在宅介護をしている方にとって、介護が必要な高齢者が日常生活をスムーズに送ってもらいたいと考えるものです
しかし、本人にとって無理をさせる事態にもなりかねないため、適切な支援方法が気になる方もいるでしょう。
そこで本記事では、介護施設だけでなく自宅での介護でも取り入れ可能な「生活リハビリ」について解説していきます。
病院でのリハビリとの違いや実施するメリット、注意点を解説した上で生活リハビリの具体例を紹介します。
生活リハビリが専門家との連携が必要とされる理由なども解説していくので、ぜひ参考にしてください。
大阪を中心に、多数の高齢者向けの介護施設の情報を掲載する「いいケアネット」では、老人ホームに関する疑問やそれにまつわる情報を「いいケアジャーナル」で随時更新中です。
生活リハビリとは
生活リハビリとは、介護が必要な高齢者や障がいを持つ方を対象に、日常生活の中にリハビリを取り入れる支援方法です。
とくに高齢者においては、自立した生活を送るために必要な機能を維持・向上させるのを目的としています。
たとえば1日中寝たきりだったり座ったままだったりする方は、体力や筋力の衰退が起きてしまいます。
生活リハビリは、家事や買い物、趣味活動などの日常的な行動で実施されるため、身体だけでなく精神的な健康にも大きく寄与するのです。
生活リハビリと病院リハビリとの違い
生活リハビリと病院リハビリは、目的や方法、環境において大きく異なります。
生活リハビリ | 病院リハビリ | |
場所 | 自宅や介護施設 | 医療施設 |
目的 | 日常生活動作の改善や維持 | 病気や怪我からの回復 |
特徴 | ・利用者のペースで実施可能
・家族や介護者のサポート |
・理学療法士や作業療法士などの指導
・計画的で個別化されたプログラム |
上記の通り、生活リハビリは病院リハビリとは異なるアプローチで、利用者の自立を支援し、生活の質を高めるのを目的としています。
どちらのリハビリも重要であり、利用者の状態やニーズに応じて適切に選択する必要があるのです。
関連記事:リハビリ病院の探し方とは?選ぶ上でのチェックポイントなどを解説
生活リハビリの種類
生活リハビリには、主に以下の2種類があります。
- 日常生活動作:ADL(Activities of Daily Living)
- 手段的日常生活動作:IADL (Instrumental Activities of Daily Living)
上記、日常生活動作と手段的日常生活動作の違いは以下の通りです。
日常生活動作 | 手段的日常生活動作 | |
概要 | 日常生活を送るために必要な基本的な動作 | 日常生活動作よりも複雑 |
具体的な動作 | 食事、排泄、入浴、移動、起居動作など | 料理、買い物、洗濯、掃除、交通機関の利用、電話の応対など |
高齢者に生活リハビリをするメリット
高齢者に生活リハビリを取り入れると、以下のようなメリットがあります。
- 身体機能の維持や向上
- 介護者の負担軽減
介護を受ける側だけでなく、介護者にとってもメリットがある生活リハビリの特徴も兼ねて解説していきます。
身体機能の維持や向上
生活リハビリは、筋力や柔軟性、バランス感覚を改善し、日常の動作をよりスムーズにできるメリットがあります。
高齢者は年齢を重ねると、身体機能が低下しがちで、転倒や怪我のリスクを高めてしまいます。
しかし生活リハビリは、筋力トレやストレッチも兼ねているため、歩行の安定性が増すのです。
また、身体機能が向上すると、日常的な活動の範囲も広がり外出の機会が増え、社会参加の機会も増加します。
つまり生活リハビリを通じて、身体機能の維持・向上に寄与するため、健康寿命を延ばす結果となるのです。
介護者の負担軽減
生活リハビリは、介護者の負担を軽減する効果が期待できる重要な手段です。
高齢者が自立的に日常生活を送る能力を維持・向上させると、介護者が直接手を貸すシーンを減らせます。
介護者にとって介護にかかる時間や労力を大幅に軽減できるため、介護者自身の身体的・精神的な負担から限界を感じにくくなります。
また生活リハビリは、高齢者が自分でできる日常生活が増え、介護者のサポート範囲が明確になるのも特徴です。
介護者はより専門的なケアやサポートに集中できるため、高齢者にとっての生活の質を高められるよう、工夫や時間の確保がしやすくなります。
介護の負担や限界を感じにくくするためにも、生活リハビリを取り入れるのがおすすめです。
関連記事:介護疲れましたと感じる要因は?介護疲れを軽減する方法も紹介
高齢者に生活リハビリを実施する上での注意点
高齢者に生活リハビリを実施する際は、まず本人の健康状態を正確に把握しなければいけません。
生活リハビリは、個々の健康状態や体力に応じて、無理のない範囲でリハビリを進める必要があるのです。
また、生活リハビリの内容が本人の生活状況や目標に適しているかどうかも確認しましょう。
高齢者は体調の変動が大きいため、日々の健康状態を観察し、必要に応じて生活リハビリの範囲や内容を調整する柔軟性が求められます。
さらに、高齢者にとって生活リハビリを前向きに取り組めるようなモチベーション維持も大切です。
たとえば目標を明確にし、小さな達成感を得られるようなプログラムを組むのが効果的です。
高齢者がより達成感を味わえるよう、家族や介護者がサポートし、励ましながら生活リハビリを取り入れていきましょう。
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生活リハビリを実施する上でのポイント
生活リハビリを取り入れる上で、以下のポイントを意識しながら実施するのがおすすめです。
- 専門家と連携しながら内容を決める
- 本人ができそうなことを続けてもらう
- 安全面への配慮しながら実施する
- 福祉用具を活用する
生活リハビリで大切なポイントを順番に解説していきます。
専門家と連携しながら内容を決める
生活リハビリを効果的に実施するためには、専門家との連携が不可欠です。
生活リハビリは障がいを持つ方や病気の方にとって残された機能を発揮できる可能性である「残存能力」が重要なポイントとなります。
残存能力を判定するには、理学療法士や作業療法士などの専門家による、個々の身体状況や健康状態を詳細に評価します。
専門家の評価に基づき、適切なリハビリプログラムを設計し、実施する上での注意点を指導する流れです。
高齢者一人ひとりのニーズや能力を考慮し、最適な生活リハビリの内容を決定するために、専門家の知識と経験が大きな助けとなります。
本人ができそうなことを続けてもらう
高齢者が生活リハビリをする際、本人が無理なく続けられる活動を選び、継続できるかが大切です。
無理をさせてまでも新しいリハビリを始めるのではなく、本人が興味を持ち、楽しみながらできるかを見つけ出すのがおすすめです。
たとえば、日常の中で自然に取り入れられる家事や趣味の活動などの動作をリハビリとして取り入れると、本人のモチベーションを維持しやすくなります。
また、できることを続けるのは、日常生活で自立度を高め、生活の質を向上できる可能性を高めます。
本人自身もリハビリに対する意欲を保ち続けられるため、長期的な成果を得やすくなるのです。
安全面への配慮もしながら実施する
生活リハビリを高齢者に実施する上で、安全面への配慮も重要なポイントです。
高齢者は転倒や怪我のリスクが高いため、生活リハビリをする環境は事前にしっかりと整備する必要があります。
たとえば、床の滑りやすさを確認し、必要に応じて滑り止めマットを使用したり手すりを設置したりするのが重要です。
また、生活リハビリ中に異常を感じた場合にすぐ対応できるよう、常に介護者が近くにいるかどうかも大切です。
定期的に理学療法士や作業療法士などと連携し、進行状況を確認しながら適切なアドバイスを受けながら生活リハビリを取り入れていきましょう。
関連記事:老人ホームにおける誤嚥性肺炎の予防対策|主な原因や現場での課題も解説
福祉用具を活用する
福祉用具を活用するのは、生活リハビリをより効果的に実施するための重要なポイントです。
高齢者が自立して生活を送るためには、日常生活動作の改善が不可欠で、福祉用具は活動をサポートするための強力なツールとなります。
歩行を安定させるための歩行器や杖、移動を助けるための電動車椅子、入浴時の安全を確保するための手すりやバスチェアなどの福祉用具があります。
また、福祉用具は介護者の負担を軽減する役割も果たしているだけでなく、転倒や怪我のリスクを低減できるのも特徴です。
福祉用具の導入にあたって、専門家のアドバイスを受けながら、高齢者の身体状況や生活環境に最適な用具を選んでいきましょう。
関連記事:福祉用具の種類と役割とは?利用方法や介護保険の適用について解説
介護施設で実施している生活リハビリの具体例
ここからは介護施設で実施している生活リハビリの具体例を紹介していきます。
- 食事時
- 入浴時
- 排泄時
在宅介護で親の介護をしている方は、ぜひ生活リハビリの具体例を参考にしてみてください。
食事時
食事の時間は、生活リハビリを実施して高齢者の自立を促進する絶好の機会です。
介護施設では、単に食事を提供するだけでなく、高齢者が自身で食事を摂るための訓練やサポートを以下のように実施しています。
- 食器の持ち方を練習する
- スプーンの使い方を練習する
- 食事をする姿勢の訓練をする
- 咀嚼の訓練をする
- 嚥下の訓練をする
食事の際に生活リハビリを取り入れると、高齢者は自分で食事を摂るための自信を持ち、食事の時間を楽しめます。
さらに、栄養バランスを考慮した食事を提供すれば、健康状態の維持や改善を図れるのも生活リハビリのメリットです。
介護施設では、食事を単なる栄養摂取の場としてではなく、生活リハビリの一環として総合的なアプローチで生活の質の向上を目指しているのです。
入浴時
入浴は高齢者にとって体の清潔を保つだけでなく、心と体のリフレッシュとなる時間ですが、滑りやすい床や温度変化などによる転倒リスクもあります。
リスク軽減のために介護施設では、生活リハビリとして安全性を確保しつつ、利用者の自立度を高める工夫を実施しています。
具体的には、入浴の際には手すりの設置や滑り止めマットの使用がおすすめです。
また、シャワーチェアや入浴補助具を活用するのも効果的で、体力の低下した高齢者でも自分で体を洗う動作をサポートし自立性を高めてくれます。
さらに、入浴のプロセスを通じて、腕や足の可動域を広げる運動を取り入れる生活リハビリも実施可能です。
体を洗う際の手の動かし方や浴槽に入るための足の上げ下げは、リハビリ運動として効果的です。
介護スタッフや家族が協力し、安全で効果的な入浴による生活リハビリを実施していきましょう。
排泄時
排泄時の生活リハビリは、高齢者の自立を促進する重要なポイントで、本人が可能な限り自分で排泄できるように支援するのを目指しています。
具体的には、トイレまでの移動をサポートするための歩行訓練や、トイレ内での座位保持を補助する筋力トレーニングなどが含まれます。
また、トイレ使用時の適切な姿勢やタイミングを習得すると、排泄の失敗や事故の減少が期待されるのです。
たとえば、手すりや便座高調整器具の設置は、排泄動作を容易にしトイレでの安全性を高められます。
排泄時の生活リハビリを実施していくと、結果的に介護者の負担を軽減し、排泄介助の時間を短縮にもつながります。
生活リハビリのサービスを受けられる介護施設一覧
生活リハビリのサービスを提供する介護施設は、日本各地に広がっており、各介護施設が独自のプログラムを展開しています。
一例として、以下の表で生活リハビリが介護サービスの一環として受けられる介護施設を紹介します。
介護施設の種類 | 提供される生活リハビリの一例 |
デイサービス | 食事、入浴、排泄などの基本的な動作のサポート |
特別養護老人ホーム | 専門的なリハビリによる身体機能の維持・向上 |
グループホーム | 家庭的な環境での日常生活とリハビリ |
施設選びの際には、提供されるサービスの内容やスタッフの専門性、施設の設備などをしっかりと確認するのが重要です。
地域のケアマネージャーや医療機関と連携しながら、自分に合った施設を見つけられれば、効果的な生活リハビリへの第一歩となります。
なお、いいケアネットでは、生活リハビリも兼ねた介護施設探しのために「入居無料相談」を受け付けています。
「親の状況を専門家の視点から適切な介護施設を案内してもらいたい」などと悩んでいる方を含め、気軽にご相談ください。
関連記事:リハビリができる介護施設はある?介護施設と医療施設のリハビリの違いを解説
生活リハビリを取り入れて本人の生活の質を向上させよう!【まとめ】
生活リハビリは、高齢者や介護が必要な方の生活の質を向上させるための重要な取り組みです。
日常生活の中でできる動作を増やし、身体機能を維持・向上させる目的があります。
生活リハビリの実施は、本人の自立心を高めるだけでなく、介護者の負担も軽減されるのが特徴です。
しかし、安全性や本人の意欲を考慮し、無理のない範囲で実施するのが大切です。
生活リハビリを効果的に取り入れるためには、専門家のアドバイスを受けながら進めていきましょう。
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