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子が親の家賃を払うと贈与税はかかる?かかるかどうかをパターン別に解説

親が高齢になってくると、子どもが家賃や生活費を援助するケースは珍しくありません。

支援する際に「贈与税はかかる?」と悩む方も多いのではないでしょうか。

子が親の家賃や生活費を支払う場合、原則として贈与税はかかりません。

しかし、金額が大きすぎたり用途が生活費以外に及んだりすると、課税されるリスクが生じます。

ここでは、子が支払う親の家賃や生活費に贈与税がかからない場合とかかる場合のちがいや、利用できる扶養控除や一括贈与の非課税制度などについて紹介します。

子が親の家賃を払う場合、原則として贈与税は発生しない

親子は法律上「扶養義務者」に当たるため、家賃や日常の生活費を子が支払っても、社会通念上必要と認められる範囲なら贈与税はかかりません。

ただし、子が支払った生活費が高額すぎたり用途が生活費を超えたりする場合は、贈与税がかかる可能性があります。

具体的に、どのような条件で非課税・課税が分かれるのかを見てみましょう。

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目次

子が親の家賃を支払う場合、生活に必要な範囲の額は非課税

まず大前提として、民法や相続税法では親子(直系血族)間に扶養義務があると定められています。

贈与税は「本人にとって一方的な資産移転」を対象としています。扶養義務者となる親や子ども、配偶者にとって、生活に必要な費用を負担するケースでは贈与税がかかりません。

そのため、日常生活において必要不可欠な出費である家賃や食費、医療費、介護費用などは「生活費」として扱われ、基本的に贈与税の課税対象外です。

たとえば、親が高齢で年金収入が少ない場合、子どもが毎月数万円の家賃や生活費、医療費などを援助・仕送りするのは扶養義務の一環とみなされ、非課税となることが多くあります。

年間で基礎控除額の110万円を超える支援であっても、生活費として認められる範囲であれば非課税として扱われます。

参考:No.4402 贈与税がかかる場合 | 国税庁

「生活費の範囲を大きく超える場合」の家賃支払いは課税対象

親子関係には扶養義務があるとはいえ、すべての支払いが無条件で非課税になるわけではありません。

仕送りや扶養においては「生活費の範囲を大きく超える場合」は課税対象になります。

たとえば、以下のケースでは、贈与税がかかりやすいです。

  • 地域の相場や親の生活水準を上回る高額な家賃を子どもが負担している
  • 親に十分な資産や収入があるのに、子どもが大きな金額を定期的に渡している

また、親がそのお金を投資や高額商品、旅行費など生活費とはいえない用途に回している場合、税務署が「扶養義務の範囲外」と判断するケースもあります。

贈与税がかかるのは、110万円の基礎控除を超えた金額に対してです。

親子間でも仕送りや支払いの必要性が認められない場合は、贈与税がかかるため注意しましょう。

条件を満たせば親との別居・同居中を問わず贈与税の対象外

親との別居・同居にかかわらず、子が親の家賃や生活費を支払う場合は「生活費の範囲」として妥当な金額であれば贈与税はかかりません。

別居であっても、毎月の家賃相場や親の収入状況などから見て妥当な金額であれば、生活費として認められ、贈与税がかかるリスクは低くなります。

親の家賃の支払い方法についても、最終的には「親の生活維持のために必要かどうか」が判断基準です。

子が親にまとめて渡したり、子が直接家主へ振り込んだりする場合も、常識的に考えて過度な負担や用途外の目的が含まれていなければ、扶養義務の一環として認められやすいでしょう。

ただし、確認不足や無申告の状態で指摘を受けるとトラブルになりかねないため、念のため税理士や専門家への相談をおすすめします。

参考:No.4405 贈与税がかからない場合 | 国税庁

親の家賃を払ったり仕送りしたりする際に贈与税が発生するケース

子が親の家賃や生活費を負担する場合でも、「生活費の範囲」を超えた支援は贈与税の対象になる可能性があるとお伝えしました。

具体的に、どのようなケースで贈与税がかかるのかを解説します。

親の生活水準を大きく超える高額な生活費を負担する場合

たとえば、親の居住地域の家賃相場が5万円前後であるにもかかわらず、子が30万円以上の高層マンションの家賃を毎月全額負担しているような場合を想定してください。

地域の生活水準や必要性を感じない高額な家賃などは、税務上「生活に通常必要な範囲」をはるかに超えるとみなされる可能性があります。

親が経済的に余裕があり生活水準が高い場合でも、過度な金額と税務署が判断すれば基礎控除を超えた分は課税対象として扱われやすいです。

親に十分な収入がある状態で生活費を全額負担する場合

親が十分な年金収入や資産を持っており、自力で家賃を支払えるにもかかわらず、子がその家賃を肩代わりしているケースにも注意が必要です。

扶養義務は「生活が成り立たない人」を助けることを目的としています。

親自身が十分な収入や資産がある場合には、単なる資金移転とみなされる可能性が高いです。

結果として、通常の生活費とは認められず、110万円を超える部分が贈与税の課税対象となるリスクがあります。実際に必要な生活費だと証明するには、援助額や使途を明確にしておくことが大切です。

年間の合計仕送り額が明らかに生活費を超えている場合

家賃や医療費以外の高級品や海外旅行費用を子が支払う場合も、贈与税がかかる可能性が高いです。

実際に家賃なども支払っているとしても、合計金額が明らかに「日常の生活費」を超えると判断されると、税務上は贈与として扱われる可能性があります。

たとえば、親が高級ブランド品や車の購入に使っていたり、投資資金として使用していたりするケースでは、扶養義務を逸脱した資金移転とみなされやすいです。

親に金銭的な支援をするときは、仕送りを高額な用途に流用しないように、親子間で認識を擦り合わせておきましょう。

子が親の家賃を払う場合は扶養控除を利用できる

親を子の扶養家族として認定できる条件を満たしている場合、子の所得税や住民税に扶養控除を適用できます。

家賃をはじめとする生活費を負担しているなら、節税面でもメリットがあるためチェックしてみましょう。

条件を満たした場合、子の所得税と住民税は控除対象

扶養控除は親の収入が控除対象の上限を下回り、かつ子が親の生活費を実質的に支えていると認められれば、所得税・住民税の負担を軽減できる制度です。

子の税金に扶養控除を適用する場合、親の年齢や同居・別居の状況によって控除額が異なります。

具体的な金額は、以下の通りです。

条件 所得税の控除額 住民税の控除額
親が70歳未満 38万円 33万円
70歳以上の親と別居 48万円 85万円
70歳以上の親と同居 58万円 45万円

扶養控除を適用する場合、親の収入状況(年金やパート収入など)や扶養の事実を明確にしておくことが大前提です。

証拠として、仕送りの記録や家賃支払いの証明などを保管しておきましょう。

関連記事:年金受給者の親を扶養に出来る?メリット・デメリット、注意点について

参考:No.1180 扶養控除 | 国税庁

参考:No.1182 高齢者を扶養している人が受けられる配偶者控除や扶養控除

親の年間合計所得金額が48万円以下なら利用可能

所得税法では、親の年間合計所得金額が48万円以下であれば、子の扶養親族として認められる傾向にあります。

年間所得48万円以下の目安は、年金収入だけなら158万円以下、給与収入のみなら103万円以下です。

扶養親族は「生計を一にしている」ことが求められますが、別居でも定期的に仕送りされていれば、その要件を満たす場合があります。

たとえば、月数万円の家賃を子が負担しているなら、事実上、親の生活維持をサポートしていると見なされる可能性が高いです。

関連記事:親への仕送りは贈与税になる?節税のポイントや扶養に入れるメリット・デメリット | シニアライフアドバイザー監修 介護Q&A【いいケアネット】公式

一括での贈与なら非課税制度がお得な場合も

子が親の家賃や生活費を継続的に払う場合とは別に、大きな資金をまとめて渡したい場合は、特定の非課税制度を利用できるかもしれません。

ここでは、教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与に対する特例制度について紹介します。

教育資金の一括贈与非課税制度【2026年3月31日まで】

2026年3月31日までの時限措置として、祖父母や親からの教育資金贈与に関しては、最大1,500万円まで非課税になる制度があります。

この制度は若い世代への教育支援と相続税対策を目的としており、余った資金や教育以外に使用した場合には課税対象です。

教育資金の一括贈与非課税制度を利用する際は、以下の条件を満たす必要があります。

  • 祖父母や両親など、自分より前の世代で直通する親族である「直系尊属」が、30歳未満の子や孫に対し、教育資金を目的に最大1,500万円(学校以外の費用は500万円まで)を一括贈与する場合
  • 贈与を受ける者の前年所得が1,000万円以下である
  • 使用した際は教育関連支出に充てた証明書類を提出する

参考:祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし | 国税庁

結婚・子育て資金一括贈与非課税制度【2025年3月末まで】

結婚・子育て資金一括贈与非課税制度は、祖父母や両親などが50歳未満の子や孫に対し、資金を一括贈与する場合に利用できる制度です。

用途は以下のとおりです。

  • 結婚
  • 妊娠
  • 出産
  • 育児

資金は金融機関で専用口座を開設した信託銀行などによって管理され、利用した場合は証明書類を提出しなければなりません。教育資金の一括贈与非課税制度と同じく、余った場合や対象外の用途に使った場合は課税対象です。

贈与できる金額は最大1,000万円であり、結婚費用は同じ枠組みで300万円までが非課税として扱われます。

ただし、結婚・子育て資金一括贈与非課税制度は、受け取る子や孫の前年所得が1,000万円以下でなければいけません。

制度自体は、2025年3月末までと期限が決まっているため、利用を検討する方はなるべく早く対応するようにしましょう。

参考:結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置 | こども家庭庁

子が親の家賃を支払う場合は年間の仕送り額に注意しよう

子が親の家賃や生活費を負担するときには、基本的に贈与税はかかりません。

親子間には扶養義務があり、家賃や生活費といった通常必要な出費は「贈与」ではなく「生活費の負担」として非課税扱いになるからです。

ただし、過度に高額な生活費を払う場合や、親が十分な収入・資産を持っているのに子が不相応な金額を負担している場合などは、超過分が贈与税の対象となる可能性があります。

親が一定の所得要件を満たせば扶養控除を適用して節税できる場合もあるため、家賃を含めた全体的な経済状況を整理しながら、正しく制度を活用しましょう。

この記事の監修者

いいケアネット事務局

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