「親の介護が始まったけれど、何をどこまでやればいいのかわからない…」
「家族として具体的にできることを知りたい」
突然始まった介護生活に戸惑いを感じている方は多いのではないでしょうか。
在宅介護では幅広いサポートが可能ですが、法律や安全面の観点から避けるべき行為もあります。適切な知識を持たずに対応すると、家族関係に悪影響を与える可能性もあるのです。
この記事では、在宅介護でできること・できないことを詳しく解説します。在宅での介護でできないことが出てきたときの対処法も紹介しているので、参考にしてみてください。
在宅介護でできること

在宅介護では、医療行為や生命に関わる専門的な処置を除けば、幅広い分野でのサポートが可能です。介護が必要な方の日常生活を安全で快適に送れるよう支援します。
具体的な内容は、以下のとおりです。
- 食事の準備や食事介助
- 入浴や清拭による清潔保持
- 排泄のサポート
- 買い物
- 掃除・洗濯
- 服薬管理
- 通院時の付き添いや移動支援
認知症の症状がある場合は、穏やかな声かけや見守り、混乱を招かない環境づくりも大切な役割です。家族だからこそできるきめ細やかなケアといえます。
これらのサポートによって、介護が必要な方が安心して暮らせる環境を整えることが、家族介護の中心的な役割です。
関連記事:介護が必要になったら何から始めるべき?受けられるサービス内容とは?
在宅介護でできないこと

家族だからといって何でもできるわけではありません。法律や安全面、介護が必要な方の尊厳を守る観点から、避けるべき行為があります。
在宅介護でできないことは、以下のとおりです。
- 許可を得ていない医療行為の実施
- 本人の意思を無視した対応
- 感情的な態度や言葉で接すること
- 自立を奪う過度な支援
正しい知識と理解を持って、安心できる在宅介護の環境を整えましょう。
許可を得ていない医療行為の実施
家族であっても、医師法により定められた医療行為を無資格での実施は法律で禁止されています。
注射や点滴・傷口の縫合・薬剤の調合といった専門的な処置は、必ず医師や看護師に依頼しなければなりません。
これらの行為には高度な知識と技術が必要で、間違った方法で実施すると感染症や重篤な合併症を引き起こすリスクがあるためです。
ただし例外として、医師の指導と許可を得た特定の行為については、家族が実施できる場合もあります。内容は以下のとおりです。
- たんの吸引
- 経管栄養の管理
適切な研修を受講すれば、在宅での実施が認められています。医療行為が必要な状況では、自己判断せず必ず医療従事者に相談し、安全性を最優先に考えた対応を心がけましょう。
参考:
厚生労働省『家族が行う「たんの吸引」に関する違法性阻却の考え方』
厚生労働省『医療関係職種の業務における行為の類型について(案)』
本人の意思を無視した対応
介護が必要な方の気持ちや意思を無視した介護は、信頼関係を壊し、精神的苦痛を引き起こすおそれがあります。
たとえば、まだお腹が空いていないのに無理に食事をすすめたり、楽しくテレビを見ている最中に強引にお風呂に連れていったりする行為は避けるべきです。
本人の意思を無視した対応は介護が必要な方にとってストレスとなり、介護への拒否感や家族への不信感を生み出してしまいます。
認知症などで意思表示が困難な場合でも、表情や仕草から気持ちを読み取る努力が大切です。
介護が必要な方の尊厳を尊重し、その気持ちに寄り添う姿勢が、良好な介護関係を築く土台となります。
感情的な態度や言葉で接すること
介護による疲労やストレスが蓄積すると、つい感情的になってしまいます。
介護が必要な方に対して怒鳴ったり、冷たい態度で接したりするのは避けなければなりません。
こうした行為は心理的虐待と受け取られる可能性があり、介護が必要な方の心身に深刻な影響を与えてしまいます。
感情的になりそうなときは、その場を離れて心を落ち着け、信頼できる人に話を聞いてもらいましょう。
介護の相談窓口は以下のとおりです。
| 窓口 | 特徴 |
| 地域包括支援センター | ・高齢者の生活全般に関する総合相談窓口
・社会福祉士、ケアマネージャーが在籍し幅広い相談が可能 |
| 市区町村(市役所・区役所) | ・要介護認定の申請や介護保険制度の利用手続きが可能
・地域包括支援センターへの紹介 |
| 社会福祉協議会 | ・福祉全般の相談窓口
・地域の福祉活動や支援サービスの情報提供 |
| 在宅介護支援センター | ・在宅介護に特化した相談窓口
・訪問介護や福祉用具の利用など、在宅介護に関する支援を提供 |
地域包括支援センターや介護者向けの相談窓口では、介護ストレスに関する相談も受け付けています。
誰かの助けを借りて冷静な行動をすれば、双方にとって最善の介護の形になるでしょう。
関連記事:介護虐待が起きる前に家族が知っておきたい事例|原因や防止策も解説
自立を奪う過度な支援
介護が必要な方ができることまで代わりに行ってしまうと、本人の身体機能や認知機能の低下を加速させる恐れがあります。
「早く済ませたい」「失敗されると困る」という気持ちから、つい手を出してしまいがちですが、これは介護が必要な方の自立を奪う結果となってしまいます。
大切なのは「できることは自分でやってもらう」という考え方です。
安全に配慮しながら見守りや声かけを中心とし、本当に必要な部分のみサポートする姿勢を保ちましょう。
介護が必要な方が自分でできたときは積極的に褒めて、達成感や自信を持てるようにサポートするのも大切です。
関連記事:自立支援介護における4つの基本ケアとは?事例を交えてわかりやすく解説
介護でできないことが出てきたときの対処法

家族だけでは対応が困難な状況が生じた場合、一人で抱え込まずに適切な支援を求めましょう。
まずは地域包括支援センターやケアマネジャーに相談し、状況を説明して適切なアドバイスを受けましょう。
また、以下のような介護サービスの利用も検討するべきです。
- 訪問介護
- 訪問看護
- デイサービス
- ショートステイ
これらのサービスを利用すれば、家族の負担を軽減しながら介護が必要な方により専門的なケアを提供できます。
家族の身体的・精神的負担が限界に達している場合や、在宅での安全確保が困難になった際は、施設入所も検討しましょう。
適切なタイミングで専門的な支援を受ければ、介護が必要な方と家族双方の生活の質が向上するでしょう。
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無理せずできることから始める介護を検討しよう【まとめ】

在宅介護では食事や入浴、移動支援など幅広いサポートが可能ですが、医療行為や本人の意思を無視した対応などは避けなければなりません。
感情的な態度や過度な支援は介護が必要な方の尊厳や自立を損なう可能性があるため、適切な知識と理解を持って取り組むことが大切です。
家族だけでは対応が困難になった場合は、地域包括支援センターへの相談や訪問介護・デイサービスなどの介護保険サービスの活用を検討しましょう。
状況によっては施設入所という選択肢も視野に入れる必要があります。
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監修者 一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長会 斉藤 正行
一般社団法人全国介護事業者連盟理事長。立命館大学卒業後、複数の介護関連企業で要職を歴任し、日本介護ベンチャーコンサルティンググループを設立。講演活動やメディア出演も多数。






