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介護虐待が起きる前に家族が知っておきたい事例|原因や防止策も解説

介護と仕事やプライベートの両立は想像以上に難しく、無意識のうちに家族への介護が虐待につながっている可能性は少なくありません。

厚生労働省によると、令和5年度の家族による高齢者虐待は17,100件にものぼります。

本記事では、介護虐待の実態と原因を整理し、今日から実践できる3つの予防策を紹介します。

今日から実践できる対処法で、未然に防止を図りましょう。

介護虐待は家族間でも多数起きているのが現状

家族による介護は、介護が必要な高齢者にとって大切な支えとなる一方で、残念ながら家族間での高齢者虐待も社会問題となっています。

厚生労働省の調査では、令和5年度の 高齢者の世話をしている家族、親族、同居人などからの虐待の疑いでの相談・通報件数は40,386 件でした。

相談・通報件数のうちの17,100 件は虐待と判断され、高齢者の虐待数は令和4年度から2.6%増加していることがわかります。

このデータからも、介護虐待はどの家庭にも起こりうる問題と考えられるでしょう。

参考:厚生労働省『令和5年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果

出典:令和5年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果

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目次

家族からの介護虐待における傾向

厚生労働省による令和5年の調査では、女性が71.6%と男性よりも高い割合で、虐待を受けていることがわかりました。

年齢層では75歳以上の後期高齢者が80%以上を占めており、とくに80代の方が多いのが特徴です。

虐待を受けた高齢者のほとんどは要介護認定を受けており、要介護3以上の方が半数以上に達しています。

特筆すべきは、被虐待高齢者の60%以上が認知症である点です。

認知症に伴う症状への対応の難しさは介護者の負担を著しく増大させ、虐待のリスクを加速度的に高めています。

参考:厚生労働省『令和5年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果

介護虐待の種類と家族が知っておくべき事例

高齢者虐待はさまざまな形で現れます。家族が「これも虐待になるの?」と気づかないケースも多いため、ここでは介護虐待における代表的な5つの種類と事例を紹介します。

  • 身体的虐待
  • 心理的虐待
  • 金銭的な虐待
  • ネグレクト
  • 性的虐待

順番に見ていきましょう。

叩いたり乱暴に対応したりする身体的虐待

身体的虐待は、高齢者の身体に外傷が生じる、または生じる可能性のある暴行をくわえる行為です。

また、部屋に閉じ込めたり身体を拘束したりする行為も含まれます。家族による虐待でもっとも多く報告されているのが、身体的虐待です。

具体的な事例としては、以下のような行為が身体的虐待に該当します。

  • 平手で叩く
  • つねる、殴る、蹴るといった直接に暴力を振るう
  • 本人が嫌がっているのに無理やり食事や薬を口に入れる
  • 動きを抑制するために必要以上の薬を飲ませる

どのような理由があっても、こうした行為は正当化できません。

精神的に追い詰めるような心理的虐待

心理的虐待は、脅しや侮辱、暴言、意図的な無視など、高齢者に精神的な苦痛を与える行為です。身体的虐待の次に多く報告されています。

目に見える傷は残らなくとも、高齢者の尊厳や自尊心を深く傷つけ、精神的苦痛を与えているケースは珍しくありません。

心理的虐待の具体例としては、以下のような行為があります。

  • 大声で怒鳴る
  • 「バカ」「役立たず」などの侮辱的な言葉を浴びせる
  • 高齢者を子ども扱いする
  • 話しかけても意図的に無視する
  • 食事や動き、排泄などの失敗を笑う

言葉による攻撃が習慣化すると、次第にエスカレートして身体的虐待に発展する場合もあります。介護者自身が意識せず行っていることも多いため、日々の関わりの振り返りが重要です。

資産を無断で使う金銭的な虐待

経済的虐待は、本人の同意なしに財産を不当に処分したり使用したりする行為です。

高齢者の金銭を管理している家族が本人の利益を無視して使い込んだり、必要な生活費や医療費を渡さなかったりする場合は金銭的な虐待に該当します。

家庭内の金銭問題は外部から見えにくいです。そのため、潜在化しやすい傾向にあります。

金銭的虐待の例としては、以下のような行為が一例です。

  • 本人の年金や預貯金を無断で使う
  • 日常生活に必要な金銭を極端に制限する
  • 本人の持ち物や不動産を無断で売却する

本人が不在で使える状況でないとしても、同意なしに財産や資産を使用・処分してはいけません。

介護放棄するネグレクト

介護放棄のネグレクトは、高齢者の生命や健康、安全な生活を維持するために必要な世話を怠る行為です。身体的虐待、心理的虐待の次に多く報告されています。

介護におけるネグレクトは、以下のようなケースが該当します。

  • 汚れた衣服を着せ続ける
  • 床ずれができているのに放置する
  • 必要な介護サービスの利用を拒否する
  • 病気やけがをしても医療機関に連れて行かない
  • 食事や水分を十分に与えず栄養失調や脱水状態にする
  • 入浴や排せつのサポートをせず不潔な状態で放置する

介護知識の不足や介護疲れ、経済的困窮などから結果的にネグレクトに陥るケースは少なくありません。

介護者自身も支援を必要としている場合が多いため、外部からの適切な支援が重要です。

関連記事:高齢者のネグレクトとは?高齢者虐待や事例・対応策などを解説!

不適切な身体の触り方をする性的虐待

性的虐待は、本人が同意していない性的な行為を強要する虐待です。

性的虐待の具体例としては、以下のような行為があります。

  • キスを強要する
  • 性的な行為を強要する
  • わいせつな言葉をかける
  • 胸や性器など不必要に触る
  • 排泄介助の際に、必要以上に過度な露出をさせる

性的虐待は他の虐待類型に比べて報告数が少ないですが、被害者の尊厳を著しく傷つける深刻な人権侵害です。

被害者が羞恥心や恐怖心から訴え出ることが難しく、最も表面化しにくい虐待の一つと考えられています。

家族が介護虐待をしてしまう原因

家族による高齢者虐待は、介護者側の要因、高齢者側の要因、両者の人間関係など、複数の要素が複雑に絡み合って発生しやすいです。

介護している家族が高齢者を虐待してしまう理由は、大きく分けて3つあります。

  • 在宅介護の負担が大きい
  • 家族同士の性格や考え方が合わない
  • 経済的な余裕がない

順番に見ていきましょう。

在宅介護の負担が大きい

家族間の介護とはいえ、在宅介護の身体的負担は想像以上に大きいものです。

厚生労働省が公開した令和5年度「高齢者虐待の防止」では、虐待の発生要因として「介護疲れ・介護ストレス」が 9,376 件(54.8%)と報告されています。

食事、入浴、排泄の介助といった日常的なケアに加え、夜間の対応による睡眠不足や慢性的な疲れが溜まるのは、無理もありません。

とくに認知症の高齢者の徘徊や、暴言といった行動・心理症状が発生し続ける状況は、精神的にも消耗しやすいです。

また、介護の終わりが見えないことによる将来への不安や、自分の時間が持てない状態が続くことによる社会的孤立感も一因として考えられています。

これらの負担が限界を超えたとき、ストレスで介護虐待に至るケースは多いです。

家族同士の性格や考え方が合わない

長年にわたる親子関係や夫婦関係が虐待の背景となることも少なくありません。

厚生労働省の令和4年度公開資料「高齢者虐待の防止」では、介護虐待の発生要因として6番目に多い理由が「被虐待者との虐待発生までの人間関係」であると発表されました。

たとえば、子ども時代に厳しく育てられた経験がある場合、親が老いて立場が逆転した際に過去の憂さ晴らしをしたくなるケースは起こり得ます。

また、元々の関係性が良好でなかった場合も、介護という密接な関わりが必要な状況で葛藤が深まることもあるでしょう。

「介護は家族がすべき」といった周囲の声や世間体に対するストレス、プレッシャーも、虐待の発生要因のひとつとなっています。

くわえて、ほかの親族の無関心・非協力的な態度によっても孤立感を深め、介護虐待が発生しやすい環境を助長しがちです。

経済的な余裕がない

介護サービスの利用料、医療費、おむつ代などの消耗品費など、介護保険外での経済的負担が多くなりやすいのが現状です。

経済的困窮は介護者の選択肢を狭め、適切なサービスを利用できなくなり、精神的なゆとりも奪います。

精神的に追い詰められる状況が長期間続くと、経済的苦境と介護ストレスが複合的に作用し、虐待リスクが高まりやすいです。

家族による介護虐待を防ぐための3つの対処法

介護虐待は「起こってから対応する」では遅いため、予防が重要です。

以下の3つの対処法を知っておきましょう。

  • 家族間でサポート体制を整える
  • 第三者に相談する
  • 介護サービスを積極的に活用する

順番に解説します。

家族間でサポート体制を整える

介護は特定の一人に負担が集中すると、その人が心身ともに疲弊し、虐待のリスクが高まります。

兄弟姉妹や他の親族がいる場合は、がどのような役割を担うのか具体的に話し合い、協力体制を構築するのが大切です。

定期的に家族会議を開いたり連絡を取り合ったりして、介護に関する情報を共有し、お互いの状況を理解し合うことも意識しましょう。

また、介護保険制度やサービス、認知症などについての知識を、家族全体で学ぶことも介護虐待の予防につながります。

第三者に相談する

介護の悩みや負担を家族内だけで解決しようとせず、外部の専門機関や相談窓口に助けを求めるのも介護虐待を抑止する上で大事なアクションです。

一人で抱え込まずに相談すれば、客観的なアドバイスを得られたり、適切な支援につながったりします

無料で相談できる窓口としては、以下のようなものがあります。

  • 地域包括支援センター
  • 市町村の高齢福祉担当課
  • 担当のケアマネジャー
  • 民生委員など

虐待に関する相談や通報は匿名相談が可能です。

相談者のプライバシーは法律で守られるため、安心して相談してください。

関連記事:高齢者とその家族をサポートする地域包括支援センターとは

介護サービスを積極的に活用する

介護サービスや自治体の福祉サービスの積極的な利用は、介護負担を軽減し、虐待を予防する有効な手段です。

訪問介護やデイサービス、ショートステイなどを利用すると、介護者の身体的・精神的な休息が取れるようになります。

介護生活に疲れや限界を感じたら、家族を介護施設に入居させるのも選択肢の1つです。

このとき、家族を施設に預ける考えに罪悪感を抱く方も少なくありません。

しかし、適切なサポートを受けることは、介護者と高齢者の双方にとってより良い暮らしにつながる可能性があります。

介護施設への入所を検討したい方は、大阪を中心とした高齢者向けの介護施設の情報を多数掲載する「いいケアネット」をぜひご活用ください。

関連記事:親を施設に入れる罪悪感がある方必見!葛藤や後悔を払拭する方法を解説

家族の介護虐待を発見したときの対応策

虐待が疑われる状況に気づいたら、早期に発見した上での適切な対応が、高齢者の安全を守るために不可欠です。

まず、高齢者の身体や行動に虐待を示すサインがないか注意を払いましょう。

以下のようなサインが見受けられる場合は、介護虐待が起きている可能性が高いです。

  • 急激に体重が減少している
  • 衣服や住環境が著しく不衛生に見える
  • 顔や腕などに不自然なあざや傷がある
  • 「お金をとられた」という訴えがある
  • 急にふさぎ込むといった変化が見られる
  • 特定の家族に対しておびえた表情を見せる

虐待が疑われる場合は、一人で抱え込まず速やかに市町村や地域包括支援センターに連絡しましょう。

高齢者虐待防止法では、虐待を発見した者は速やかに通報するよう努めることが定められています。

とくに生命や身体に危険がある場合は通報義務があり、守秘義務によって守られた状態での匿名通報も可能です。

参考:厚生労働省『高齢者虐待防止の基本

介護虐待を防げるよう家族だけで抱え込まないようにしよう【まとめ】

介護虐待は、身体的暴力だけでなく、暴言、経済的搾取、世話の放棄などさまざまな形で現れ、どの家庭にも起こりうる問題です。

介護虐待の背景には、介護負担、個人の特性、長年の人間関係などが複雑に絡み合っています。

虐待を防ぐためには、家族内での協力体制づくりが体制づくりが必要です。

また、地域包括支援センターなどの外部機関に早期に相談し、介護サービスを積極的に活用するのも介護虐待の防止につながります。

介護は家族だけで抱え込むものではなく、社会全体で支えるものだという認識を持ちましょう。

介護虐待を未然に防ぐために介護施設の利用を検討している場合は、大阪を中心とした高齢者向け施設情報を掲載する「いいケアネット」をご活用ください。無料で入居条件・費用・空室状況の確認できるので、登録してどんな施設があるかチェックしてみてください。

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監修者

一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長会

斉藤 正行

一般社団法人全国介護事業者連盟理事長。立命館大学卒業後、複数の介護関連企業で要職を歴任し、日本介護ベンチャーコンサルティンググループを設立。講演活動やメディア出演も多数。

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