高齢者が一人暮らしをしていると、なんらかのタイミングで「もう一人では生活できない」と感じることがあるでしょう。
内閣府の発表によると、令和2年には65歳以上の人口のうち男性15.0%、女性22.1%の高齢者が一人暮らしをしています。
どれほど一人暮らしする高齢者の割合が増えたとしても、離れて暮らす家族は心配でしょう。
本記事では、高齢者がいつまで一人暮らしできるのかを見極めるポイントと、限界を遠ざけるための対策や支援方法を紹介しています。
参考:内閣府『令和6年版高齢社会白書』
高齢者の一人暮らし限界を見極めるポイント
現在が健康でも高齢になるにつれ、病気にかかったり、介護を必要としたりする可能性が高まります。
どこで線引きするかは人それぞれですが、次のような状況になったら一人暮らしの限界かもしれません。
- 心身の状態が悪化した
- 歩行に不安を感じるようになった
- 認知症を発症した
それぞれを詳しく見ていきましょう。
心身の状態が悪化した
加齢とともに病気にかかりやすくなったり、疾病の症状が慢性化したりと、高齢者の生活には不安が大きいもの。高齢者が一人暮らしをするにあたり、まずリスクとして挙げられるのが病気やケガに素早く対応できないことです。
「病状が悪化した際、どうすれば良いのか」頼れる人が近くにいないと、不安になることもあるでしょう。
一人での体調管理に不安を感じ、一人暮らしに限界を感じることが考えられます。
歩行に不安を感じるようになった
高齢者のなかには歩行機能が低下し、日常的に杖や歩行器を利用している人もいます。補助があれば移動できるものの、小さな段差につまずいたり、歩行に時間がかかったりすることもあるでしょう。
歩行が難しくなると、買い物や通院にも困難が生じますし、排泄に間に合わないことも考えられます。
さらに、入院していると筋力や体力が衰える可能性が高いです。退院後にはそれまで一人でできていた生活が難しく感じ、一人暮らしに限界を感じることが考えられる人もいます。
認知症を発症した
認知症の方が一人暮らしをしていると、家族の知らない間に高額商品を購入する契約をしていたり、外出先で帰り道がわからなくなったりする恐れがあります。
一般的な傾向として、加齢とともに思考能力や判断能力は落ちていくものです。家族が近くにいればすぐに気づくことも、離れて暮らしていては発覚が遅くなります。
さらに、一人暮らしをしていると日々の変化がわかりにくく、認知症が進行してしまう恐れがあります。
認知症を発症した場合、支援やサポートに力を入れる必要があるでしょう。
認知症ケアについて詳しく知りたい方はこちら
関連記事:認知症ケアで大切な4原則とは?基礎とパーソンセンタードケアの考え方
高齢者の一人暮らしが限界となるような状況を放っておくと、状況がますます悪化する可能性があります。
できるだけ早く普段とは異なる様子を見つけて、適切な対策を取ることが大切です。
高齢者の一人暮らしのために必要な対策
身体機能の衰えに不安を感じても、住み慣れた自宅を離れたくない人も多いでしょう。
高齢者が家族に安心感を与えつつ一人暮らしするには、周囲の手助けや環境の整備が大切です。
自治体の見守りサービスで安否確認
各自治体では高齢者の一人暮らしを見守るために、以下のようなサービスを提供しています。
- 高齢者緊急通報システム
- 高齢者安心コール(安否確認や健康不安の相談を目的とした、週1回の電話)
- 地域のたすけあいネットワーク(地域の目)
- 配食サービス
提供されるサービス内容は、自治体によって異なります。
居住地ではどのようなサービスを受けられるかは、自治体のホームページや窓口、電話で問い合わせると良いでしょう。
参考:杉並区『高齢者世帯の生活援助』
参考:港区『配食サービス』
家族や地域との連携で問題を解決
家族間や親の友人、近所の人たちとつながりを作っておくと、何か起きたときに適切な対応を取りやすくなります。
たとえば、近所の人と連絡が取れるようにしておくと、日常生活でのトラブルの把握や安否確認にも役立ちます。
また家族間の小まめな情報交換によって不安や悩みを共有すると、解決策を見つけやすくなるでしょう。
家庭内の環境を整備
段差が多く、必要な場所に手すりがないような環境での、高齢者の一人暮らしは困難です。
もし転倒や転落などで骨折した場合、寝たきりになってしまうことも考えられます。家の中を安全に移動できるように、環境を整備することが大切です。
要介護・要支援認定を受けると、住宅改修にかかった費用の一部を介護保険で支給してもらえます。改修に加えて、火災の発生やガス漏れなどの予防対策も実施しておくと良いでしょう。
家庭内の環境整備には、以下のような種類があります。
- 手すりを配置する
- 段差をスロープに変える
- 扉をスライドドアにする
- 自動消火機能付きの調理コンロに変える
- ボタンを押すだけで使える緊急通報システムを導入する
高齢者の一人暮らしを安心・安全にする商品やサービスを上手に利用しましょう。
高齢者の一人暮らしを支援する方法|ヘルパーや自治体のサポート
健康への不安が少ない高齢者でも、様子がわからないと心配になることもあるでしょう。
生活をサポートしてくれるサービスを利用すると、高齢者の変化にも気づきやすくなります。
介護保険サービスを利用する
高齢者が要介護認定を受けている場合、介護保険サービスを利用できます。介護保険法では自宅生活をサポートする在宅サービスや、施設へ入居してサポートを受ける施設サービスなどが規定されています。
たとえば、次のようなサービスを利用すれば、一人暮らしのサポートにつながるでしょう。
- 訪問介護
- 通所介護(デイサービス)
- 福祉用具貸与
サービスを利用するためには、要介護認定を受ける必要があります。
まずは自治体の介護保険担当部署や、住所地を管轄している地域包括支援センターへ連絡してみましょう。
参考:厚生労働省『公表されている介護サービスについて』
参考:厚生労働省『サービス利用までの流れ』
介護保険法について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
関連記事:介護保険法をわかりやすく解説!制度の基本から最新の改正まで
生活支援サービスを活用する
要介護認定を受けていない場合には、自費で生活支援サービスを利用する方法もあります。
たとえば、生活支援として以下のようなサポートを提供してもらえます。
- 配食
- 掃除・洗濯
- 買い物代行・同行
- 通院の付き添い
生活支援サービスは、地域ごとに介護事業者やボランティア、NPOなどが主体となって高齢者への支援を提供しています。まずは、自治体や介護事業者に問い合わせると良いでしょう。
ただし、介護保険が使えないため、全額が自費での負担となることに注意が必要です。
参考:横浜市『生活安心サポート事業』
民間の見守りサービスを利用する
民間企業が提供している見守りサービスや安否確認サービスを利用するのも、手軽な対策としておすすめです。見守りサービスを活用すると、人との交流が少ない高齢者の安否確認もしやすくなります。
民間の見守りサービスの例としては、以下のようなものがあります。
- 電球が灯火すると通知を送る
- 一定期間人の動きがない場合に通知を送る
- 食材を配達すると同時に安否確認する
- 自宅で倒れた際にセンサーで感知して通報する
自治体によっては、民間企業と提携してサービスを提供している場合もあるため、問い合わせてみると良いでしょう。
病気やトラブルの早期発見につながり、高齢者が一人暮らしを続ける上での不安を軽減してくれます。
高齢者の一人暮らしでは生きがいを見つけることも重要
高齢者が一人暮らしを続けるためには、生きがいを見つけることも大切です。生きがいを見つけられないと活動量が現象し、体力や身体機能の低下につながる可能性があります。
高齢者こそ、やりたいことや興味のあることに積極的にアプローチしていくことが大切です。
生きがいを見つける方法は、主に次の3つです。
- サークル活動で趣味仲間や話し相手を見つける
- 健康維持のための食事と運動
- ボランティア活動で地域とつながる
それぞれの詳細を解説します。
サークル活動で趣味仲間や話し相手を見つける
地域にあるサークル活動へ参加すると、同じ趣味を持った仲間や話し相手が見つかります。
手芸や演奏、スポーツといった趣味を楽しむことで生活にハリができる上、同世代の仲間との交流を通じて、生きがいのある暮らしを送れるようになるでしょう。
役所や地域包括支援センター、担当のケアマネジャーなどに聞いてみると、サークル活動の情報を教えてもらえます。
地域の掲示板でサークルメンバーを募集していることもあるので、積極的に外出する機会を作ることが大切です。
健康維持のための食事と運動を始める
いつまでも元気でいきいきと過ごすためには健康維持が欠かせません。
高齢になると食欲が低下したり、買い物や調理が面倒に感じられたりして、低栄養状態に陥る可能性が高まります。
普通の活動量がある場合、64〜75歳は男性2,400kcal、女性1,850kcal、75歳以上は男性2,100kcal、女性1,650kcalを1日に摂取する必要があるとされています。
肥満や低栄養の予防のためにも、栄養バランスの整った食事を心がけることが大切です。
かむ力や飲み込む力が低下している場合は、やわらかく調理したりとろみをつけたりして食べやすくなるよう工夫しましょう。
また、筋力の低下防止や肥満の予防・改善、気分転換のために、散歩・ウォーキング・体操・ストレッチなどの運動も取り入れるのがおすすめです。
ただし、身体的な問題や認知症などによって調理や運動が難しい場合は、できる範囲で実践することが大切です。
参考:健康長寿ネット『高齢者の食事摂取基準』
ボランティア活動で地域とつながる
ボランティア活動をすると、多くの人たちとつながりつつ、社会へ貢献できている実感を持てるようになります。
高齢者にも参加できるボランティアには、以下のような種類があります。
- ゴミ拾い・清掃活動
- 地域の観光ガイド
- 子どもたちの見守り
- 高齢者施設での話し相手
毎日の生活の中で「人や社会の役に立っている」と感じると、大きな生きがいにつながるでしょう。
高齢者の一人暮らしに限界を感じたら
「自治体や地域のサポートを受けても、一人暮らしが難しくなった」と感じたときは、施設への入居や家族との同居を検討する段階かもしれません。
ここでは、施設入居と家族同居それぞれの利点と問題点を紹介します。
家族との同居を検討する
家族と同居をした場合、高齢者の異変にすぐ気づけるため、緊急時にも対応しやすいメリットがあります。また家事の分担も可能になるため、生活面での負担は減るでしょう。
ただし、同居する家族にとっての負担が大きく、生活ペースの違いから人間関係がこじれてしまうことも考えられます。
さらに、家族との同居によって、介護保険による訪問介護サービスが使えなくなることにも注意が必要です。
安易に同居を決断せず、話し合いの時間を持つと良いでしょう。
施設への入居を視野に入れる
介護施設へ入居すると、一人暮らし中に感じていた悩みや不安の多くは解消できるでしょう。人の目があることで、高齢者の異変に気づきやすくなる上に、入居者一人ひとりに合わせた食事を提供してもらえます。
さらに、介護サポートや医療ケアが受けられる施設を選ぶことで、日常生活を安心して送れるようになるのです。
また、介護スタッフやほかの入居者とコミュニケーションを取ることで、認知機能の活性化につながります。
介護施設にはさまざまな種類があり、入居条件や費用サービスも施設ごとに異なります。入居検討する際には、高齢者の状況や希望に見合った施設探しから始めると良いでしょう。
老人ホームなどの施設入居を無料で相談するなら
まとめ|高齢者の一人暮らしの限界を見極めてサービスをうまく利用しよう
高齢者が安心して一人暮らしを続けていくには、自治体の見守りサービスや介護保険サービスなどを取り入れるのがおすすめです。
しかし、体調を崩したり、認知症を発症したりしたときは、高齢者一人暮らしの限界かもしれません。
そのままの生活を続けると症状の悪化や、自宅内での転倒・転落事故のリスクも高まります。
一人暮らしが難しいと感じたら、できるだけ早く周囲に相談し、より良い生活の仕方を考えると良いでしょう。
大阪を中心に、多数の高齢者向けの介護施設の情報を掲載する「いいケアネット」では、老人ホームに関する疑問やそれにまつわる情報を「いいケアジャーナル」で随時更新中!
高齢者の一人暮らしについてよくある質問
高齢者は何歳まで一人暮らしができますか?
一人暮らしに限界を感じる年齢には個人差があり、一概には言えません。ただし、健康寿命を過ぎた高齢者は、心身の不調から一人暮らしに限界を感じることが多くなります。
健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を示すものです。
厚生労働省による調査では、令和4年時点の男性の健康寿命は72.57歳、女性75.45歳。男女ともに70代に入ると、日常生活に支障が出て一人暮らしが困難になってくると考えられます。
参考:厚生労働省『健康寿命の令和4年値について』
高齢者が一人暮らしをする上で困ることはなんですか?
高齢者は、判断能力の低下や筋力の衰えから犯罪に巻き込まれやすい傾向があります。振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺や強盗など、一人暮らしの高齢者を狙った犯罪は、年々増加傾向にあります。
高齢者が安全に暮らすためにも、家族や地域社会のサポートが必要不可欠です。定期的な安否確認や情報共有をすると良いでしょう。
参考:『令和2年警察白書』
大阪を中心に、多数の高齢者向けの介護施設の情報を掲載する「いいケアネット」では、老人ホームに関する疑問やそれにまつわる情報を「いいケアジャーナル」で随時更新中!

この記事の監修者
いいケアネット事務局
突然倒れた、転んで頭を打ったなど、ご自身やご家族の介護を身近に感じるきっかけはそれぞれです。 いいケアネットでは、いざという時のために役立つ介護の知識や介護施設についてご紹介します。