ホスピスについて

皆さんは「ホスピス」という言葉を今までに聞いたことはありますか?
またご自身やご家族が病で完治する可能性が無くなった時、どこで最期を迎えたいか、考えたことはありますか?

2016年の厚生労働省の統計では、がん患者の死亡場所の割合は病院(緩和ケア病棟を除く)72.4%、緩和ケア病棟12.5%、自宅11.0%、介護老人施設や老人ホームが3.0%でしたが、最近では緩和ケア病棟や自宅・介護老人施設や老人ホームでの割合が増加しており、人生の最期を迎える場所の選択肢が拡がってきています。

そこで今回は「ホスピス」がどのようなものなのかについて詳しくお伝えします。

目次

ホスピスとは最期の時を穏やかに過ごす場所

もともとホスピスとは1967年、シシリー・ソンダース博士によって開設されたイギリスのロンドン郊外の聖クリストファー・ホスピスに始まり、主にがんの末期患者の全人的苦痛を、チームを組んでケアしていこうというものでした。

またホスピスという言葉は最期の時を穏やかに過ごすために行われる苦痛を和らげる治療やケアのことを指す言葉であり、日本ではそこから、そのような治療やケアを行う介護施設のことをホスピスと呼ぶようになりました。

以前はこのようなケアを行う介護施設が病院の緩和ケア病棟に限られていたため、ホスピスと聞くと病院の緩和ケア病棟を思い浮かべる方も多いともいますが、現在ではこのようなケアを提供する老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅なども増え、お別れまでの間をホスピスで過ごすなど、ホスピスという言葉の使い方の幅が広がってきました。

ホスピスの対象者は苦痛の緩和を必要とする人

ホスピスを利用できるのは、苦痛を和らげて最後の時を穏やかに過ごしたい方全てが対象となり、基本的に病気の種類や年齢、医療行為の有無などで入居を断られることはありません。

ただし認知症などが原因で安全の確保が難しい場合などの場合は、介護施設の種類やスタッフの体制などによっては、受け入れが難しい場合もあります。

また病気の根治が難しい方、または手術や抗がん剤などの治療を望まない方が対象となります。
したがって、病気の治療は行わないため、入居する本人が自身の状況を理解していないとホスピスで受ける治療やケアに不信感を抱くことに繋がる可能性があります。
そのため病気の状態や今後のことなどについて、しっかり本人に話し納得した上で入所していただく介護施設は多いです。

ホスピスで提供される3つの大切なケア

実際にホスピスで実施されるケアは「身体的ケア」「精神的ケア」「社会的ケア」の3つがあります。

まず「身体的ケア」としては、ホスピスでは病気の完治を目指すための治療の代わりに、病気によって引き起こされる苦痛や不快を和らげる身体的なケアや治療を行います。

例えば、がんの患者さんは痛みを訴えることがありますが、このような時には医療用麻薬や鎮痛剤などを使い痛みを取り除きます。
また本人が穏やかで快適に過ごせるよう、身だしなみを整えたり、体を拭いたりといったケアや食事の介助もあります。

次に「精神的なケア」については重篤な病気や死への恐怖などを和らげるために、医師や看護師だけではなく、カウンセラーなどとも連携しサポートしていきます。

そして「社会的ケア」については、経済的な問題を抱えている方がいれば、公的支援を受けられるように支援するサービスもあります。

ホスピスを行っている介護施設

緩和ケア病棟

病院内に併設されたホスピスのことを緩和ケア病棟といい、治療が困難な方や、ご自身でホスピスを希望した方が緩和ケア病棟に移ります。
同じ病院内の為、病状や治療内容についての情報伝達がスムーズにでき、家族も新たなホスピスを探す必要が無いというメリットがあります。

ただし入院期間に定めがあり、長期療養を目的とした入院は出来ず、一般的には1ヵ月程度の入院後、退院して自宅での緩和ケアに移行するという特徴もあります。

サービス付き高齢者向け住宅・有料老人ホーム

最近ではホスピスケアを提供するサービス付き有料老人ホームや、有料老人ホームも少しずつ増えています。
入院期間に定めのある緩和ケア病棟と異なり、入居期間に定めがないというメリットがあります。

また入居中に身体介助を受ける場合は、介護保険を利用する為、介護認定を持つ方が入居対象となる介護施設は多い特徴があります。
介護認定が無い方の入居を受け入れている介護施設もありますが、その場合、入居中に行われる介護に関し実費での支払いが発生することがあり、月額が高額になる特徴もあります。

在宅ホスピス

本人の自宅や専門の介護施設でホスピスケアを受けながら生活を送る方法です。住み慣れた環境で、家族とも過ごすことができる環境は 患者さんにとって大きなメリットかもしれません。また定期的に医師と看護師が訪問し診察やケアを行ってもらえ、何かあればいつでも駆けつけてもらえる安心感があります。

まとめ

今回はホスピスとホスピスを行っている介護施設についてお伝えしましたが、終末期を迎える際、どの様な環境で、どの様なケアを受ける事ができるのかは、その人の人生において非常に大切な選択だと思います。人生はいつ何が起きるかわかりません。何かあった時に悔いの無い選択が出来るよう、健康な内から自分の人生を考え、どの様な選択肢があるのかについても考えてみることも良いのではないでしょうか。

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この記事の監修者

いいケアネット事務局

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