認知症が進行すると、日常生活にさまざまな支障が現れます。そのため、適切な支援を受けるには要介護認定が重要なステップとなります。
この記事では、認知症で介護認定がおりるレベルや、申請の流れ、押さえておきたい準備ポイントについて詳しく解説します。
あわせて、認知症の方におすすめの介護サービスについても紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
認知症のレベルと症状について
認知症の進行度や症状は人それぞれ異なります。ここでは、認知症のレベルと代表的な症状について詳しく解説します。
認知症レベルがわかる「認知症高齢者の日常生活自立度」
「認知症高齢者の日常生活自立度」は、認知症の進行具合を把握するための指標です。
本人の生活の自立度に応じて、ランクAからランクMまで分類されます。
例えば、ランクAはほぼ自立した生活が可能な状態であり、ランクCは常に誰かの介護を必要とする状態を指します。
この評価により、適切な介護サービスや支援を選ぶ判断材料となります。制度上も重要視され、要介護認定の参考にもなっています。
要介護度の認知症の症状
要介護度によって、認知症に伴う症状の程度も変化します。
軽度では物忘れが中心ですが、重度になると意思疎通が難しくなることもあります。
例として、要介護1の人は外出時に道に迷うことがある一方、要介護5になると身の回りのことが全くできず、常に介助を要します。
要介護度は支援の内容を決定するうえで非常に重要な指標となり、適切なケアプラン作成に直結します。
要介護認定を取得するまでの流れ
要介護認定を受けるには、一定の手続きと審査を経る必要があります。ここでは取得までの一連の流れを順に解説します。
申請
要介護認定の第一歩は、住んでいる市区町村の窓口への申請です。本人または家族が手続きを行います。
申請書には本人の基本情報や健康状態などを記入し、必要書類とともに提出します。
事前に地域包括支援センターなどに相談すると、スムーズに進められます。
認定調査と主治医の意見書
申請後は、市区町村の職員による認定調査が実施されます。
日常生活動作や認知機能について、本人と家族に対して聞き取りが行われます。
あわせて、主治医により医学的な意見書も作成されます。
認定調査と意見書は、認定審査会での重要な資料となるため、正確に伝えることが求められます。
判定
認定調査と主治医意見書の内容をもとに、介護認定審査会が判定を行います。
専門家が集まり、要介護度を総合的に審査します。
審査会では、本人の状態を客観的に判断するため、複数の視点から検討が進められます。
審査結果に基づき、どの程度の支援が必要かが決定されます。
認定結果の通知
判定後、結果は市区町村から通知されます。
認定結果には、要支援や要介護の区分、認定期間が記載されています。
この通知を受けた後、ケアマネジャーと相談しながら、具体的なサービス利用計画を立てることになります。
結果に不服がある場合は、再審査を申請することも可能です。
認知症で要介護認定を受ける前に押さえたい3つのポイント
要介護認定をスムーズに受けるためには、事前の準備がとても重要です。ここでは押さえておきたい3つのポイントを紹介します。
普段の状態や介護内容についてメモしておく
普段の生活の様子や、家族がどのような介護を行っているかをメモしておくと、認定調査の際に役立ちます。
認知症は日によって状態が異なるため、一時的な様子だけでは正確な判断が難しいことがあります。
日々の変化や支援内容を記録しておくことで、調査員に正確な情報を伝えられます。これにより、より適切な要介護度が認定されやすくなります。
今までかかった病気や怪我をメモしておく
認知症以外にも、過去にかかった病気や怪我の情報は重要な判断材料になります。
例として、脳梗塞や骨折などは認知症の進行に影響を与えることがあり、主治医意見書にも記載が求められます。
過去の治療歴を整理しておけば、申請時に漏れなく伝えることができ、認定審査においても正確な評価を受けやすくなります。
何に困っているのかを整理しておく
日常生活で特に困っていることを具体的に整理しておくことも大切です。
例えば、食事の支度ができない、薬を飲み忘れる、外出先で迷子になるなど、支援が必要な場面を明確にしておくと、調査員にも状況が伝わりやすくなります。
自立支援の観点から、どのような支援が必要かを整理しておくことで、より本人に適したサービス利用計画にもつながります。
認知症の方におすすめの介護サービス
認知症の方には、症状や生活スタイルに応じた介護サービスを選ぶことが重要です。ここでは代表的なサービスについて紹介します。
ショートステイ
ショートステイは、短期間施設に宿泊して介護を受けるサービスです。
家族の介護負担を軽減できるため、在宅介護を続けるうえで大きな助けになります。
利用中は専門職による介護や医療的ケアが提供され、本人の安全と健康をサポートします。
緊急時の一時預かりにも対応している施設が多く、在宅介護との両立に欠かせない存在です。
デイサービス
デイサービスは、日中施設に通ってさまざまな支援を受けるサービスです。
リハビリ、レクリエーション、食事、入浴などのプログラムが用意され、生活機能の維持・向上を目指します。
例として、軽度の認知症の方には、認知機能訓練プログラムが提供されることもあります。
外出や他者交流の機会となるため、閉じこもり防止にも効果的です。
グループホーム
グループホームは、認知症の方が共同生活を送る小規模な施設です。
少人数制のため、一人ひとりにきめ細かい支援が行われます。
家庭的な環境で生活できることから、認知症の進行を緩やかにする効果も期待されています。
本人の尊厳を尊重したケアが受けられるため、安心して日常生活を送ることができるサービスです。
まとめ|認知症ならお困りなら要介護認定を受けよう
認知症の症状が進み、日常生活に支障を感じたときは、早めに要介護認定の申請を検討することが大切です。
適切な介護サービスを受けるためには、認定結果に基づく支援が不可欠です。
申請からサービス利用までには一定の時間がかかるため、早めの準備が本人と家族の負担を軽減します。
少しでも不安を感じたら、地域包括支援センターなどに相談してみましょう。
認知症のレベルや介護認定に関するQ&A
認知症に関連する介護認定について、よくある疑問にお答えします。
認知症で要介護判定される基準はありますか?
認知症で要介護認定を受けるかどうかは、認知症そのものの診断だけでは決まりません。
日常生活にどの程度支援が必要か、認知症以外の健康状態も含めた総合的な判断となります。
例として、軽度の物忘れだけでは要支援と判定される場合もあり、重度の記憶障害や行動障害がある場合には要介護と認定されることが多いです。
認定調査では、食事、排泄、移動など具体的な生活動作への影響が重視されます。
認知症で体が元気だと介護認定は受けられませんか?
体が元気で自立して動ける場合でも、認知症による生活上の支障が認められれば、介護認定を受けることは可能です。
例として、道に迷って帰宅できない、金銭管理が難しい、服薬管理ができないなど、認知機能の低下による問題があれば、支援や介護が必要と判断されます。
身体機能のみに注目するのではなく、認知機能の低下が生活に及ぼす影響を総合的に見て認定される点がポイントです。
監修者 一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長会 斉藤 正行
一般社団法人全国介護事業者連盟理事長。立命館大学卒業後、複数の介護関連企業で要職を歴任し、日本介護ベンチャーコンサルティンググループを設立。講演活動やメディア出演も多数。

この記事の監修者
いいケアネット事務局
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