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数分前のことを忘れるのは認知症の初期症状?チェック項目や対処法を解説

数分前のことを忘れるようになり、「認知症ではないか」と不安を感じている方もいるのではないでしょうか。

認知症とは、脳の変形疾患や脳血管障害によって、記憶や思考などの認知機能の低下が起こり、日常生活に支障をきたす疾患です。数分前のことを忘れるのは、認知症の初期症状の一つとされ、短期記憶障害が疑われます。

今回は、短期記憶障害とは何か、認知症と加齢による物忘れの違いとあわせて解説します。数分前のことを忘れてしまう人向けの認知症チェックリストもまとめているので、ぜひ参考にしてください。

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数分前のことを忘れるのは認知症の初期症状の一つ

認知症

数分前のことを忘れるのは、認知症の初期症状である可能性が疑われます。具体的に、以下のような症状は認知症のサインであると考えられます。

  • 話したばかりの内容をすぐに忘れる
  • 短時間に何度も同じことを尋ねる
  • 数分前の行動を覚えていない

数分前のことを忘れるといった経験は珍しくありません。しかし、このような状況が頻繁に起こり、日常生活に支障をきたすようになったら、短期記憶障害の可能性が考えられます。とくに、新しい情報を保持できなくなったり、同じことを繰り返し尋ねたりする場合は注意が必要です。

認知症は早期発見や生活習慣の改善、適切な治療で進行を遅らせられます。数分前のことを忘れるなど、記憶の異変を感じたら早めの受診を検討しましょう。

数分前のことを忘れる?短期記憶障害とは

短期記憶障害

短期記憶障害とは、数分から数時間の間に得た情報を保持する能力が低下する状態を意味します。健康な方でも一時的に物忘れをするケースはありますが、短期記憶障害の場合は、頻繁に同じことを忘れ、日常生活に支障をきたすようになる点が特徴です。

ここでは、認知症の初期症状である短期記憶障害とは何か、記憶の分類や障害の進行について解説します。

▼ 認知症予防に役立つエクササイズについて詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。

関連記事:認知症予防に効果的な「コグニサイズ」とは?その効果と具体的な方法をご紹介

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目次

記憶の分類

記憶は、時間的要素によって大きく3つに分類されます。

記憶の分類(時間的要素)
感覚記憶 数秒から数十秒にわたって保持する記憶
短期記憶 数分間にわたって保持する記憶
長期記憶 1カ月以上にわたって保持する記憶

短期記憶障害とは、数分間にわたって保持する「短期記憶」を保ちにくくなる状態です。また、記憶は内容的要素によって、「陳述記憶」と「非陳述記憶」に大別されます。さらに、陳述記憶は「エピソード記憶」と「意味記憶」に分けられ、非陳述記憶には「手続き記憶」があります。

記憶の分類(内容的要素)
陳述記憶

(言語で内容を陳述できる記憶)

エピソード記憶

(個人が経験した出来事に関する記憶)

  • 昨日買い物へ行った
  • 朝ごはんを食べた
意味記憶

(一般知識や常識などに関する記憶)

  • 地球は丸い
  • 日本は島国である
非陳述記憶

(言語で内容を陳述できない記憶)

手続き記憶

(同じ経験の反復によって形成される記憶)

  • 自転車の乗り方
  • パズルの解き方

記憶の分類について理解しておくと、短期記憶障害を含む認知症の早期発見に役立つでしょう。

参考:国立研究開発法人国立長寿医療研究センター『認知症の原因』

記憶障害の進行

認知症の原因は、アルツハイマー病や脳血管障害、レビー小体病などさまざまです。

なかでも、半数以上を占めているのがアルツハイマー型認知症で、短期記憶障害から発症するケースが一般的です。また、記憶の内容に関しては、エピソード記憶や意味記憶から順に失われていく傾向にあります。つまり、昔のことは覚えているけれど、数分前の出来事を忘れてしまう場合は、アルツハイマー認知症の初期症状であると考えられます。

なお、認知症の原因疾患によっては、記憶障害の進行が異なる点に注意が必要です。そのため、最近物忘れがひどくなったと感じる場面が増えたら、早めに医療機関を受診しましょう。

参考:国立研究開発法人国立長寿医療研究センター『認知症の原因』

数分前のことを忘れてしまう人向け【認知症チェックリスト】

認知症 夫婦

認知症は、本人が自覚しないまま症状が進行してしまうケースも珍しくありません。しかし、数分前のことを忘れたり、判断力や理解力が低下したりすることは、認知症を疑うきっかけとして多い症状です。
以下の症状が見られる場合は、単なる物忘れではなく、認知症のサインである可能性が高いといえます。少しでも違和感を感じたら、症状の変化を書き留め、家族間で情報を共有するようにして認知症かどうかチェックしてみてください。

物忘れ

以下のような物忘れの頻度が多くなってきた場合は、認知症が疑われます。

  • 同じことを何度も聞いたり話したりする
  • 数分前の出来事をすぐ忘れる
  • 物を置いた場所や片付けたことを忘れて常に探し物をしている
  • 同じ物を何度も買ってくる
  • 財布や鍵などの貴重品をよく失くす
  • 昔から知っている人の名前が出てこない
  • ゴミの回収日や場所を守らなくなる
  • ガスや水をつけっぱなし・出しっぱなしにする

なお、認知症による物忘れと加齢による物忘れの違いについては、後ほど詳しく解説します。

見当意識障害

見当意識障害とは、場所や時間の感覚にズレが生じて、日常生活における基本的な習慣をおこなえなくなる状態のことです。以下のような見当意識障害の症状が見られる場合は、認知症の初期症状が疑われます。

  • 今日の日付や曜日がわからなくなる
  • ついさっき電話をした相手の名前がわからない
  • 慣れた道で迷子になることがある

場所や時間、人物を認識する能力が低下すると、日常生活にも支障をきたすようになります。

判断力や理解力の衰え

判断力や理解力の低下も認知症のサインの一つです。

  • 料理の味付けがおかしくなる
  • 計算をよく間違えるようになる
  • 人との約束を守れなくなる
  • 洗濯や入浴の仕方がわからなくなる
  • 衣服の着脱の仕方がわからなくなる

判断力や理解力が衰えると、日常生活におけるさまざまな作業が困難になります。日常生活に支障をきたすようになったら、認知症を疑いましょう。

精神的な混乱や落ち込み

認知機能が低下すると、精神的に落ち込んだり、混乱状態になったりする場合があります。以下のような言動は、認知症のサインであると考えられます。

  • 些細なことで腹を立てる
  • 趣味に興味を示さなくなる
  • 全体的に活力がなく、日常生活がだらしなくなる
  • 人に物を盗まれたなど、他人を疑うようになる
  • 一人になることを怖がるようになる

周囲から見て、「人柄が変わった」「様子がおかしい」と感じるような場合は、早めの受診がおすすめです。

認知症と加齢による物忘れの違い

老人 認証

認知症と加齢による物忘れは、よく似ていますが、以下のような点で異なります。

認知症の物忘れ

認知症による物忘れの症状は、以下のとおりです。

原因 脳の神経細胞の変形や脱落による
物忘れの傾向 体験したことをまとめて忘れる
ヒントを与えた場合の反応 ヒントがあっても思い出せない
症状の進行 徐々に進行していく
判断力の変化 低下する
自覚の有無 自覚がなく、深刻に考えていない
日常生活への影響 支障をきたす

数分前のことを忘れるようになったら、まずは認知症による症状なのか、加齢によるもの忘れなのかを把握する必要があります。

加齢による物忘れ

加齢による物忘れの場合、以下のような特徴があります。

原因 脳の生理的な老化による
物忘れの傾向 体験したことの一部を忘れる
ヒントを与えた場合の反応 ヒントをもらうと思い出せることが多い
症状の進行 あまり進行しない
判断力の変化 低下しない
自覚の有無 自覚があり、必要以上に心配する
日常生活への影響 支障はない

加齢による物忘れは、認知機能に問題が生じているものの、日常生活には支障がない程度である場合がほとんどです。

数分前のことを忘れてしまう人との接し方

認知症 夫婦

数分前のことを忘れてしまう人と接する際は、本人の負担を軽減し、安心できる環境を整えることが大切です。何度も同じことを聞かれたり、約束を忘れられたりすると、周囲も戸惑ってしまいます。

以下で、数分前のことを忘れてしまうといった短期記憶障害の症状がある方と接する際のポイントを解説します。円滑なコミュニケーションを図り、本人の負担軽減につなげましょう。

本人の変化を受け入れる

数分前のことを忘れてしまう症状が頻繁に見られるようになったとき、周囲は本人の変化を受け入れることが大切です。短期記憶障害になると、新しい情報や記憶が定着しにくくなります。

何度も同じことを聞かれても、イライラせずに繰り返し伝えたり、否定するよりも共感したりする姿勢が大切です。本人は意図的に忘れているわけではないと理解し、変化を受け入れるよう心がけましょう。

▼ 認知症ケアで大切な考え方について知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

関連記事:認知症ケアで大切な4原則とは?基礎とパーソンセンタードケアの考え方

環境を整える

認知症の初期症状が現れている場合は、本人が安心できる環境づくりが大切です。短期記憶障害になると、どこに物を置いたか忘れてしまったり、約束を守れなかったりして、日常生活で混乱しやすくなります。日常生活において、以下のような工夫をすると、本人の安心につながります。

  • 物の定位置を決める
  • カレンダーやホワイトボードを使って予定を可視化する
  • 部屋のレイアウトを変えない
  • 見やすい時計や日付表示を用意する

本人が過ごしやすい環境を維持できるよう工夫すると、落ち着いて生活を送れるようになります。

なお、いいケアネットでは、老人ホーム探しのための「入居無料相談」を受け付けています。認知症の症状でお悩みの方は、ぜひ気軽にご相談ください。

▼ 認知症の方が入居できるグループホームについては、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:グループホームとは?入居条件や老人ホームとの違いを簡単に解説

 

本人が安心できる声かけをする

数分前のことを頻繁に忘れるようになったら、安心につながる声かけをしましょう。物忘れは、本人にとっても不安なことです。そのため、本人の言動に対して、怒らず穏やかな口調で対応するようにしてください。

たとえば、同じ質問をされたら、「前にも言ったのに」といった否定的な言葉を使うよりも、「そうだね」と伝えて自然に答えるようにしましょう。また、本人が不安を感じているときには、「大丈夫だよ」「一緒に考えよう」と共感を示すことも大切です。

本人の安心につながる声かけによって、日常生活におけるストレスを軽減できます。

事実確認をしない

認知症の初期症状が現れている人と接する際は、事実確認をしないこともポイントです。認知症の症状によって、誤ったことを口にする場合があります。しかし、本人が誤ったことを口にしても、無理に訂正する必要はありません。

たとえば、すでに亡くなった家族が訪ねてくるようなことを口にした場合、「もう亡くなっている」といった事実を伝えると、本人が混乱して落ち込んでしまう可能性があります。この場合、「会いたいね」などと気持ちに共感して会話を続けると、本人は安心感を覚えます。

忘れないための工夫をする

認知症の初期症状が現れている人と接する場合は、物事を忘れないための工夫を取り入れることもポイントです。記憶を保持する手助けになるよう、以下のような工夫をすると、本人の負担を軽減できます。

  • メモや付箋を活用する
  • スマートフォンでリマインダーやアラームを設定する
  • 一緒に予定を確認する

物忘れを責めるのではなく、記憶を保持できる環境を一緒に整えていくことが大切です。

数分前のことを忘れるようになったら認知症を疑おう【まとめ】

認知症

数分前のことを忘れる場合は、認知症の初期症状である可能性が疑われます。認知症による物忘れと加齢による症状を区別するためには、それぞれの違いを把握した上で日頃の様子を振り返りましょう。

また、認知症の初期症状に関するチェック項目はさまざまです。本人や家族だけでは判断しきれない場合は、早めにかかりつけの医師や専門の医療機関を受診しましょう。認知症は早期に正しい治療を受けることで、進行を遅らせたり、家族間で対応策を考えたりできます。

なお、認知症でも入れる老人ホームを探すなら「いいケアネット」にお任せください。いいケアネットの「入居無料相談」では、一人ひとりの状況や医療の必要性、予算などをお伺いした上で安心して暮らせる最適な施設探しをお手伝いします。

 

この記事の監修者

いいケアネット事務局

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