「認知症の親を家で介護しているけれど、夜中も目が離せず大変…」
「認知症でも受け入れてくれる施設ってあるの?」
認知症の方でも入れる施設は大きく分けて5種類あります。特別養護老人ホーム、グループホーム、介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅です。
それぞれ入居条件や費用、提供サービスが異なるため、ご家族の状態や予算に合わせて選べるよう特徴を把握しておく必要があります。
本記事では認知症の方が入居できる5種類の施設の種類や特徴、入居のタイミングを解説します。施設選びのコツも紹介しているので、参考にしてみてください。
認知症の方でも入れる施設は大きくわけて5種類
認知症の方が入居できる施設は、大きく分けて5種類あります。
- 特別養護老人ホーム(特養)
- グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
- 介護付き有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
それぞれの特徴や入居条件、費用などが異なるため、ご家族の状況に合わせた施設選びが大切です。
それぞれがどのような施設なのかを見ていきましょう。
1.特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホームは、地方自治体や社会福祉法人などが運営する公的な施設です。
原則として要介護3以上の65歳以上の高齢者が対象ですが、認知症の症状がある場合は、要介護1・2でも特例的に入所が可能な場合があります。
24時間体制で介護スタッフが常駐し、食事・入浴・排泄など日常生活全般のサポートをおこなうため、認知症の方も安心して暮らせる環境が整っています。
また、看取りケアに対応する施設も多く、最期まで過ごせる点も大きな特徴です。
費用面は月額10〜15万円程度と比較的安価で、低所得者向けの減額制度もあります。
ただし、コストの安さから人気が高く、入居待ちの期間が長い場合が多いです。希望する際は待機期間を考慮して、早めの申し込みをおすすめします。
2.グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
グループホームは、認知症の方専用の小規模な共同生活の場です。
認知症の診断を受けた要支援2以上の65歳以上の方で、その自治体に住民票がある方が対象の施設です。
1ユニット5〜9人程度の少人数で家庭的な雰囲気の中、専門のケアスタッフが24時間常駐して個別対応をおこないます。
認知症ケアの専門性が高く、日常生活の中でできる行動を続ける「残存能力活用」のアプローチを取る方針のため、認知症の方の尊厳を守りながら生活が可能です。
費用は月額15〜20万円程度が一般的ですが、医療的ケアが必要になったり、症状が重度化したりすると費用が高額になるケースもあります。料金については、事前に確認しておきましょう。
関連記事:グループホームとは?入居条件や老人ホームとの違いを簡単に解説
3.介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは、要支援1〜要介護5の認定を受けた高齢者が入居できる民間施設です。
認知症の方の受け入れもおこなっており、安心して生活できる体制・環境が整っている施設が増えています。
24時間体制で介護スタッフが常駐し、食事・入浴・排泄などの基本的な介助サービスが含まれている点は特養と同じです。
なお、看護師や理学療法士が常駐している施設もあり、医療的ケアやリハビリにも対応できる施設が多い点が特養とは異なります。
費用は入居一時金なしのタイプで月額15〜30万円程度、入居一時金ありのタイプでは一時金10~100万円+月額15〜30万円程度が相場です。
施設によってサービス内容や費用が大きく異なるため、事前によく確認しましょう。
4.住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは、自立から要介護まで、年齢や介護度を問わず高齢者が入居できる民間施設です。
認知症の方を受け入れている施設もあり、生活支援を受けながら暮らせます。
ただし、介護サービスについては外部の事業所と個別に契約しなければいけません。
施設のスタッフは生活支援が中心となるため、認知症の方のケアには外部の介護サービスを組み合わせるパターンが一般的です。
費用は月額10〜20万円程度で、家賃・食費・管理費に加え、別途介護保険サービスの自己負担が発生します。
認知症の症状が軽度から中等度の方に適している施設が多く、重度化した場合は他の施設への住み替えの検討をする可能性があります。
5.サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サービス付き高齢者向け住宅は、60歳以上の高齢者、または要支援・要介護認定を受けた60際未満の方を対象とする施設です。
バリアフリー設計で安心な住まいとなっており、認知症の方も入居できる施設が増えています。
安否確認や生活相談などの基本サービスが提供されますが、介護が必要な場合は外部の介護サービスを利用しなければいけません。
費用は月額10〜20万円程度で、立地や建物の新しさ、サービス内容により変動します。
施設によって認知症の方の受け入れ方針には大きな差があるため、事前に確認しておきましょう。
認知症の方を施設に入れるタイミング
認知症の方を施設に入れるタイミングは、複数の要因を考慮して判断すべきです。
まず、認知症の進行に伴い妄想や幻覚が現れ、専門的なケアが必要となった場合は入居を視野に入れましょう。
また、徘徊や火の不始末などの危険行動が増え、本人や周囲の安全が脅かされるようになったときも入居を検討すべきです。
さらに、介護者の睡眠不足が慢性化したり、健康問題が生じたりするなど、介護の負担が介護者自身の健康を損なう状況になった際も、検討するタイミングの1つです。
関連記事:数分前のことを忘れるのは認知症の初期症状?チェック項目や対処法を解説
認知症の方向けの施設を選ぶ際のポイント
認知症の方が入居する施設を選ぶ際には、いくつかの重要なポイントがあります。
- 認知症ケアに対する職員の理解・経験があるか
- 本人が安心して過ごせる環境が整っているか
- 急な体調変化に対応できる看護体制が整っているか
注目して見てほしい視点を詳しく解説します。
認知症ケアに対する職員の理解・経験があるか
認知症の方と向き合うには、正しい知識と適切な対応力が必要です。
施設のスタッフが認知症について十分に理解していないと、本人にとって最善の対応をとってもらえない可能性があります。
施設見学の際には、以下のように認知症の方へのケア方針や具体的な対応例を質問すれば、その施設の認知症ケアに対する姿勢を把握できます。
- 身体拘束や薬による抑制に頼らないケアを実践しているか
- 個別ケアを重視しているか
認知症の方が安心して暮らせる環境を選ぶためにも、職員の理解や姿勢、対応力は大事な判断材料です。
関連記事:認知症ケアで大切な4原則とは?基礎とパーソンセンタードケアの考え方
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本人が安心して過ごせる環境が整っているか
認知症の方が施設で安心して過ごすためには、本人の気持ちや生活の質を尊重する環境が整っていることが大切です。
以下は施設の環境をチェックする際のポイントです。
- 食事の質:栄養バランスや食べやすさへの配慮
- 施設内の雰囲気:明るさや清潔感、落ち着いた空間づくり
- イベントの内容:日々の楽しみや季節行事の有無
- プライバシーの確保:個室の有無や自由な時間の尊重
- 他の入居者との交流機会:孤立を防ぐための工夫
こうした点に配慮された施設であれば、本人が自然体で安心して過ごしやすくなります。
また、物理的な環境設計も大切なポイントのひとつです。
認知症の方が混乱しにくいよう、分かりやすい表示や視覚的な工夫がされているか、安全に移動できるスペースが確保されているかなども確認しておくと良いでしょう。
急な体調変化に対応できる看護体制が整っているか
認知症の方は、体調の変化を上手く自分で伝えられない場合があります。そのため、施設の看護体制が整っているかどうかは大事なポイントです。
夜間のオンコール体制、医療行為への対応可否は確認しておきましょう。
また、近隣医療機関との連携体制や緊急時の対応マニュアルの有無も重要です。
認知症の方は肺炎や脱水などの合併症を起こしやすいため、これらへの予防・対応策を確認しておくと、万が一の時に慌てずに済みます。
認知症の方が入れる施設を探せるようポイントをおさえておこう【まとめ】
認知症の方が入れる施設を選ぶ際には、本人の状態や家族の状況、経済的な条件などを総合的に考慮する必要があります。
まずは認知症の進行度合いと必要なケアレベルを把握し、それに合った施設を検討しましょう。
また、費用と家計の状況を照らし合わせ、長期的に継続できる施設を選ぶのも大切です。
施設選びの際は必ず見学に行き、雰囲気や職員の対応の確認をおすすめします。
可能であれば、ショートステイなどで試してみるのも良いでしょう。
認知症は進行性の疾患であるため、将来的な症状の変化に対応できる施設かどうかも重要なポイントです。
本記事で紹介したポイントをもとに、認知症の方が安心して過ごせる施設を探してみてください。
認知症の方が安心して暮らせる介護施設をお探しの場合は、大阪を中心とした老人ホームや介護施設の情報を掲載する「いいケアネット」をご活用ください。
無料でさまざまな条件の施設を確認できるので、どんな施設があるかをぜひチェックしてみましょう。
認知症の方が入れる施設に関するよくある質問
最後に、認知症の方に関する施設入居について、よくある質問に回答します。
施設に入れるお金がない場合はどうしたら良いですか?
経済的な理由で施設入居が難しい場合でも、いくつかの公的支援制度を活用できます。
以下は介護費用の負担軽減に役立つ代表的な公的支援制度です。
制度 | 制度の内容 |
高額介護サービス費制度 | 介護保険サービスの自己負担が、収入に応じた上限額を超えた場合、その超過分が払い戻される制度 |
生活福祉資金貸付制度 | 低所得の方を対象に、介護や生活のために必要な資金を無利子または低利で貸し付けてくれる制度 |
生活保護制度 | 資産や収入が一定以下の方が対象で、介護サービス費用や生活費などを公的に支援してもらえる制度 |
費用面で不安がある場合も、制度を知っておくと選択肢が広がります。
認知症の方が施設を追い出されるケースはありますか?
認知症の方が施設から退去を求められるケースは存在します。
認知症の症状には、幻覚や妄想、暴言・暴力などの行動・心理症状が含まれる場合がありますが、これらは病気による症状であり、施設側もある程度は理解して受け入れてくれます。
しかし、他の入居者や職員の安全を脅かすような暴力行為や、対応が難しい問題行動が続く場合には、退去を勧告される場合があります。
また、経管栄養や人工呼吸器などの医療ケアが必要になった場合、医療体制が整っていない施設では継続入居ができない可能性もあります。
監修者 一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長会 斉藤 正行
一般社団法人全国介護事業者連盟理事長。立命館大学卒業後、複数の介護関連企業で要職を歴任し、日本介護ベンチャーコンサルティンググループを設立。講演活動やメディア出演も多数。