2018年5月16日、東京都豊島区が「混合介護」の展開に向けた協議を進めている有識者会議の会合を開催し、今年度実施するモデル事業の詳細を公表しました。
株式会社やNPO法人などの10の事業者が参加し、まずは訪問介護が対象となります。
このように今「混合介護」が注目されています。「混合介護」とは何でしょうか。
「混合介護」とはその名の通り二種類の介護を混ぜて提供することです。
介護サービスには、介護保険で認められている「利用者が費用の一部を負担するサービス」と、介護保険で認められていない「利用者が費用の全額を負担するサービス」の2種類が存在します。
介護保険内のサービスは、できることが限られています。
例えば「利用者の食事を作る」ことはできますが、「利用者の家族の分も一緒に作る」ことはできません。
そこで介護保険内のサービスと一緒に、介護保険外のサービスを使えば「家族の分も作ってもらえる」のですが、その分の費用は全額自費になります。
自費で賄う分、介護保険外のサービスは介護保険内のサービスに比べ自由度が高いのが強みです。
現状、この混合介護は「明確に区切られている」必要があります。例えば家族の分も料理を作る場合、利用者の分、家族の分、と分けて作らなければならないのです。
この点がネックで、現在混合介護は浸透していませんが、豊島区が動いたように、今混合介護を積極的に推し進めた方が良いという意見もあります。
混合介護が浸透すれば、今より充実したサービスを必要に応じて受けることができます。利用者本人はもちろん、家族などの介護者の負担が減ることにも繋がります。
また、混合介護が広まれば事業者間の競争が活発になり、より質の高いサービスを低い介護料で受けられることになりますし、介護事業者の利益も今より上がります。
混合介護が広まれば、介護者、利用者、介護着業者全てにメリットがあるとされています。
しかし、デメリットも懸念されています。
例えば、所得が高い人と低い人で受けられるサービスが異なる「経済格差」が生まれる可能性があります。
利益を出したい事業者が、利用者の求めていないサービスを無理に押し付けたり、法外な料金でサービスを提供したりする恐れもあります。
事業者が介護保険内のサービスに介護保険外のサービスを組み込むと利用者の負担は軽くなるため、必要以上にサービス利用が増える可能性もあります。
結果、介護保険給付費が跳ね上がり、介護保険料を払う世代の負担が増えることも予測されます。
メリット、デメリット共に大きいのが混合介護なのです。
混合介護のメリットとデメリットを踏まえたうえで、豊島区は8月にも混合介護を実施していく方針です。
介護保険が適用されないサービスは、利用者のニーズにこたえる「パッケージ型」で提供していくとのこと。
豊島区の取り組みの結果により、今後の混合介護の動きが変わる可能性もありますので、注目してみるのも良いかもしれません。
この記事の監修者
いいケアネット事務局
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