「中国の老人ホームは日本とどう違うの?」「中国の老人ホームに入居するにはどうしたらいい?」と疑問を抱いている人もいるのではないでしょうか。
中国には「高齢者社会福利院」や「養老院」など、さまざまな種類の老人ホームがあります。
中国で入居する老人ホームを選ぶときは、日本と同じように立地やサービス内容、費用を重視しましょう。
ただし、国内の施設へ入居する場合と手続きが異なる場合があるため、入念に調べておくことが大切です。
この記事では、中国の老人ホームの種類や特徴、介護の現状について解説します。
中国の老人ホームの利用を検討している人や日本との違いを知りたい人は、参考にしてみてください。
【基礎知識】中国の老人ホームの種類・特徴
中国の老人ホームは、主に以下8種類の国の基準に基づいた施設があります。
種類 | 特徴 |
高齢者社会福利院 | 国が設置、運営している施設です。入居対象者は、以下のとおりとなります。
医療的ケアの他、リハビリ訓練や日常生活支援、文化娯楽活動のサービスを提供しています。 |
養老院 | 養老院は2種類あります。ひとつが日常生活が自立している人専用の施設。もう一つが自立している人の他、介助や介護が必要な人も対象とする施設です。 養老院でも医療的ケアを含む、リハビリ訓練や日常生活支援、文化娯楽活動のサービスが提供されています。 |
高齢者住宅 | 高齢者が集まり、居住する住宅です。医療的ケアを始め、入居者の食事や掃除、文化娯楽活動を中心にサービスを提供しています。 |
護老院 | 自立度が高めの要介助者が対象です。医療的ケアやリハビリ訓練の他、日常生活支援、文化娯楽活動サービスが行われています。 |
護養院 | 自立度が低めの要介助者が対象の施設です。医療的ケアやリハビリ訓練、日常生活支援や文化娯楽活動サービスが提供されています。 |
敬老院 | 敬老院の多くは農村部に設置されており、都市部にはない場合があります。入居対象者は、以下のとおりです。
サービス内容としては、医療的ケアやリハビリ訓練、日常生活支援や文化娯楽活動の提供をします。 |
託老院 | 短期入所型の施設です。利用の種類としては、昼間のみ、昼間と夜間の終日。一時入所の3つの方法があります。 サービス内容は、医療的ケアとリハビリ訓練の他、日常生活支援や文化娯楽活動が提供されています。 |
高齢者サービスセンター | 地域コミュニティが設置する施設です。医療的ケアやリハビリ訓練、文化娯楽活動が提供され、ところによっては訪問サービスもあります。 |
中国の老人ホームを選ぶときのチェックポイント
老人ホームを選ぶときは、以下4つのポイントを押さえておきましょう。
- 立地が都市部か地方か
- 提供される介護サービスや医療の内容
- 料金体系
- 入居に必要な書類・条件
本章では、中国で入居する老人ホームを選ぶときのポイントを解説します。
利用者の希望を重視しつつ、利用者の家族もサポートしやすい立地にあるか、料金は予算内におさまっているかなどもチェックしておきましょう。
ただし、中国は地域によって老人ホームの入居に必要な条件や書類、手続き方法が異なるため、個別に確認しておくことが大切です。
立地が都市部か地方か
北京や上海などの都市部には、さまざまな種類の施設があります。
しかし、地方は高齢者社会福利院や養老院、敬老院しかない場合も多く、身寄りのない人や五保老人(日本でいう生活保護)の入居が条件となっているケースも存在します。
そのため、介護度や支援度が低い人、数多くの施設を比較検討したい人は都市部が良いと言えるでしょう。
提供される介護サービスや医療の内容
中国の施設は、主に3つに分けられています。
- 国が設置し、運営する公設公営施設
- 国が設置し、民間が運営する公設民営施設
- 民間が設置し、民間が運営する民設民営施設
施設の種類によって、受けられる介護・医療サービスが異なります。
また、各々の施設ではサービスの質にばらつきがあるため、施設への問い合わせや見学などを通して、よく考える必要があります。
料金体系
利用者の状態や状況、サービス内容などによって施設の料金は異なります。
たとえば、中国の大同市にあるベッド数400床の養老院(民設民営施設)の料金は、以下のとおりです。
- 自立した高齢者の入居で、南向きの2人部屋、食事はなし(選択が可)という条件で月額約17,000円。
- 重度な要介護者の入居で、南向きの2人部屋、食事ありという条件で月額約34,000円〜50,000円。
この料金体系は、質が中上級レベルの施設になります。
入居者が希望する質のレベルと料金が見合っているかをよく把握して、施設を選択すると良いでしょう。
中国での老人ホーム介護の現状
前章で、中国にはいくつかの老人ホームがあることを紹介しました。しかし、老人ホームにおける介護の現状はどのようになっているのでしょうか。中国の老人ホームの現状を知ることで、入居希望者やその家族などの今後の課題が見えてくるでしょう。
421社会により老人ホームが不足している
中国では約40年にわたり、一人っ子政策が実施されてきました。その影響もあって子どもの数が減り、若者が多くの高齢者を支えなければならない社会構造が生まれたのです。
少子高齢化を意味する中国の言葉に、「421社会」と呼ばれるものがあります。421社会とは、以下のような社会をいいます。
- 4高齢者4人
- 2高齢者それぞれの子ども夫婦
- 1夫婦の子ども
つまり、夫婦には1人しか子どもがおらず、お互いの両親4人を支えなければならないのです。
中国民生部のデータによると、2013年時点で60歳以上の人口は2億人をすでに超えています。しかし、老人ホームのベッド数は高齢者1000人あたり約24床しかありません。著しく、老人ホームが不足している現状と言えます。
親を施設に入れるか検討している方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事:親を施設に入れる罪悪感がある方必見!葛藤や後悔を払拭する方法を解説
老人ホームの受け入れ態勢がまだ整っていない
中国では長年、家庭で介護をするという伝統的考えが浸透してきました。しかし、少子高齢化にともない、家庭のみでの介護が困難になったため、国が介護対策に乗り出しています。ただ問題なのは、4000万人以上の要介護者に対して介護スタッフは約30万人しかおらず、十分なサービスが期待できない状態です。
また、介護職に対する意識が世間ではまだ乏しい状態です。実際に介護に携わるスタッフは、専門知識や技術をもたず、低賃金で働く中高年が多くいます。そのため、利用者が満足する介護を提供するには程遠い現状があります。
さらに、社会保障制度が整っていない中国では、老人ホームの費用の多くは自己負担です。たとえば、要介護度の高い人が入居した場合、月14万程度を支払わなければならないケースも存在します。
老人ホームにかかる費用が知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:年金だけで老人ホームは非現実的?高齢者施設の実態について
日本企業などの参入も始まっている
中国は、国内の介護サービスの提供のみでは少子高齢化問題の解決が困難となっています。
そのため、近年では日本企業と協力して介護サービスを取り入れたり、日本企業が中国で老人ホームの運営を進めたりなどの動きが見られています。
介護保険の段階的導入に期待が高まる
2015年から、中国でも段階的に介護保険制度の導入が始まりました。ただ問題なのは、地域差が大きい点です。そのため、住んでいる地域が介護保険を導入していなければ、制度が利用できないケースがめずらしくありません。
現状では、中国の合計49の地域で介護保険を導入しており、2025年までに全地域への拡大を目指しています。
介護保険制度について知りたい方は、以下の記事で解説しています。
関連記事:介護保険法をわかりやすく解説!制度の基本から最新の改正まで
まとめ|中国の老人ホームや介護の現状について正しい知識を身につけよう
中国には、8種類の老人ホームが存在します。
それぞれの施設では、利用者の介護や支援の程度や状況、バックグラウンドなどによって提供される福祉サービスが異なるという特徴があります。
そのため、老人ホームへの入居希望者やその家族は自分たちの希望や状態を把握し、ふさわしい施設を吟味しなければなりません。
また、中国の老人ホームは地域差も大きいので、注意が必要な旨を覚えておきましょう。
中には、中国の老人ホーム以外にも、日本の施設へ入居をお考えの人もいるかもしれません。
その際はぜひ「いいケアネット」にぜひご相談ください。
中国の老人ホームについてよくある質問
日本企業が運営する中国の老人ホームはどこにある?
上海や大連、青島など都市部に多いです。
今後も日本の介護事業の参入が期待されていますので、都度情報収集をしておくと安心でしょう。
中国人は日本の老人ホームに入居できる?
国籍や信条、宗教などの違いがあっても、中国人が日本の老人ホームに入居できないことはありません。日本に住民票の登録があり、介護保険料を支払っている人であれば、入居が可能です。
日本の老人ホームへ入居を考えている人は、めぼしい施設に問い合わせてみることをおすすめします。

この記事の監修者
いいケアネット事務局
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