、兄弟を巻き込んだトラブルに発展してしまう可能性もあるでしょう。
事前にある程度の準備をしておくのが理想ですが、難しい場合は兄弟間での話し合いだけでも早い段階で進めておきましょう。
各家庭で経済的・時間的な問題を抱えているから
兄弟の各家庭では、次のような多くの問題を抱えていることが多くあります。
- 仕事が忙しく時間がない
- 子どもの学費や生活費で経済的な余裕がない
- 遠方に住んでおり、頻繁に実家に行くのが難しい
親の介護はしなければならないとわかっていても、現実的に介護が難しいと感じることもあるでしょう。
ほとんどの家庭が何かしらの問題を抱えているため、親の介護を押し付け合うことになってしまいます。
兄弟がそれぞれの状況を共有し、できる範囲で協力し合うことが大切です。一方的な押し付けを避けるためにも、具体的な役割や負担を明確にしておきましょう。
介護を引き受けた人に想定外の負担がかかるから
親の介護は、想像しているより大変なことが多いものです。
たとえば、夜間の排せつ介助や徘徊の対応などは、介護する人の睡眠時間が確保できず、心身共に疲弊します。
実際に介護をしている人にしかわからない苦労があるものの、介護していない兄弟からは「自分の親の面倒をみるだけ」と軽視されることも少なくありません。
このような認識のズレを避けるためにも、兄弟間で介護の負担が偏らないよう、事前の調整や情報共有をし合うことが大切です。
兄弟間でトラブル!話し合いで解決が難しいときは?
親の介護をめぐり兄弟でトラブルになり、話し合いでは解決できない場合もあるかもしれません。
兄弟間だけでは解決が難しい場合には以下の2つの方法があります。
- 介護の専門機関に相談する
- 扶養請求調停を申し立てる
万が一トラブルになった場合でも冷静に対処できるよう、事前に解決法を知っておきましょう。
介護の専門機関に相談する
話し合いで解決が難しくなってしまった時は、地域包括支援センターなど介護の専門機関に相談する選択肢があります。
地域包括支援センターは、各市区町村にあり、地域の高齢者やその家族を支えるための公的な相談機関です。
専門の資格を持った職員が、家族の状況に合わせた介護サービスの提案など、解決に向けてさまざまな角度から助言してくれます。
当人たちだけでの解決が難しい場合は、介護の専門機関を頼ると新しい解決策が見出せるかもしれません。
扶養請求調停を申し立てる
扶養請求調停とは、介護にかかる費用などについて、家庭裁判所を通じて話し合いをして解決を図る方法です。
調停では、以下の流れで進行します。
- 兄弟それぞれの経済状況や意向を確認する
- 必要な書類を提出し、証拠を明確にする
- 調停委員が双方の話を聞き、解決策を提案する
合意すれば、調停成立となり決定事項が書面に残ります。合意がされなければ、家庭裁判所による審判により内容が決定されます。
まとめ|親の介護で兄弟間でのトラブルを回避するコツ
親の介護で兄弟トラブルを回避するためには、日頃から兄弟間で介護の方針をすり合わせをして、具体的に役割分担を考えておきましょう。
誰か一人に介護の負担が集中するなど不公平な役割分担をすると、重大な兄弟トラブルに発展する可能性があります。
もし、兄弟だけで話し合っても解決できない場合には、地域包括支援センターなどの専門機関に相談したり、家庭裁判所に扶養請求調停に申し立てをしたりして解決を図る方法があります。
また、親の介護が難しいと感じたら、決して無理をせず、老人ホームの利用なども検討してみましょう。
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親の介護を分担するときによくある質問
どうしたら兄弟間で不公平感なく役割分担できますか?
兄弟で役割分担するときのポイントは、誰か一人に役割が集中しないようにすることが大切です。
仕事が忙しい・遠方に住んでいて介護が難しい場合には多めに費用を負担するなど上手に調整して不公平感がでないようにしましょう。
兄弟間でトラブルになってしまった時はどうすればいいですか?
まずは、冷静に兄弟で話し合って解決するのが望ましいですが、難しい場合には公的機関を利用して解決を図るとよいでしょう。
地域包括支援センターでは、専門の職員が家族の状況に応じた介護サービスなどを提案してくれます。
扶養請求調停では、家庭裁判所で調停委員の提案や助言を受けながら双方の話し合いで解決を図っていきます。

この記事の監修者
いいケアネット事務局
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