「親の介護を兄弟で分担したい」「兄弟でトラブルを起こしたくない」とお悩みの方も多いでしょう。
結論からいえば、親の介護は兄弟で分担すべきです。
兄弟で役割分担をしないと、深刻なトラブルに発展する可能性も否めません。
そこで今回は、『親の介護を兄弟で分担すべき3つの理由』『親の介護を兄弟で分担しないとどうなる?』『親の介護で兄弟間のトラブルを回避する方法』を紹介していきます。
この記事を読めば、兄弟で協力して親の介護ができるようになります。
親の介護を兄弟で分担すべき3つの理由
親の介護は可能な限り兄弟で分担すべきです。
その理由として次の3つが挙げられます。
- 子供には扶養・扶助義務がある
- 介護の負担が一人に集中する
- 必要な介護が受けられなくなる
ひとつずつ解説していきます。
子供には扶養・扶助義務がある
民法第877条 第1項で『直系血族は互いに扶養する義務がある』と定められているため、子供には親の扶養・扶助の義務があります。
ただし、ここで言う扶養とは生活を支える義務のことを指し、具体的には経済的な支援を意味します。
身体的な介護を指す言葉ではありませんが、経済的な支援も含め、兄弟全員で役割分担して親の介護をしなければなりません。
参考:e-Gov法令検索『民法(明治二十九年法律第八十九号)』
介護の負担が一人に集中する
特定の人が介護を背負い込むと、身体的・精神的・経済的な負担が集中してしまい、さまざまなトラブルに発展する可能性があります。
例えば、親の介護は長男の嫁がするものという古い考え方により、長男の妻が介護を一人で抱え込むケースが挙げられます。
昔の日本には家制度という考え方があり、長男が家を継いで親と同居することが多かったため、長男の妻が親の介護を引き受けるという風習がありました。
しかし、現在の日本では家制度が廃止され、先ほどご紹介したように民法でも子供たちがお互いに協力して親の生活を支援するよう定められています。
必要な介護が受けられなくなる
兄弟同士で責任転嫁している間は、親は必要なケアが受けられない状況が続きます。
必要な介護や医療が受けられない状況が長く続くと、最悪の場合、生命の危機に至る可能性も考えられます。
例えば、夫婦共に仕事が忙しく日中は介護できない家庭に親が同居しているケースの場合、親が一人で昼食を用意することになるでしょう。
もし、認知症が進行していた場合、調理ができずに昼食を食べなかったりインスタントで済ませたり、十分な栄養が摂れないかもしれません。
親子両方の心身の負担を早く軽減するためにも、責任を押し付けあう時間は無しにして、兄弟で役割分担を進めていきましょう。
親の介護を兄弟で分担しないとどうなる?
親の介護を兄弟で分担しないと、次のような事態が予想されます。
- ストレスによる鬱状態に
- 介護放棄につながる可能性も
- 兄弟間のトラブルに発展
ひとつずつ解説していきましょう。
ストレスによる鬱状態に
介護を一人で抱え込んでしまうことでストレスを溜め込み、鬱の症状を訴えるケースも少なくありません。
介護する子供の健康に悪影響が出ると、親の介護を継続できなくなります。
また、介護を抱え込み介護離職に至るケースも少なくないようです。
平成29年の総務省の調べでは、介護を理由に離職する人は99,000人にも及びます。
介護離職をすると経済的にも苦しくなり、介護が続けられなくなる悪循環に陥ってしまいます。
参考:総務省『平成29年就業構造基本調査結果 要約』
介護放棄につながる可能性も
介護が継続できなくなると、介護放棄の状態にもなりかねません。
介護放棄はネグレクトとも呼ばれ、罪に問われる可能性もあります。
刑法第218条では、次のように定められています。
引用:老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の懲役に処する。
介護が継続できない状況になる前に、兄弟で協力することが重要です。
兄弟間のトラブルに発展
親の介護の役割分担ができていないと、さまざまな兄弟トラブルに発展する可能性があります。
兄弟間のトラブルで多い事例は次の2つです。
- 親の介護を押し付け合う
- 介護費用の金銭トラブル
親の介護を押し付けあっていると、次第に兄弟間の関係性も悪くなり、家族間で不穏な空気が漂ってしまいます。
また、介護には費用もかかるため、一人で抱えると経済的な負担が大きくなります。
兄弟間でトラブルが多いと、親が亡くなったあとの相続トラブルの原因にもなりかねません。
親の介護で兄弟トラブルになる原因
親の介護でトラブルにならないためには、まずは原因を知ることが大切です。
親の介護で兄弟間のトラブルになる原因には、次の3つが挙げられます。
- 親の介護は突然始まる
- 各家庭で経済的・時間的な問題を抱えている
- 介護を引き受けた人に想定外の負担がかかる
ひとつずつ解説していきます。
親の介護は突然始まる
多くの場合、病気や怪我による入院や認知症により、突然介護が必要になります。
「来年から親の介護が始まります」と予告されるわけではありません。
介護の準備がまったくできていない状態で、とりあえず子供の誰かが親の介護を引き受けてしまうケースも多いようです。
準備ができていない状態で介護を始めると、思ってもみないアクシデントに何度も遭遇し、いずれ兄弟を巻き込んだトラブルに発展してしまいます。
高齢の親を持つ以上、親の介護は他人事ではありません。
親の介護は、いずれ必ず訪れると認識して、いざ介護が必要になっても慌てないように準備しておきましょう。
各家庭で経済的・時間的な問題を抱えている
兄弟の各家庭では、次のような多くの問題を抱えています。
- 仕事が忙しい
- 子供の学費がかかる
- 遠方に住んでいる
親の介護はしなければならないとわかっていても、現実的に介護が難しいと感じることもあるでしょう。
ほとんどの家庭が何かしらの問題を抱えているため、親の介護を押し付け合うことになってしまいます。
介護を引き受けた人に想定外の負担がかかる
親の介護は、想像しているより大変なことが多いものです。
例えば、夜間の排せつ介助や徘徊の対応などは、介護する人の睡眠時間が確保できず、心身共に疲弊します。
介護していない兄弟は「自分の親の面倒をみるだけ」と簡単に考えがちですが、その大変さは実際に介護している人にしかわかりません。
また、介護する人に経済的な負担が集中すると、兄弟間での金銭トラブルに発展する可能性もあります。
親の介護で兄弟間のトラブルを回避する方法
親の介護における兄弟間トラブルを回避する方法は、次の3つがあります。
- 親と介護について話し合う
- 親の預貯金・年金などを把握する
- 兄弟間で役割分担を話し合う
ひとつずつ解説していきます。
親と介護について話し合う
介護が必要になる前に、親の介護に対する考え方を知っておくと良いでしょう。
- できるだけ自宅で住み続けたい
- 子供に世話を掛けたくないから施設に入りたい
- 介護してもらいたい人がいる
これらのように、誰しもが老後の過ごし方をイメージしています。
ただし、いきなり介護の話をするのは難しいかもしれません。
近所の世間話やテレビで介護の話題をやっているときなど、自然な流れで親の気持ちを探ってみましょう。
親の預貯金・年金などを把握する
日頃から親の経済状況を把握しておきましょう。
介護には多かれ少なかれ、必ず費用がかかります。
足りない分は子供たちで負担しますが、介護にかかる費用は基本的に親のお金で支払うことになっています。
介護の話題と同じくデリケートなテーマですが、大切なことですので親にも理解を求めて話し合っておくことが大切です。
兄弟間で役割分担を話し合う
日頃から、親が要介護状態になったら何をするかを話し合っておきましょう。
兄弟の各家庭では、さまざま事情があります。
しかし、自分ができることを探して、全ての兄弟が親の介護に参加する意識を持つことが大切です。
例えば、仕事が忙しい・遠方に住んでいるなどで介護が難しい場合は、介護ができない分、費用を多めに負担するといった判断ができます。
一方、近所に住んでいる・同居している兄弟は、主介護者として親の介護や老人ホームへの手続きをすることになるため、費用の負担を減らす配慮が必要です。
兄弟各自の『できること・できないこと』を明確にして、それぞれに応じた負担を分担しましょう。
まとめ
では、今回のまとめです。
子供には扶養・扶助義務があるため、兄弟全員で親を介護しなければなりません。
誰か一人に親の介護を押し付けると、重大なトラブルに発展する可能性があります。
トラブル回避のためにも、兄弟の役割分担は重要です。
どうしても役割分担が難しい場合は、市町村の福祉課や地域包括支援センターなど、公的機関に相談すると問題解決の糸口が見つかるかもしれません。
また親の介護が難しいと感じたら、決して無理をせず、老人ホームの利用を検討しましょう。
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この記事の監修者
いいケアネット事務局
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