これまでにもいいケアジャーナルの記事内で訪問看護のしくみについて触れてきましたが、今回はその訪問介護サービスの対象者となりうる「別表7」の疾病について詳しくご説明していきます。
PART1では「末期の悪性腫瘍」「多発性硬化症」「重症筋無力症」「スモン」「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」「脊髄小脳変性症」6つの疾病についてお伝えします。
末期の悪性腫瘍について
悪性腫瘍の中でも「医師が進行性かつ治癒が困難であると判断した悪性腫瘍」です。
末期という判断は、余命6カ月程度という目安がありますが、あくまでも主治医の判断となります。
多発性硬化症について
免疫細胞が中枢神経(脳・脊髄)や視神経に炎症を起こし、神経組織を障害する自己免疫疾患です。
自己免疫疾患とは、本来外敵から自分を守るための免疫系に異常が起き、自分の体の一部を敵と見なして攻撃してしまうことにより起こる疾病です。
多発性硬化症では神経細胞の突起(軸索)を被う(※)髄鞘(ずいしょう)が主な標的となり、その結果、髄鞘が壊され、神経からの命令が伝わりにくくなります。
またこの疾病は脱髄の空間的、時間的多発性を特徴とします。
「空間的多発性」とは複数の神経障害部位があること。「時間的多発性」とは、何度も症状の寛解と再発を繰り返すことです。
主な症状は視力障害、小脳失調、四肢の麻痺、感覚障害、歩行障害などがあり、病変部位により異なります。
炎症を起こした後、古くなった脳や脊髄の病巣は硬くなるため、多発性硬化症という名前がつけられました。
発症の詳しい原因は不明です。
(※)脱髄:神経細胞の軸索を取り囲んでいる物質である髄鞘(ずいしょう)が何らかの原因で変性・脱落すること。
重症筋無力症について
末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体によって破壊される自己免疫疾患です。
全身の筋力低下、易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂、複視などの眼の症状を起こしやすいことが特徴です。
目の症状だけの場合は眼筋型、全身の症状があるものを全身型と呼んでいます。
嚥下が上手く出来なくなる場合もあり、重症化すると呼吸筋の麻痺を起こし呼吸困難になる場合もあります。
スモンについて
整腸剤キノホルムの副作用による薬害で、神経症状(下肢の異常知覚、自律神経障害、頑固な腹部症状など)をはじめとし、循環器系及び泌尿器系の疾患の他、骨折、白内障、振戦、高血圧、慢性疼痛、めまい、不眠、腰痛、膝関節痛、歯科疾患を含め、全身に様々な症状が幅広く併発します。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)について
手足、喉、舌の筋肉、呼吸に必要な筋肉がだんだん痩せて力が無くなっていく病気です。
しかし筋肉そのものの病気ではなく、筋肉を動かし、かつ運動をつかさどる神経(運動ニューロン)だけが障害を受けます。
その結果、脳から「体を動かせ」という指令が伝わらなくなることにより力が弱まり筋肉も痩せていき、うまく言葉を発せられなくなる、食べ物が飲み込みづらくなるといった症状が現れます。
進行すると呼吸筋が弱まり呼吸困難になり、人工呼吸で生命を維持することになります。
その一方で視力、聴力、内臓機能、体の感覚などは保たれ、末期になるまで眼球運動障害、感覚障害、膀胱や直腸の障害等が認められない特徴もあります。
脊髄小脳変性症について
後頭部の下側にある小脳の障害によって生じる疾病の総称のことを言います。
脳から筋肉にうまく指令を送ることができず、思うように体を動かせられない運動失調を引き起こします。
発症初期は手の震え、細かい動作がとりにくい、呂律が回らない、歩行時のふらつきなどの症状が現れます。
発症の原因は遺伝性と非遺伝性であり3割程度が遺伝性と言われています。症状の進行は非常にゆっくりしている特徴があります。
まとめ
今回は6つの疾病についてご紹介しましたが、どの疾病も罹患すると日常生活に大きな支障が出る特徴があります。
住み慣れた環境でご自身が望む生活を送れるよう、利用できるサービスを上手く活用していきましょう。
次回は「ハンチントン病」「進行性筋ジストロフィー症」「パーキンソン関連疾患」「多系統萎縮症」「プリオン病」「亜急性硬化性全脳症」についてお伝えします。
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この記事の監修者
いいケアネット事務局
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