「介護と仕事の両立が難しい…」
「介護離職」という言葉もよく耳にする昨今、介護と仕事の両立に悩む方は多くいらっしゃいます。
介護と仕事の両立は大変ですが、決して不可能なことではありません。政府が打ち出した、両立のための支援制度も存在します。
今回は介護と仕事の両立の現状や、実際に介護と仕事を両立している人の事例から「介護と仕事を両立させるために何が大切か」についてみていきたいと思います。
また両立を考えている方向けの支援制度もご紹介します。
「介護と仕事を両立させたい!」そんな思いをお持ちの方、ぜひご一読下さい。
介護と仕事の両立の現状
介護と仕事を両立させることは不可能ではないと先ほどご説明しましたが、本当でしょうか。
まずはデータを元に、介護と仕事の両立の現状について見ていきましょう。
総務省は「2017年就業構造基本調査」を公表しました。
同調査は5年ごとに行われており、今回は全国の約52万世帯を対象に、2017年10月10日時点の就業状況などを推計しています。同調査から以下のことが分かりました。
・介護を担っているのは627万6千人(5年前の調査よりも70万5千人増加)
・介護を担いながら働いているのは340万3千人 |
・過去1年間で介護や看護を理由に仕事を辞めた人は9万9千人(前回調査からほぼ横ばい)
・離職した人のうち一年以内に再就職し、現在働いているのは2万5千人(前回調査から7000人増加) |
介護をしている人の約半数が介護と仕事を両立させていることが分かりますね。
介護と仕事を両立している人は決して少なくありませんが、その一方で、介護や看護を理由に離職する人が9万9千人と多くいらっしゃることも事実です。
そのうち再就職されている方の数が2万5千人ですので、あとの7万4千人のかたはそのまま介護に専念していることになります。決して少なくない方が、両立をやめて介護を選択しているのです。
また仕事と介護の両立のために転職を行っている方も多いと推察できます。
介護と仕事を両立させるのは無理?
介護と仕事の両立は決して簡単ではなさそうだということが分かりました。
そもそも、介護と仕事の両立は何が難しいのでしょうか。「休まる時間がなくてつらい」「心身に負担がかかりすぎる」など様々な考えがあるとは思いますが、こちらもデータを見てみたいと思います。
下の図は介護発生時に離職した人の詳細な理由についてのグラフです。
参考:労働政策研究・研修機構
ここから見えてくることはたくさんありますが、大きく4つに分けました。
介護を理由に退職した人の具体的な理由
・介護に時間を割きたい(両立していると時間が不足している)
・協力者の不在
・介護をすることでの心身の負担、ストレス
・雇止めや、制度がない、理解がないなど職場の環境によるもの
先ほど介護のために離職をして、一年以内に再就職した人は2万5千人いることが分かりました。この結果を勘案すると、離職した人の中には職場の環境を改善するためだったり、両立できずやむを得ず転職したりしている人も少なくなさそうですね。
時短勤務やシフト勤務など時間に融通が利く仕事に切り替えたり、今までより自宅からの距離が近いなど通勤時間の短縮などを図っていたりする人も少なくないかもしれません。
また心身に負担がかかることはある程度覚悟しないといけないことですが、協力者がいなければ余計に負担がかかりますし、自分一人で抱え込んでしまうことになりかねません。一人で抱えているからこそ負担やストレスがかかる、という悪循環も想像できますね。
介護と仕事を両立させている事例からみる両立させるポイント
両立に際しての障害が何となく見えてきましたね。しかしその障害を乗り越えて両立している人がいることも事実です。
実際に両立している人の事例から、介護と仕事を両立するにあたって大切なことを探りましょう。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000123113.pdf
こちらは厚生労働省の「平成25年度 仕事と介護の両立支援事業 仕事と介護の両立モデル 介護離職を防ぐために」というPDFです。タイトルの通り、仕事と介護を両立させるためのポイントや支援事業、また実際に介護と仕事を両立している人の事例が掲載されています。
この事例集を見ると、フルタイムで働いている人も多くいます。介護休暇制度などを利用せず、介護を理由に休むことなく働いている方もいらっしゃいます。
このPDFには、介護と仕事を両立させる大切なポイントとして、以下の文言が掲載されています。
1、 職場に「家族等の介護を行っている」ことを伝え、 必要に応じて勤務先の「仕事と介護の両立支援制度を利用」する。
介護に際して、休暇をとったり遅刻をしたりする可能性もあります。自分の仕事を同僚に任せる必要がでる場合もあるでしょう。介護について話しておけば周囲の協力も得やすくなりますし、欠勤などで自身の評価が下がることも防げます。
2、介護保険サービスを利用し、自分で「介護をしすぎない」。
介護を自分一人で行うとかなりの時間と体力を使い、大きな負担がかかりますし、仕事にも影響がでてきやすくなります。例えば、食事、入浴などの身体介護や掃除、洗濯などの自宅で行う介護はホームヘルパーに依頼することができます。介護のプロに任せて自分の負担を減らすことを考えると良いです。
3、 ケアマネジャーに何でも相談する。
ケアマネジャーは要介護者及び介護をする方の希望を組んでケアプランを作成します。ケアプランは見直し可能なので自身の仕事状況の変化や現状を話せば、必要に応じたサービスが使えるように相談に乗ってくれます。
またケアマネジャーは介護をする方の悩みや不安を発見することも仕事の一つです。介護の悩み、ストレスなど何かあればケアマネジャーに相談してみてください。
4、 日ごろから「家族と良好な関係」を築く。
介護がいつ始まってもいいように、家族が元気なうちから介護をどうするか話し合っておくとスムーズです。また介護が必要になると配偶者や子供の協力が不可欠です。要介護者とのコミュニケーションはもちろん、介護を協力する家族とも日ごろから積極的なコミュニケーションを心掛けることでいざというとき頼りになります。
5、 介護を深刻に捉えすぎずに、「自分の時間を確保」する。
介護のことを考えすぎたり抱え込んだりすると疲れがたまって悲観的になるなど、精神的に落ち込みます。仕事に悪影響を及ぼすこともあるでしょう。介護をする方に大切にしてほしいのは「自分の健康」です。介護する方が倒れてしまうと元も子もないからです。
自分の休みの日に介護サービスを使用してリフレッシュの時間を作っても構いません。時には家族にすべて任せてしまうのも良い手です。始まりはもちろん終わりも分からないのが介護です。ずっと真剣に向き合うのではなく、息抜きもしながら付き合っていくことで介護と仕事の両立もしやすくなります。
事例集の中では、職場の理解を得てシフトの調整を行っている方や、家族と協力して分担して介護を行っている方がいらっしゃいます。周囲の協力を得ているパターンですね。
またケアマネジャーに気軽に相談し、自身の状況や「介護と仕事を両立したい」という希望を理解してもらっているパターンが多いです。専門家に相談することで悩みやストレスを抱えたときに自分自身がいっぱいいっぱいになるのを防ぐことができますし、問題を解決できる適切なケアプランを作成してもらうことができます。
まとめると
「自分一人で抱え込まない」
「職場や周囲に理解してもらう」
「介護サービスをうまく利用して負担を減らす」
ことが重要といえますね。
また事例集には介護と仕事を両立させるために、以下の準備が必要だと言われています。
仕事と介護の両立を実現している方からは「事前に準備しておくべきこと」のアドバイスを受けました。それは以下の2点、すなわち
① 介護保険制度・介護サービスの概要を把握しておくこと
② 介護に直面した時にどこに相談すればよいか、その窓口を知っておくこと
に集約されます。
これも自分自身が抱えこみすぎずに、また適切なサービスを利用するために必要なことでしょう。
介護と仕事を両立させるための支援制度
介護と仕事を両立させるために、政府は2015年より「介護離職ゼロ」を成長戦略に位置付けて、いろいろな施策を打ち出しています。
介護休業制度
概要 | 要介護状態にある家族を介護するために、一定の期間の休業が可能 |
利用条件
|
・同一の事業主に引き続き1年以上雇用されている、要介護状態にある対象家族を介護する男女労働者(日々雇用は除く)
・介護休業開始予定日から93日を経過する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれること |
利用期間・回数 | ・通算して93日を限度として、労働者が申し出た期間が原則
・対象家族1人につき3回まで利用可能 |
対象家族 の範囲 |
・配偶者(婚姻の届け出をしていなくとも事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)
・父母及び子(準ずるものとして、祖父母、兄弟姉妹及び孫を含む) ・配偶者の父母 |
利用中の
給料 |
支給なし
(会社によっては給料の何割かを支給するところもあり。就業規則を確認してください) |
日々雇用以外の全ての雇用形態の方、つまりパートやアルバイトなどの非正規雇用でもこの介護休業制度を受けることが可能です。
労働契約上有期雇用されている方でも、その契約が実質的に期間の定めのない契約となっている場合は、上記の一定の範囲に該当するか否かに関わらず介護休業の対象になります。
介護給付金
「介護休業制度」は介護によって休業しても立場を保証されるものです。
休業中の賃金については規定がなく、支給がされません。(会社によっては支給される場合もあるので就業規則を確認すると良いです)
この場合に利用できるのが「介護給付金制度」になります
概要 | 雇用保険の被保険者が介護休業を取得した場合、一定の要件を満たすと給付金が受けられる |
金額 | 原則「介護休業を取った時の賃金の日額×支給日数×67%」 |
要件 | 家族を介護するための休業をした雇用保険の一般被保険者の方で、介護休業開始前2年間に、賃金支払い基礎日数が11日以上ある完全付きが12か月以上ある方
(ただし例外などあり。詳細はハローワークの公式PDFで確認 https://www.hellowork.go.jp/dbps_data/_material_/localhost/doc/kaigo_kyufu.pdf) |
介護保険・その他
制度とは違いますが、介護をするときに心強い味方となるのが民間の介護保険です。
終身保険には「介護特約」がついたものもありますし、「介護保険」がメインになっているものも存在します。
保険会社によって保障される内容や保障範囲は異なりますので、事前に内容をしっかりかくにんしてくださいね。
その他、介護と仕事を両立させるためのセミナーを民間企業が一般向け、事業者向けに行っています。
介護と仕事を両立させるのは難しいけれど、不可能ではない
ここまで介護と仕事の両立について説明してきました。
介護と仕事の両立は簡単ではありませんが、決して不可能ではありません。
「自分一人で抱え込まない」ことでうまく両立をしている方もたくさんいらっしゃいます。
両立している事例を参考にしつつ、身近な家族やケアマネジャーにも相談してみてください。抱え込まないことが両立のカギになりますので、無理はしないでくださいね。
もし施設の入居をお考えの場合、弊社でも施設探しのお手伝いをいたします。
もしくは0120-577-889へお電話ください。
この記事の監修者
いいケアネット事務局
突然倒れた、転んで頭を打ったなど、ご自身やご家族の介護を身近に感じるきっかけはそれぞれです。 いいケアネットでは、いざという時のために役立つ介護の知識や介護施設についてご紹介します。