東京商工リサーチが公表したレポートによると、2017年度の「老人福祉・介護事業」の倒産件数は介護保険法が施行された2000年度以降、最多の115件に達しました。
2016年度の倒産件数が107件と、2015年度の64件から急激に増えましたが、2017年度はさらに8件増加しています。
倒産した事業所は、従業員5人未満が全体の60.8%、設立5年以内が39.1%を占めており、小規模で設立から間もない事業者が倒産件数を押し上げる構造が鮮明になりました。
高齢化社会によって成長市場と期待されている業界ですが、業界内での淘汰が加速していると言えるでしょう。
これらの倒産の要因としては、
・同業他社との競争激化から経営力、資金力が劣る業者の淘汰が加速
・2015年のマイナス改定による収益への影響
・介護職員不足の中で離職を防ぐための人件費上昇
などが挙げられています。
業種でみると、「訪問介護事業」が47件、デイサービスなどの「通所・短期入所介護事業」が44件で、この2つの業種だけで約8割を占めています。デイサービスに関しては、2015年のマイナス改定が大きく影響しているのではないかと伺えます。
また、倒産の原因別では、「事業上の失敗」が約4割増加しており、安易な企業や本業不振のため異業種から参入したりなど、事前準備や事業計画が甘い小規模の業者が思惑通りに業績を上げられず経営に行き詰まったケースが多いと推測されています。
また、最近は収益を追い求めて、介護報酬の不正請求や法令違反などで、指定取消処分を受ける施設や事業所が過去最多を記録しています。こうした実態を背景に、経営体制の甘かったり、資本力のない経営基盤の脆弱な事業者がふるいにかけられ淘汰される状況は避けられない部分でもあるでしょう。
「老人福祉・介護業界」は、人手不足だけでなく、サービスの質の向上が課題となっています。採算重視だけではなく、顧客が心身ともに満足できるできるサービス提供がいかにできるかが求められます。この課題にいち早く取り組んでいける事業所が今後も生き残っていき、「老人福祉・介護業界」を牽引していくと考えられます。
介護職員の働きやすさ、サービスの質の向上を兼ねそなえるためには、経営者だけでなく、現場で働く方も当事者意識を持ってサービス向上に努めていくことが大切になっていくでしょう。
この記事の監修者
いいケアネット事務局
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