高齢者の住まいとして「高専賃(コウセンチン:高齢者専用賃貸住宅)」と「サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)」はよく比較されますが、それぞれに特徴やサービス内容に大きな違いがあります。この記事では、それぞれの基本的な特徴、違い、選び方について解説します。
高専賃が廃止された背景
「高専賃(高齢者専用賃貸住宅)」は、高齢者向けの住宅として一定の役割を担っていましたが、2011年の法改正によって新制度「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」へ移行されました。この背景には、高齢者の生活ニーズの変化や制度的な課題があります。
高専賃が担っていた役割と課題
高専賃は、高齢者が安心して住める住環境を提供するために設けられた賃貸住宅制度です。主にバリアフリー設計や入居条件の緩和が特徴で、自立して生活できる高齢者を主な対象としていました。
高専賃は高齢者向け賃金住宅として一定のニーズを満たしていましたが、以下のような課題がありました。
①サービス内容のばらつき
生活支援や介護サービスの提供内容に統一性がなく、施設ごとに大きな差がありました。
②法的基準の曖昧さ
高専賃には明確な基準や規制がなく、一部の施設ではサービス不足や最低限な管理が問題視されました。
③サポートの不足
認知症や要介護者の増加に伴い、単独賃貸住宅では十分なサポートが提供しにくい現状がありました。
サ高住制度の背景
2011年に施行された「高齢者居住法」の改正により、高専賃は廃止され、代わりにサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)が普及し始めました。この背景には以下のようなものがありました。
背景1: 高齢者人口の増加と介護ニーズの多様化
少子高齢化が進む中で、高齢者認知症や要介護状態の高齢者が増加していること、単独賃貸住宅では、安否確認や介護サービスが必要とする高齢者のニーズに応えられない場面が増えました。
背景2:質の確保とサービスの統一
高専賃では、施設間でサービスや設備の質に大きなばらつきがあり、高齢者や家族が適切な施設を選ぶことが難しいという課題がありました。その反省を踏まえ、サ高住では国が明確な基準を設け、登録制度を導入することで、一定のサービス水準を確保することを目指しました。
背景3: 在宅介護と連携の強化
ニーズが多様化する中で、必要に応じて柔軟に介護サービスを受けられる環境が求められていました。そのため、サ高住では、訪問介護などの在宅サービスと連携しやすい仕組みが準備されました。
高専賃の特徴
高専賃とは「高齢者専用賃貸住宅」の略称で、高齢者が安心して暮らせる賃貸住宅のことを指します。
対象者はおおむね60歳以上の自立した高齢者や軽度の介護が必要な方になります。バリアフリー設計で、サービス内容としては、生活支援サービス(食事提供や安否確認など)は一部施設でオプションとして提供されています。契約形態は賃貸契約になります。介護サービスは原則として提供されませんが、外部の介護サービスは利用可能です。賃貸住宅のため、初期費用と家賃が必要です。介護費用や生活支援サービスは別途になります。通常の賃貸住宅と同じ感覚で利用でき、比較的コストが抑えられることも大きな特徴です。生活支援サービスの充実度は施設によります。
サ高住の特徴
サ高住は「サービス付き高齢者向け住宅」の略称で、2011年に整備された比較的新しい高齢者向けの住宅です。
対象者はおおむね60歳以上の自立者から介護が必要な方になります。バリアフリー設計はもちろんのこと、安否確認サービスや生活相談サービスが標準で提供されます。介護が必要な場合、併設された介護サービスや外部の事業所と連携して利用できます。契約形態は賃貸契約または利用契約、費用は家賃や共益費、生活支援サービス費用がかかります。自立している方(もしくは介護予防の方)から介護が必要な方まで幅広く対応可能です。施設内で介護サービスを受けやすい環境が整っていることが大きな特徴でもあります。しかし、高専賃と比べて費用がやや高くなることもあり、自立した高齢者にはサービスが過剰と感じる場合もあります。

高専賃とサ高住の主な違い
高専賃とサ高住の主な違いを表にまとめました。
高専賃 | サ高住 | |
対象者 | 自立または軽度の介護が必要な方 | 自立者から介護が必要な方まで |
サービス内容 | 必要に応じて選べる生活支援サービス | 安否確認や生活相談が標準 |
介護サービス | 基本的になし(外部利用) | 外部サービス利用または併設施設で提供 |
費用 | 安価 | やや高額 |
法的基準 | 一部地域での基準が異なる | 国が定める基準あり |
高専賃とサ高住の入居条件の違い
「高齢者向け賃貸住宅」と「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」には入居条件において異なる点があります。それぞれの特徴や対象者を理解しておくことで、自分に合った住まい選びが容易になります。
高齢者向け賃貸住宅の入居条件
基本条件
高齢者(一般的には60歳以上)が対象。自立した生活が可能であることが基本。今後、軽度の介護が必要でも、外部サービスの利用を前提に入居できる場合もあります。
介護認定の有無
介護認定の有無は問われず、要介護度が高い場合は入居が難しい場合もあります。
収入基準
一般的な賃貸住宅と同様に、収入や保証人の有無が審査の対象
健康状態
重度の医療が必要な場合や、認知症が進行している場合には、入居を断られることがあります。
その他の条件
高齢者向け賃貸住宅では、保証人や緊急時の連絡先を求められることが多い。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の入居条件
基本条件
原則として60歳以上の高齢者、またはその配偶者(配偶者が60歳未満でも入居可能)。自立した生活が可能な方から、要支援・要介護認定を受けている方まで幅広く対応。
介護認定の有無
要介護認定や要支援認定を受けている方でも入居可能。認知症の高齢者も、適切なケア体制があるサ高住であれば入居可能。
健康状態
サ高住では、日常的な安否確認や生活支援が提供されるため、介護度の高い方でも住みやすいように考慮。
収入基準
公的支援を受けられる住宅も多く、収入が限られている高齢者でも入居できるケースがあります。
その他の条件
サ高住の契約は、賃貸契約または利用契約となり、保証人が必要ない場合もあります。併設の介護事業所や外部介護サービスと連携しているため、医療ケアが必要な方でも入居しやすい。

高齢者向け賃貸住宅とサ高住の入居条件の比較
高齢者向け賃貸住宅とサ高住の入居条件の比較を表にまとめると以下になります。
高専賃 | サ高住 | |
対象者 | 自立した生活が可能な高齢者 | 自立者から要介護認定を受けた高齢者まで |
介護認定の有無 | 問われないが、介護が必要な場合は難しい | 要支援・要介護者も入居可能 |
健康状態 | 自立して生活できることが基本条件 | 介護が必要な場合もケア体制が整っている |
収入基準 | 一般賃貸と同様の基準 | 公的支援を利用できる場合もある |
保証人の必要性 | 必要とされることが多い | 必須ではない場合もある |
医療ケアや認知症への対応 | 十分ではない | 施設によって医療・認知症ケアに対応 |
選ぶ際のポイント
高専賃が向いている方
- 自立した生活が可能で、介護サービスを必要としてない。
- 価格を抑えて、高齢者向けのバリアフリー住宅に住みたい。
- 自宅の環境に近い場所で生活を続けたい。
サ高住が向いている方
- 安否確認や生活支援など、日常的なサポートが欲しい。
- 介護サービスや医療ケアが必要、またはその可能性がある。
- 保証人を選定するのが困難である。
高専賃・サ高住を選ぶ際の注意点
まずは、契約内容を確認し、賃貸契約やサービス内容、追加費用が発生する条件をしっかり確認しましょう。次に実際に見学して、清潔感やスタッフの対応、すでに入居されている方などを確認することが大切です。家族との距離や病院、買い物施設へのアクセスも確認しておくことが重要です。
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まとめ
高齢者向け賃貸住宅とサ高住は、入居対象者や提供されるサービス内容に違いがあります。サ高住は医療が必要な場合にも柔軟に対応できる点が大きな特徴です。どちらを選ぶべきかは、高齢者の健康状態や生活ニーズによって異なります。入居前に条件や施設の雰囲気を確認し、安心して末長く暮らせる住まいを選ぶことが大切です。
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この記事の監修者
いいケアネット事務局
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