前回のコラム「高齢者虐待とは」では「高齢者虐待の定義」と「高齢者虐待の種類」についてお伝えしましたが、今回は「家庭内における高齢者虐待の実態」についてお伝えします。
家庭内における高齢者虐待の現状
高齢化が進む一方で、厚生労働省のデータによりますと、家庭内における高齢者虐待は何と年間約1万7,000件前後もの事例があります。
これらの虐待の背景には、介護者をする方のストレスや、介護や医療などに関する知識不足など様々です。
そして家庭内で起きる高齢者虐待は外部が気付きにくく、発見が遅れてしまう例も少なくありません。ここ数年での高齢者虐待の件数は以下の様になっています。
令和2年度 | 虐待判断件数 1万7281件 |
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相談・報告件数 3万5774件 | |
令和元年度 | 虐待判断件数 1万6928件 |
相談・報告件数 3万4057件 | |
増減数(増減率) | 虐待判断件数353件(2.1%) |
相談・報告件数 1717件(5.0%) |
出典:『令和2年度「高齢者虐待の防止、高齢者の擁護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果』(厚生労働省)
家庭内で虐待を受ける高齢者の傾向
家族や親族からの虐待を受ける高齢者には以下の傾向があります。
男女比 | 男性23.6% 女性76.2% |
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年齢 | 75歳以上の後期高齢者が80%以上 |
身体状況 | ほとんどが要介護認定を受けており、要介護3以上の方が51.4%を占めている。また認知症の症状が見られる高齢者が60%以上を占めている。 |
高齢者虐待の発生要因
高齢者虐待の発生要因として以下のことが考えられます。
介護負担
虐待者の介護疲れ | 37.2% |
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高齢者本人の認知症による言動の混乱 | 37.0% |
高齢者本人の身体的自立度の低さ | 30.4% |
高齢者本人の排泄介助の困難さ | 25.4% |
虐待者や高齢者の性格や人格、人間関係
虐待をしている人の性格や人格 | 50.1% |
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高齢者本人と虐待をしている人のこれまでの人間関係 | 48.0% |
高齢者本人の性格や人格 | 38.5% |
家族・親族との関係
配偶者や家族・親族の無関心 | 25.1% |
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経済的要因
経済的困窮 | 22.4% |
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主な虐待者の状況
続柄 | 息子(32.1%) 息子の配偶者(20.6%) 娘(16.3%) 夫(11.8%) 妻(8.5%) その他(10.4%) 不明(0.3 %) |
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性別 | 男女比:半々 |
年齢 | 40代~おおむね64歳程度 |
本人との関わり | 同居中(88.6%) 日中も含め常時(半数) |
介護の取り組み | 主たる介護者として介護を行う (60.6%) その内介護に協力してくれる者がいた (39.0%) 相談相手はいるが、実際介護に協力する者はいなかった(38.6%) 介護に協力する者も相談相手もいなかった(17.7%) |
虐待についての自覚があるかどうか
高齢者本人 | 虐待されている自覚がある (45.2%) 虐待されている自覚はない (29.8%) |
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虐待者 | 虐待をしている自覚がある (24.7%) 虐待をしている自覚はない (半数以上) |
高齢者本人からの虐待を受けていることに対する意思表示の有無 | 話す・何らかのサインがある (半数近く) 何の反応もない (30.2%) 隠そうとする (12.1%) |
家庭内で虐待を受ける高齢者の傾向,高齢者虐待の発生要因,主な虐待者の状況,虐待についての自覚があるかどうかに関する出典:『厚生労働省のホームページ Ⅰ高齢者虐待防止の基本』
まとめ
今回は家庭における高齢者虐待の実態についてお伝えしましたが、実際に介護をされる方々の中には様々な感情を抱えながら過ごしている方もいるのではないでしょうか。
「本当は誰かに相談したい」
「助けて欲しい」
「本当は暴言を吐いたり、手をあげたくはない」
「優しく出来ないことに常に罪悪感を感じる」
「介護から解放されたい」
「老人ホームに入ってもらえないだろうか」
次回は「介護について困った時の主な相談窓口」をご紹介いたしますので、是非参考にして下さい。
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この記事の監修者
いいケアネット事務局
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