「親を老人ホームに入れてもいいものか」「親を老人ホームに入れることに罪悪感を感じる」とお悩みの方も多いでしょう。
結論からいえば、親を老人ホームに入れるのは親不孝ではありません。
もし罪悪感に駆られて無理な在宅介護を続けてしまうと、家族・本人ともに負担が増え続け、さまざまなリスクが生じます。
今回は『親を老人ホームに入れるのは親不孝ではない』『親を老人ホームに入れると親不孝と思われてしまう理由』『罪悪感を払拭するために確認したいポイント』などを解説していきます。
この記事を読めば、罪悪感を感じることなく老人ホームの入居を進められるようになるでしょう。
親を老人ホームに入れるのは親不孝ではない
親を老人ホームに入れるのは決して親不孝なことではありません。
親の介護は終わりが見えないため、介護する家族にとっては精神的・身体的・経済的に大きな負担になります。
介護が必要な方や家族のために、社会問題にもなっている介護を社会全体で支えて、無理のない生活を送れるように作られた制度が介護保険制度です。
老人ホームへ入居することは介護保険制度で認められたことですので、罪悪感を抱く必要はありません。
制度を利用せず周囲に助けを求めないと介護に疲れてしまい、さまざまなリスクが生じます。
では、以下で介護疲れによるリスクを見ていきましょう。
介護疲れのリスクとは
介護疲れによるリスクには、次の4つが挙げられます。
- 身体的症状
- 精神的症状
- 社会的問題
- 介護を受ける側のリスク
介護疲れは身体的にも精神的にも、さまざまな症状が出てきます。
夜間の頻回なトイレ介助や昼夜逆転行動により不眠となり、疲労が回復できず体調を崩すケースが多くみられます。
たとえ介護者の体調が万全でも、介護者一人では24時間通して目が行き届かず、転倒したり認知症の周辺症状が悪化したりするケースも考えられるでしょう。
また最悪のケースとして、うつ状態になってしまい介護が原因で自殺や心中に至る事件などが社会問題としても提起されるようになってきました。
このように介護疲れによる弊害は、あらゆる面で悪循環を起こし、生活の質は格段に下がってしまいます。
親を老人ホームに入れると親不孝と思われてしまう理由
介護が必要な親を老人ホームに入れると親不孝と思われてしまう理由としては、下記の2点が考えられます。
- 伝統的な価値観、先入観
- 責任の放棄
それぞれの理由を詳しく見ていきましょう。
伝統的な価値観・先入観
親を介護するのは子どもの役目という価値観が、今でも残っている家庭は多くあります。
また、高齢者の介護に対して理解が進んでいない時代の『老人ホーム=姥捨て山』のような先入観が強く残っている方も少なくないようです。
このような誤った価値観や先入観が、親を老人ホームへ入れることがさも悪いことのように思われる原因です。
しかし、介護保険制度が浸透した現在では、これまでの生活をなるべく維持できるような利用者の尊厳を第一に考えた介護サービスが提供されています。
現在の老人ホームは姥捨て山とはほど遠く、清潔な居室・入居者に合った食事の提供・レクリエーションやイベントの開催など、充実した環境が整えられています。
責任の放棄
親を最後まで介護しなかったことを「責任を果たせなかった」と認識され、老人ホームへの入居が親不孝だと思われることもあるでしょう。
たしかに、日本では民法により扶養の義務は直系血族や兄弟姉妹、特別な事情があるときは三親等以内の親族が負うことと定められています。
しかし、扶養義務は原則的に経済的な援助を指しており、必ずしも直接的な介護をしなければならないとは解釈されていません。
できる範囲で経済的な援助をしながら老人ホームへ入れることは、責任の放棄ではないことは法的にも明らかだといえるでしょう。
参考:e-GOV 法令検索『民法』
罪悪感を払拭するために|2つの確認ポイント
次の2点を再確認すると、老人ホームの入居は間違った選択ではなかったと安心できるでしょう。
- 親を老人ホームに入れるタイミング
- 親を老人ホームに入れることのメリット・デメリット
それぞれ細かく見ていきましょう。
親を老人ホームに入れるタイミング
「生活が辛い」「イライラすることが多くなった」と感じたら、老人ホームの入居を考えるタイミングです。
また、家族がいない間に親がケガをしたり、病気の発作が起きたりした場合は、いずれ生命にもかかわるため、早急に老人ホームへの入居を進めるべきです。
老人ホームによっては入居待機の可能性もあるため、入居を考え始めたタイミングで、情報収集や施設見学などをして早めに準備を進めていきましょう。
「もう少し様子を見てから」と先延ばしにするのは、介護する家族にとっても本人にとっても得策ではありません。
親を老人ホームに入れることのメリット・デメリット
老人ホームに入れるメリットとデメリットを整理すると、親を老人ホームに入れるのが正しい選択なのかはっきりします。
メリット・デメリットをそれぞれ見ていきましょう。
親を老人ホームに入れるメリット
親を老人ホームに入れると、次のようなメリットがあります。
- 身体的・精神的な負担が減る
- 介護のプロに24時間365日、介護を任せられ安心できる
- 他の利用者とかかわり、社会参加の機会が増える
- 仕事中や睡眠中などに、親を心配しなくてもすむ
- ストレスが減ることで、親への接し方が優しくなれる
- 精神的な余裕ができるため、仕事や日常生活が整う
- 介護食を用意しなくてもすむ
- オムツなど介護用品が不要になるため、買い物が楽になる
- 月々決まった支出になるため、家計管理がしやすくなる
- 「子どもに迷惑をかけたくない」という親の心配事がなくなる
老人ホームへの入居は、介護する家族だけでなく本人にとってもメリットがあります。
親を老人ホームに入れるデメリット
では、親を老人ホームに入れたときのデメリットも見ていきましょう。
- 在宅で介護するよりお金がかかる
- 面会に行く時間を作る必要がある
- 面会時間の制限がある
- 日頃の変化がわからず、知らないうちに症状が悪化することもある
- インフルエンザなど集団で感染症にかかりやすくなる
もっとも影響があるのは費用面でのデメリットでしょう。
しかし、親の年金を確認して兄弟姉妹で費用の負担を分担すれば、さほど大きな問題にならないはずです。
メリットとデメリットを見比べて、何を優先すべきかを考えれば、親を老人ホームに入れるのは正しい判断だったと思えるでしょう。
親を老人ホームに入れるとき|よくある質問
親を老人ホームに入れる際に、多くみられる質問をまとめてみました。
同じ悩みや不安を抱えている方は、ぜひ参考にしてください。
親を施設に入れることになりましたが、入居が近づくにつれ可哀想になってきました。キャンセルしたほうが良いでしょうか?
在宅での介護が難しい状況なら、キャンセルせず入居手続きを進めましょう。
無理に在宅介護を続けても、親の症状が進行し負担は大きくなるばかりです。
すると親も介護する方も共倒れになって、良い結果にはつながりません。
また、せっかく入所できそうな老人ホームをキャンセルしてしまうと、また施設探しから始めることになってしまいます。
入居したあとは老人ホームに介護を丸投げするのではなく、面会や電話連絡をするなど定期的にフォローして親の不安感を和らげるようにしてあげましょう。
親を施設に入れたいのですが説得が難しいです。説得できる方法はないでしょうか?
まずはなぜ老人ホームに入所するのが嫌なのか、正直に理由を聞くことから始めましょう。
その理由を聞いたうえで、在宅での介護が難しいという現状を伝えることが大切です。
また、親を追い出すわけではなく両者にとってメリットが大きいことや、寂しくなったらいつでも会えると伝えてみてください。
どうしても話し合いがうまくいかない場合は、ケアマネジャーなど第三者に介入してもらうことも考えていきましょう。
ただし、生命にかかわるような緊急性が高いケースでは、本人の同意なしでも老人ホームの入居が可能ですので、地域包括支援センターや役所の福祉課へ相談してみましょう。
親を老人ホームに入れるのは親不孝?【まとめ】
では今回のまとめです。
親を老人ホームに入れるのは、決して親不孝ではないので心配はいりません。
老人ホームに入所することによるメリットは家族だけでなく親にもあります。
また、介護する家族と共倒れになるような事態は絶対に避けるべきです。
もし老人ホームへ入れることに罪悪感を感じても、施設に介護を丸投げせずに、面会に行ったり電話をかけたりと、定期的なつながりを継続すれば大丈夫です。
家族と親、両者が良い結果になるために老人ホームの利用は非常に有効ですので、前向きに捉えて老人ホームへの入所を進めていきましょう。
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この記事の監修者
いいケアネット事務局
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