アパシーとは、これまで出来ていた事に対して無気力・無関心になってしまう状態です。生活習慣が乱れ、健康面や衛生面にも影響が出てきます。
アパシーを治療するには、心理療法や薬物療法があります。また、生活習慣を改善したり、リフレッシュする時間を設けたりするのも有効な対処法です。
アパシーは向き合い方を間違うと、症状が悪化する可能性があります。順調な回復を目指すためにも、正しい知識をもって対応していくことが大切です。
本記事では、アパシーの治し方を詳しく解説します。治療における注意点も紹介するので、アパシーになった方が近くにいる場合は対応の参考にしてみてください。
アパシーとは
アパシーとは、身の回りのことに対して無関心になり、何をするにも気力が沸かない状態です。たとえば以下のような言動が見られます。
- 入浴しなくなる
- ご飯を作らなくなる
- ゴミを出さなくなる
- 部屋の掃除をしなくなる
- 感情表現が乏しくなる
- 会話や笑顔が減る
このような状態が長期的に続けば、アパシーの可能性が高いといえます。心配な症状が見られたら、かかりつけ医に相談してみましょう。
アパシーの治し方
アパシーは、放置しても改善するとは限らず、環境次第ではますますひどくなる恐れがあります。そのため、身の回りの人がアパシーになったときの対処法を確認しましょう。
- 生活習慣の改善をする
- 目標を立て行動する習慣をつける
- 運動や趣味の時間を作る
- 心理療法を実施する
- 薬物療法を取り入れる
順番に解説します。
生活習慣の改善を促す
アパシーは生活習慣が乱れたまま放置すると、心にさまざまな影響があります。
たとえば、睡眠の質が低下すれば、疲れが溜まり行動が制限されます。また、食事を満足に摂取できていないと、体力と気力の両面で支障が生じるでしょう。
そのため、生活習慣に乱れがある方は、健康的な睡眠や食事を心がけてみてください。
ただし、アパシーの方に生活習慣を改善するように伝えても、無関心・無気力な状態ではスムーズに耳を傾けてもらえません。
最初のうちは食事や寝る時間になったら声をかけるようにして、規則正しい生活リズムになるように周囲の人が促してあげましょう。
目標を立て行動する習慣をつける
アパシーを改善するには、目標を立て行動する習慣をつける取り組みが有効です。目標があれば行動する意欲が湧き、目標を達成すれば心が前向きになるからです。
目標は、以下のように身近で達成できそうなものを設定しましょう。小さな成功体験を積み重ねれば、日常生活への意欲が徐々に高まってきます。
- 朝食を毎日摂る
- 週1回掃除をする
- 1日1回散歩に行く
ただし、アパシーの方に目標の立案を薦めても、無関心・無気力により拒否される恐れがあります。このような場合は後述する専門家の心理療法を受ける選択肢も考えましょう。
運動や趣味の時間を作る
アパシーを改善するには、運動や趣味の時間を作るのが効果的です。
たとえば、散歩やストレッチといった簡単な運動だけでも気分転換ができます。また、絵を描いたり、音楽を楽しんだりする時間を作ると、心の充実感を得られます。
家族や友達と一緒に運動や趣味の時間を過ごすのもおすすめです。誰かと一緒に楽しむ時間を共有できれば、心の活力を取り戻すきっかけとなります。
心理療法を実施する
個人でのケアが難しいと感じたら、専門家に依頼して心理療法の実施を検討しましょう。心理療法では以下のような対応が行われます。
対応 | 内容 |
カウンセリング | 無気力・無関心になった原因を探る
例: 配偶者の死別、仕事や人間関係によるストレス、生活環境の変化など |
助言・支援 | 回復に向けた具体的な対応方法を提案
例: 生活習慣の見直し、ストレス解消法、社会活動への参加など |
専門家による定期的なケアで、段階的な回復を目指します。
薬物療法を取り入れる
アパシーは、認知症の症状として現れるほか、脳機能の低下により発症するケースもあります。病院や心療内科を受診した際、医師の判断により薬物療法が提案される場合があります。
以下は、アパシーで処方される薬の一例です。
処方薬 | 効果 |
抗認知症薬 | 脳内の神経伝達物質のバランスを整える |
脳代謝賦活剤 | 脳の循環を改善し呼吸や栄養を送りやすくして、脳の活性化を促す |
薬を使用するかどうかは、症状の程度や患者の状態などで異なるため、まずは医療機関を受診しましょう。
アパシーを治すときの注意点
アパシーを治すときには注意点があります。
- うつ病の違いを正しく理解していない
- 過度なサポートは逆効果になる恐れがある
- 介護をする家族がアパシーになるケースもある
誤った処置を進めると状態が悪化するリスクもあります。ポイントをおさえて適切なケアを進めていきましょう。
順番に解説します。
うつ病の違いを正しく理解していない
アパシーとうつ病は、どちらも意欲の低下ややる気の喪失といった症状が見られるため、混同されがちです。
しかし、両者は異なる病気であるため、治療法も違います。うつ病の方に、アパシーの治療法を適用しても、症状が改善されない場合があります。
以下は、アパシーとうつ病における症状の違いを示した表です。
アパシー | うつ病 | |
主症状 | 行動・認知・情動・社会的側面に関して
目標に向けた行動が減ること。気分や思考はネガティブではなく中立的 |
抑うつ気分・ネガティブな思考 |
主症状以外で鑑別に役立つ症状 | 表情は乏しく、ときに多幸的。 | 不安・焦燥・希死念慮・悲壮感を含む表情・不眠・食欲低下 |
参考:高次脳機能研究|うつとアパシーを見極める
自己判断は難しいので、医療機関や専門家へ相談するのが良いでしょう。正確な診断を受け、適切なケアを進めるのが症状回復への近道です。
高齢者で発症するうつ病についての詳しい情報はこちら
関連記事:老人性うつとは?症状や原因・治療法・接し方・予防法をご紹介
過度なサポートは逆効果になる恐れがある
アパシーの人を周りの人が過度にサポートすると、症状が悪化する恐れがあります。
たとえば、服を着替えさせる、ボタンを閉めるといった当たり前の習慣までサポートすると、無関心・無気力でも生きていけると思ってしまい、症状が悪化する可能性が否定できません。アパシーを克服するのは自分自身であり、周りの人はあくまでもサポート役です。
関心を持てない人の代わりに周りの人が行うのではなく、自分で行えるようにサポートしましょう。
介護をする家族がアパシーになるケースもある
介護を行う家族がアパシーになるケースもあります。
長期にわたる介護が続くと、心身に負担がかかり、介護疲れからアパシーの症状が現れる場合があります。また、介護が終わった後、急に時間や役割がなくなって、心にぽっかりと穴が開いたような感覚を覚えてアパシーになる可能性もあるのです。
こうした状態に陥らないよう、介護をしている人も適度に休息を取り、自分自身をいたわる時間をもつ意識が大切です。介護の負担が大きい場合は、介護施設への入所を検討するのも1つの選択肢です。
なかには「親を施設に入れるのは親不孝なのではないか」と悩む方もいます。しかし、無理をして介護を続ければ、介護者自身の健康を損なう可能性があります。一人で抱え込まずに、周囲のサービスもうまく活用していきましょう。
親の施設入所への罪悪感を払拭させる方法が知りたい方はこちら
関連記事:親を老人ホームに入れるのは親不孝?罪悪感を払拭する方法も解説
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アパシーの治し方を知って適切な治療を進めよう【まとめ】
アパシーの人は無関心・無気力であるために生活習慣が乱れます。
うつ病とは異なり、自らの状態を自覚して改善に向けて行動するのが困難です。周りの人がアパシーに陥っていないか確認し、必要であれば早期に対処を始めましょう。
ただし、誤った対処法はアパシーの悪化を招く恐れがあるため、まずはかかりつけ医への相談が大切です。
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この記事の監修者
いいケアネット事務局
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