今回は「高齢者の病気」についてご説明します。
年齢を重ねると、誰でも病気にかかりやすくなるものです。
今回は、高齢者特有の身体的特徴や、高齢者に多く入院や介護が必要になる病気の傾向などについてお伝えします。
まず初めに老化について説明します。
老化には生物学的老化と病的老化の2種類があります。
生物学的老化
生物学的老化は、多かれ少なかれ、誰にでも起こる心身の変化を言います。
例えば年をとると顔にはシミやしわができるようになり、白髪も生えてきたりします。
骨の重量も減り、体重が落ち、腰も曲がって身長が低くなります。また老眼、難聴、免疫力低下や消化吸収力の低下など、生理機能にも衰えが見え始めます。
これらは全て生理的老化と言われています。
病的老化
病的老化とは、誰にでも必ずしも起こるとは限らない変化のことをいいます。
例えば、骨粗鬆症や認知症、血液の流れが悪くなって起こる動脈硬化や高血圧などは病的老化と言われます。
老化自体は病気ではありませんが、年をとると体全体の機能が低下する為、病気にかかるリスクも高まります。
生理的老化だけが進行している方は極めてまれで、多くの場合病的老化も同時に進行しています。
次に高齢者特有の病気の特徴について説明します。
高齢者特有の病気は高齢者以外の方と比べ、以下の様な特徴があります。
- 複数の病気や症状を抱えやすい
- 重篤化しやすい
- 臓器機能の低下
- 回復力・予備力の低下
- 恒常性維持機能の低下
- 典型的な病気の症状に当てはまらないことが多い
それぞれの特徴について解説すると
複数の病気や症状を抱えやすい
高齢者は高血圧、糖尿病、脂質異常症、心疾患、脳血管疾患など多くの疾患を同時に罹漢していることが多く、東京都健康長寿医療センターの調査によると、高齢者の6割が3疾患以上の慢性疾患を併発しています。
重篤化しやすい
高齢者は生理的老化などによって内臓の機能低下が起こりやすくなっており、同じ病気にかかった場合でも、若い方に比べると状態が変化しやすく、急に重篤化する危険性があります。
予備力・回復力の低下
平常時の状態からストレスが加わった時に対応できる潜在能力(予備力)が低下し、少しのストレスをきっかけに機能低下や病気を生じやすい状態になります。
弱った状態から元の状態まで戻る回復力も低下するため、病気にかかりやすく、治りにくくなります。
臓器機能の低下
長年の使用によって、以下の様な各臓器の機能低下が起こります。
消化器系
- 咀嚼力・嚥下力の低下
- 消化吸収力の低下
- 解毒作用の低下
- 便秘
循環器系
- 血圧変動の乱れ
- 動脈硬化の進行
- 心臓弁膜症・不整脈
- 最大心拍出量の減少
泌尿器系
- 頻尿
- 尿路感染
- (男性)前立腺肥大→排尿障害
- (女性)腹圧性尿失禁
筋・骨格系
- 関節可動域の減少
- 骨密度の低下→骨粗鬆症
- 筋肉量減少・筋力低下
血液系・免疫系
- 貧血
- 免疫機能の低下
内分泌系
- (男性)男性ホルモンの減少→更年期障害
- (女性)女性ホルモンの減少→更年期障害・骨粗鬆症
呼吸器系
- 肺活量の低下
神経系
- アルツハイマー病の発症率の低下
- 睡眠の質の低下
- 体温の低下
感覚器系
- 老眼・白内障
- 目のかすみ・視野障害
- 難聴(高い音の聞こえ辛さなど)
- 嗅覚・味覚の低下
- 触覚・温度覚の鈍化
外観
- しわ・たるみ・しみ
- 白髪の増加
- 脱毛(禿頭)
- すり足・歩幅の減少
- 円背(骨の歪みによって脊柱が前に倒れた状態)
- 身長低下・体重減少
恒常性維持機能の低下
- 外気の温度に合わせた体温調整能力の低下
- 発熱・下痢・嘔吐などで脱水症状が起こりやすくなる
- 血糖値のコントロール能力の低下
- 血圧が上がりやすくなる
など
恒常性維持機能が低下することで、外部環境の変化に適応する能力が低下します。
ADL(日常生活動作)能力が低下しやすい
病気やけがなどで安静・臥床期間が長くなることにより、筋力低下、関節拘縮などの運動器機能の低下や褥瘡の発症、深部静脈血栓症、尿路感染などを引き起こし、ADL(日常生活動作)が低下しやすくなる傾向にあります。
典型的な症状にあてはまらないことが多い
一般的な病気の症状などに当てはまらない場合も多く、肺炎でも微熱程度のことや、心筋梗塞の痛みが胸部ではなく、腹部に出ることなどがあります。
加齢による身体の変化や、病気の特徴について解説していきました。
次回 高齢者の病気について【PART2】では、高齢者に多く、症状が出てしまうと入院や介護、高齢者向けの介護施設などの検討が必要になる病気を解説していきます。
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この記事の監修者
いいケアネット事務局
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