障害者グループホームに入居しながら、訪問介護も併用できるのか疑問に思う方もいるでしょう。障害を持つ方の生活を支える福祉サービスは多岐にわたりますが、制度上のルールによりサービスの併用には一定の制限が設けられています。
この記事では、グループホームと訪問介護の併用に関する原則と、例外的に利用が認められるケースについて、具体的な条件や両者のサービスの違いを交えながら解説します。
【結論】障害者グループホームでの訪問介護利用は原則として併用不可

結論から述べると、障害者グループホーム(共同生活援助)に入居している方が訪問介護(居宅介護)を併用することは、原則として認められていません。これは、それぞれのサービスが提供する支援内容が重複するためです。
グループホームでは、共同生活を送る住居において日常生活全般の支援が包括的に提供されるため、個別の訪問介護を併用する必要がないと考えられています。
ただし、この原則にはいくつかの例外が存在します。
なぜグループホームと訪問介護の併用は認められないのか

グループホームと訪問介護の併用が原則として認められない主な理由は、公費の二重給付を防ぐためです。グループホームは、障害のある方が地域で共同生活を送るための施設であり、家事や金銭管理、健康管理といった日常生活に必要な支援がサービス内容に予め含まれています。
もし、この包括的な支援に加えて個別の訪問介護を利用すると、同様のサービスに対して二重に公費が使われることになります。このような制度上の観点から、施設サービスであるグループホームの支援と、在宅サービスである訪問介護の併用は原則的に不可とされています。
グループホーム入居中でも訪問介護を併用できる3つの例外ケース

障害者グループホームと訪問介護の併用は原則不可ですが、利用者ごとの状況に応じて併用が認められる例外的なケースが存在します。これらのケースは、グループホームで提供される標準的な支援だけでは対応が難しい、個別のニーズに応えるために設けられています。
具体的には、グループホームを一時的に離れる場合や、特定のタイプのグループホームに入居している場合、あるいは市町村が特別な事情を認めた場合などが該当します。
ケース1:一時的に帰省している期間にサービスを利用する場合
グループホーム入居者が実家などに一時帰省している期間は、訪問介護サービスを利用できる場合があります。グループホームのサービス提供場所は、あくまで事業所として指定された共同生活住居内に限られます。そのため、帰省先での入浴や食事などの介助が必要になった際に、グループホームの職員が支援を提供することはできません。
このような状況において、利用者の家族の負担軽減などを目的に、帰省中の期間に限定してホームヘルパーの派遣を依頼することが可能です。これは厳密な意味での「併用」とは異なりますが、利用者の生活を支えるための重要な選択肢となります。
ケース2:「外部サービス利用型」のグループホームに入居している場合
「外部サービス利用型」として指定されているグループホームに入居している場合は、訪問介護の利用が可能です。
このタイプのグループホームでは、夜間の見守りや日常生活上の相談といった基本的な支援はグループホームの職員が行い、入浴や排せつの介助といった専門的な身体介護は、外部の訪問介護事業所へ委託する仕組みになっています。
利用者一人ひとりのニーズに応じた柔軟な支援体制を構築できるのが特徴で、事業所によっては全体の8割近くがこの形態を採用しているというデータもあります。この場合、利用者はグループホームと訪問介護事業所の両方と契約を結ぶことになります。
ケース3:市町村が特例として併用を認めた場合
グループホームの標準的な支援のみでは生活の継続が困難であると市町村が判断した場合、特例として訪問介護の併用が認められることがあります。例えば、重度の障害により、日中に手厚い介護が常時必要となるケースなどが想定されます。
障害支援区分が特に高い方や、60歳以上で介護保険サービスとの連携が必要な高齢障害者など、個別の事情を総合的に勘案した上で、市町村の障害福祉担当課が必要性を判断します。この特例が適用されるためには、ケアプランを作成する相談支援専門員などを通じて、市町村へ個別に相談し、審査を受ける必要があります。
押さえておきたいグループホームと訪問介護の役割の違い

グループホームと訪問介護の併用が原則として認められない背景を深く理解するためには、両者のサービス内容や役割の違いを知ることが重要です。グループホームとは共同生活を通して自立を目指す場であり、訪問介護とは個人の居宅での生活を支えるサービスです。
これらはどちらも障害のある方の地域生活を支えるという目的は共通していますが、支援の提供形態や想定される生活の場が根本的に異なります。この違いを把握することで、なぜサービス内容が重複すると見なされるのかが明確になります。
グループホーム(共同生活援助)が提供する支援内容
グループホーム(共同生活援助)とは、障害のある方が地域社会の中で家庭的な雰囲気のもと、共同生活を送る住居のことです。一般的に1つの住居に4人から数名程度の少人数で暮らし、世話人や生活支援員が必要なサポートを提供します。
具体的な支援内容は、食事の提供や調理支援、金銭管理の助言、服薬管理、清掃や洗濯といった家事援助、日中の活動に関する相談など、日常生活全般にわたります。
夜間も職員が夜勤やオンコールで対応する体制が整っており、入居者同士のコミュニケーションを通じて社会性を育み、和やかな生活を送ることも支援の目的の一つです。
訪問介護(居宅介護)が提供する支援内容
訪問介護(障害福祉サービスにおける居宅介護)は、ホームヘルパーが利用者の自宅を訪問し、1対1で個別の支援を提供するサービスです。支援内容は大きく分けて、入浴や排せつ、食事の介助などを行う「身体介護」、調理や洗濯、掃除といった家事を支援する「家事援助」、そして病院への通院などを手伝う「通院等介助」があります。
このサービスは、障害のある方が住み慣れた自宅で自立した生活を送ることを目的としており、あくまでも利用者1人暮らし、または家族と同居している方の生活を支えるためのものです。
支援は必要な時間に必要な分だけ提供されるのが特徴です。
まとめ

障害者グループホームと訪問介護は、提供されるサービス内容が重複するため、原則として併用することはできません。しかし、一時的な帰省時や「外部サービス利用型」のグループホームへの入居、市町村が特例として認めた場合など、例外的に利用が可能なケースも存在します。
グループホームは共同生活の場での包括的な支援を、訪問介護は個人の居宅での個別的な支援を目的としており、それぞれの役割は明確に異なります。自身の状況に合わせて適切なサービスを選択、または相談することが求められます。
大阪を中心に、多数の高齢者向けの介護施設の情報を掲載する「いいケアネット」では、老人ホームに関する疑問やまつわる情報を「いいケアジャーナル」で随時更新中です。
監修者 一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長会 斉藤 正行
一般社団法人全国介護事業者連盟理事長。立命館大学卒業後、複数の介護関連企業で要職を歴任し、日本介護ベンチャーコンサルティンググループを設立。講演活動やメディア出演も多数。






