大阪府内で、年金収入だけでは費用の支払いが厳しいなど、経済的な理由で老人ホームへの入居をためらっている方もいるかもしれません。しかし、低所得者でも入居可能な施設や、費用負担を軽減する公的な制度が存在します。
この記事では、大阪で低所得者が入居できる老人ホームの種類や費用相場、利用できる軽減制度について解説します。また、施設選びで失敗しないためのポイントや、専門の相談窓口もあわせて紹介するので、参考にしてください。
まずは知っておきたい!大阪で低所得者が入居できる老人ホームの種類
低所得者が入居できる老人ホームには、公的施設から民間施設まで様々な種類があります。費用が安い公的施設は人気が高く待機期間が長い傾向がある一方、民間施設でも比較的費用を抑えた施設が増えています。
それぞれの施設の特徴、入居条件、費用の傾向を理解し、自身の状況に合った施設の種類を見極めることが、最適な老人ホーム選びの第一歩です。
ここでは、代表的な5つの施設について解説します。
公的施設で費用を抑えやすい「特別養護老人ホーム(特養)」
特別養護老人ホーム(特養)は、地方公共団体や社会福祉法人が運営する公的な介護施設です。民間施設に比べて費用が安く設定されており、所得に応じた負担軽減措置もあるため、低所得者でも入居しやすいのが大きな特徴です。
入居条件は、原則として65歳以上で要介護3以上の方となります。
看取りまで対応している施設が多く、終身にわたって暮らせる安心感がありますが、費用の安さから入居希望者が多く、大阪府内でも待機期間が長くなる傾向にあります。入居の優先順位は、介護の必要性や家族の状況などを考慮して決定されます。
自立度の高い方向けの「軽費老人ホーム(ケアハウス)」
軽費老人ホーム(ケアハウス)は、自立した生活に不安がある60歳以上の方を対象とした施設で、食事の提供や生活支援サービスを受けられます。利用料は所得に応じて設定されるため、低所得者でも負担を抑えて入居可能です。
ケアハウスには、自立した方向けの「一般型」と、要介護認定を受けた方向けの「介護型」の2種類があります。
一般型の場合、介護が必要になった際には外部の介護サービスを利用するか、退去を求められるケースもあるため、将来的な介護の必要性も考慮して選ぶ必要があります。身寄りのない方や家庭環境の事情で家族との同居が困難な方が優先的に入居できます。
施設数が多く選択肢が豊富な「有料老人ホーム」
有料老人ホームは民間企業が運営しており、施設数が多く多様な選択肢があるのが特徴です。一般的に費用が高額なイメージがありますが、近年は入居一時金が0円の施設や、月額利用料を比較的低価格に設定した施設も増えています。
大阪府内でも様々な価格帯の施設が見つかるため、予算内で入居できる可能性があります。
ただし、費用が安い場合は、サービス内容や人員体制がその分限定的であることも考えられます。立地や居室の広さ、提供される介護サービスの内容をよく確認し、費用とサービスのバランスが取れているかを見極めることが重要です。
認知症ケアに特化した「グループホーム」
グループホームは、認知症の診断を受けた高齢者が5人から9人の少人数ユニットで共同生活を送る施設です。
家庭的な雰囲気の中で、専門知識を持つスタッフの支援を受けながら、食事の支度や掃除などを分担して行い、自立した生活を目指します。入居条件は、要支援2以上の認定を受け、認知症と診断されていること、そして施設の所在地と同じ市区町村に住民票があることです。
費用は、入居一時金が0円から数十万円、月額利用料は12万円から20万円程度が目安となり、有料老人ホームと比較すると安価な傾向にあります。地域密着型のサービスであるため、住み慣れた地域で暮らし続けたい方に適しています。
自由な生活を送りやすい「サービス付き高齢者向け住宅」
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、安否確認と生活相談サービスが提供される高齢者向けの賃貸住宅です。居室のプライバシーが確保され、外出や外泊も比較的自由に行えるなど、自立した生活を送りやすいのが特徴です。
介護サービスは標準装備ではなく、必要な場合は外部の事業者と個別に契約する仕組みです。そのため、介護サービスの利用が少ない方にとっては費用を抑えられます。
月額費用には家賃、共益費、基本サービス費が含まれ、別途、食費や水道光熱費、利用した分の介護サービス費がかかります。敷金や礼金といった初期費用が必要な場合がほとんどです。
大阪における低価格な老人ホームの費用相場とは?
大阪府内で費用を抑えられる老人ホームを探す場合、費用の相場観を把握しておくことが役立ちます。一般的に低価格帯とされる施設では、入居時に支払う初期費用(入居一時金など)が0円から数十万円、毎月支払う月額利用料が10万円から15万円程度が目安となります。
ただし、この金額はあくまで一例であり、施設の立地条件、居室の設備、提供されるサービス内容、人員体制によって変動します。月額利用料には何が含まれ、何が別途必要なのか(医療費、おむつ代など)を詳細に確認し、毎月の総支出額を試算することが重要です。
低所得者が活用できる費用軽減制度
老人ホームの費用負担を軽減するためには、国や自治体が設けている公的な制度を積極的に活用することが欠かせません。これらの制度は、所得や資産が一定の基準を下回る方を対象としており、申請することで自己負担額を大幅に抑えることが可能です。
制度の存在を知り、自身が対象となるかどうかを確認し、適切な手続きを行うことで、経済的な不安を和らげながら必要な介護サービスを受けられます。ここでは、低所得者が利用できる代表的な3つの費用軽減制度について解説します。
食費や居住費の負担を減らす「特定入所者介護サービス費」
特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)は、介護保険施設に入所、またはショートステイを利用する際の食費と居住費の負担を軽減する制度です。
対象者は、世帯全員が市町村民税非課税であるなど、所得や預貯金額が一定の基準以下の低所得者の方です。市区町村の窓口で申請し、認定されると「負担限度額認定証」が交付されます。
この認定証を施設に提示することで、所得段階に応じた負担上限額までの支払いで済み、上限を超えた分は介護保険から給付されます。特別養護老人ホームや介護老人保健施設などが対象となり、有料老人ホームやサ高住は原則として対象外です。
介護サービス費の自己負担額に上限を設ける「高額介護サービス費」
高額介護サービス費は、1か月に支払った介護保険サービスの利用者負担額(1割~3割)の合計が、所得に応じて定められた上限額を超えた場合に、その超えた分が払い戻される制度です。
これにより、介護サービスの利用が増えても、自己負担が過大になるのを防ぎます。対象となるのは介護サービス費のみで、食費、居住費、日常生活費などは含まれません。
通常、初めて対象となった際に市区町村から申請書が送られてくるため、一度手続きをすれば、その後は該当するたびに指定の口座へ自動的に振り込まれる仕組みになっています。特に介護度が高い方にとって、大きな助けとなる制度です。
社会福祉法人が行う利用者負担の減額制度
社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームなどでは、法人が独自に行う利用者負担の減額制度を設けている場合があります。これは、社会福祉法人の社会貢献活動の一環として、特に生計が困難な低所得者の方を対象に、利用者負担額の一部を軽減するものです。
減免の対象となる費用は、介護サービス費の自己負担分や食費、居住費など多岐にわたりますが、制度の有無や内容、対象者の条件は法人や施設によって異なります。利用を希望する場合は、入居を検討している施設がこの制度を実施しているか、また自身が対象となるかを直接問い合わせて確認する必要があります。
失敗しない!費用を抑えられる老人ホーム選びで確認すべき4つのポイント
費用を抑えて入居できる老人ホームを探す際、料金の安さだけで決めてしまうと、後から「必要なサービスが受けられない」「生活環境が合わない」といった問題が生じかねません。経済的な負担を軽減しつつ、安心して快適な生活を送るためには、費用面とサービス・生活環境の両面から、総合的に施設を評価することが不可欠です。
ここでは、費用を抑えた老人ホーム選びで後悔しないために、事前に必ず確認しておきたい4つの重要なポイントを解説します。
月額利用料の内訳に何が含まれているかを確認する
月額利用料の内訳を詳細に確認することは、老人ホーム選びで非常に重要です。
提示されている金額に、家賃、管理費、食費、水道光熱費のどこまでが含まれているのかを明確にしましょう。施設によっては、水道光熱費が実費請求であったり、管理費にリネン交換や清掃の費用が含まれていなかったりする場合があります。
また、介護保険の自己負担分に加えて、おむつ代や医療費、理美容代、レクリエーションの参加費といった「その他費用」が別途発生することがほとんどです。入居前に重要事項説明書などをよく読み、月々の支払総額がいくらになるのかを具体的にシミュレーションしておくことが大切です。
入居一時金など初期費用はいくらかを把握する
老人ホームに入居する際には、月額利用料とは別に、入居一時金などの初期費用が必要になる場合があります。
入居一時金は、家賃の一部を前払いする性質のもので、施設によっては0円から数千万円までと大きな幅があります。近年は入居一時金が0円の施設も増えていますが、その分、月額利用料が高めに設定されていることもあるため、総費用で比較検討することが重要です。
また、入居一時金以外に、敷金や保証金、事務手数料などが必要なケースもあります。入居時に必要な費用の総額と、それぞれの費用の内訳、そして入居一時金の償却期間や退去時の返還金の有無についても、契約前に必ず確認しましょう。
介護・看護スタッフの人員体制は十分か
費用が安い施設を検討する際には、介護や看護のスタッフ体制が十分であるかを特に注意して確認する必要があります。
介護保険法では、要介護者3人に対して介護・看護職員を1人以上配置するなどの人員配置基準が定められています。まずはこの基準を満たしているかを確認しましょう。
さらに、基準を上回る手厚い人員配置を行っている施設もあります。
日中だけでなく、スタッフの数が少なくなる夜間の体制や、看護職員の常駐時間、資格を持つ職員の割合なども質問するとよいでしょう。施設見学の際には、スタッフの表情や入居者への接し方、フロアの雰囲気を自分の目で確かめることで、実際のケアの質を推し量る手がかりになります。
施設の立地や周辺環境は生活しやすいか
施設の立地や周辺の環境は、入居後の生活の質や家族との交流のしやすさに大きく影響します。
まず、家族が面会に行きやすい場所かどうかは重要なポイントです。公共交通機関でのアクセス方法や最寄り駅からの距離、駐車場の有無などを確認しておきましょう。
また、入居者本人が散歩や買い物に出かけることを想定し、施設の周りに公園やスーパー、商店街などがあるかもチェックします。
静かで落ち着いた環境を好むか、人通りがあり活気のある場所が良いかなど、本人の性格や希望も考慮に入れることが大切です。医療機関との連携体制や、緊急時に駆けつけられる距離にあるかどうかも、安心して生活するための重要な要素となります。
誰に相談すればいい?低所得者向け老人ホームの探し方と専門の相談窓口
低所得者向けの老人ホーム探しは、情報収集や手続きが複雑で、一人で進めるのは大変な作業です。
しかし、介護や福祉の専門家が常駐する相談窓口を活用することで、自身の状況に適した施設を見つけやすくなります。
これらの窓口では、施設の情報提供だけでなく、費用に関する悩みや公的制度の利用方法についても相談に乗ってくれます。
一人で抱え込まず、専門知識を持つ相談相手を見つけることが、スムーズな施設探しにつながります。ここでは、状況に応じて利用できる代表的な相談先を紹介します。
担当のケアマネージャーに相談する
すでに在宅で介護サービスを利用している場合、最も身近で頼りになる相談相手は担当のケアマネージャーです。
ケアマネージャーは、本人の心身の状態や必要な介護の内容、家庭の状況や経済事情を日頃から把握しています。そのため、これらの情報に基づいて、個々の状況に合った施設を具体的に提案してくれる可能性が高いです。
また、施設との連絡や情報共有もスムーズに行えるため、入居手続きを円滑に進める上でも心強い存在となります。入居後の生活を見据えたケアプランの相談にも乗ってくれるため、まずは一度話してみることをお勧めします。
地域の「地域包括支援センター」を訪ねる
地域包括支援センターは、各市町村に設置されている高齢者のための公的な総合相談窓口です。保健師、社会福祉士、主任ケアマネージャーといった専門職が配置されており、介護、医療、福祉、権利擁護など、高齢者の暮らしに関するあらゆる相談に無料で対応しています。
老人ホーム探しについても、地域の施設情報に精通しているため、予算や希望に応じた施設を紹介してもらえます。
まだ要介護認定を受けていない方でも、介護保険の申請手続きのサポートから相談可能です。どこに相談して良いか分からない場合に、最初に訪れる窓口として適しています。
入院中なら「医療ソーシャルワーカー」に尋ねる
病院に入院中で、退院後の生活に不安がある場合は、院内にいる医療ソーシャルワーカーに相談するのが最適です。
医療ソーシャルワーカーは、患者やその家族が抱える経済的、心理的、社会的な問題の解決を支援する専門職です。退院後の行き先として老人ホームを検討している場合、本人の医療的なニーズや経済状況を踏まえた上で、適切な施設探しを手伝ってくれます。
また、利用できる公的な費用軽減制度や福祉サービスについての情報提供も行い、関係機関との連絡調整役も担ってくれます。病院と連携している施設の情報を持っていることも多く、スムーズな移行をサポートしてくれます。
自宅で手軽に探せる老人ホームのポータルサイト
インターネット上には、全国の老人ホーム情報を集約したポータルサイトが多数存在します。
これらのサイトを利用すれば、自宅にいながら手軽に情報収集が可能です。「大阪府」「月額15万円以下」といったように、地域や費用、施設の種類などの条件で絞り込んで検索できるため、効率的に候補となる施設をリストアップできます。
各施設の詳細ページでは、写真や料金、サービス内容などを比較検討でき、資料請求や見学予約もサイト経由で行える場合が多いです。ただし、掲載情報が常に最新とは限らないため、最終的には施設に直接問い合わせて、正確な情報を確認することが不可欠です。
まとめ
大阪府内で低所得者が入居できる老人ホームには、特別養護老人ホームやケアハウスといった公的施設から、費用を抑えた民間の有料老人ホームまで様々な選択肢があります。費用負担を軽減するためには、「特定入所者介護サービス費」や「高額介護サービス費」などの公的制度を積極的に活用することが重要です。
施設を選ぶ際には、月額利用料の内訳や初期費用といった金銭面だけでなく、介護・看護体制や立地環境なども含めて総合的に判断する必要があります。一人で悩まず、ケアマネージャーや地域包括支援センターといった専門の相談窓口を利用しながら、本人にとって最も安心して暮らせる施設を見つけることが肝心です。
大阪を中心に、多数の高齢者向けの介護施設の情報を掲載する「いいケアネット」では、老人ホームに関する疑問やまつわる情報を「いいケアジャーナル」で随時更新中です。
監修者 一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長会 斉藤 正行
一般社団法人全国介護事業者連盟理事長。立命館大学卒業後、複数の介護関連企業で要職を歴任し、日本介護ベンチャーコンサルティンググループを設立。講演活動やメディア出演も多数。