「遠隔転移が見つかったけど、もう完治は望めないのかな…」
「治療を頑張れば、転移があっても治る可能性はある?」
このような不安や疑問を抱えていませんか?
がんの遠隔転移は完治が難しいと耳にした方もいるかもしれません。
しかし、近年の医療技術の進歩により、少数転移(オリゴメタスタシス)では根治を目指せるケースも報告されており、複数の治療選択肢が存在します。
この記事では、遠隔転移の基礎知識から最新の治療法まで詳しく解説します。正確な情報を得て、希望を持って治療に向き合うための参考にしてください。
【基礎知識】遠隔転移とは?転移が起こるメカニズムとスピード
遠隔転移とは、がん細胞が最初に発生した部位(原発巣)から離れた臓器に移動し、新たな腫瘍を形成することです。がん細胞は血管やリンパ管に侵入し、血液やリンパの流れに乗って全身を巡ります。
転移しやすい箇所は以下のとおりです。
- 肺
- 肝臓
- 骨
- 脳
いずれも血流が多く、がん細胞が定着しやすいため、転移の頻度が高くなります。
転移のスピードはがんの種類によって異なり、膵臓がんや小細胞肺がんのように進行が速いケースもあれば、前立腺がんのようにゆっくり成長するケースもあります。
また、患者さんの免疫力、年齢、体力なども転移の進行に影響を与える要因です。遠隔転移が確認されると、多くの場合ステージ4に分類され、治療方針も大きく変わります。
【結論】遠隔転移でも完治を目指せる可能性はある
遠隔転移が確認されたがん(ステージ4)は、従来「完治困難」とされてきました。
ただし、近年の治療法の進化によって、特定の状況下では完治が可能となるケースも報告されています。
最も注目されているのが「オリゴメタスタシス(少数転移)」という状態です。具体的には、転移個数が少なく、転移先が限定的な場合を指し、手術や放射線治療などの局所療法により、すべての病巣を制御できる可能性があります。
抗がん剤治療とSBRT(体幹部定位放射線治療)を組み合わせることで、オリゴメタスタシスの患者の生存率が高まると報告されています。
SBRTは高精度な放射線治療技術で、転移巣に集中的に高線量を照射し、手術に匹敵する効果が期待できる治療法です。
SBRT(体幹部定位放射線治療)の概要は以下のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
定義 | 腫瘍の位置に合わせ、三次元的に放射線を集中的に照射する高度な技術 |
特性 | ・ピンポイント照射 ・短期集中型(従来の1/6の期間) ・高線量投与可能 |
治療回数 | 4~8回 |
治療期間 | 1~2週間 |
ただし、がんの種類、転移部位などによって治療選択肢は異なります。
主治医と十分に相談し、個別の状況に応じた最適な治療方針を見つけましょう。
遠隔転移しやすいがんの種類と余命
遠隔転移のしやすさはがんの種類によって大きく異なり、がんの転移先もほぼ決まっています。
がんの主な転移先は以下のとおりです。
肺がん | 肺(反対側の肺や同一肺内への広がり)・肝臓・脳・骨 |
---|---|
乳がん | 肺・肝臓・脳・骨 |
大腸がん | 肺・肝臓・脳・膀胱・膣 |
胃がん | 腹膜・肝臓・結腸・膵臓 |
肝臓がん | 肺 |
がんは進行が早く、血流やリンパ流に乗って他の臓器に広がりやすい特性を持っています。転移先によっても予後は変わります。
国立がん研究センター集計結果によると、1年間の生存を達成することで、以後の5年生存率が上昇する傾向が見られました。
ただし、これらの数字はあくまで統計上の平均値であり、個人差は大きいです。
数値だけに注目せず、医師とともに自身に合った治療を見極めていくことが大切です。
遠隔転移の治療法
遠隔転移の治療には、以下のような複数の選択肢があります。
- 薬物療法
- 免疫療法
- 局所療法
- がんゲノム医療
ここでは、代表的な4つの治療法について詳しく見ていきましょう。
薬物療法
遠隔転移に対する薬物療法には、血液を通じて全身に薬剤が届くため、複数の臓器に散らばった転移巣に対して同時に効果を発揮できます。
遠隔転移における代表的な薬物療法には、抗がん剤による化学療法やホルモン療法、分子標的薬の3つがあります。
それぞれの作用や特徴は以下のとおりです。
治療法 | 作用 | 特徴 |
---|---|---|
化学療法 | 細胞分裂を妨げて、がん細胞の増殖を抑える | がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を及ぼすことがある |
ホルモン療法 | 性ホルモンの作用を阻害して、がんの進行を遅らせる | ホルモンに依存するがん(乳がん・前立腺がんなど)に有効 |
分子標的薬 | がん細胞特有の分子を狙い撃ちして攻撃する | 正常細胞への影響が比較的少なく、副作用が軽減される可能性がある |
副作用の種類や程度は薬剤によって大きく異なります。薬の効果には個人差があるため、副作用のリスクも踏まえて、事前に治療方針を十分に理解しておきましょう。
参考:国立研究開発法人国立がん研究センター『薬物療法』
免疫療法
免疫療法とは、免疫の力を利用してがんを攻撃する治療法です。
免疫療法の代表的な治療法として「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれる薬を使った治療があります。
免疫チェックポイント阻害薬には、がん細胞が免疫システムにかけている「ブレーキ」を外す働きがあり、患者さん自身の免疫細胞ががん細胞を攻撃できるようになります。
ただし、治療が行えるがんの種類はそれぞれの免疫チェックポイント阻害薬によって異なります。
また、免疫療法の中には効果が証明されていない治療法も存在するので、必ず主治医と十分に相談して適切な治療を選択していきましょう。
参考:国立研究開発法人国立がん研究センター『免疫療法』
局所療法
局所療法とは、がん(腫瘍)のできている部位とその周辺を直接的に治療する方法です。
局所療法には、放射線治療や転移巣の手術的切除などがあり、少数転移(オリゴメタスタシス)の場合に有効性が期待されています。
転移個数が少なく転移先が限定的であれば、すべての病巣を局所的に制御することで根治を目指せる可能性があります。
放射線治療では、体幹部定位放射線治療(SBRT)のような高精度な照射技術により、周囲の正常組織への影響を最小限に抑えながら高い線量の照射が可能です。
大腸がんが肝臓や肺に転移しても、完全切除すれば5年生存率は25~50%との報告があり、全身療法と併用することで効果が期待できます。
参考:
国立研究開発法人国立がん研究センター『局所療法』
大船中央病院放射線治療センター『少数転移(オリゴメタスタシス)SBRTという選択肢』
がんゲノム医療
がんゲノム医療は、がん細胞の遺伝子変異を詳しく調べ、その結果に基づいて最適な治療薬を選択する個別化治療です。従来の「臓器別治療」から「遺伝子変異別治療」への転換を目指しています。
遺伝子パネル検査により、がん細胞に特有の遺伝子変異が見つかれば、その変異に対応した分子標的薬による治療を受けられます。
現在、保険適用での検査は標準治療終了後の患者さんに限定されていますが、治療につながる確率は約10%程度です。
検査を受けても必ずしも適切な治療薬が見つかるわけではありません。ただし、病気への理解が深まり、将来的な治療選択肢の幅が広がる可能性があります。
がんゲノム医療は発展途上の分野であり、今後さらなる進歩が期待されるでしょう。
参考:国立研究開発法人国立がん研究センター『がんゲノム医療 もっと詳しく』
がんと共に生きるための「緩和ケア」という選択肢
緩和ケアは「終末期のもの」と誤解されがちですが、実際にはがんの診断時から治療と並行して受けられる大切なサポートです。
痛みや息苦しさなどの身体的な症状の緩和はもちろん、診断による不安感や治療への恐怖といった精神的な苦痛の軽減も対象です。
緩和ケアは本人だけでなく家族の支えにもなり、治療方針の判断や副作用対策、療養場所の選択を助けます。早期から緩和ケアを取り入れて、生活の質(QOL)を高めながら、がんと向き合う自分らしい毎日を過ごしていきましょう。
自宅での療養や緩和ケアに対応した施設をお探しの方は、高齢者向けの介護施設情報を多数掲載する「いいケアネット」をぜひご活用ください。無料で利用でき、気になる施設の特徴や月額費用の目安も簡単にチェックできます。
関連記事:ホスピスとは?役割や入所条件、治療内容、費用相場などを徹底解説
遠隔転移と向き合うために、正しい情報を得よう【まとめ】
遠隔転移が確認されても、すべてのケースで完治が不可能というわけではありません。
少数転移(オリゴメタスタシス)の場合、適切な治療により根治を目指せる可能性があります。
複数の治療選択肢が存在し、患者さんの状態に応じて最適な組み合わせを検討できます。また、緩和ケアは終末期だけでなく診断時から並行して受けられる重要なサポートです。
がんの種類や転移部位により治療方針は大きく異なるため、主治医との十分な相談が欠かせません。
必要に応じてセカンドオピニオンも活用し、自分に合った治療方針を見つけることが大切です。統計データに一喜一憂せず、希望を持って治療に向き合いましょう。
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