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「生活リハビリ」の意味と具体的な方法、リハビリを続けるコツを紹介!

生活リハビリは、日常の中で意識的にリハビリを行い、無理なく身体機能や認知機能の回復を促す方法です。リハビリは「特別な時間や場所を用意しないとできない」と思いがちですが、実は、少し工夫するだけで身近な生活動作の中で簡単に取り組むこともできます。今回は、生活の中にリハビリを取り入れる方法について詳しく解説していきます。

目次

生活リハビリの意味・メリット

生活リハビリのメリットは、身体機能や認知機能の向上、日常生活の自立、精神的な安定、社会参加の促進など多岐にわたります。上手に生活の中にリハビリ的要素を組み込むことで転倒リスクの低下や自己管理能力の向上が図られ、自信と意欲が生まれます。また、孤独感の軽減や家族・介護者の負担軽減にもつながり、本人だけでなく周囲の生活の質も向上します。生活の中でリハビリを取り入れることで、普段の生活を通して「できること」を増やし、充実した生活を取り戻せるのが最大の魅力です。

生活環境をリハビリに適したものに整えよう

まずはじめに、身の回りの環境を少し整えることで生活リハビリがスムーズになります。階段や浴室など、必要な場所に手すりを取り付けたり、転倒防止のために滑り止めマットを使用することも大切です。居室に絨毯を敷いていると端に引っかかって転倒してしまうこともあるので、端をピンなどで止めるようにするか、もし必要なければ絨毯を撤去しましょう。歩行に関しては、手すりだけではなく、杖や歩行器を使いながら動きやすさを確保することも、転倒を予防し、安心してリハビリに取り組むために大切なことです。

生活リハビリの具体的な方法

生活リハビリは、日常生活をスムーズに行うための身体的・精神的な機能回復を目指す取り組みです。ここでは、生活リハビリの具体的な方法を動作別・目的別に詳しく解説します。

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移動能力を高めるリハビリ

歩くことなど「移動」がスムーズに行えることは、日常生活を送るうえで基本となる重要な能力です。移動中の転倒を防ぐために、靴や環境(段差解消、手すり設置)を整えることも重要です。

歩行練習

室内や屋外での歩行を練習します。手すりや杖を使って練習し、徐々に距離を延ばします。転倒の危険性が高い場合は無理をせず、理学療法士などの専門家がそばにいる場合のみにしましょう。

階段昇降練習

片足ずつ段を登ったり、降りたりする練習を行い、足の筋力を養います。手すりを使いながら行います。徐々に回数を増やし、負荷を増やします。

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食事の自立を支えるリハビリ

食事は日常生活の基本的な行動であり、自立して行えるようになると生活の質が向上します。握りやすい太めのグリップがついた食器や補助具を活用すると、練習がスムーズに進みます。

手指のリハビリ

食事動作には箸やスプーンを使ったりするため、手指の巧緻動作(細かい動作)が要求されます。柔らかいボールやゴムを握ったり押したりして指の筋力を高めることができます。

食器の操作練習

スプーンや箸を使う練習を行います。初めは軽くて握りやすいものや補助具を使用し、徐々に通常の食器を使うようにします。

料理(食材を扱う練習)

カット済みの食材をつかむ、フォークに刺すなど、手の細かい動きを促します。また料理のメニューを考えたり、残り物でどうやって料理を作るのか?と考えることで認知機能を鍛えることもできます。

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着替えや身だしなみのリハビリ

日中ずっと寝巻きやパジャマで過ごすようになると、活動性が低下していくことが知られています。衣服の着脱や身だしなみを整える動作は、生活の自立性を高めるうえでとても大切です。便利な補助具(マジックテープ靴、ボタン留め器具など)を活用することで、早期に自立を目指せます。

ボタンの開閉練習

大きめのボタンから始め、指先の器用さを養います。ボタンの留め外しを繰り返し行うことで、動作がスムーズになります。

ファスナーや紐の操作練習

ファスナーの上げ下げや靴紐を結ぶ練習を行います。初めはマジックテープを利用して慣れるのも良いです。

洗顔や髪のセット

洗顔やヘアブラシを使う練習を行い、身だしなみを整える動作を習慣化します。

入浴やトイレ動作のリハビリ

トイレや入浴などの衛生管理を自分で行えるようになることは、自尊心を保つためにも重要です。入浴やトイレ環境に滑り止めマットや手すりを設置することで、安心して練習できます。入浴の安全を確保するには、物理的な障害(段差や滑りやすい床など)の管理だけではく、ヒートショック、血圧などのバイタル的な管理も大切ですので、無理のない範囲で少しづつ生活リハを取り入れることがおすすめです。内臓疾患がある方は主治医と相談の上、入浴時のリハビリを検討してください。

浴槽への出入り練習

初めは浴槽の縁に腰掛け、片足ずつ浴槽に入れる練習をします。手すりやバスチェアを活用して安全を確保します。

トイレ動作の練習

立ち上がり補助用の手すりを利用し、座る・立つ動作を繰り返し練習します。下衣を下ろす・上げる動作も合わせて行います。

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認知機能を高めるリハビリ

認知機能の低下は、生活の自立に多大な影響を与えるため、積極的にトレーニングを行うことが推奨されます。認知トレーニングは個人的な趣味嗜好が結果に大きく影響を与えるので、楽しさを重視し、無理なく継続できる方法を選びましょう。

記憶力のトレーニング

短い詩や日常会話を覚える練習を行います。日記を書いて日々の出来事を記録することで、記憶力を強化します。

注意力や判断力の練習

カードゲームや簡単なパズルを行い、脳の働きを活性化させます。市販されている脳トレやクロスワードパズルなどもおすすめです。

手先を使った作業

折り紙や手芸など、細かい動作を必要とする活動を生活の中に取り入れます。巧緻動作は、注意を必要とするので、集中力や脳の働きを高めることが知られています。

 

心理的なサポートを目的としたリハビリ

身体的な動きを目的としたリハビリだけではなく、「心が動く」リハビリも大変重要です。孤独感や不安感を軽減することも生活リハビリの一環です。

グループ活動への参加

デイケアや地域のリハビリグループに参加し、交流を深めます。親戚との交流などにもできるだけ参加し、その場にいるだけでも良い刺激になります。

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趣味の再開

絵画、園芸、音楽など好きな活動を取り入れると、生きがいを感じられるようになることもあります。視力の衰えや記憶力の衰えがあると昔のように取り組めないかもしれませんが、取り組むこと自体に意義があります。

ペットとのふれあい

ペットは家族そのものです。ペットを飼っている場合は世話をすることで、責任感と達成感を得られます。

 

日常の動作をリハビリにするアイデア5選

リハビリは日常の動作そのものに組み込むことで、負担なく続けられます。例えば、以下のような場合に、少しだけでもリハビリの要素を取り入れてみてはいかがでしょうか。

1.掃除や洗濯を活用

掃除機をかける動作や、洗濯物を干す際に背伸びをする動きをリハビリとして活用します。床の物やゴミを拾う際は、腰を落とすスクワットの姿勢で行うなど、筋力を使う動作を意識して取り入れるようにしましょう。

2.料理をリハビリに

包丁を使った食材のカットや、鍋をかき混ぜる動作は手先や腕の練習になります。調味料の分量を測ることも認知機能のトレーニングに役立ちます。好みの味を追求するうちにさまざまな思考を巡らせるので、体と頭を使った良いトレーニングになります。

3.買い物や散歩

スーパーで買い物をしながらカートを押すことは、足腰の筋力維持に効果的です。歩く速度を意識して調整することで、心肺機能も鍛えられます。

4.テレビを見ながら運動

テレビを見ながら足を上下に動かす、つま先立ちをするなどの軽い運動を行います。CM中に立ち上がり・座る動作を繰り返して下半身を鍛えます。

5.座っている間のトレーニング

椅子に座った状態で足を持ち上げる運動をしたり、ボールやクッションを足で挟み、力を入れる運動で内ももの筋肉を鍛えることもできます。

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リハビリを習慣化するには?

生活の一部としてリハビリを取り入れるには、習慣化が鍵です。以下に習慣化するためのコツをお伝えします。

スケジュール化する

毎日の予定にリハビリ時間を少しだけ加え、忘れないようにします。カレンダーやスマホのリマインダーを使うのも効果的です。

小さな目標を立てる

「今日は10分歩く」「コップを自分で持つ」など、小さな達成目標を設定します。目標を達成するたびに自信がつき、モチベーションが高まります。コツはできるだけ「小さな目標」に分解すること。大きな目標を立てると挫折してしまう原因になります。

楽しみながら取り組む

リハビリは「辛いもの」ではなく、「楽しいもの」と感じることが続けるコツです。趣味をリハビリに活用することも良いアイデアです。ガーデニングでしゃがむ動作や、花を植える際の手の動きを活用することもできます。手芸や絵を描くことは細かい手指の運動になります。他にも音楽を活用し、好きな音楽に合わせてリズム運動をしたり、音楽を聴きながら歩いたり、動いたりすることで気分が上がります。家族と一緒に散歩をしたり、ゲーム感覚で運動を楽しむとより続けやすくなります。

 

まとめ

生活リハビリは、日常生活で必要な動作を取り戻すことを目的とした多岐にわたるアプローチです。身体的なトレーニングだけでなく、認知機能や心理面へのケアも含めて行うことで、生活の質を大幅に向上させることが可能です。無理なく続けられる方法を取り入れ、家族や専門家と協力しながら取り組むことが成功への鍵です。リハビリは決して特別なものではなく、あくまで普段の生活の延長線上にあることを意識してみてください。いつまでもその人らしい生活が送れるように願っています。ぜひ、この記事を参考に、取り組めるところから始めてみてください。

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この記事の監修者

いいケアネット事務局

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