ある日、お一人でお住まいのT様の長男様から私どもへご連絡をいただきました。もともと軽いアルツハイマー型の認知症症状をお持ちのT様の病状進行が急激に早まったことにより、ご近所の方へご迷惑をおかけしているので、今すぐに入居できる老人ホームを探して欲しいとのご依頼でした。
お聞きしたところ、T様と同居されておりましたご主人様が、2ヶ月前よりご病気にて入院され、その後介護支援が必要になり退院後はご自宅に戻られることなく、そのまま老人ホームへご入居されたとの事でした。
急遽、お一人での暮らしが始まることになったT様は寂しさのあまり、毎日の飲酒量が増え、遂には早朝から飲まれるのが癖になってしまったのでした。
もともと認知症をお持ちの上での早朝からの飲酒でしたので、ご自分の理性をコントロールすることが出来ず、酔ったままご近所の家を訪問し大声をあげたり、お金を借りに行ったりと周りの方にご迷惑をかけるようになってしまいました。
当然、ご近所の方からは親族である長男様のところへ苦情の電話が毎日入るようになり、現状のT様の言動と行動の説明、またそれに対し何とか対処をして欲しいとのお声に対するご対応に日々追われるようになりました。
毎日、長男様と長男様の奥様がT様のご自宅に行き、ご近所に迷惑をかけないこと、お酒を控えることをT様に説得されましたが、本人曰く、ご近所の家にも行っていないし朝からお酒も飲んでいないと、ご自身の行動に対し全く理解されていらっしゃらない状況で長男様にも悪態をつかれたそうでした。ご相談をいただくまでの3日間はほとんど喧嘩ばかりされて、長男様ご夫婦は夜も心配で眠れず、疲労困憊されておられました。
そのような状況でしたので、即日体験入居から始められる老人ホームをお探しし、早速長男ご夫婦をご案内し、ご入居の方向で進めることとなりました。
しかしながら長男様が説得されたにもかかわらず、T様は老人ホームにご入居される意思は全く無い状態で、強くご入居を拒否されておられました。そこで、建て前上は病院に入院する事とし、まずは老人ホームへ足を運んでいただき、老人ホーム側の協力も得ながら即日の体験入居となったのでした。
最初は長男様にも老人ホームの職員にも悪態を着いておられたT様でしたが、比較的長男の奥様には友好的でありましたので、ご協力をいただき、ほぼ3日間は老人ホーム内で付きっきりでなだめていただきました。その結果T様も次第に落ち着きを取り戻されるようになり、そのまま本入居されることとなりました。
毎朝から飲まれておられたお酒も、まずは夜の缶ビール1本のみに減らしながら慣れていただき、1ヶ月が経った今では、まったく飲酒もされなくなりました。
T様は以前自営業をされており、もともとは友好的だった性格を徐々に取り戻され、次第に老人ホーム内で友人も出来き、すっかり新しい生活に馴染まれていかれました。今では以前の生活の状況が嘘のように安定した生活を送られていらっしゃいます。
今回の事例のように、老人ホームへのご入居に対し一度は強い拒否をされ、周りの方々へご迷惑を掛けておられる方につきましても、一旦老人ホームへご入居され安定した生活を送られますと、ほとんどの方が落ち着きを取り戻され安心で、安全、快適な生活が出来るようになられます。
この記事の監修者
いいケアネット事務局
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