「施設に入所するために生命保険を解約したほうがいいの?」
「生命保険を解約しない選択をしたら、何かリスクってあるの?」
このような悩みを抱えていませんか?
高齢の家族が介護施設へ入るタイミングは、生命保険の解約を検討するよい機会です。保険を解約すれば、施設の入居費用や医療費といった資金の確保につながる場合があります。
生命保険の解約を後回しにすると、契約者本人の判断能力が低下して、将来的に手続きが複雑になるおそれもあります。だからこそ、正しい情報を理解し、適切なタイミングで判断することが大切です。
本記事では、施設入所前に生命保険を解約すべき理由を解説します。実際の解約の流れや生命保険以外で見直すべき契約についても紹介しているので、参考にしてみてください。
施設入居前に生命保険解約の検討をしたほうが良い理由
なぜ、施設入居前に生命保険解約を検討すべきなのでしょうか?
主な理由は以下の3つです。
- 加入保険の種類や内容を見直すきっかけとなる
- 解約返戻金を施設入居資金に使える
- 認知症になると本人による解約ができなくなる
ご自身の状況に該当する項目がある場合は、生命保険の解約を前向きに検討しましょう。
加入保険の種類や内容を見直すっきかけとなる
生命保険の見直しや解約は、何かきっかけがない限りは検討されにくいものです。
そのため、介護施設に入居するタイミングは、生命保険を見直すよい機会でしょう。
見直したほうがいいポイントは、以下の4つです。
- 保険の種類は今の状況に合っているのか
- 月々の保険料は無理のない金額か
- 保障内容は今のニーズに合っているか
- 今の保険会社を続けるべきか
固定費ともなる生命保険は、会社やプラン内容を見直すことで、月々の支払いを軽減できる可能性があります。
解約返戻金を施設入居資金に使える
解約返戻金(かいやくへんれいきん)は、保険を解約した際に払い戻されるお金です。支払った保険料の一部が貯金のように積み立てられ、途中で保険をやめたときに返戻金として戻ってきます。
解約返戻金は、以下の2種類あります。
タイプ |
特徴 |
解約返戻金の特徴 |
従来型 | 解約返戻金が払込に応じて徐々に増える一般的なタイプ | 払込期間中も比較的多く、満期時に最大になる |
低解約返戻金型 | 払込期間中の解約返戻金が少ないが、保険料が安め | 払込満了まで解約返戻金が少ないが、満了後に増加する |
解約返戻金を活用すれば施設の入居資金に充てられるため、手元の現金が足りない場合の選択肢になります。
ただし、解約のタイミングや返戻金の額によっては損をすることもあるため、契約内容をよく確認しましょう。
認知症になると本人による解約ができなくなる
認知症が進むと判断能力が低下し、保険解約の手続きができなくなるおそれがあります。
保険会社では契約者の意思確認が必要なため、認知症により適切な判断ができない状態では解約手続きが認められないケースもあるためです。
厚生労働省の見通しでは、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になるとされています。
将来に備えて、今のうちに保険の内容を家族で共有したり、誰が手続きできるかを確認しておくことが大切です。
参考:厚生労働省「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」
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認知症の方の生命保険を解約する方法
原則として、生命保険の解約は契約者本人しか手続きができません。たとえ認知症を発症していても、本人に判断能力があり、委任状を自筆で記載できる状態であれば、代理人による解約が可能です。
本人が委任状を記載できない場合、以下の流れで成年後見人が代理で手続きを行います。
- 管轄の家庭裁判所に後見開始の審判を申し立てる
- 家庭裁判所の審査を経て、成年後見人が選出される
成年後見人の選出まで、約4カ月ほど必要です。解約が必要なタイミングに間に合わない場合もあるため、早めに準備を進めておくことが家族の安心につながります。
【施設入所前に確認】生命保険を解約する流れ
あらかじめ手続きの流れを把握しておけば、生命保険をスムーズに解約できます。保険会社によって細かな違いはありますが、基本的には以下のステップで解約の手続きを進めていきます。
- 電話や担当者経由で保険会社へ解約の意思を伝える
- 解約申請書に必要事項を記入する
- 保険証券や本人確認書類などを提出する
- 書類に不備がなければ解約が成立する
解約返戻金がある場合は、1週間程度で指定口座に振り込まれます。
ただし、解約の手続きが完了すると同じ内容で再契約が困難となるため、内容をよく確認し慎重に手続きを進めましょう。
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生命保険の見直し以外に施設入所前に確認しておくこと
施設入所をきっかけに本人の行動の自由が限られることもあり、手続きや資産管理をスムーズに行うためにも事前の確認が重要です。
保険の見直し以外に確認しておくことは、以下の3つです。
- 生命保険以外の保険
- 銀行口座や金融資産の暗証番号や保管場所
- デジタル遺産のパスワードやID
順番に見ていきましょう。
生命保険以外の保険
施設入所をきっかけに、生命保険だけでなく、他の保険も見直すことが大切です。高齢になると生活スタイルやリスクが変わるため、保険の見直しは無駄な出費を減らし、必要な保障をしっかりと確認できます。
どの保険が必要かは個人の状況によって異なりますが、以下のような保険は見直しや確認の対象です。
- 介護保険
- 個人年金保険
- 養老保険
- 火災保険
- 地震保険
- 自動車保険
将来の不安を減らすためにも早めに保険の内容を整理し、今後の暮らしに合う保障に整えておくことは、将来の負担を軽くするためにも重要です。
銀行口座・金融資産の暗証番号や保管場所
施設入所後や、体調の急変によって本人が意思疎通できなくなった場合、銀行口座の暗証番号や通帳の保管場所がわからないと、生活費や医療費の支払いが滞るリスクがあります。
とくに、預金口座は家族であっても簡単に引き出せないため、金融資産の情報を聞いておくと安心です。
銀行口座について聞いておきたい情報は、以下の6つです。
- 金融機関名と支店名
- 口座の種類
- 口座番号や名義
- 連絡先
- 通帳や印鑑の保管場所
- 口座の暗証番号
ただし、これらは個人情報であり、本人の同意なしに無理に聞き出すべきではありません。本人の意思やプライバシーを優先し、信頼関係を築いた上で相談することが大切です。
デジタル遺産のパスワードやID
近年では高齢者もスマートフォンやパソコンを使ってネットサービスを利用する機会が増えており、万が一に備えたデジタル遺産の整理が重要です。本人がなくなった後にパスワードやIDが分からないと、サービスの解約に手間がかかってしまいます。
たとえば、以下のようなケースです。
種類 |
サービスの一例 |
資産 | 銀行口座、スマホ決済、暗号資産など |
支払い | 定期利用料、有料サービス |
記録 | ブログ、データ |
その他 | SNS、LINEなどのメッセージアプリ |
デジタル遺産のトラブルを避けるためには、本人が元気なうちにネットバンキングや契約中の有料サービス、SNSアカウントなどの情報を共有しておくことが大切です。
しかし、これら情報もすべて個人情報です。本人の意思を尊重し、無理強いせずに話し合いながら必要な情報を整理していく姿勢が求められます。
施設入所に備え生命保険の解約について考えよう
生命保険は、万が一に備えて経済的な保証を得るための制度です。なかでも貯蓄型の保険には解約返戻金があるため、施設入居前に解約を検討すれば、入居一時金や初期費用に充てられます。
特に施設への入所を控えている方にとって、生命保険の見直しは費用や手続きの面で大きな備えとなります。
将来的に認知症などで判断能力が低下すると本人による手続きが難しくなる場合もあるため、元気なうちに保険の内容や活用方法を見直しておきましょう。
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