「親を老人ホームに入れても良いものか」「親を老人ホームに入れることに罪悪感を感じる」と悩んでいる方も多いでしょう。
結論から言えば、親を施設に入れるのは親不孝ではありません。
罪悪感に駆られて無理な在宅介護を続けてしまうと、当事者と家族の双方に負担がかかり続け、さまざまなリスクが生じます。
今回は、親を施設に入れることに罪悪感を感じるきっかけや原因について、親不孝ではない理由とあわせて解説します。この記事を読めば、罪悪感を感じることなく親に施設への入居を進められるようになります。
大阪を中心に、多数の高齢者向けの介護施設の情報を掲載する「いいケアネット」では、老人ホームに関する疑問やまつわる情報を「いいケアジャーナル」で随時更新中です。
親を施設に入れることへの罪悪感の原因
介護が必要な親を施設に入れることに罪悪感を感じるのは、主に2つの原因が考えられます。
- 伝統的な価値観や先入観
- 親を介護する責任の放棄
以下で、それぞれの理由を詳しく見ていきましょう。
伝統的な価値観や先入観
昔からの価値観や先入観が、親を施設へ入れることへの罪悪感につながる場合があります。
家庭によっては、親を介護するのは子どもの役目といった価値観が今でも残っています。また、高齢者の介護に対して理解が進んでいない時代からの「老人ホーム=姥捨て山」といった先入観が強く残っている方も少なくありません。
しかし、介護保険制度が浸透した現在では、これまでの生活をなるべく維持できるよう、利用者の尊厳を第一に考えた介護サービスが提供されています。
老人ホームの居室は清潔に保たれ、入居者に合った食事の提供やレクリエーションやイベントの開催など、充実した環境が整えられています。
親を介護する責任の放棄
親を施設へ入れることは責任の放棄であるといった考え方も、罪悪感を感じる原因の一つです。
実際に、民法では直系血族や兄弟姉妹、特別な事情があるときは三親等以内の親族が扶養の義務を負うことが定められています。しかし、扶養義務は原則的に経済的な援助を指しており、必ずしも直接的に介護しなければならないとは解釈されていません。
そのため、できる範囲で経済的な援助をしながら親を施設へ入れることは、法的にも責任の放棄に該当しないといえます。
参考:e-Gov法令検索『民法』
親を施設に入れてから罪悪感を感じる主なきっかけ
親を施設に入れる決断をした後で、後悔や罪悪感を感じる人は少なくありません。とくに、一人っ子や親子関係が強い場合には、罪悪感が大きくなるでしょう。親を施設に入れた後に罪悪感を感じる主なきっかけは、以下のようなものがあります。
- 親が施設に行きたくないと言っている
- 金銭的な問題で妥協して施設を選んだ
- 親が施設に入ったことで自分が楽になったと感じる
- 施設で親がどのような生活をしているかわからない
- ほかの入居者とトラブルを抱えている
親を施設に入れることは難しい決断です。実際に、多くの人がさまざまなきっかけで親を施設へ入れることへの罪悪感を感じているようです。
老人ホームへの入居は当事者と家族の双方のための選択肢であり、決して責められるものではありません。
親を施設に入れることに罪悪感を感じる必要がない理由
親を施設へ入れることに罪悪感を感じる必要がない主な理由として、以下の2つが挙げられます。
- 介護疲れのリスクがある
- 施設入居後も家族間でできることがある
親の介護は終わりが見えないため、介護する家族にとっては大きな負担になります。以下で、それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。
介護疲れのリスクがある
介護疲れのリスクがある点で、親を施設へ入れることに罪悪感を感じる必要はありません。
介護は身体的な疲労だけではなく、精神的にも経済的にも負担がかかります。
介護を必要とする方や家族が無理のない生活を送れるように作られた制度が介護保険です。老人ホームへの入居は介護保険制度で認められている選択肢です。制度を利用せずに無理をしてしまうと、介護疲れによってさまざまなリスクが生じます。
身体的負担
介護は肉体的に大きな負担がかかる作業です。とくに、介護用ベッドへの移乗や移動補助など、体力を必要とする作業を繰り返しているうちに、疲労が回復せず、腰痛や関節痛、肩こりなどの慢性的な症状につながる可能性が考えられます。
また、夜間の頻回なトイレ介助や昼夜逆転行動などがあると、介護者の睡眠が妨げられ、睡眠不足に陥りやすくなります。
介護疲れの状態になると、集中力や判断力が低下し、介護ミスや事故にもつながりかねないため注意が必要です。
精神的負担
介護における精神的な負担は非常に大きいものです。とくに、長期にわたる介護はストレスや焦燥感を引き起こしやすく、精神的な負担が続いて「介護うつ」や「燃え尽き症候群」などを発症するケースも少なくありません。
また、親の介護によって自分の時間が取れなくなると、孤独を感じる瞬間も増えるでしょう。精神的な負担が積み重なると、仕事や家庭、社会生活との両立が難しくなり、自己犠牲の気持ちが強くなる場合もあります。
経済的負担
介護には時間やお金もかかるため、介護者の経済的な負担になります。場合によっては、介護者が仕事を辞めて介護に専念せざるを得ないケースも珍しくありません。
この場合、単に収入が減少するだけではなく、生活費や医療費、施設の入居費用などが家計を圧迫します。
とくに、長期にわたって介護が必要になる場合は、経済的な負担が介護者の生活に大きな影響を与えかねません。たとえ自宅で介護する場合であっても、介護用品の購入や介護サービスの利用にはお金がかかります。
なお、経済的負担が大きくなるにつれ、精神的負担も増してしまいます。そのため、介護疲れの悪循環に陥らないよう、適切に施設を利用すべきです。
施設入居後も家族間でできることがある
親を施設に入れたあとでも、家族間でできることがあります。そのため、親を施設に入れることに罪悪感を感じる必要はありません。具体的には、以下のようなかたちで親のサポートを続けられます。
- 定期的に面会する
- 外出の機会を設ける
- 十分なコミュニケーションを取る
- 施設スタッフとの連携を強化する
親を施設に入れたあとでも、できる限りの支援を続けるとお互いに良好な関係を維持しやすくなります。施設に入居した親にとって、家族と会って過ごしたり、電話や手紙でコミュニケーションを取ったりする時間は大きな心の支えになります。
また、施設スタッフと密に連携を取ることで、親の状態や希望などを共有しながらより適切なケアを受けるための改善や提案がしやすくなります。
なお、いいケアネットでは、老人ホーム探しのための入居無料相談を受け付けています。大阪を中心に全国各地の施設を紹介しているので、ぜひ気軽にご相談ください。
親を施設に入れる罪悪感を払拭する3つのポイント
次の3点を押さえておくと、施設への入居は間違った選択ではなかったと安心できます。
- 親を施設に入れるタイミングを見極める
- 親が施設を利用するメリットとデメリットを理解する
- 介護施設やケアマネージャーに相談する
以下で、それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.親を施設に入れるタイミングを見極める
介護していて「生活がつらい」「イライラする瞬間が増えた」と感じたら、施設への入居を考えるタイミングです。
とくに、家族がいない間に親がケガをしたり、病気の発作が起きたりする場合は、いずれ生命にもかかわるため、早急に老人ホームへの入居を進めるべきです。
老人ホームによっては入居待機の可能性もあるため、早めに情報収集や施設見学などをして準備を進めましょう。「もう少し様子を見てからにしよう」と先延ばしにするのは、介護する家族にとっても親にとっても得策ではありません。
▼ 親を施設に入れる手順を詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:親を施設に入れる手順は5ステップ|入居を嫌がる親の対処法も解説
2.親が施設を利用するメリットとデメリットを理解する
施設に入れるメリットとデメリットを整理すると、正しい選択かどうか自分を納得させられます。親が施設を利用するメリットとデメリットは以下の通りです。
親を施設に入れるメリット
親を施設に入れると、次のようなメリットがあります。
- 身体的・精神的な負担が減る
- 介護のプロに24時間365日安心して介護を任せられる
- ほかの利用者との関わりを通して社会参加の機会が増える
- 仕事中や睡眠中などに親を心配しなくてもすむ
- ストレスが減って親に優しくできる
- 精神的な余裕ができて仕事や日常生活が整う
- 介護食を用意しなくても済む
- 介護用品が不要になるため買い物が楽になる
施設へのへの入居は、介護する家族だけでなく親にとってもメリットがあるといえます。
親を施設に入れるデメリット
親を施設に入れるデメリットも見ていきましょう。
- 在宅で介護するよりお金がかかる
- 面会に行く時間を作る必要がある
- 面会時間の制限がある
- 日頃の変化がわからず、知らないうちに症状が悪化する可能性がある
- インフルエンザなどの感染症にかかりやすくなる
最も影響があるのは費用面でのデメリットです。しかし、親の年金を確認して兄弟姉妹で費用の負担を分担すれば、さほど大きな問題にならないはずです。メリットとデメリットを比較し、何を優先すべきかを考えれば、親を施設に入れるのは正しい判断だと結論付けられます。
3.介護施設やケアマネージャーに相談する
親を施設に入れることへの不安がある場合は、素直な気持ちをケアマネージャーや介護施設に相談しましょう。
ケアマネージャーは施設を紹介してくれるだけではなく、家族へのサポートやアドバイスもしてくれます。
親を施設に入れる際は、ケアマネージャーや施設スタッフと相談し、親にとって適切なケアプランを作成してもらいましょう。また、施設選びの際には、実際に見学して親が過ごす環境やスタッフの対応を確認しておくと安心です。
一つひとつのステップを踏むことで、親を施設に入れることが最善の選択であると実感するとともに、罪悪感を減らせます。
▼ 以下の記事では、親の介護の悩みに関する相談窓口を紹介しています。
親を施設に入れることに罪悪感を感じる必要はない【まとめ】
親を施設に入れることは、決して親不孝ではないため、罪悪感を感じる必要はありません。施設に入所するメリットは、家族だけではなく親にもあります。
また、介護する家族が共倒れになるような事態は避けるべきです。
もし親を施設に入れることに罪悪感を感じても、介護を丸投げせずに、面会に行ったり電話をかけたりして定期的なつながりを継続できれば大丈夫です。
施設の利用は親と家族の両者にとってより良い結果をもたらすものだと前向きに捉え、老人ホームへの入所を進めていきましょう。
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親を施設に入れるときによくある質問
親を施設に入れる際に、よくある質問をまとめました。同じ悩みや不安を抱えている方は、ぜひ参考にしてください。
親が可哀想になってきたときはキャンセルしたほうが良い?
在宅での介護が難しい状況なら、キャンセルせず入居手続きを進めましょう。
無理に在宅介護を続けても、親の症状が進行して負担は増すばかりです。この場合、親も家族も共倒れになって、良い結果にはつながりません。
また、せっかく入所できそうな老人ホームをキャンセルしてしまうと、次も再度施設探しから始めることになります。老人ホームに介護を丸投げするのではなく、面会や電話連絡をするなど、定期的にフォローして不安感を和らげましょう。
親を施設に入れるときにうまく説得するコツはある?
まずは、なぜ老人ホームに入所するのが嫌なのか、正直に理由を聞きましょう。理由を聞いた上で、親に在宅での介護が難しい現状を伝えることが大切です。
親を追い出すわけではなく両者にとってメリットが大きいことや、寂しくなったらいつでも会えることなどを伝えてみてください。どうしても話し合いがうまくいかない場合は、ケアマネジャーなどの第三者による介入も考えましょう。
ただし、生命にかかわるような緊急性が高いケースでは、本人の同意なしでも老人ホームへの入居が可能な場合があるので、市区町村の福祉課へ相談してみてください。
▼ 親に気持ち良く施設に入居してもらうためのポイントは、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:気持ち良く老人ホームに入居してほしい!親に説得するためのポイント
施設にいる母が「寂しい」と言っているときは頻繁に会いに行くほうが良い?
施設に入居してすぐは、できるだけ会いに行きましょう。
ただし、あまり頻繁に会いに行くと、親が施設での生活に慣れるのに時間がかかってしまう場合があります。週に1回程度のペースから、徐々に回数を減らしていくことをおすすめします。
また、会いに行けない日でも電話や手紙でのやり取りをすると、親の安心感につながります。施設スタッフとも連携しながら、親の気持ちに寄り添った対応を心がけてください。
▼ 施設入居後の訪問頻度やマナーについては、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:老人ホーム入居後の本人と家族の関わり方は?訪問頻度や各対応について解説

この記事の監修者
いいケアネット事務局
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