「親を施設に入れたいけれどどうしたら良いか」「入居を嫌がる親にはどう対処したら良いか」と悩んでいる家族の方もいるでしょう。
親を施設に入れるため最初におこなうことは、本人と家族による話し合いです。
親が施設を嫌がるのであれば、理由を知り、無理やり入居させる対応は極力避けなければなりません。
今回は、入居を嫌がる親の対処法や施設に入れる手順について詳しく解説します。親の意向に沿った施設探しや入居ができるよう、ぜひ参考にしてください。
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嫌がる親を説得するための手順
嫌がる親を説得するための具体的な手順は、次の6ステップです。
- 嫌がる理由を知る
- 施設への入居が必要な理由を伝える
- 施設の生活をイメージしてもらう
- 第三者から説得してもらう
- 緊急性がないなら時期を待つ
- 親と一緒に施設を探してみる
以下で、各ステップについて詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
STEP1.嫌がる理由を知る
まずは、施設への入居を嫌がる理由を知ることが大切です。
親が施設入所を嫌がる場合、一般的に以下のような理由が多く見受けられます。
- 住み慣れた家から離れたくない
- 家族の援助がなくても生活できる自信がある
- 家族から見捨てられたような疎外感がある
- 他人の世話は必要ない
- 知らない人と共同生活したくない
親がなぜ施設への入居を嫌がるのか、まずは丁寧に理由を聞きましょう。親の話に耳を傾けることで、説得するための糸口が見つかる場合があります。
STEP2.施設への入居が必要な理由を伝える
次に、施設への入居が必要な理由を伝える必要があります。以下のような理由を参考に、なぜ入居が必要なのかをわかりやすく伝え、親の理解を得ましょう。
- 親の足腰が弱まり、一人での生活に危険がある
- 家族が疲れてしまい、親の介護を続けられない
- 介護を理由に家族が退職し、経済的に苦しい
- 家族の健康に不安があり、入院すると介護できなくなる
介護を施設に任せて心配事をなくし、安心して生活するための基盤をつくりたいといった意思を率直に伝えることが大切です。
STEP3.施設の生活をイメージしてもらう
入居の必要性を説明したら、施設での生活を実際にイメージしてもらいます。
施設への入居を嫌がる場合、老人ホームに対して良いイメージを持っていない可能性もあります。そのため、可能であれば親と一緒に施設見学をすると良いでしょう。
また、施設によっては体験入居ができる場合もあります。見学や体験入居が難しい場合でも、ショートステイを利用しながら施設の環境に慣れていくと、自宅以外の生活に対する抵抗感が和らぐ可能性も考えられます。
施設での生活を体験して嫌なイメージがなくなると、入居をスムーズに進めやすくなります。
STEP4.第三者から説得してもらう
家族の説明で親の納得を得られない場合、第三者に説得を依頼するのも方法の一つです。
経験豊富な第三者が間に入ることで本人の納得感が増して、入居に対する嫌なイメージを払拭できるケースも珍しくありません。家族以外の適任者は、かかりつけ医やケアマネジャー、地域包括支援センターの職員などです。
なお、親との話し合いに第三者が同席する方法がとくに有効です。
感情的になりやすい家族間の話し合いに第三者が入ると、親も冷静に意見を受け入れられる可能性が高まります。
STEP5.緊急性がないなら時期を待つ
親に持病や認知症がなく、緊急性が低い場合には、施設選びや入居準備の時期を改めることも考えましょう。本人の状態や意向を無視した入居によるデメリットは、主に以下の3つです。
- 環境の変化に馴染めず、施設内でトラブルになる
- 適切な介護サービスを受けられず、状態が悪化する
- 早期退居になった場合に施設探しや準備にかかった時間と費用が無駄になる
とくに、施設内でトラブルがあると今後の入居にも影響しかねません。そのため、緊急性がない場合は、時間をかけて親を説得してからでも入居は遅くないといえます。
STEP6.親と一緒に施設を探してみる
親が自ら施設選びに関わることで、入居への抵抗感が薄れるケースも少なくありません。
親が納得できる場所を見つけられるよう、親を施設選びに参加させることも方法の一つです。施設を選ぶ際は、以下のポイントを押さえて比較・検討してみてください。
- 施設の種類
- 施設の立地
- 施設の価格帯
- サービス内容
なお、施設選びにおいては、できるだけ親の希望やこだわりを尊重すると良いでしょう。
嫌がる親を施設に入れる手順
親を施設に入れる手順は、次の5つのステップが理想的です。
- 本人と話し合う
- 予算や介護サービスを決める
- 施設探し・資料請求
- 入居候補の施設を見学する
- 施設と契約・入居
以下で、ステップごとに詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
STEP1. 本人と話し合う
最初にするべきことは、本人との話し合いです。話し合わなければ本人の状態や意向がわからず、施設探しの基準が定まりません。
また、本人の状態や意向を確認せずに入居の話を進めると、検討する前に拒否されるなどして家族間のトラブルに発展する可能性もあります。
親の施設への入居をスムーズに進めるためには、兄弟と話し合って理解を得ることも必要です。本人と話し合って意向を聞くことにより、今後希望する老後の過ごし方の実現に向けた方向性が決まります。
STEP2.予算や介護サービスを決める
入居するためには、施設ごとに定められた費用が必要になるため、いくらまでなら負担できるか予算を決めておきましょう。また、親の健康状態を知り、受けたい介護サービスを決めておくことも、入居後の予算の見通しを立てるために必要です。
入居時の一時金や月額料金、介護サービスの利用料を把握しておくと、親の貯金や年金収入などの範囲内で補えるかどうかといった予算の目安になります。年金だけでは施設費用を賄えずに貯金を取り崩す場合は、入居可能な年数の目処も立てておきましょう。
STEP3.施設探し・資料請求
施設探しや資料請求は、親が希望する条件を整理してまとめてから行動に移すことが大切です。施設に求める一般的な条件は次の通りです。
- 入居条件
- 費用
- 施設周辺の環境
- 医療ケアや介護サービスの内容
- 居室スペースの種類
- 共用施設の充実度
理想の入居先が見つかったら、施設の公式サイトから電話やメールで資料請求しましょう。施設への問い合わせに抵抗がある場合は、老人ホームの紹介会社を利用すると施設に関する情報を手軽に集められます。
STEP4.入居候補の施設を見学する
入居候補の施設から届いた資料を見比べ、気になる施設があれば積極的に見学しましょう。入居候補の施設を見学するときの主なポイントは次の通りです。
- 入居条件や諸費用、サービス内容
- スタッフの言葉遣いや対応
- スタッフの身なり
- 施設内の開放感や清掃状況
- 入居者の表情
- 資料と設備の整合性
ただし、見学する場所は一つに絞らず、複数の施設を訪問して比較・検討してください。
STEP5.施設と契約・入居
最後のステップは、契約と入居です。入居したい施設が決まったら、申し込みをしてスタッフとの面談、審査といった流れになります。無事に審査に通ると、正式に契約・入居できます。
契約には一般的に以下の7点が必要になるため、施設に確認した上で準備しておきましょう。
- 戸籍謄本
- 住民票
- 健康診断書
- 診療情報提供書
- 連帯保証人
- 身元引受人
- 親が使用している日用品
不明な点は契約までに問い合わせておくと、余裕をもって準備できます。
嫌がる親の在宅介護におけるリスク
施設への入居を嫌がる親を在宅介護する場合、介護離職や介護疲れにつながるリスクが高まるため注意が必要です。
以下で、嫌がる親の在宅介護におけるリスクを解説するので、ぜひ参考にしてください。
▼ 在宅介護のメリットとデメリットは、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:在宅介護のメリット・デメリット|費用〜在宅介護の限界まで解説!
介護離職につながる可能性がある
親の在宅介護が原因で離職せざるを得ないケースは珍しくありません。家族にとって、親の介護による負担は非常に大きなものです。とくに、フルタイムで勤務している場合は、介護と仕事の両立が難しいといえます。
親の介護は長期間にわたって続く場合がほとんどです。結果的に介護離職する場合は、収入の減少によって、家族の経済状態が悪化する可能性も考えられます。無理な在宅介護は、介護の質を下げることにもつながるでしょう。
介護疲れが蓄積するケースがある
親の介護は、精神的にも身体的にも負担が大きく、在宅介護によって介護疲れが蓄積するケースも少なくありません。とくに、親が介護を嫌がっている場合、家族は本人の気持ちを尊重しながらケアをする必要があるため、ストレスを抱えがちです。
また、親の体力が落ちたり、認知症によって暴力的な行動が出たりする場合は、身体的な負担が大きくなります。そのため、体力的な限界を感じるようになり、慢性的な疲労につながります。介護疲れが蓄積すると、最終的には介護を続けられなくなるでしょう。
▼ 親を施設に入れるメリットとデメリットについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:「親の介護、私ばかり」と感じるときの対処法|一人っ子問題やお金がない問題まで解説
ストレスが虐待に発展する事例もある
親の在宅介護による負担が大きくなりすぎると、過度なストレスによって虐待に発展するリスクもあります。親の介護において、非協力的な態度を取られたり、暴力的な言葉を投げつけられたりすると、介護者のフラストレーションが溜まります。
たとえ意図していなくても、介護者が疲れているときや無力感を感じている場合には、無意識に親への対応が厳しくなることも考えられます。最悪の場合は虐待につながる危険性もあるため、介護施設への入居を含めた適切な選択が必要です。
嫌がる親を施設に入れるときによくある質問
ここでは、親を施設に入れるときによくある質問をまとめました。
嫌がる親を施設に入れるにはお金がないけどどうすれば良い?
親を施設に入れるお金がない場合の対処法は、主に以下の5つです。
- ケアマネジャーや地域包括センターに相談する
- 費用が安い施設の利用を検討する
- 介護費用の負担軽減制度を利用する
- 親の自宅など、資産や不動産売却も視野に入れる
- 家族で不足額を分担する
親に貯蓄や資産がない場合は、年金で入れる施設を探すなど、経済的な負担を減らす方法を検討しましょう。
老人ホームへ家族が面会に来ないとどうなりますか?
コロナ禍で制限されていた面会も、感染症対策を工夫して再開する老人ホームが増えました。そのため、家族が面会に来ないと、親は寂しく老人ホームで過ごすことになります。
また、面会に来ないと家族に見放されたといった疎外感が強くなって不穏が目立つようになったり、認知症が進行してしまったりするなどの弊害も考えられます。
なにより老人ホームで過ごす親の楽しみは、家族との面会時間です。
家族は親の気持ちを理解し、施設に面会方法を確認するなどして積極的に会う時間をつくりましょう。
老人ホームに本人の同意なしで強制入居させたときの法律的リスクは?
老人ホームへの入居は、必ずしも本人の同意を必要としておらず、家族の意向があれば手続きを進められる場合があります。
そのため、本人の同意がないからといって法律的リスクを負うケースは考えにくいでしょう。
ただし、入所後のトラブルを避けるためにもできるだけ強制入所は避けるべきです。施設への入所は本人と話し合い、納得した上で決めることが望ましいといえます。
施設に入りたがらない親を説得するには?
施設に入りたがらない親を説得するためには、まず親の気持ちを理解し、寄り添う姿勢が不可欠です。その上で、第三者に協力してもらったり、介護の現実を伝えたりして、時間をかけて説得する必要があります。
▼ 施設に入りたがらない親を説得する方法が知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事:気持ち良く老人ホームに入居してほしい!親に説得するためのポイント
嫌がる親を施設に入れる際は適切な手順が必要【まとめ】
嫌がる親を施設に入れる際は、今回紹介した5つのステップで進めましょう。大切なのは、本人と家族で良く話し合い、条件に合う施設を根気よく探すことです。
まずは嫌がる理由を聞き、入居の必要性を丁寧に説明すると、親の理解を得やすくトラブルも少なく入居できるでしょう。
なお、自宅での生活に支障があり緊急性が高い場合は、一刻も早く適切な対応ができるよう地域包括支援センターへの相談がおすすめです。
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この記事の監修者
いいケアネット事務局
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