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親の介護をしないとどうなる?法的義務から対処法まで解説

親の介護をしないとどうなる?法的義務から対処法まで解説

もし親の介護をしないと、どうなるのでしょうか?この疑問は、親の介護に直面した多くの方が抱きます。

本記事では、親の介護義務の法的解釈から、介護放棄のリスク、遺産相続への影響まで詳細に解説します。さらに、介護が難しい時の対処法やストレスを避ける方法も提案しています。

この記事を通じて「親の介護をしないとどうなる?」という疑問に対する具体的な解決策を手に入れましょう。

目次

親の扶養義務とは?法的な義務とその範囲

親の介護に直面した際に、法的な義務やその範囲を理解することは重要です。ここでは、親の介護が法的義務としてどのように扱われているのか、また扶養義務の対象や経済的な側面との関係について解説します。

親の介護は法的義務?

日本の民法では、子どもには親を扶養する義務があると定められています。扶養義務を果たさない場合、法的な責任を問われる可能性があります。

ただし、親の扶養義務は、子どもが自身の生活を犠牲にしてまで果たさなくてはならないような、絶対的な義務ではありません。つまり、自身や家族の生活を維持したうえで扶養するという認識が必要です​​。

また、親の扶養義務は「経済的な支援」が原則とされているので、子どもが直接的な介護をしなくてはならないという意味ではありません。子どもが親の介護をできない場合は、介護保険サービスを利用するといった対処が認められています。

参考:e-GOV『民法

扶養義務の対象:直系血族と兄弟姉妹

扶養義務は、直系血族および兄弟姉妹が対象です。民法によると、直系血族とは親子の関係を指します。

また兄弟姉妹間にも扶養義務がありますが、法律上扶養義務の順序は定められていません。たとえば、長男に特別な義務があるわけではなく、扶養義務者が複数いる場合は、当事者同士で協議して決めることになります​​。

さらに、特別な事情がある場合は家庭裁判所の判断によって、直系血族および兄弟姉妹以外の3親等内の親族も扶養義務の対象になり得ます。

親の介護をしないとどうなる?

親の介護を必要とする状況において、その責任を放棄することは重大な法的、道徳的な問題を引き起こします。以下では、親の介護をしないとどうなるのか?そのリスクや法的な影響について詳述します。

介護放棄のリスク

介護放棄とは、介護を必要とする人の介護を怠ることを指し「ネグレクト」と呼ばれることもあります。

例えば、十分な食事を与えない、医療機関を受診させないといった行為がこれに当たります。介護の精神的・身体的・経済的な負担により介護放棄に至るケースも少なくなく、社会的な問題にもなっています。しかし、前述のとおり、法律上では親の介護を完全に放棄することは許されていません。

また、介護放棄により孤独死のような重大なケースに発展する可能性もあります。このような結果にならないためにも、親の介護を放棄せず適切な対応を考えることが重要です​​。

親の介護を放棄した場合の刑罰は?

親の介護を放棄すると「保護責任者遺棄罪」に問われる可能性があります。この罪には3ヶ月以上15年以下の懲役刑が科されます。さらに、介護放棄により親が死亡した場合は、より重い罪に問われることもあるため注意が必要です。

ただし、扶養義務は介護者の経済状況も考慮されます。介護者が経済的に困っている場合など、全ての状況において法的な責任が問われるわけではありません。

遺産相続への影響は?

親の介護への貢献度は遺産相続に影響を及ぼす可能性があります。介護を行った子どもは「寄与」という形で被相続人に特別な貢献をしたと主張でき、相続分が他の法定相続人より増える場合があります。

ただし、前述のとおり親の扶養は子どもの義務なので、必ずしも介護による寄与分が認められるわけではない点に注意が必要です。

このように、介護放棄は法的なリスクのみならず、遺産相続における権利や責任にも影響を及ぼす可能性があります。

親の介護ができないときの対処法

親の介護ができないときの対処法

親の介護を直接担うことが難しい場合でも、いくつかの対処法が考えられます。ここでは、兄弟や他の親族に協力を求める方法、介護サービスの利用、経済的な問題への解決策について解説します。

兄弟や他の親族に依頼する

介護は一人で抱え込むものではなく、家族や親族の協力が重要です。例えば、遠方に住む兄弟には介護費用の支援を依頼したり、親戚に通院の送迎や買い物の手伝いを頼んだりして、協力を求めましょう。

なお、サービス利用の契約や治療方針の決定など責任を伴う重要な判断は、近くに住む家族が担うことが望ましいです​​。

介護保険サービスを利用する

要介護認定を申請することで、ケアマネジャーが本人の必要とする介護を見極め、適切な介護保険サービスを受けられます。

要介護認定については、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:介護保険申請のタイミングはいつ?失敗しないための手続きガイド

特に、家族や親族の協力が得られない場合や、介護の限界を感じた場合は、なるべく早く介護施設への入所を検討しましょう。介護施設では、親の介助を専門のスタッフに委ねることができ、特定の家族に介護の負担が集中する事態を避けられます​​。

経済的な問題がある場合の解決策

親の介護に伴う経済的な負担は、多くの家族にとって大きな懸念事項です。幸い、日本にはこの問題を軽減するためのいくつかの制度や控除があります。

まずは、地域包括支援センターに相談してみましょう。地域包括支援センターでは、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員などが介護に関する総合的な支援を提供しています。これらの専門家から、利用可能な支援制度や最適なサービスについてアドバイスをもらえるでしょう。

次に、公的な負担軽減制度を活用するのも有効です。例えば、一定額を超える自己負担額が払い戻される、高額介護サービス費という制度があります。また、介護保険の負担限度額認定制度を利用することで、介護施設での費用負担を減らすことが可能です。

高額介護サービス費については、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:高額介護サービス費とは?基本や計算方法・手続きまでわかりやすく解説

介護によるストレスを避けるために

介護は多くの責任とストレスを伴います。介護者がストレスを最小限に抑え、健康な心身を保つための方法を知ることは非常に重要です。

以下では、介護を一人で抱え込まないことの重要性やリフレッシュの必要性について、詳しく解説します。

介護を一人で抱え込まないことの重要性

大前提として、介護を一人で全て担うことは不可能です。一人で介護の全責任を負うと、親だけでなく介護者自身の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。

何もかもを一人で抱え込んだ結果、介護者自身が弱ってしまえば介護を続けられなくなります。このような状況を避けるためには、休むときはしっかり休んで、根を詰めずに、身内で話し合い役割分担をすることが重要です​​​​。

リフレッシュの必要性と自立を促す介護

介護者自身のリフレッシュや自立を促す介護も大切です。

疲れが取れない、気持ちが晴れない場合は、ストレスがたまっているサインです。このような状況では、気分転換やストレス発散が必要です。自分の自由時間を確保してのんびり過ごしたり、趣味に没頭したりすることでリフレッシュを図りましょう​​​​。

また、介護の重要な視点として「自立を促す」ことが挙げられます。「親の世話だから」という責任感から全てを介助してしまうと、本来できたことでも、どんどんできなくなってしまいます。

このような誤った介護が続くと、寝たきりになってしまう恐れもあり、より介護者に負担がかかってしまいます。正しい介護を受けるためにも、専門家へ協力を要請しましょう。

まとめ

今回は「親の介護をしないとどうなるのか?」という問題について解説しました。

原則として、親の介護はしなければなりません。これは民法で定められており、親の介護をしないと保護責任者遺棄罪に問われる可能性があります。

ただし、民法が定める親の介護とは「直接的な介護」を指す言葉ではなく「経済的な支援」を意味しています。もし、親の介護ができない状況なら、決して無理をせず訪問介護の利用や老人ホームへの入居などを検討しましょう。

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この記事の監修者

いいケアネット事務局

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