「老人ホームに入る際は、自宅を売ったほうがいいの?」
「後悔したくないから、売却する場合のメリット・デメリットを知っておきたい」
このようなお悩みを抱えていませんか?
高齢者の住み替えにおいて、「自宅を売って老人ホームに入る」ことは現実的な選択肢の1つです。
自宅を売却すれば、介護施設の入居にかかる費用を確保できます。空き家のまま放置する行為は「特定空き家」として税金が上がるリスクもあるため、自宅を売却する判断にはメリットもあるのです。
とはいえ、自宅を売却すれば、二度と住み慣れた自宅に戻ることはできません。後悔しないためにも、家を売るかどうかは慎重な判断が大切です。
本記事では、自宅を売って老人ホームに入るメリット・デメリットを詳しく解説します。売却の流れも紹介しているので、参考にしてみてください。
老人ホームに入居する際の費用目安|自宅を売る前に必ずチェック
老人ホームに入居する際は、大きく分けると「入居一時金」と「月額利用料」が必要です。しかし、老人ホームの入居費用は施設の種類やサービス内容、立地などで変動します。
以下のように、公的施設は費用が安く、民間施設は費用が高い傾向にあります。
区分 | 施設のタイプ | 入居一時金 | 月額利用料の目安 |
公的施設 | 特別養護老人ホーム(特養) | 不要 | 10~15万円 |
介護老人保健施設(老健) | 不要 | 10~20万円 | |
介護医療院(介護療養型医療施設) | 不要 | 10~20万円 | |
ケアハウス(一般型) | 0~30万円 | 10~15万円 | |
ケアハウス(介護型) | 0~数百万円 | 15~20万円 | |
民間施設 | 介護付き有料老人ホーム | 0円~数千万円 | 15~数百万円 |
住宅型有料老人ホーム | 0円~数千万円 | 15~数百万円 | |
グループホーム | 0~100万円 | 15万円 | |
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 0~100万円 | 10~20万円 |
老人ホームの費用は施設の種類やサービス内容、介護の有無によって幅があり、入居一時金や月額費用も大きく異なります。
自宅を売却して資金に充てようと考えている方は、まずは施設の種類と費用目安をしっかりと把握し、ライフプランに合った選択をすることが大切です。
関連記事:国民年金で入れる老人ホームの種類や費用の自己負担を減らす方法を解説
関連記事:住宅型有料老人ホームとは?主なサービス内容や必要な料金をわかりやすく解説!
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老人ホームの入居が決まったら自宅を売ったほうが良い理由
老人ホームの入居が決まったら自宅を売ったほうが良い理由がいくつかあります。
主な理由は以下の4つです。
- 自宅の売却費用を施設入居にあてられる
- 「特定空き家」に指定されたら固定資産税が6倍になる
- 控除が使えなくなる
- 所有者の判断能力が低下すると話がスムーズに進まなくなる
売ったほうがメリットが大きいと感じたら、売却を検討してみましょう。
自宅の売却費用を施設入居にあてられる
介護施設に入居する場合、多額の費用がかかります。自宅を売却すれば、まとまった資金を確保できるため、経済的な不安を軽減できるでしょう。
介護施設への入所以外にも、今後以下のような費用が必要になる可能性があります。
- 通院・薬代
- 入院や手術
- 外部の介護サービス
- 福祉用具のレンタル・購入
年金や介護保険のサポートがあるとはいえ、自宅の売却費用があれば支出をまかなえます。
「特定空き家」に指定されたら固定資産税が6倍になる
特定空き家とは、倒壊の恐れや衛生面の問題、景観悪化など「放置することで周辺環境に悪影響がある」と判断された空き家を指します。
自治体から改善命令を受けると、住宅用地の税軽減措置が外れ、固定資産税の負担が6倍になる可能性があります。
特定空き家に該当するのは、以下のいずれかの状態にあると判断された場合です。
- 放置すると倒壊などの危険がある状態
- 放置すると不衛生で健康に悪影響を及ぼす状態
- 管理されておらず、見た目がひどく悪くなっている状態
- 周囲の暮らしに悪影響を与えるおそれがある状態
参考:主税局「特定空家等」または「管理不全空家等」に該当すると土地に対する固定資産税・都市計画税の税額が高くなる場合があります。」
特定空き家に指定されると固定資産税が大幅に上がり、税金面で大きなデメリットとなる可能性が高まります。老人ホーム入居を検討している方は、早めに管理や活用方法を見直しましょう。
税金控除の特例を受けられなくなる
自宅売却時に利用できる「3,000万円の特別控除」という税金控除の特例があり、家を売って出た利益から最大3,000万円まで差し引ける制度です。所得税を大きく減らせる可能性があるため、済まなくなった家は早めに売ったほうが良いです。
税金控除の特例には期限があり、住まなくなってから3年が経過する年の年末までと定められています。
地域によっては中古住宅が売れにくく、売却に時間がかかるケースもあります。老人ホームに入居し売却すべきか悩んでいるうちに、期限がすぎてしまうかもしれません。
今後、家に住む予定がない場合は早めに売却を検討し、特例が使えるうちに行動に移しましょう。
参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
所有者の判断能力が低下すると話がスムーズに進まなくなる
家や土地としての不動産は原則として所有者本人しか処分できないため、たとえ家族であっても本人の同意なしで売却できません。委任状があれば代理で手続きできるものの、本人が判断能力を保っているうちに限られます。
施設へ入居した後に本人の判断能力低下や認知症を発症してしまうと、意思確認ができず名義人としての手続きが進められない状態になってしまう恐れがあります。
自宅を手放したくても固定資産税や管理費など、負担だけが残るケースも少なくありません。
話がスムーズに進まず自宅が売却できなくなる事態を避けるためにも、将来的に住む予定がない家であれば、本人の判断能力があるうちに売却を検討しましょう。
関連記事:認知症で施設に入居するタイミングは?利用できる施設や選び方も解説
老人ホームの入居が決まっても自宅を売らないほうが良いケース|賃貸の選択肢も紹介
自宅を売ることで得られる資金は大きな魅力ですが、売却には思わぬ負担やデメリットも伴います。無理に売却を進めるのではなく、一時的に空き家として保有したり、賃貸に出して家賃収入を得る方法も選択肢として考えられます。
賃貸として活用するメリットは、以下の3つです。
- 定期的な安定収入を得られる
- 将来的に住むという選択肢を残せる
- 劣化の抑制につながる
親族や信頼できる不動産会社を通じて短期的に貸し出すことで、将来家に戻る可能性を残したまま、収益を確保することも可能です。
状況に応じて、「売る」「貸す」「保有する」といった複数の選択肢を比較し、自分たちにとって納得のいく方法を選びましょう。
自宅を売って老人ホームに入る流れ
自宅を売って老人ホームに入る際、不動産会社に買い手を探してもらう仲介を選択する人が多いです。仲介手数料は発生しますが、買い手探しから契約まで代行してくれるため、手間がかかりません。
自宅の売却は、以下の流れで行います。
- 家と土地の価値を査定してもらう
- 売却方法(仲介・買取)を決め、不動産会社に依頼する
- 売り出し価格を決める
- 条件に合う買主が見つかれば契約を結ぶ
- 代金を受け取り物件を引き渡す
老人ホームへの入居にあたって自宅を売却する場合、事前に流れを把握しておくことで、スムーズに手続きが進められます。
自宅の売却は一度きりの大きな取引になるため、不動産会社に相談しながら納得のいく方法で話を進めていきましょう。
関連記事:元気なうちに老人ホームに入れる?おすすめの施設や注意点などを解説
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老人ホームに入る際に自宅を売るメリット・デメリットを知った上で判断しよう
自宅を売却すれば大きな資金を得られるため、入居一時金や月額利用料に充てられます。
所有者の判断能力が低下する前に売却することで、特定空き家になるリスクを避け、税金控除の特例を受けて手放せます。しかし、売却すると将来的に自宅に戻るという選択肢は失われてしまいます。
本記事を参考に自宅を売るメリットとデメリットを検討し、自宅売却を検討しましょう。
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施設に入った親の家は売却すべき?よくある疑問
自宅の売却にはメリットだけでなく、迷いや不安もつきものです。
- 家を担保に老人ホームに入居できる?
- 老人ホームに入居し自宅売却した際の住民票は?
ここでは、「親が施設に入った後の家はどうすればいいのか?」というよくある疑問について、具体的に解説していきます。
家を担保に老人ホームに入居できる?
自宅を担保に老人ホームへ入居する方法は、大きく分けると以下の2種類です。
方法 | 詳細 |
リバースモーゲージ | 自宅を担保にして借り入れ融資を受けられる制度で、死亡時に売却し元金が返金される |
リースバック | 自宅を売却後、賃貸契約によりそのまま住み続けられる |
自宅を担保に入居資金をまかなう方法はあるので、売却するしかないと決めつけず、資産を活かす方法も検討してみましょう。
老人ホームに入居し自宅売却した際の住民票は?
老人ホームに入居した際は、原則として住民票を施設の住所に移すのが一般的です。とくに自宅を売却する場合は介護保険の利用に影響するため、住民票の移転が必要です。
住民票の移動は入居する老人ホームや自治体に確認し、適切に移しましょう。