介護には予想以上の費用がかかります。しかし、親の介護にかかる費用の支援を求められず、一人で抱え込んで悩んでいる方も多いようです。
結論からいうと、親の介護費用は、親の資産を利用したり兄弟間で費用を分担したりといった方法で経済的な負担を減らせます。
この記事では、親の介護でお金をもらうための方法や、家族間での協議の重要性を説明します。さらに、介護に関する補助金についての疑問も解説します。
これらの情報を通じて、読者の皆様が親の介護という課題に向き合う上で、より良い選択をするための手助けとなることでしょう。
親の介護でお金をもらってもいい?
親の介護を引き受ける際、その経済的な負担は必ずしも一人で抱えるべきではありません。なぜなら、親の介護に伴う費用は決して軽いものではなく、支払いが難しい場合もあるからです。
この点を理解するには、具体的な数字を見ることが最も有効でしょう。
親の介護はお金がかかる
実は、親の介護にかかる費用は想像以上に高額です。その証拠に、2021年度の『生命保険に関する全国実態調査』を見てみましょう。世帯主や配偶者が介護を必要とした場合、その初期費用は平均で約234万円、そして毎月の費用は平均で15.8万円と発表されています。これらの数値は、決して小さいものではなく、誰もが気軽に負担できる額ではありません。
さらに、世帯主または配偶者が要介護状態となった場合の必要期間も考えると、その費用はもっと増えます。同調査によれば、その期間は平均で181.2カ月、つまり約15年です。この期間にわたり毎月15.8万円を支払うとなると、その合計はかなりの額になるでしょう。
参考:生命保険文化センター『2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査』
親の介護費用は一人で抱え込まないこと
以上を踏まえると、親の介護費用は一人で抱え込むべきではないことがわかります。その初期費用、月々の費用、そして長期にわたる介護期間を考慮すれば、介護費用の負担が大きいことは明らかです。そのため、介護費用を一人で負担しようとするのは、財政的にも心理的にも大きなプレッシャーとなるでしょう。
介護は社会全体の課題です。親の介護にかかる費用を支援してもらうのは全く問題ではありません。むしろ、賢明な選択と言えるでしょう。経済的な負担を軽減し、精神的な余裕を持つことで、より良い介護を提供できます。
親の介護でお金をもらう|主となる2つの選択肢
介護というのは大変な労力と時間がかかる一方で、経済的な負担も同時に考慮する必要があります。親から介護費用としてお金を受け取ることは決して罪悪感を感じるような事ではありません。それどころか、これは一般的なことと言えるでしょう。
それを具体的に理解するために、親の年金や預貯金で費用を支払うケース、そして兄弟や家族で費用を分担するケースを見ていきましょう。
親の年金や預貯金で費用を支払う
親の介護費用は基本的に親本人の資産から捻出されるものです。ただし、親の年金や預貯金だけで介護費用を支払えない場合は、足りない分を子供が負担することになります。
ここで誤解しないでいただきたいのは「親の介護は子供がするもの」「親からお金はもらえない」という考え方です。確かに子供が親を介護するのは自然なことではありますが、親の資産を利用するのは当然の権利であると言えます。
兄弟・家族で費用を分担する
そしてもう一つ、親の介護費用を兄弟や家族で分担するという選択肢もあります。親のお金で介護費用が支払えない場合、子供たちがその負担を引き受けることになります。ただし、これは全ての負担を一人が背負うという意味ではありません。
「遠方に住んでいる」「育児で忙しい」「次男次女だから」といった理由で、介護を一人の兄弟に任せてしまうのは適切ではありません。直接的に介護できない場合でも、費用を多めに支払うなどして役割を分担することが重要です。
家族協議の際に確認すべきポイント
親の介護に関する家族協議は、デリケートながらも避けては通れない重要な過程です。この際、確認すべきポイントは多岐にわたります。
以下では、親の年金・預貯金の金額確認、介護に要する時間や労力の確認、そして介護のための役割分担の確認について詳しく説明します。
親の年金・預貯金の金額を確認
まず、親の経済状況を正確に把握することが大切です。介護には必ず費用が発生します。
前述のとおり、介護の費用は基本的に親の年金や預貯金など、親本人の財産から支払うことが一般的です。ただし、親の資産だけでは足りない場合、その差額は子供たちが補てんしなければなりません。
お金に関する会話はデリケートなものになりがちですが、避けてはならない話題です。親にもその理解を求め、事前に十分な話し合いをしておきましょう。
介護に要する時間や労力の確認
次に、親が要介護状態になったときに要する時間や労力について話し合うことも重要です。国民生活基礎調査のデータによれば、親と同居している介護者の介護時間は、要介護度が高くなるほど多くなり、要介護5の場合では約63.1%の人が「ほとんど終日」と答えています。
どの程度の時間と労力が介護に必要となるかを見極め、家族全員で共有することが重要です。
参考:厚生労働省『2022(令和4)年 国民生活基礎調査』
介護のための役割分担の確認
上記を踏まえて、兄弟間での介護の役割分担について確認しましょう。家族それぞれの事情は異なりますが、全ての兄弟が親の介護に参加する意識を持つことが大切です。
例えば「仕事が忙しい」「遠方に住んでいる」という理由で、直接介護が難しい場合でも、費用を多めに支払うなどして役割を果たせます。その一方で、近所に住んでいる、または同居している兄弟は主たる介護者としての役割を果たし、手続きなどを担当することになるでしょう。
ここまで紹介した3つのポイントが明確になることで、家族全員が納得のいく形で介護の負担を分け合えるようになるはずです。
関連記事:親の介護を兄弟で分担すべき3つの理由|兄弟トラブル回避の方法も解説
親の介護で利用できる補助金はある?
介護には多くの時間と労力が必要ですが、その他にも経済的な負担が伴います。国や自治体の支援が受けられないかとお考えの方も多いでしょう。
厳密にいえば「補助金」という言葉は、事業のサポートを目的とした意味を持つため、親の介護で利用できる補助金は存在しません。
しかし、国や各自治体は、親の介護費用の負担を軽減するため、さまざまな支援を設けています。
以下では、それらを一覧形式でご紹介します。
居宅介護住宅改修費制度
居宅介護住宅改修費制度は、自宅を介護に適応させるための住宅改修を支援するための制度です。具体的には、玄関や廊下、浴室、トイレなどに手すりを設置したり、段差をなくしたりする工事が対象です。
この制度を利用することで、最大で20万円までの改修費用を補助金として受け取れます。
参考:厚生労働省『介護保険における住宅改修の概要』
高額療養費制度
次に紹介するのが、高額療養費制度です。これは医療費が一定の金額を超えた場合、その超過分を補助金として受け取れるという制度です。医療機関や薬局で支払う医療費が一定の金額を超えた場合は、加入している公的医療保険に高額療養費の支給申請書を提出しましょう。
この制度は医療保険に加入している全ての人が利用可能で、医療費の自己負担額を大幅に軽減できます。
参考:厚生労働省『高額療養費制度を利用される皆さまへ』
高額介護合算療養費制度
高額介護合算療養費制度とは、医療保険と介護保険の自己負担額が年間を通じて高額となった場合、その負担額を軽減するための制度です。
具体的には、医療費と介護費の自己負担額を合算し、その額が一定を超えた場合に適用され、自己負担額の一部が返還されます。これにより、家計への負担を大幅に軽減できます。
参考:厚生労働省『高額介護合算療養費制度』
高額介護サービス費制度
高額介護サービス費制度とは、1カ月間における介護保険サービスの自己負担額が一定の金額を超えた場合に適用される制度です。
通常、介護保険の自己負担額は利用者の所得に応じて1〜3割となりますが、日常的に介護保険サービスを利用している場合、自己負担額は高額になりがちです。そのため、個々の所得や世帯の所得に応じて決まる月々の自己負担上限額を超えた分が、この制度により介護保険から支給されます。
参考:生命保険文化センター『公的介護保険で自己負担額が高額になった場合の軽減措置とは?』
介護休業給付金
介護休業給付金とは、労働者が家族の介護に専念するために、労働を一時的に休止した際に支給される給付金です。この制度を利用すると、休業期間中に通常の給与の67%が給付されます。給付の上限期間は最長93日間で、条件を満たせば最大3回まで利用可能です。
ただし、この制度を利用するにはいくつかの条件があり、詳細な手続きが必要です。在職中の事業所を管轄するハローワークに相談してみましょう。
参考:厚生労働省『Q&A~介護休業給付~』
家族介護慰労金(※廃止の可能性あり)
家族介護慰労金は、介護保険サービスを利用せずに、自宅で1年以上にわたり要介護4~5に認定された要介護者を介護している家族に対して、自治体から年額10~12万円が支給される制度です。
ただし、該当する家族が全てこの制度の支給を受けられるわけではなく、自治体によってはこの制度を実施していない場合もあります。また、制度自体が今後廃止される可能性もあるので注意が必要です。
参考:江別市『家族介護慰労事業について』
まとめ:「親の介護でお金をもらえない」と抱え込まず、介護費用の支援を受けましょう。
では、今回のまとめです。
親の介護には多くの時間や労力、さらにはお金を使います。そのため、経済的なサポートがなければ、介護を続けることは困難になるでしょう。まずは、家族間での協議を通じて介護の負担を明確にし、公平に分けることが重要です。協議の際には、誰がどの程度の負担を担うか、介護の範囲や期間などを具体的に話し合いましょう。
さらに、国や自治体から提供されている介護に関する支援制度を利用すれば、介護費用の一部を補え、経済的な負担を軽減できます。
親の介護だからといって一人で抱え込む必要はありません。介護についての理解を深め、必要な支援を受けるようにしましょう。
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この記事の監修者
いいケアネット事務局
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