高額介護サービス費とは、どのような意味で何に関連しているのでしょうか。介護を必要とする方やそのご家族にとって、気になる問題ですよね。
高額介護サービス費とは、介護保険制度の自己負担額が一定の上限を超えた場合に、その超過分を国や市町村が負担する制度のことです。
この記事では、高額介護サービス費の仕組みや計算方法、申請方法などをわかりやすく解説します。高額介護サービス費を知ることで、介護費用の負担を軽減できます。
この記事を読んで、介護費用の負担を軽減しましょう。
高額介護サービス費とは?わかりやすく解説
高額介護サービス費とは、自己負担額が月額上限額を超えた分について、国や市町村から支給される制度です。
この制度の基本的な理解と概要・目的・申請方法・対象となるサービスなどを解説します。
高額介護サービス費の基本的な理解
高額介護サービス費とは、自己負担額が月額上限額を超えた分について支給される助成金です。この自己負担額とは、介護保険で認められたサービスを利用した際に、利用者が支払う割合を示します。
月額上限額とは、自己負担額がこれ以上にならないように定められた金額で、所得や要介護度によって異なります。例えば、月額上限額が1万円の場合、月に10万円分のサービスを利用しても9万円は高額介護サービス費として助成され、自己負担は1万円で済むというわけです。
このように高額介護サービス費制度は、自己負担の負担軽減を目的としています。
参考:厚生労働省『高額介護サービス費の負担限度額が変わります』
高額介護サービス費制度の概要と目的
高額介護サービス費制度は、介護にかかる自己負担額を軽減するための制度です。介護保険制度は、高齢者が必要な介護を受けられるようにするための社会保障制度ですが、利用者は一定の割合を自己負担しなければなりません。
この自己負担が高くなると、経済的な理由で必要な介護を受けられない方が出てきます。そこで、自己負担が一定額以上になった場合に支給されるのが高額介護サービス費です。利用者の経済的な困難を軽減し、適切な介護を受けられるようにこの制度が設けられました。
高額介護サービス費の計算方法
前述のとおり、高額介護サービス費とは、介護保険で利用したサービスの自己負担額が一定の金額を超えた場合にその超過分を減額する制度です。ただし、介護保険制度の自己負担上限額は所得や世帯によって異なります。
以下では自己負担額の上限の変化、3割負担の場合について説明します。
所得や世帯による上限額の変化
高額介護サービス費の計算方法は、所得や世帯によって異なります。
まず、介護保険制度の自己負担額は所得に応じて1割・2割・3割と分かれ自己負担額が一定の限度額を超えた場合に、介護高額サービス費制度により超過分が払い戻されます。
高額介護サービス費の限度額は、所得や世帯によって以下のように4区分6段階に分けられ、所得が高いほど上限額も高くなる仕組みです。
- 第4段階:課税所得690万円以上が対象・自己負担限度額は1世帯あたり14万100円
- 第4段階:課税所得380万円~690万円未満が対象・自己負担限度額は1世帯あたり9万3,000円
- 第4段階:市町村民課税~課税所得380万円未満が対象・自己負担限度額は1世帯あたり4万4,400円
- 第3段階:全員が市町村民税非課税の世帯が対象・自己負担限度額は1世帯あたり2万4,600円
- 第2段階:全員が市町村民税非課税の世帯、かつ前年の公的年金などの収入金額+その他の合計所得金額の合計が80万円以下の方などが対象者・自己負担限度額は1世帯あたり2万4,600円(個人の場合は1万5,000円)
- 第1段階:生活保護を受給している方などが対象者・自己負担限度額は1世帯あたり1万5,000円
令和3年8月より第4段階が2つ追加され、上限額が14万100円まで引き上げられました。なお、この上限額は、毎年4月1日に改定される可能性がありますので注意が必要です。
参考:厚生労働省『サービスにかかる利用料』
高額介護サービス費|3割負担の場合
介護保険の自己負担額が3割の場合は、利用した介護サービスの料金の30%を自己負担することになります。しかし、自己負担額が一定の上限額を超えた場合、その超過分は所得に応じて高額介護サービス費として減額されます。
介護保険制度で3割負担となる対象者は、現役並みの収入がある方ですので、高額介護サービス費では第4段階です。第4段階は収入により3種類に細分化されているため、高額介護サービス費の助成額は4万4,400円〜14万100円となります。
上限額の引き上げ前は、年収が約770万円以上の場合では高額介護サービス費の対象になりませんでした。それに比べると、より介護保険サービスが利用しやすくなったといえるでしょう。
参考:WAM NET『利用者負担割合の見直しに係る周知用リーフレットの送付について』
高額介護サービス費の対象と非対象
高額介護サービス費は、全てのサービスが対象になるわけではありません。
以下では、適用されるサービスの種類と、されないサービスについて説明します。
高額介護サービス費が適用されるサービスの種類
高額介護サービス費が適用されるサービスは、主に以下の3つに分けられます。
- 居宅サービス
- 施設サービス
- 地域密着型サービス
居宅サービスは、自宅で介護が必要な方に適したサービスです。訪問・通所・短期入所の3種類があり、自宅で暮らしながら介護を受けられます。
施設サービスとは、要介護の高齢者が入所する施設(特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護療養型医療施設など)で受けるサービスです。施設によって、介護だけでなく医療やリハビリなどのサービスもあります。
地域密着型サービスは、高齢者が住み慣れた地域で暮らせるように、事業所の管轄内の要介護者・要支援者に対して提供されるサービスです。訪問・通所・短期入所などのサービスや、認知症の方への支援、特定施設や介護保険施設でのサービスなどがあります。
高額介護サービス費が適用されない対象外のサービス
高額介護サービス費は、公的介護保険の自己負担部分の一部を支給する制度ですが、全ての費用が対象となるわけではありません。高額介護サービス費が適用されない対象外のサービスは次のとおりです。
- 特定福祉用具や住宅改修にかかる費用
- 施設入所時の居住費や食費
- 日常生活に必要な理美容代
- 配食サービスの費用
これらの対象外のサービスについては、自己負担することになります。ただし、別の補助金や助成金を利用できるケースもあるので、詳細は地域包括支援センターや市町村の福祉課などへ相談してみましょう。
高額介護サービス費の申請方法と手続き
高額介護サービス費を利用するためには、申請が必要です。
ここでは、申請方法と手続きについて説明します。
申請に必要な書類
高額介護サービス費の支給を受けるためには、市町村に申請する必要があります。申請に必要な書類は次のとおりです。
- 高額介護(介護予防)サービス費支給申請書
- 本人確認ができる身分証明書(保険証や免許証など)
- 口座番号がわかるもの(通帳)
- マイナンバーカード
- 介護保険被保険者証
もし、振込先の口座が本人以外の場合は上記に加えて委任状が必要です。
申請書は、サービス利用料の自己負担額が上限額を超えた場合、市町村から送られてきます。一度提出すれば、その後の該当月分は自動的に振り込まれます。申請期間は、サービス提供月の翌月1日から2年間です。期限内に申請しましょう。
ただし、市町村によって必要書類が異なりますので、申請時に確認しておきましょう。
参考:郡山市『高額介護サービス日の支給(払い戻し)申請方法』
支給決定通知書が届いたら
支給決定通知書は、介護サービス費の申請が受理されたことを示す書類です。以下の点に注意して、内容を確認しましょう。
- 支給決定通知書には振込口座や支給額などの情報が記載されています。ハガキと通知書の内容を照らし合わせて、誤りがないか確認しましょう。
- 初回の申請時には、口座への振り込みも同時に行われます。2回目以降は、自動的に指定した口座に振り込まれます。
- 不明点や疑問点があれば、市区町村の窓口に問い合わせてください。
支給決定通知書は、介護サービス費の支給を受けるために必要な書類です。大切に保管しておきましょう。
市町村による申請方法の違い
高額介護サービス費の申請は、住んでいる地域の市町村で行います。ただし、市町村によって高額介護サービス費の申請や手続きが異なるため確認が必要です。
例えば、申請書の提出方法や期限、必要書類などが違う場合や、マイナンバーカードの提示を求められたり印鑑が不要だったり手続きにも違いがあります。
詳しくは、お住まいの市町村にお問い合わせください。
高額介護サービス費の支給方法
「高額介護サービス費の支給がいつになるの?」「介護費用の支払いはどうすればいいの?」と気になる方も多いでしょう。
そこで以下では、高額介護サービス費の支給方法について、支給の流れ・受領委任払いの制度について解説していきます。
支給の流れ
支給の流れは、以下の3ステップです。
- 市町村が高額介護サービス費の支給対象者と支給額を決定します。
- 市町村から支給対象者に通知書が送付されます。通知書には支給額が記載されています。
- 市町村から支給対象者に高額介護サービス費が振り込まれます。
一度、申請すると次回から申請不要になります。この支給方法は『本人償還』と呼ばれ、自己負担額をいったん全額支払ったあと、上限額を超えた分が振り込まれるため、一時的な出費がある点に注意しましょう。
受領委任払い制度とその特徴
受領委任払い制度とは、支給対象者が介護サービス事業者に対して、高額介護サービス費の受領を委任する制度です。特徴は以下の3つです。
- 受領委任払い制度を利用すると、支給対象者は自分で高額介護サービス費を受け取る手続きをする必要がない
- 受領委任払い制度を利用する場合は、事前に市町村に申請する必要があり、また、利用する介護サービス事業者にも了承を得る必要がある
- 高額介護サービス費が施設に直接支払われるため、施設の窓口では自己負担上限額を支払うだけで済む
上記のとおり、受領委任払い制度には窓口での支払い額が少なく済むという大きなメリットがあります。特別な理由がなければ積極的に利用していきましょう。
高額介護サービス費と他の制度の違い
介護費用の面から見て、高額介護サービスとその他の制度の違いを理解することは重要です。
以下では、サービスの支給限度額と高額合算療養費について比較し、それぞれの特徴を説明していきます。
介護サービスの支給限度額と高額介護サービス費
介護サービスの支給額度額とは、介護保険制度における介護サービスで利用可能な上限額を指します。この制度の目的は、利用者が必要な介護サービスを受けられるようにする一方で、国や地域の財政負担を適正に抑えることにあります。しかし、この限度額を超えてサービスを利用した場合、その超過分は全て利用者の自己負担です。
一方、高額介護サービス費は、上記の自己負担額を超えた部分を補助する制度です。つまり、サービスの支給限度額を超えた場合でも、利用者の自己負担を一定に抑えることができます。
以上から、サービスの支給限度額と高額介護サービス費の違いは、超過分に対する負担の違いにあることが分かります。
高額介護合算療養費と高額介護サービス費
次に、高額介護合算療養費と高額介護サービス費の違いをみていきましょう。
高額介護合算療養費は医療と介護の両方を必要とする方を対象とした制度で、高額な医療費と介護費の合計額に対して補助を提供します。対象となるのは、医療保険と介護保険の両方を利用している方です。
一方、高額介護サービス費は、介護保険を利用している全ての方が対象で、特に高額な介護費が発生するケースに適用されます。
したがって、高額介護合算療養費と高額介護サービス費の違いは、その対象となるサービスと利用条件にあると言えます。
参考:厚生労働省『高額介護合算療養費制度について』
高額介護サービス費【まとめ】
では、今回のまとめです。
高額介護サービス費とは、介護保険制度で定められた自己負担額を超えた場合に適用される補助制度であり、その計算方法は所得や世帯によって変わります。
適用されるサービスと対象外のサービスが区別されており、申請方法と手続きは市町村により異なります。支給方法には受領委任払い制度があるため、窓口負担を減らすことも可能です。
今回紹介した内容を参考にして、自分自身や身近な方の介護費用の負担を軽減するために、高額介護サービス費制度を活用しましょう。
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この記事の監修者
いいケアネット事務局
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