介護施設のなかでも、デイサービスやデイケアなどの通所介護サービスでは、日々の情報を記録した「連絡ノート」が提供されます。連絡ノートには、日々の様子や食事量、トラブル内容などが記載されており、介護施設と家族を結ぶ重要なツールです。
本記事では、介護施設の連絡ノートの役割を紹介します。在宅介護でノートを作成する際の書き方やメリットなども解説しているので、親族が介護施設に通っていたり、在宅介護をしていたりする方は、ぜひご覧ください。
介護施設の連絡ノートの役割とは?
デイサービスやデイケアなどの通所介護サービスでは、連絡ノートが提供されます。連絡ノートは、単なる日々の報告書ではなく、家族とのコミュニケーションを深めたり、ケアプランの方針を決めたりなど重要な役割を持っているのが特徴です。
ここでは、介護施設の連絡ノートの役割を3つ紹介します。
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家族との信頼やコミュニケーションを深める
連絡ノートは、介護施設と家族の間で日々の情報を共有し、コミュニケーションを円滑にするための大切なツールです。施設側からは、体調や食事、排泄の状況などが具体的に報告されます。連絡ノートにより家族は施設での利用者の様子を詳細に把握できるのです。
また家族からは、自宅での体調の変化、困りごとや気になっていることを連絡ノートを通じて施設のスタッフに共有できます。双方向のやり取りを通じて、家族は施設のケアに対する理解を深め、信頼感を抱けます。
ケアプランやケアの方針を決める
連絡ノートに記録された日々の利用者の様子は、ケアプランの作成や見直し、今後のケアの方針を決定する上で重要な情報源になります。
たとえば、特定の活動に参加したがらない様子や食欲の変化、睡眠の質の変化などが記録されていれば、ケアマネジャーや介護スタッフは、現在のケアプランが利用者の状態に合っているかを検討できます。必要であればサービス内容やケアの方法を見直せるため、より効果的なケアを提供できるのです。
介護スタッフ間の情報共有
連絡ノートは、介護スタッフ間での情報共有の役割も持っています。デイサービスでは複数の介護スタッフが交代で利用者のケアにあたるため、1人ひとりの利用者の最新の状況や特別な配慮が必要な事項を把握しなくてはなりません。
連絡ノートには、引き継ぎ事項や起きた出来事、体調の変化などが記録されます。たとえば、昨日の夜眠れなかった利用者がいれば、今日の午後のレクリエーションでは静かな活動を提案するなど状況に応じた配慮が可能になります。
情報共有が徹底されることで、サービスの質の向上はもちろん、ヒューマンエラーの防止にもつながるのです。
介護施設の連絡ノートに記載されている主な内容
デイサービスにおける連絡ノートは、入浴や食事、排泄など具体的な項目が設けられています。施設によって項目は多少異なるものの、大半の内容は共通しています。
ここでは、介護施設の連絡ノートに記載されている主な内容を7つ見ていきましょう。
入浴の報告
介護施設で入浴サービスを受けている方は、入浴についての報告が記載されます。入浴の有無だけでなく、入浴時の様子が具体的に記載され、自身でどこまで洗えたか、どこに介助が必要だったかなどがあげられます。
例:本日10:00に入浴されました。お肌の状態も良好で、大きな変化はありません。
はじめはは車椅子からの移乗に不安な様子がありましたが、スタッフの介助によりスムーズに入浴ができました
食事の報告
提供された食事内容や摂取量、食欲の有無などが記載されます。咀嚼や嚥下の様子、介助の必要性なども詳細に報告されるのが特徴です。
例:昼食はご飯、味噌汁、煮物を完食しました。魚は苦手なご様子で、少し残されましたが、全体的に食欲は旺盛です。
嚥下能力にやや不安が残るため、ゆっくり食べるようアドバイスをしています
排泄の報告
排泄の回数や状態、介助の状況も報告されます。下痢や便秘などの変化がある際は、食事内容や脱水予防などの対策方法も記載されるケースもあります。
例:日中、トイレにて排便が1回(普通便)ありました。ご自身でスムーズにされており、とくに介助は不要でした。
失禁があったため、着替えと清拭をおこなっています
服薬の報告
薬の服用状況、飲み残しがないか、服薬時の様子なども記載されます。
例:昼食後のお薬をすべて服用されました。とくに嫌がる様子もなく、問題なく飲めています。
食後の薬を食前に服用しようとしていたため、服用タイミングを改めてお伝えしました。
機能訓練の報告
機能訓練の内容と取り組み状況も報告されます。どのような体操やリハビリ器具を使ったか、集中して取り組めたかなど詳細に伝えられます。
例:午後のリハビリ体操に積極的に参加され、とくに腕上げ体操では大きく体を動かされていました。終了後も「体が軽くなった」と笑顔でした。
先日は関節の痛みがありましたが、本日は痛みも治り、問題なく取り組めていました
体調やトラブルに関する報告
だるさや体の痛みなどの体調の変化がある際は、細かく連絡ノートに記載されます。万が一、転倒してしまった際は、電話による連絡だけでなく、いつ・どこで・どのように転んだかなども連絡ノートにて報告されます。
例:本日は右足が痛いとのことで、足を動かす機能訓練はお休みしています
本日は体調があまり優れないようで、食事を残されていました
レクリエーションや他の利用者との様子
デイサービスでのレクリエーション活動の内容や、他の利用者との様子も報告されます。たとえば、どんなゲームや創作活動に参加したか、表情や言動、積極的に関われたかなどがあげられ、自宅では見られないような様子を把握できます。
例:午後の風船バレーでは、大きな声を出して楽しまれ、他の利用者さんとの会話も弾んでいました。
笑顔が多く見られ、大変活発に過ごされていました。
家族が連絡ノートに連絡事項や質問を記載しても問題ない
デイサービスにおける連絡ノートは、家族が連絡ノートに連絡事項や質問を記載しても、まったく問題ありません。家族が自宅での細かな変化や気になる点を書き込むことで、施設側はより利用者の状態を理解でき、1人ひとりに合わせた細やかなケアを提供できるようになります。
家族側が連絡ノートに記載する連絡事項や質問は、以下があげられます。
- 昨夜はあまり眠れていなかったようです
- 最近は以前に比べると、食事量が増えています
- 少し元気がなさそうに見えるのですが、施設ではどうですか?
連絡ノートの書き方はとくに決まっていないケースが多いため、連絡事項や質問がなければ記載しなくても問題ありません。もし気になる点がある場合は、遠慮なく連絡事項欄や質問欄に記載しましょう。
在宅介護で家族が介護ノートを作成する際の書き方と項目
連絡ノートは、在宅で介護をしている家族が作成するのも効果的です。健康状態や気になることをメモしておくと、医療機関を受診したり、介護施設を利用し始めたりする際にも、活用できます。
在宅介護で介護ノートを作成する際に、記載したい項目は以下があげられます。
- バイタル(体温・脈拍・血圧)
- 排泄のリズム
- 食事内容や量
- 睡眠状況
- 服薬状況
- 介助内容
介護ノートを作成する際は、一般的なメモ帳やノート以外にも、自治体等で発行している介護ノートを利用するのもおすすめです。
在宅介護で家族が介護ノートを作成するメリット
在宅介護で家族が介護ノートを作成するメリットは、以下があげられます。
- 体調や様子の変化を客観的に把握できる
- 複数の関係者間で情報を共有しやすくなる
- 介護の負担軽減や精神的な安定につながる
記録を残しておくと「いつもと違うな」と小さな変化に気づきやすくなり、医療機関の受診時やケアマネジャーへの説明時に、具体的な状況を伝えやすくなります。介護は家族だけでなく、ケアマネジャーや訪問介護スタッフなど、多くの専門職が関わるためです。
また振り返ったときに、介護の大変さだけでなく、利用者の笑顔やできたこと、楽しかったできごとなどを再認識するきっかけにもなります。
まとめ
介護施設の連絡ノートは、家族と介護施設の関わりを深めたり、介護スタッフ間で情報を共有したりするのに欠かせないツールです。施設との連絡ノートには、利用者の日々の体調や活動、食事、排泄状況などが具体的に記載されています。
また、自宅での介護を円滑に進めるために介護ノートを作成するのもおすすめです。日々の健康状態や様子の変化を客観的に記録すると、医療機関や他の介護関係者との情報共有がしやすくなります。
連絡ノートを上手く活用し、利用者が快適に日常生活を過ごせるよう努めましょう。
なお、大阪を中心に、多数の高齢者向けの介護施設の情報を掲載する「いいケアネット」では、老人ホームに関する疑問やそれにまつわる情報を「いいケアジャーナル」で随時更新中です。