認知症で悩んでいる方のなかには、「認知症予防財団について詳しく知りたい」と考えている方もいるでしょう。日本社会の高齢化が進み、認知症は誰にとっても身近なものになっています。認知症は、本人だけでなく家族の生活にも影響を与える場合があり、早期の発見と理解が重要です。
今回は、認知症予防財団の活動を紹介するとともに、認知症に関する相談先についても解説します。認知症予防財団を中心とした各種サービスの理解を深めるための参考にしてください。
大阪を中心に、多数の高齢者向けの介護施設の情報を掲載する「いいケアネット」では、老人ホームに関する疑問やまつわる情報を「いいケアジャーナル」で随時更新中です。
認知症予防財団とは
認知症予防財団は、認知症に関する知識の普及と予防を目的に設立された公益財団法人です。1990年4月、毎日新聞の創刊120年記念事業として設立された「ぼけ予防協会」を前身とし、2010年に公益財団法人へ移行しました。
認知症の予防や早期発見を促進するための情報提供のほか、本人や家族、介護者に向けた相談支援もおこなっています。また、一般の方向けの啓発活動や支援ツールの提供なども積極的におこなっており、社会全体で認知症に向き合う環境づくりを推進しています。
▼ 認知症のサインについて知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:物忘れと認知症の境界線|見逃せないサインと家族ができること
参考:公益財団法人認知症予防財団『公益財団法人認知症予防財団のご案内』
認知症予防財団の主な事業内容
認知症予防財団の主な事業内容は、以下のとおりです。
- 電話相談「認知症110番」
- 大友式認知症予測テスト
- 思い出ノート
- マンスリーサポーター制度
ほかにも、機関紙「新時代」の発行やシンポジウムなどの啓発活動、認知症に関する調査・研究など、幅広い事業を展開しています。以下で、認知症予防財団の主な事業内容を見ていきましょう。
電話相談「認知症110番」
「認知症110番」は、認知症に関する不安や疑問に対し、専門家が電話で無料相談をおこなうサービスです。1992年にサービスが開始され、「相談者に寄り添う」をモットーに、経験豊富な相談員が対応しています。本人や家族、介護者など、誰でも気軽に相談できる環境が整っています。
電話番号 | 0120-65-4874 |
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対応時間 | 月・木曜 10:00〜15:00
(月曜が祝日の場合、原則火曜日) |
通算の相談件数は3万件を超え、厚生労働省の後援も受けている信頼できるサービスです。
参考:公益財団法人認知症予防財団『公益財団法人認知症予防財団のご案内』
大友式認知症予測テスト
「大友式認知症予測テスト」とは、認知症の早期発見に役立つ診断テストです。10個の質問に対する回答を採点し、認知症の可能性をチェックします。
- 同じ話を無意識に繰り返す
- 知っている人の名前が思い出せない
- 物のしまい場所を忘れる
- 漢字を忘れる
- 今しようとしていることを忘れる
- 器具の説明書を読むのを面倒がる
- 理由もないのに気がふさぐ
- 身だしなみに無関心である
- 外出をおっくうがる
- 物(財布など)が見当たらないことを他人のせいにする
採点方法は、ほとんどない(0点)ときどきある(1点)頻繁にある(2点)です。合計が14点以上の場合は、専門医などの診断を受けましょう。大友式認知症予測テストは、認知症の始まりや、認知症に進展する可能性のある状態を予測できるよう考案されたものです。60歳以上の本人あるいは家族などがおこなうことも可能です。
思い出ノート
「思い出ノート」は、認知症予防財団の監修のもと、毎日新聞社が作成しました。100の質問に答えるかたちで過去の出来事を振り返りながら、脳の活性化を図るためのノートです。思い出ノートは全64ページで、大正7年以降のニュースやヒット曲などの年表がついており、思い出を振り返りやすい工夫がされています。
答えたくない質問はスキップしたり、家族と共有したりするなど、使い方は自由です。万が一、本人が認知症になった場合でも、ケアにあたる人が読めるようにしておけば、より充実したケアにつなげられます。
マンスリーサポーター制度
認知症予防財団では、マンスリーサポーターを募集しています。マンスリーサポーター制度とは、毎月一定額を継続的に寄付することで認知症予防財団の活動を支援する仕組みです。集まった寄付は、電話相談事業の運営資金として活用されます。
個人・法人を問わず月額500円から支援でき、社会全体で認知症の支援に取り組むための一歩になるでしょう。
参考:公益財団法人認知症予防財団『月額500円~「認知症110番」のご支援を!マンスリーサポーター募集』
認知症予防財団が掲げる認知症の10カ条
認知症予防財団では、「予防」「介護」「家族の接し方」に関する10カ条を掲げ、具体的な行動指針を提示しています。これらの10カ条は生活の中で実践できる内容が中心で、患者本人の生活の質や家族の負担軽減につながるものです。
予防の10カ条
予防の10カ条は、適度な運動やバランスの取れた食事など、日常的に取り入れられる工夫について掲げています。また、社会とのつながりを持つことの重要性など、孤立を防ぐための働きかけも推奨されています。
- 塩分と動物性脂肪を控えたバランスの良い食事を
- 適度に運動を行い足腰を丈夫に
- 深酒とタバコはやめて規則正しい生活を
- 生活習慣病(高血圧、肥満など)の予防・早期発見・治療を
- 転倒に気をつけよう 頭の打撲は認知症招く
- 興味と好奇心をもつように
- 考えをまとめて表現する習慣を
- こまやかな気配りをした良い付き合いを
- いつも若々しくおしゃれ心を忘れずに
- くよくよしないで明るい気分で生活を
これらは認知機能の低下を防ぐだけでなく、健康寿命の延伸にもつながる生活習慣です。
介護の10カ条
介護の10カ条は、認知症の介護にあたる家族やスタッフが無理をしないための考え方が中心です。介護のストレスを軽減し、患者本人と良好な関係を築くことを目的としています。
- コミュニケーション:語らせて微笑みうなずきなじみ感
- 食事:工夫してゆっくり食べて満足感
- 排泄:排泄は早めに声かけトイレット
- 入浴:機嫌みて誘うお風呂でさっぱりと
- 身だしなみ:身だしなみ忘れぬ気配り張り生まれ
- 活動:できること見つけて活かす生きがい作り
- 睡眠:日中を楽しく過ごして夜安眠
- 精神症状:妄想は話を合わせて安心感
- 徘徊などの周辺症状:叱らずに動機考え予防策
- 自尊心:自尊心支える介護で生き生きと
認知症の介護は、「一人で抱え込まない」「完璧を求めない」といった姿勢で取り組み、介護者自身の心身の健康を保つよう心がけましょう。
いいケアネットでは、老人ホーム探しのための入居無料相談を受け付けています。日常生活における認知症の症状でお悩みの方は、ぜひ気軽にご相談ください。
家族の接し方の10カ条
家族の接し方の10カ条では、認知症の人を傷つけない言葉づかいや対応の工夫が紹介されています。
- なじみの関係:顔なじみ落ち着き与える安心感
- 心の受容:意に添ってこころ受け止め温かく
- 心のゆとり:怒らずに相手に合わせるゆとり持つ
- 説得より納得:理屈より気持ちを通わせ納得を
- 意欲の活性化:本人を生きいきさせるよい刺激
- 孤独にしない:寝たきりや孤独にしない気づかいを
- 人格の尊重:プライドやプライバシーの尊重を
- 過去の体験は心のよりどころ:本人の過去の体験大切に
- 急激な変化を避ける:環境の急変避けて安住感
- 事故の防止を:事故防ぐ細かな工夫気配りを
患者本人の尊厳を守る対応は、安心して暮らせる家庭環境づくりの手助けになります。また、日常のコミュニケーションを見直すきっかけにもなるでしょう。
参考:公益財団法人認知症予防財団『認知症家族の接し方の10カ条』
認知症に関する相談先
認知症に関する相談は、認知症予防財団以外にもさまざまな相談先があります。ここでは、認知症に関する相談先をまとめているので、ぜひ参考にしてください。
いいケアネットでは、老人ホーム探しのための入居無料相談を受け付けています。一人ひとりの状態に合った老人ホームを比較・検討したい方は、ぜひ気軽にご相談ください。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは、高齢者の介護や医療に関する総合相談窓口であり、介護保険に関する相談や申請もおこなっています。ケアマネジャー・保健師・社会福祉士などの専門家が在籍しており、高齢者に関する心配ごとや困りごとに関しては、地域包括支援センターへの相談がおすすめです。
担当地域に住んでいる高齢者自身からの相談はもちろん、家族や友人、近隣の方からの相談にも対応しています。以下のリンク先より、お住まいの地域包括支援センターの検索が可能です。
▼ 地域包括支援センターのサポート内容について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:高齢者とその家族をサポートする地域包括支援センターとは
自治体の担当課
各自治体の高齢福祉課や介護保険課では、認知症に関する制度やサービスの情報提供をおこなっています。お住いの自治体の担当課に相談すると、困りごとに対する支援策や、支援機関を紹介してもらえます。
「高齢福祉課」「介護保険課」「高齢課」など、担当課の名称は自治体により異なるため、自治体の窓口で尋ねてみてください。なお、地域によって支援内容が異なるケースもあるので、まずは相談してみましょう。
かかりつけの医師
日頃から受診しているかかりつけの医師がいる場合には、認知症に関する心配や困りごとについて相談してみましょう。
必要に応じて、認知症の専門医療機関への受診を勧めてくれる場合もあります。
認知症の専門医療機関への受診は心理的なハードルが高く、なかなか受診に至らないケースも少なくありません。かかりつけの医師からの助言があれば、専門医療機関を受診するきっかけにもなるでしょう。
認知症疾患医療センター
認知症疾患医療センターとは、都道府県が指定する認知症に関する診断や治療に携わる専門の医療機関です。「医療センター」と聞くとややハードルが高く感じてしまうかもしれませんが、認知症やもの忘れといった悩みを幅広く受け付けています。相談窓口が設けられているため、気軽に相談でき、対応方法などのアドバイスを受けられます。
以下のリンク先より、お住まいの認知症疾患医療センターを調べることが可能です。
公益社団法人認知症の人と家族の会
認知症の患者本人と家族が集まる「認知症の人と家族の会」には、フリーダイヤルによる電話相談窓口が設置されています。
電話番号 | 本部フリーダイヤル:0120-294-456
携帯電話・スマートフォンから:050-5358-6578 |
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対応時間 | 平日 10:00~15:00 |
認知症に関する知識や介護の仕方、介護の悩みなどについて経験者が丁寧に相談に応じてくれます。
以下のリンク先より、公益社団法人認知症の人と家族の会について調べることが可能です。
特定非営利活動法人若年認知症サポートセンター
特定非営利活動法人若年認知症サポートセンターでは、65歳未満で発症する若年性認知症に関する相談を受け付けています。
電話番号 | 03-5919-4186 |
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対応時間 | 月・水・金曜日 10:00~17:00 |
以下のリンク先より、特定非営利活動法人若年認知症サポートセンターについて調べられます。
特定非営利活動法人若年性認知症サポートセンター
認知症カフェ
認知症カフェとは、認知症患者や家族、地域の方や介護・福祉などの専門家が気軽に集まれる「カフェ」のような場所です。憩いの場としてさまざまな方が集まり、情報交換の場にもなっています。
各自治体によって「認知症カフェ」「オレンジカフェ」など、さまざまな名前で運営されています。認知症カフェの詳細については、お住まいの地域包括支援センターや高齢者福祉の担当課などに尋ねてみてください。
▼ 認知症カフェの活動内容については、以下の記事でも詳しく解説しています。
関連記事:認知症カフェってどんなところ?取り組み内容や参加方法について
認知症予防財団の事業を効果的に利用しよう【まとめ】
認知症予防財団は、認知症に関する知識の普及と予防を目的に設立され、本人や家族、介護者に向けた幅広い支援をおこなっています。認知症に関する心配ごとや悩みごとがあれば「認知症110番」に相談したり、認知症とうまく付き合っていくために「思い出ノート」を活用したりすると良いでしょう。
認知症は早期に発見できれば、薬で症状の進行を遅らせることが可能な場合もあります。一人で悩まず、声をかけやすい相談先を見つけて頼ることから始めてみてください。
大阪を中心に、多数の高齢者向けの介護施設の情報を掲載する「いいケアネット」では、老人ホームに関する疑問やまつわる情報を「いいケアジャーナル」で随時更新中です。
監修者 一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長会 斉藤 正行
一般社団法人全国介護事業者連盟理事長。立命館大学卒業後、複数の介護関連企業で要職を歴任し、日本介護ベンチャーコンサルティンググループを設立。講演活動やメディア出演も多数。